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OKRとチケット駆動開発を組み合わせたチームでの取り組み https://confengine.com/conferences/xp2021/proposal/15819/okr
OKR とチケット駆動開発を組み合わせたチームでの取り組み
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内容
OKR を使うモチベーションサイクルごとの OKR によって得られた知見から次の四半期の OKR をどのように進めたか1年半ほど OKR をやってみてどう思ったか
自己紹介
梅原 潤 ( うめはら ひろし )https://twitter.com/zinraihttps://www.linkedin.com/in/hiroshiumehara/
「さくらの専用サーバ PHY」のシステム基盤を作ってます。Nomad, Consul などを使ったアプリケーション実行基盤Prometheus, Victoria Metrics などを使ったメトリクス管理・監視基盤Grafana Loki, Vector などを使ったログ管理・監視基盤
役職者ではないです。
「さくらの専用サーバ PHY」のインフラエンジニアです。
チケット駆動開発
BTS のチケットを中心にプロジェクトを運営することです。Redmineによるタスクマネジメント実践技法https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798121628
OKR
「Objective(目的)」と「Key Result(主要成果)」という2つの言葉の頭文字を並べた言葉で、組織やチーム、個人のありたい姿を達成するためのツールです。最短最速で目標を達成するOKRマネジメント入門https://kanki-pub.co.jp/pub/book/details/9784761273996
モチベーション
1年ほどかけ、所属しているチームに「チケット駆動開発」を導入した。
チケット駆動開発がまわりはじめるまでの取り組みhttps://speakerdeck.com/zinrai/okr-tidd-case
チケット駆動開発の導入により、チームメンバーの取り組みがチケットとして見えるようになった。
チームメンバーが取り組んでいることが、チケットになっているだけで、チームとして目標を掲げ、進めているという一体感は無さそう。
人事評価の仕組の中で各々が上司とすり合わせた自身の役割をもとにチケットが作られていて、そこにチームとして目指していきたい何かは無さそう。
チームとして目標を掲げ、チーム一丸となってその目標を目指していくような仕組みが欲しいなと思った。
OKR の採用
欲しいなと考えていた仕組み。チームで目指すゴールを設定できるチケット駆動開発と連携できる方法論を覚えるだけでおなかいっぱいにならない
OKR を使った場合のイメージObjectiveチームとしてのあるべき姿を明文化するKey Resultあるべき姿にどのように近づいているかという達成状況を測定するための主要成果を3〜5つ程度決める
OKR であれば、チームで目指す方向を示し、具体的な行動をチケット駆動開発に落とし込めるのではないかと思った。( どこで OKR を知ったのか思い出せない )
OKR をはじめる前の準備
2020年4月から OKR をはじめるため、 2020年3月にやったこと。
OKR の本を読むOKR の本を何冊か読み、 OKR の設定や運営についてインプットした。最短最速で目標を達成するOKRマネジメント入門https://kanki-pub.co.jp/pub/book/details/9784761273996OKR(オーケーアール)https://www.nikkeibp.co.jp/atclpubmkt/book/18/P55640/本気でゴールを達成したい人とチームのためのOKRhttps://d21.co.jp/book/detail/978-4-7993-2461-5
OKR の導入を相談するマネージャーに「チケット駆動開発」を導入して感じた課題、それを OKR にてなんとかしていけないかと考えている相談し、OKR を導入してみることに決まった。
OKR のサイクルを決める参照した書籍の通り、四半期を1サイクルで OKR をまわしていくことに決めた。
OKR を適用する範囲を決めるマネージャーと話し合い、 OKR を適用する範囲を「さくらの専用サーバ」 サービスのインフラのシステム開発に係わっているメンバーに決めた。
OKR の導入を説明するマネージャー、私を含め 10 名のメンバーに OKR を導入することを説明し、合意を得た。
2020年度第1四半期 OKR
Objective自由度の高い物理サーバホスティングと新たなことにチャレンジできる状態を創る
