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大学の事務業務における生成AI導入のための思考的枠組みに関する考察

gmoriki | 森木銀河
September 03, 2023
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 大学の事務業務における生成AI導入のための思考的枠組みに関する考察

2023年9月3日:
「生成AIサービスの特性は、大学の事務業務に対して、どのように適応し得るのか」という課題を明らかにするために、思考的枠組みの構築を試みました。

gmoriki | 森木銀河

September 03, 2023
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  1. 6 埼玉大学 教職員における生成AI利用に関する留意事項(事務業務関係) 1. 事務業務において生成AIを一切活用しないという選択肢はない 書類作成、翻訳、アイディア提案等様々な事務業務の支援に生成AIを 利活用することで、効率性や生産性の向上を図ることができ、作業時間 の短縮だけでなく品質の向上も期待できます。 情報漏洩等の注意すべき点はありますが、これからのデジタル化社会に おいて生成AIを利活用できることが重要なITリテラシーのひとつである

    と認識し、生成AIの基礎的な知識・能力等について理解し、積極的な利 活用を検討してください。ただし、取り扱う情報の性質上、上長が業務 利用を禁止した場合は、必ず従ってください。 2. 生成された内容を必ず確認する 3. 責任と倫理に留意する 4. バイアスや偏見に留意する https://www.saitama-u.ac.jp/student_archives/20230727AIguideline.pdf
  2. 7 問いと目的 ⚫ ChatGPTのリリース以降、生成AIという技術・サービスの開発や普及が進み、 多くの知識労働者の業務に多大な影響を与えることが示唆されている ⚫ 大学の事務業務における生成AIの導入・活用に対する言及は 大学の教育・研究活動におけるそれと比べて数少ない ