Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
息の長いサービスの PHP8バージョンアップで見えた 課題と解決法 / Problems an...
Search
don
February 08, 2022
Programming
0
2.6k
息の長いサービスの PHP8バージョンアップで見えた 課題と解決法 / Problems and solutions found when upgrading long-term services to PHP8
don
February 08, 2022
Tweet
Share
More Decks by don
See All by don
レガシーシステムへのPHPStan導入から半年での効果と課題
bosshawk
0
1.9k
レガシーシステムへのPHPStan導入から半年での課題と効果
bosshawk
1
1.7k
レガシーシステムにおけるPHP8バージョンアップのアプリ対応記録
bosshawk
0
2k
[おすすめの技術書 LT会 - vol.2] 体系的に学ぶ安全なWebアプリケーションの作り方
bosshawk
0
20k
[PHPerKaigi 2021 (LT)] 新社会人のコード品質カイゼン記録
bosshawk
1
1.3k
Other Decks in Programming
See All in Programming
Blazing Fast UI Development with Compose Hot Reload (droidcon New York 2025)
zsmb
1
290
PostgreSQLのRow Level SecurityをPHPのORMで扱う Eloquent vs Doctrine #phpcon #track2
77web
2
500
AIエージェントはこう育てる - GitHub Copilot Agentとチームの共進化サイクル
koboriakira
0
510
LINEヤフー データグループ紹介
lycorp_recruit_jp
0
2.3k
今ならAmazon ECSのサービス間通信をどう選ぶか / Selection of ECS Interservice Communication 2025
tkikuc
21
3.9k
iOS 26にアップデートすると実機でのHot Reloadができない?
umigishiaoi
0
120
LT 2025-06-30: プロダクトエンジニアの役割
yamamotok
0
720
PHPでWebSocketサーバーを実装しよう2025
kubotak
0
270
Systèmes distribués, pour le meilleur et pour le pire - BreizhCamp 2025 - Conférence
slecache
0
120
“いい感じ“な定量評価を求めて - Four Keysとアウトカムの間の探求 -
nealle
1
8.5k
Azure AI Foundryではじめてのマルチエージェントワークフロー
seosoft
0
160
童醫院敏捷轉型的實踐經驗
cclai999
0
210
Featured
See All Featured
Fireside Chat
paigeccino
37
3.5k
Testing 201, or: Great Expectations
jmmastey
42
7.6k
Docker and Python
trallard
44
3.5k
Scaling GitHub
holman
459
140k
Why You Should Never Use an ORM
jnunemaker
PRO
58
9.4k
Refactoring Trust on Your Teams (GOTO; Chicago 2020)
rmw
34
3.1k
JavaScript: Past, Present, and Future - NDC Porto 2020
reverentgeek
48
5.4k
Art, The Web, and Tiny UX
lynnandtonic
299
21k
The Cost Of JavaScript in 2023
addyosmani
51
8.5k
Facilitating Awesome Meetings
lara
54
6.4k
How STYLIGHT went responsive
nonsquared
100
5.6k
[Rails World 2023 - Day 1 Closing Keynote] - The Magic of Rails
eileencodes
35
2.4k
Transcript
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. ©2022 RAKUS Co., Ltd. 息の長いサービスの
PHP8バージョンアップで見えた 課題と解決法 株式会社ラクス 開発本部 第二開発部楽楽販売開発課 頓花 貴俊
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 自己紹介 頓花 貴俊 (どんが たかとし)
▪経歴 2019年 株式会社ラクス入社 楽楽販売開発課に配属 ▪趣味 新しいもの好き。 デバイス集め ゲーム(ソシャゲ、FPS etc) 20年度上期ブログ表彰の写真
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 楽楽販売とは?
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 楽楽販売とは?