Key ResultPHYをリリースし、自分たちが欲しい機能の洗い出しと優先度付けが完了し、機能追加に着手できる状態となっている既存の仕組みの中で、自分たちが、やりたいことを洗い出し、優先度付けが完了し、作業に着手できる状態となっているチーム内のメンバーが取り組んでいることについて話す時間を確保し、テーマを決め10回開催する
どのように進めたかマネージャーと話し合い OKR の叩き台を作成叩き台をもってチームメンバーと話し合い OKR を決めたチームメンバーのタスクを洗い出し、チケットに落とし込んだチケットに落とし込まれたタスクを確認し、 KTP で「ふりかえり」それを受けてどう行動するのか決めるサイクルを週次でまわしたhttps://speakerdeck.com/zinrai/okr-tidd-case?slide=49四半期の終わりに、設定した OKR の達成度はどうであったかの「ふりかえり」を実施した
やってみてどうだったか
PHY の開発は進んだという結果となった最優先事項のため、たぶん OKR が無くても進む既存の仕組みは、やりたいことの洗い出しで終わった話す時間の確保は、達成できたが、何を目的にどうしていくのかの認識がチームメンバー間で合っておらず、「これで何がしたかったんだっけ?」となった
週次でチケットに落とし込まれたタスクを確認していくサイクルは、「何に注力するのか、チームメンバーの動きが見えて良かった」という意見は多かったチームメンーバー全員がタスクを進められてはいない週次でのタスク確認により、タスクを消化できていないメンバーが、他のことに時間を取られていそうな状況を観測した
得られた知見それっぽい OKR を設定できたように見えたが、3ヶ月で取り組むボリュームではなかったことがわかったOKR が設定でき、タスクが洗い出され、チケットに落とし込まれたところで5月半ばとなり、 OKR をもって動きはじめるまでに四半期の半分を消費したOKR の叩き台を作成するのに7時間、チームメンバーと話し合い OKR を設定するのに7時間ほど掛かり、 OKR 設定に時間が掛かることを身を持って知ったPHY のリリースは、チームだけでコントロールできる話ではないので、自分達がコントロール可能な範囲での Key Result を設定する必要があったPHY のリリースは、 2020年7月末のため、この時点ではリリースされていない
2020年度第2四半期 OKR
Key ResultPHY に対する定常的な問い合わせに対応できる土台を作るため、 開発に係るメンバーが構築した仕組みでハンズオンを実施し、機器へのログインはできるようになっているPHY はリリースされるが、運用のために必要な開発、ユーザーに提供する機能というのはまだまだあり、それらを洗い出し、優先順位を付け、四半期で注力するものを決めリリースまでもっていく着手できていない「やりたいこと」を集約し、チームとして重点的に取り組むものを選び、チケットを起票し進行させるチーム一人一人が一週間の中で考えたことをテーマに話の場をまわす
どのように進めたかマネージャー、リーダーを巻き込み OKR の叩き台を作成した叩き台をもってチームメンバーと話し合い OKR を決めたチームメンバーのタスクを洗い出し、チケットに落とし込んだチケットに落とし込まれたタスクを確認し、 KTP で「ふりかえり」それを受けてどう行動するのか決めるサイクルを週次でまわしたhttps://speakerdeck.com/zinrai/okr-tidd-case?slide=49四半期の終わりに、設定した OKR の達成度はどうであったかの「ふりかえり」を実施した
やってみてどうだったかObjective に近づいているというよりは、やるべきことの期限に追われていた設定した OKR は何だったろうかという発言が、チームメンバーから「ふりかえり」のタイミングにて出てきた他部署との調整が必要な開発は、具体的なタスクに落とし込まれるまでに時間を要し、8月中旬から週次のサイクルがまわることになった「チャレンジするような余裕が無い」という意見がチームメンバーから多く出た
得られた知見OKR を意識するタイミングを用意しないと、だたのチケット駆動開発になることがわかったいまのチームで取り組めるボリュームではなく、あれこれ Key Result を欲張らないほうがよさそうだと思った全体的に余裕が無さそうであることが観測され、ここに対して OKR を適用してみるとよいのではないかと思ったKey Result ごとにチームメンバーの中から主導する人を決め、進めていたが、これでは「主導する人」と「参加する人」という構図になり、チームメンバー全員が Objective に向かい当事者意識を持つということができないということに気が付いた
2020年度第3四半期 OKR
OKR を設定するためのミーティングをしていたら四半期が終わった。
OKR の叩き台を作成する
いつものようにマネージャー、リーダーを混じえ OKR の叩き台を作成するために集まった。
OKR に取り組む中で「期限に追われている」「余裕が無い」ということをはっきりと観測できた。たぶん、これがチームで目標をたてて取り組んでいかなければならないことではないかという話になった。
