Unityを使ったマルチプラットフォームの開発の実際

Unityを使ったワンソース/マルチプラットフォーム（iOS/Android/WebPlayer/PS4/PSVita）開発で感じたこと/メリットやデメリットを、実際のプロジェクトで直に触れたプログラマーが解説致します。
2016/01/23 札幌で開催された Event for Diverse Game Engineers にて使用したスライドを一部修正したものです。

Transcript

1. Unityを使った マルチプラットフォームの開発の実際 株式会社たゆたう 渡邉 紀之
2. 最初に 本日の講演は サーバー＆クライアント型の ネットワークを使った ゲームアプリ開発のお話です ： ： 題名に書いていなかったので 最初にお断りをさせてもらいます
3. Unityとは 最高のゲーム開発環境 Unityは3D、2Dを問わずマルチプラットフォームでゲームやインタラクティブコンテンツを 制作する人のための最高の開発環境です。ハイエンドなコンテンツをビジネスにしたい 人、熱心な開発者、多くの熱烈なプレイヤーの全ての人を繋げる、ひとつのエコシステ ムなのです。(公式ＨＰより)
4. ちょっとだけ会社紹介 東京、札幌でエンジニア募集しています！ 東京オフィスと札幌オフィスはPS3のTV電話で常時接続中
5. 事業概要 ©TAYUTAU K.K. モバイルゲームの会社です！ ゲーム事業 モバイルゲーム 企画 開発 運営 メディア事業 モバイルゲーム ニュース配信 情報配信 5
6. さて本題に戻ります
7. プラットフォームの切替は超簡単 ←で選択して 「Switch Platform」 をクリックするだけ と こ ろ が ！ ： 実際にマルチプラットフォームで開発すると 様々な問題がおきます
8. ざっくりとこんなに違うんです！
9. 内部ストレージ ゲームに使用するデータやファイルを、予めダウンロードしておくことで、 通信量を抑えたり、快適なプレイレスポンスを、実現するための内部保存領域 ↓ ・Webブラウザにはストレージ領域がない ・PS3/4はメモリーカードを使用するため処理が固有に（VITAは推奨してない） ・スマホ系は端末により仕様が異なる（大きくはiOSとAndroid） 問題点
10. アセットバンドル Unityで使用するグラフィックやサウンド、テキスト等のリソースを、 アセットという単位でパッキングして、追加使用が容易にできるようになる ファイルシステム ↓ ・プラットフォーム毎に別々のアセットファイル生成が必要でビルド負荷が高い ・通常は内部ストレージに保存して使用する（個別にバージョン管理が必要） ・Webには内部ストレージがないので事前読み込みやキャッシュの強化が必要 問題点
11. マスターデータ ゲームで使用するパラメータやテーブルデータをネットワーク上に置く事で サーバのメンテナンスだけでトータルのバランスを変えたり、 ゲームそのものの一部機能をON/OFFしたりするデータシステム ↓ ・ストレージに保存することも可能だがWebを考えると毎回ダウンロードもあり ・故に大きくなりすぎないように無駄なデータを作らない注意が必要 問題点
12. 課金 F2Pでビジネスモデルを成立するため、ゲーム内で課金してもらう仕組みが必要 最近、国内でのスマートフォンのゲームアプリでは主流となる方式 ↓ ・プラットフォーム毎に個別の課金方式になるため個別の処理が必要 ・Appleには為替レートにあわせて課金の最低価格の変動があるため注意が必要 ・チート対策は最大限に気を使う必要がある 問題点
13. アップデートスキーム ゲームのバージョンアップ更新を行うアップデートの手順や方式 常にユーザには共通で最新のアプリが提供されるようになる仕組みが必要 ↓ ・Web以外はバージョン管理するためのマスターデータが必要になる ・プラットフォーム毎に更新ファイルが異なる場合もあるので別個に管理 ・変更されたファイルのみを上書きする仕組みがプラットフォーム毎に別に必要 問題点
14. トロフィー/アチーブメント ゲームのプレイの度合いや条件をクリアすることによって 各プラットフォーム毎に様々な副賞を得られるようになるシステム ↓ ・GameCenter、GooglePlay、PS系、Web(オリジナルで作成)で全部まるで違う ・プラットフォームの違いによる有利不利が起きないようにする必要がある ・各ユーザーアカウントと紐付ける必要があるのでそれも別個に制作が必要 問題点
15. リフレクション 実行時にクラス名やメソッド名を使って情報を取り出したり渡したりできる JAVAやC＃特有の機能 ↓ ・WebGLに対応していない（Unity5.1で調査時、現在は…？） ・WebGLも使ったマルチプラットフォーム開発の際は、使わずに代わりの処理が必要 ※Unity 5.3からは対応されているらしい 問題点