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 楽楽販売とは? 2022年3月期 第2四半期 決算説明資料
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 目次 • イントロダクション • 影響の大きかった主な変更点
• 課題と対応 • 今回の対応を振り返って • まとめ
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 今回、お伝えしたいこと I. 対応時に意識すること A. 全量把握し、対策を練ること
B. 品質の担保に対し、費用対効果を考慮したテスト計画を立てるか II. バージョンアップまでに意識すること A. 静的な型を意識した実装を行う B. こまめにリファクタリングする
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. イントロダクション
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. イントロダクション PHP製品の弊社での取り組み 2年 に 1
回 、バージョンアップを実施 • EOL の 回避 • サービスの品質担保 上記の両方を満たすために
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. イントロダクション 去年EOLを迎えた PHP7.3 → PHP8.0
の バージョンアップを実施 PHP バージョン 初回リリース日 アクティブサポート セキュリティサポート 8.0 2020/11/26 2022/11/26 2023/11/26 7.4 2019/11/28 2021/11/28 2022/11/28 7.3 2018/12/06 2020/12/06 2021/12/06 一つ飛ばし
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. イントロダクション 実施前の懸念点 • (着手当時) 弊社の他商材を含め、
ほかのWebサービスでの実績がほとんどなかった • リリース日が大きく変更できないため、 開発期間が決まっている • PHP8.0 で 下位互換性のない変更点 が多数ある
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 影響の大きかった主な変更点 • 緩やかな比較演算子の挙動変更 • 警告レベルの変更
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 影響の大きかった主な変更点 緩やかな比較演算子の挙動変更
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 緩やかな比較 とは PHPでは 厳密な比較 「===」
型まで同じかまで判定する 緩やかな比較「==」 型の相互互換を行った後に判定する 上記が存在します。
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 緩やかな比較演算子の挙動変更 挙動が変わる対象 文字列 と 数値
の 比較 ($int ⇔ $string, $float ⇔ $string) $string : 整数形式 $int ⇔ (int) $string $string : 浮動小数形式 $int ⇔ (float) $string 上記以外 $int ⇔ (int) $string $string : 整数形式 $float ⇔ (float) $string $string : 浮動小数形式 $float ⇔ (float) $string 上記以外 $float ⇔ (float) $string PHP 7.x ※ 左右関係なし
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 緩やかな比較演算子の挙動変更 挙動が変わる対象 文字列 と 数値
の 比較 ($int ⇔ $string, $float ⇔ $string) $string : 整数形式 $int ⇔ (int) $string $string : 浮動小数形式 $int ⇔ (float) $string 上記以外 (string) $int ⇔ $string $string : 整数形式 $float ⇔ (float) $string $string : 浮動小数形式 $float ⇔ (float) $string 上記以外 (string) $float ⇔ $string PHP 8.x ※ 左右関係なし
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 緩やかな比較演算子の挙動変更 まとめると、 対象 文字列 と
数値 の 比較 ($int ⇔ $string, $float ⇔ $string) 事象 文字列側 が 数値形式でない 場合 数値側 が文字列 に変換され、比較結果が 反転 する 条件式 7.x 8.x 0 == "0" TRUE TRUE 0 == "0.0" TRUE TRUE 0 == "foo" TRUE FALSE 0 == "" TRUE FALSE 42 == " 42" TRUE TRUE 42 == "42foo" TRUE FALSE 要注意
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 緩やかな比較演算子の挙動変更 - 関数・式 - •
演算子 == , != , > , >= , < , <= • 配列関数 in_array()、array_search()、array_keys() • ソート関数 sort()、rsort()、asort()、arsort()、array_multisort() • switch文
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 緩やかな比較演算子の挙動変更 - 具体例 - フォーム
から パラメータ が 「””」(空文字) と 数値 で 比較している場合 PHP 7.x (int)“” == 0 ⇒ true PHP 8.x “” == (string) 0 ⇒ false PHP 7.x (int)“” < 1000 ⇒ false PHP 8.x “” < (string) 1000 ⇒ true
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 影響の大きかった主な変更点 警告レベルの変更
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 警告レベルの変更 - 具体例 - •
ERROR に 変更されたエラー ◦ 配列関数の引数に配列以外の型を指定 ◦ BCMath関数の引数に数値形式以外を指定 ◦ implode()の歴史的な問題の削除 PHP 7.x ⇒ 出力:10.1 (string) PHP 8.x ⇒ Fatal error PHP 7.x ⇒ 出力:1 (int) PHP 8.x ⇒ Fatal error
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 警告レベルの変更 - 具体例 - •
WARNING に 変更されたエラー ◦ 未定義の変数の読み取り ◦ 未定義の配列のキーを読み取り ◦ 配列でない値のインデックスにアクセス PHP 7.x ⇒ 出力:null PHP 8.x ⇒ 出力:null | Warning
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 課題と対応
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 問題の前提 • PHPの型に寛容であるという特性 • レガシーなコードを使い続けている状態
→ 型チェックをせず、暗黙の型変換を使用してい箇所が多い ⇒ 静的コード解析で影響箇所の調査ができない状態
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 緩やかな比較演算子の挙動変更 - 課題 - 演算子や標準関数を含め
影響箇所 は 約2.7万 → 本来、すべて動作が変わるか確認が必要 (※ アプリ全体のphpコード は 約47万行) ⇒ すべてを 前後関係含めて、チェックは不可能
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 警告レベルの変更 - 課題 - 引数の型や返値の型が宣言されていない箇所が多い
→ 静的なコード解析が実施できない ⇒ すべてを 前後関係含めて、チェックは不可能
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 対応案 1. 以前と同様の挙動をする関数(ラップ関数)を作成し、 すべての箇所を置き換える 2.