今までは、 OKR の叩き台を用意していたが、どうしていきたいかという思いを共有しようという結論となった。
一人で取り組むことによる心理的な負荷の軽減をしていきたいチームで取り組むことによって出てくる新たな視点の発見新たなことにチャレンジできるように仕組みを整備チャレンジのハードルを下げる取り組み
Objective 設定
『「やりたいと思うきもち」をフォローするチームになる』
チャレンジしようと思える余裕、チャレンジを後押ししようと思える余裕をつくっていこう。
Key Result 設定
「余裕」を作り出していくためには何をしていく必要があるのかチームで話し合った。
それぞれの専門性を生かしてサービスを作り上げていくためにチームという形をとっているはず。
実態は、個人商店の状態で、大小様々なことを各々が抱え込んでいて、一部の人が、この状態をなんとかしようと頑張っている。
専門性に注力できるように、そうでない属人化したオペレーション、ルーチンワークなどは、 誰かに偏らないようにしていけないだろうか。
それぞれがサービスのために作り上げた仕組みについてアウトプットすることによって、「それ面白そうだな」「やってみたいな」ということが出てこないだろうか。
...というような話や設定した Key Result にどう取り組んでいくのかということを26時間近く話していたら四半期が終わった。
ふりかえり
「 OKR 設定の進め方としてどうであったか」ということをチームでふりかえった。
2 つの Key Result すんなり出てきたが、3つ必要だと思い込んでしまい、全体の思い入れがあまり強くない 3つ目の Key Result に無駄に議論を重ねてしまったすんなり決まった 2 つの Key Result をまわしてみるでよかったのではないか議論しても答えがでないことは、やってみて、やってみた結果をもって四半期の中で改善していけばよいのではないかOKR についての皆で教科書を読まないと、 Objective, Key Result について永遠に問答し続けることになりそう
得られた知見無理に Key Result を 3 つ捻り出さず、 Key Result が 2 つであっても良い議論はほどほどに、やってみた結果をもって改善していくというプロセスが必要「こうありたいと考えている」という思いを参加者に共有し、 Objective を決めるというやり方のほうが、 OKR の叩き台で進めるよりも、チームの意見を引き出しやすく、認識が合わせやすかったOKR の教科書を指定し、 Objective, Key Result について知ってもらう必要がある
2020年度第4四半期 OKR
2020年度第3四半期にて話し合い決めた OKR で進めてみることに決まった。
Objective「やりたいと思うきもち」を、フォローするチームになる
Key Resultサービス理解のためのハンズオン/勉強会を実施した結果、参加者は今までやっていなかったことに取り組めた属人化しているルーチンワークを共有・ハンズオンすることで、複数人が対応できる状態になっている
引き継ぎ私が、2021年1月末から最大で半年の育児休業が決まっていたので、マネージャーにOKR の主導を引き継いだ。
マネージャーに伝えたことチームで向かう方向に対して当事者意識を持ってもらえるような演出をしたい具体的には、 Key Result に対して自分が出来ることは何かを考えてもらいそれをチケットに起こし取り組んでもらう形をとりたい
結果どうであったか
私は、2021年4月末で育児休業を終了し仕事に復帰した。
参加者が Key Result から自分はこの内容で取り組むということは決まっていた。マネージャーに余裕がなく、そこから先のプロセスがまわらずに四半期が終わっていた。
得られた知見ここでも「余裕が無い」が浮き彫りとなったOKR のプロセスをまわすということが、現状、誰かに引き継げるようなものではないことがわかった
2021年度第1四半期 OKR
OKR の主導はマネージャーからリーダーに移譲され、2020年度第4四半期に設定した OKR で進められていた。
どのように進めたか週に2回、チームメンバーに向けて Key Result に関係するアウトプットのための時間を確保したチームメンバーは、アウトプットするための時間に向けて、自分でスケジューリングし準備を進める週に1回、 OKR を読み合わせ、今週は何に取り組み、どのようなアウトプットをするのかチケットをベースに宣言してもらう時間を確保した四半期の終わりに、設定した OKR の達成度はどうであったかの「ふりかえり」を実施した
宣言したアウトプットを全て消化はできなかったが、難易度としては適切であった掲げた OKR に対して自分がどのようなことにコミットするのか迷うことなかった2020年度第2四半期 OKR までの反省から「主導する人」「参加する人」という構図を無くし「全員で目標に向かっていく」という体をとったことにより、自分事として向き合いやすかった週1回 OKR を確認することで、「何のためにやってるんだっけ」は解消されたと感じたチームメンバーのアウトプットを受け、そのアウトプットに関連した内容に取り組むことができた