16. WEBビュー アプリ内でWebを閲覧したりリンクを辿れたりするブラウザ機能で アプリそのものを更新をしなくてもサーバのWebページを編集することで 表示情報を変更することが出来る ↓ ・プラットフォーム毎にまったく異なる処理を組む必要がある ・AndroidにはOSに機能が備わっているので、それに対応させる ・PS系はSDKに機能があるので、それに対応させる 問題点
17. Unity を使えば マルチプラットフォームの開発が 楽なんてことはない！！！ へたをするとプラットフォーム倍の 手間がかかることもある！！！！！ 結果
18. 実際に遭遇した障害ケース① メモリが少ないプラットフォーム問題 PS VITAは異常にメモリが少ない（200M以下） ｉＰｈｏｎｅも４Ｓが５１２Ｍ、Ａｎｄｒｏｉｄの２の頃も同程度 特にスマホはメモリが足らなくなるとアプリが落ちるので なるべく小さいリソースを持つのか GCが動作するタイミングを変えるのか キャッシュを上手く使って読み替えを多用するのか 機種毎のメモリを意識したカスタマイズが必要になる
19. 実際に遭遇した障害ケース② アセットバンドル問題 プラットフォーム毎に別に作らなければならない 単純にビルド時間もそれだけ倍化する 内部ストレージに保存する場合 その保存領域の違いで別処理が必要になるし バージョン管理もプラットフォーム毎に 別々に行わなければならないため運営的にも高負担 しかしやらなければアプリの拡張も難しいため必須である
20. 実際に遭遇した障害ケース③ キャッシュ問題 Ｕｎｉｔｙにあるアセットバンドルのキャッシュ機能は プラットフォームによって 使えたり使えなかったりするため 全てのものに対応させるには オリジナルで製作する必要があった
21. 実際に遭遇した障害ケース④ セーブ方式問題 ゲームデータは基本サーバ保存だが それを紐付けるユーザ情報は端末に残さなければならない スマホの場合は端末のキャッシュではないストレージ領域 ＰＳ系は本体またはメモリカード Ｗｅｂに関してはアカウント情報を ブラウザでＣｏｏｋｉｅ保存することになる また、ＰｌａｙｅｒＰｒｅｆというUnity独自の プラットフォーム共通の保存方式もある
22. 実際に遭遇した障害ケース⑤ 解像度問題 低解像度のプラットフォームに合わせると 高解像度でジャギがひどくなる 高解像度のプラットフォームに合わせると 低解像度でメモリが増大して動作できない可能性が上がる 両方用意すると容量が激しく増大し 運営の管理コストも肥大化してしまう どれを選択しても利点と欠点がある解決できない大きな問題
23. 実際に遭遇した障害ケース⑥ 課金方式問題 プラットフォーム毎に異なる課金方式になるため 全部別々に作らなければならない プラットフォームの数ぶんの工数が発生する
24. 実際に遭遇した障害ケース⑦ アチーブメント問題 前ケース同様 PS系やiOSのGameCenter、Googleそれぞれで 別のトロフィー等のシステムがあり それぞれに対応させる必要がある これも別プログラムで個別に制作しなければならない
25. 実際に遭遇した障害ケース⑧ ＷｅｂＶｉｅｗ問題 前ケース同様 Ｗｅｂ、ｉＯＳ、Ａｎｄｒｏｉｄ、ＰＳ系それぞれで 別処理で作らなければならない 更に面倒なことに 実際に端末を使わなければ開発できないため 開発初期の頃のビルド環境が乏しい状態だと きちんと動作確認しながら作ることができない
26. 実際に遭遇した障害ケース⑨ ビルド/アップデート問題 プラットフォームの数ぶんのビルドが必要で 単純に時間的な工数がかかってしまう 加えてバージョン番号の管理の複雑化と 共通でサーバを止めて 同時にアップデートをしなければならず 何か１つでも障害が起きれば 全て止めなければならなくなる
27. 他にもこういう問題が発生しそう。。。 その他の考えられる問題 ・シェーダートラブル（PS系に対応してるものが少ない） ・コントローラーI/F（PS3/VITA-TVにはタッチがない） ・デバッグコスト ・一部プラットフォームでしか起こらないUnityのバグ ・ ・ ・
28. でもやっぱり… １から作るよりは 結局はUnityだから吸収できることの方が 遥かに 利点の方が大きい！！！ ↓ これらの問題点を認識して 上手に付き合っていくしかない 結論
29. マルチプラットフォームとは関係ないですが 今実際に使っている開発環境の紹介 ①Redmine タスク管理、スケジュール、仕様Wiki 様々な開発情報を一括管理 ②GitHub、SVN サーバ上でバージョンを管理し多人数での開発を可能に ③Googleスプレッドシート 複数人で共通のデータ製作 ④チャットワーク、Slack、Skype 遠く離れた人ともリアルタイムで開発情報を共有 実際に現場で使っている開発環境の紹介
30. まとめ 多人数で多プラットフォームで行う ゲーム開発には どういった手法が有効か 今も 日々検討や研究をしながら ベストな環境を模索していっています
31. 以上、 ご静聴ありがとうございました。