すべての箇所を複数パターンでテストを行い、 問題があった箇所を修正する
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 対応案 1. 以前と同様の挙動をする関数(ラップ関数)を作成し、 すべての箇所を置き換える 2.
すべての箇所を複数パターンでテストを行い、 問題があった箇所を修正する ⇒ 問題点:新たなコード負債となる ⇒ 問題点:膨大な時間がかかる
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 対応案 1. 以前と同様の挙動をする関数(ラップ関数)を作成し、 すべての箇所を置き換える 2.
すべての箇所を複数パターンでテストを行い、 問題があった箇所を修正する ⇒ 問題点:新たなコード負債となる ⇒ 問題点:膨大な時間がかかる
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 今回どのように対応したのか ➢ 演算子に対する対策:修正対象を絞る ➢ 関数に対する対策:チェック関数で調査
緩やかな比較演算子の挙動変更 警告レベルの挙動変更 品質の担保は? ⇒ E2Eテスト・手動テストで確認 ➢ 通過テストで確認
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 今回どのように対応したのか - 実例 - ➢
修正対象を絞る ◦ 比較演算子の結果が変わるパターンから 影響箇所を絞り込み、修正を実施(ラップ関数に変換など) 例) 発見不具合:「””==0」の Boolean値が変わる 0 (定数化含み)と比較しているものリストアップし、 比較側をキャストするように修正 比較1 等号 比較2 v7.3 v8.0 check 0 == 0 => true true 〇 0 == 'abc' => true false × 0 == '' => true false × 0 == true => false false 〇
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. ➢ チェック関数で調査 ◦ 通過しても動作が変わるか確認できない ▪
引数が正常かチェックする関数を作成 今回どのように対応したのか - 実例 - 例) 発見不具合:「array_key_exist()」第一引数「””」第二引数「0,1,2」の挙動変更 ・第二引数 の 配列内 で 型 が違うもの ・第一引数 の 型 と 第二引数 の 配列の値 の型が違うもの 上記 をチェックし、ログとして出力
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. ➢ 通過テストで確認 ◦ 変更点はエラーになるので、実際に通過すれば確認可能 今回どのように対応したのか
- 実例 -
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 品質の担保 • 自動テスト ◦ E2E
テスト・ユニットテストで重要機能をテスト → データパターンが用意されている • 手動テスト ◦ データバリエーションが必要ない箇所のテスト → テストパターンを、「0件, 1件, 複数件」と データが存在しないとき ⇒ 自動テストと手動テストで確認
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 今回の対応を振り返って
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 今回の対応を振り返って 一言でいうと、 影響範囲が広い
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 今回の対応を振り返って 影響範囲が広いことへの対策 ターゲットを絞ること ⇒ 品質を担保するには?
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 品質を担保するには? • カバレッジをどうやって上げるかの観点 • どこまでテストするのかの観点
⇒ 品質の担保に対し、費用対効果を考慮したテスト計画を立てる 限られた時間の中で、テストの効果を考慮しテストを計画
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 見つかった不具合 • 動作テストで発見された不具合 10件程度 •
リリース半年内で発見された不具合 2件 (※ 軽微なもの) → 調査 ・不具合発見時の再調査 ⇒ 全量把握・それに対する検討 により 品質を担保 → チーム内 で 修正方針の検討 なぜ、不具合が少なかったのか?
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 余談 • 見送りの選択肢は? → 途中、PHP7.4
も選択肢に上がったが 問題の先送りになるだけなのでなんとか対応する方針へ • 工数は? → 前回のバージョンアップ( PHP7.1 → PHP7.3) 時の 2 倍 以上
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. これからのバージョンアップに向けて • ミドルウェアの更新で使用可能 • 通常のリリース毎のデグレチェック
➢ 自動テストを追加する メリット
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. これからのバージョンアップに向けて テストが必要な対象画面の自動テストの作成には 手動テスト 実施工数 の
約 5 倍 かかる想定 デメリット → どのテストケースを自動化するのか ⇒ 見極めが必要 ➢ 自動テストを追加する • コストが高い ⇒ 今回は作成コストには合わない、手動テスト実施
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. PHPバージョンアップの今後 • 推奨されない宣言・関数の削除 • 型の制限の強化
• エラーレベルの変更 ⇒ 新規コード:静的な型を意識した実装を行う ⇒ 既存コード:コード負債は小まめにリファクタリングする
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. まとめ
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. 今回、お伝えしたいこと I. 対応時に意識すること A. 全量把握し、対策を練ること
B. 品質の担保に対し、費用対効果を考慮したテスト計画を立てるか II. バージョンアップまでに意識すること A. 静的な型を意識した実装を行う B. 小まめにリファクタリングする
#RAKUSTechCon ©2022 RAKUS Co., Ltd. ご清聴ありがとうございました!