Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

超高齢社会における未来の暮らしとそれを支えるテクノロジーのデザイン / Designing future lives and supportive digital technologies in a super-aging society

超高齢社会における未来の暮らしとそれを支えるテクノロジーのデザイン / Designing future lives and supportive digital technologies in a super-aging society

HI学会UXSD研究会(SIG-UXSD-17)にて発表(2023年6月20日)

Fumiya Akasaka

October 29, 2023
Tweet

More Decks by Fumiya Akasaka

Other Decks in Research

Transcript

  1. 背景:超高齢化社会とテクノロジー • 超高齢化社会(高齢者の人口が21%以上)の到来 • 日本は、世界で最も高齢化が進んでいる(高齢化率:28.8%) • 超高齢化社会における社会コスト低減、高齢者のQoL向 上のためには、高齢者を支えるテクノロジーの社会的な活 用が重要 •

    高齢者のためのテクノロジーに関する研究開発 • Assistive Technology: AT (Cowan et al. 2012) • Gerontechnology: GT (Kwon 2016; Bouma et al. 2009) © 2023 AIST 1 https://www.imairumo.com/ https://serio888.net/lineup/ https://www.ngt-k.com/L8- 16.html
  2. AgingとTechnologyの関係 • ATやGTに対する批判 (Giaccardi et al. 2016; Neven 2010) •

    根底にある価値観:「高齢者は若い世代よりも虚弱で脆弱で不動で受動的」=“Agism” • 高齢者を、“高齢者たる方向”に閉じ込めてしまうような負の循環を生み出す可能性 • 今後さらに増えるであろう「ヤングオールド」や「アクティブシニア」の多くは共感しない • Co-constitution of Aging & Technology (Peine&Neven 2021) • Technologyが、Agingの在り方を変える(→Zoomが高齢者層にも普及) • Aging(の捉え方)が、Technologyの在り方を変える(→高齢者は弱い?アクティブ?) • アクティブな高齢者が自分の生活をよりよくするテクノロジーを自発的に選択→新しいAgingの在り方が社 会の中で生み出される • 高齢者や加齢(Aging)に対するネガティブなイメージから脱却し、高齢者をアクティブな存在として捉え、 主観的な幸福感(Wellbeing: WB)向上を目的としたポジティブデザインアプローチが必要 © 2023 AIST 2 Aging Techno logy 共構成関係 Uninvited Guests (A short movie created by superflux, 2015) スマートな 杖 スマートな フォーク スマートな ベッド
  3. Research Question 【既存研究】 • Design for resourceful aging (Giaccardi et

    al. 2016; Kujier et al. 2017) • Agingをポジティブなものとして捉え、高齢者の機知に富んだ生活の工夫に焦点を当てたデザイン • Wellbeingのためのデザイン • Possibility-driven design (Desmet&Hassenzahl 2012) / Experience design (Hassenzahl et al. 2013) / Positive design (Dasmet&Pohlmeyer 2013) / Positive computing (Calvo&Peters 2014) / Wellbeing design cards (Peters et al. 2020) • RQ:高齢者のWBを実現するテクノロジーやサービスを創出するためには、 どのようなデザイン手法が必要か? © 2023 AIST 3 • 高齢者にフォーカスしない一般的な議論が中心 • 高齢者に特有の事象や事情(例:身体/認知 機能の低下)を考慮できない
  4. 高齢者のWBのためのポジティブデザインアプローチ ①テクノロジー中心の考え方から、いかに脱するか? ⇒未来の理想的な(希望が持てる)生活像を問う • 市民(生活者)の視点から、理想的な生き方やエイジングの在り方を問い、未来の理想的な生活像をデザインする • ≒高齢者のヘドニックなWBではなく、ユーダイモニックなWBをめざす ②ステレオタイプ的な高齢者観(支援してあげる感)から、いかに脱するか? ⇒一人称的な視点から検討する •

    「(私は)こうありたい!」と思える生活像を構想し、それをサービスやテクノロジーをデザインする際のインプットとして活用 する=「一人称視点アプローチ」 ③高齢化に伴うネガティブな変化を、いかに考慮するか? ⇒希望的な視座だけでなく、高齢化に伴う様々なリスクを踏まえたビジョンを構想する • 高齢化に伴うネガティブな変化(認知+身体+環境)が起きることも前提にしながら、そういった変化が起こったとしても、 その制約の下で強く実現したいと思える生活像を構想 © 2023 AIST 4
  5. Design for Hopeful Aging • 高齢化に伴う様々な変化はありつつも、その制約のもとで、市民が「こうありたい!」と思える生活像のビジョ ン(=希望に満ちたAging)を構想し、それを起点にサービスやテクノロジーをデザインするアプローチ © 2023 AIST