Key Result をやったことによって、掲げた Objective に近づいているという感触は無く、遠くにあるように感じる週1回のブリーフィングにて、アウトプットが極端に少ないメンバーは詰められているように感じていたアウトプットが極端に少ないメンバーからは、「割り込みが多く OKR の取り組みの優先度が下がった」というコメントが出た毎週の状況を受けて、どうしていくかというプロセスをまわすような取り組みはなく、「ふりかえり」のタイミングで、「こうすればよかったね」というコメントが出てきてしまった
得られた知見OKR と具体的な取り組みは、どうすれば自分事として捉えてもらえるかという観点で設定する必要がありそう次の四半期で改善のサイクルをまわすのではなく、四半期の OKR に取り組んでいる中で、チームメンバーで話し合い、改善のサイクルをまわす必要がある一部のメンバーは、 OKR の取り組みに対する優先度が下がるという事象が起きるということがわかった
2021年度第2四半期 OKR
Objectiveチームメンバーが何をしているのか、何をしたいのか知る
Key ResultClosed になっていないチケットを題材に、何をしているのか、何をしたいのか話すことで、チームメンバーは状況を知ることができたClosed になっていないエスカレーションチケットを題材に、何をしているのか、これから何をするのか話すことで、チームメンバーは状況を知ることができた
OKR 設定のプロセス
Objective の設定にあたりチームメンバーに伝えたことチャレンジしようと思える余裕、チャレンジを後押ししようと思える余裕をつくっていこうという方向は変わらない前の四半期に設定した Objective が「遠く感じる」とのことだったので、『「やりたいと思うきもち」を、フォローするチームになる』を目指していきたい場所として、直近三ヶ月そのために何をするのかという観点で Objective を設定していきたい
OKR の設定に毎回1ヶ月ほどの時間が掛かっており、チームでの意思決定が圧倒的にできていない。
「余裕を作っていくために〜」という文脈にて出てくる「属人化」「ボトルネック」というワードに対して、チームメンバーがイメージしていることが異なっている。
ボトルネック、属人化というワードに対して、それぞれが思い浮かべることが異なってしまうのは、お互いに持ち得ていない情報があることによる「情報の非対称性」であるボトルネック、属人化という表現・解像度ではなく「○○の件」「そうそう、それそれ」という話ができるようになることで意思決定していけるようになるのではないか
まずは、チームメンバーが持っている情報を出し合い「知る」ことからはじめる必要があるのではないか。
チケット駆動開発にて起票しているチケットから「知る」を引き出してみる。
どのように進めているか週2回、チームで集まり、チケットを題材に、チケットの担当者に話しをしてもらうチームで集まるタイミングにて、エスカレーションチケットを題材にチケットの担当者に話しをしてもらう週1回、チームで集まり、 Key Result に対する具体的な行動をしてみた結果どうであったかをチームで共有し、改善案を取り組みに反映する
四半期は終わっていないので、「ふりかえり」はこれから。
所感
OKR の取り組みをチケット駆動開発によって、定量的に状況を観測できるのは良さそうだという感触を得た。
どの OKR の本にも、だいたい Key Result は SMART というようなことが書かれていた。OKR をやってみたことにより、設定した OKR で、チームメンバーがどれだけ当事者意識を持てるかが肝だと思った。
Key Result での取り組みについても、当事者意識を持てるような演出が必要であると思った。( 例えば、チームメンバーから「こういったことをやる」と宣言してもらう形をとるなど。 )
OKR をはじめる前に、 OKR を適用するチームメンバーに OKR の本を読んでもらい、Objective, Key Result ってどんなものなのかという認識をチームで合わせておいたほうがよい。( やらないと、たぶん Objective, Key Result ってなんだっけという問答をし続けることになる。 )
次の四半期、これからの OKR に反映できることが必ずあるはずなので、OKR のプロセスをまわせようが、まわせまいが、「ふりかえり」は実施する。
「OKR 良いね」と言い合える仲間がいないなか、10人を巻き込んでの OKR 推進は、かなりしんどかった。3, 4 人くらいで小さくはじめ、成功体験を積み上げてから規模を拡大していくとよいかもしれないと思った。
OKR の本を教科書に進めているが、この取り組みが OKR なのかはピンときていない。OKR やっている人達の話を聞いて、「自分達の取り組みは OKR だと言えそうだ」という感覚を得たい。
ありがとうございました