    5 T T T T T Technology Service 統合された ビジョン Vision Vision Vision ①未来の理想的な生活像を問う ②一人称的な視点から検討する ③高齢化に伴うネガティブな変化を考慮する … 各参加者にとっての 理想的な高齢者の生活像のビジョン … 多様な参加者 創出 統合 具体化 理想的な生活像と それを実現するための サービスやテクノロジー Step1: 一人称視点でのビジョン創出 Step2: ビジョンの分類と統合 Step3: サービスとテクノロジーのデザイン
  6. デザイン実践:みんすた”近未来住宅編” • Aging in Placeに関する所内領域融合プロジェクト • Aging in Placeのためのテクノロジーやサービスを創出するためのR&Dプロジェクト •

    インタラクション、環境センシング、デジタルアーキテクチャ、サービスデザイン、標準化 • みんなのまちづくりスタジオ「近未来住宅編」 • みんスタ:UDCK、UDCK TM、日立東大ラボ(、産総研)が事務局を務めるリビングラボ(柏の葉) • 近未来住宅編:産総研がプロジェクトオーナとなり、2022年6月~10月に実施 • 参加者:チラシ/SNSで公募し、20代~70代までの近隣住民(計16名) © 2023 AIST 6
  7. Step1:一人称視点でのビジョン検討 © 2023 AIST 8 アクティブシニアとしての75歳の自分と「希望に溢れ た暮らし」をイメージし、 アクターマップで表現。 イメージを促すため、事前に実施した「高齢者の生 きがい」に関するアンケート結果などを共有。

    高齢化に伴う様々な 変化やリスクを記載した 「エマージェンシーカード」 を作成、利用。 エマージェンシーが起こったと しても、実現したい理想の 生活像を改めて表現
  8. Step2:ビジョンの統合と分類 © 2023 AIST 9 プログラム運営者 が、参加者が検討 した多様な未来の 生活像(ビジョ ン)を4つに分類

    未来の居住環境を支えうる最先端 のデジタル技術(IoTセンサ、照明 技術,音響技術など)のレクチャ チームとして考える 理想的な75歳の 生活像のビジョンを 鮮明化
  9. Lessons learned • テクノロジーに縛られない、新たな家族観・人生観にもとづくユニークなアイデア • 「こういうテックがあるからこうしたい」という思考過程ではない。「私は、こう生きたい/暮らしたい」が最初。 • 深い内省プロセスを通じた、深層的な価値観にグラウンディングしたアイデア • 自分にとっての希望、好み。過去の重要な経験、体験。身内のへの想い。

    • 研究者/技術者へのGifting • 市民が、自分自身でさえ認識していなかった価値観を可視化し、ギフトとして提示。 • 未来を想像することの困難さ • デプスインタビューやフィールドワークなどの協働。MR技術の活用。 • 一人称ビジョンの統合 • 遠慮による「全部入り」化を防ぐための仕掛け © 2023 AIST 13
  10. まとめ © 2023 AIST 14 RQ:高齢者のWBを実現するテクノロジーやサービスを創出するためには、どのよ うなデザイン手法が必要か? Design for Hopeful

    Aging 市民が「こうありたい!」と思える理想的な高齢者の生活像(ビジョン)を一人称視点で構想し、それを起点にサービスや テクノロジーのデザインを行う手法 本手法にもとづき実践した市民共創プログラムを報告し、有用性や課題を議論  深層的な価値観の内省から生まれる、新たな家族観・人生観に紐づくアイデアやビジョン  未来の自分について考えることの困難さ、一人称ビジョンを統合することの困難さ 今後の研究  【手法面】 課題を克服するためのブラッシュアップと展開のためのツールキット開発など  【PJ面】 PoC開発と「異なるLLの連携によるScaling up」
  11. 15 Thank you !! fumiya.akasaka [at] aist.go.jp https://www.fumiyaakasaka.com/ https://www.facebook.com/fumiya.akasaka Do

    not hesitate to contact me at: © 2023 AIST みんスタ:近未来住宅編 「プロセスレポート」 「アイデアブック」×4 公開中! (印刷版もあります!) https://www.udck.jp/blog/003773.html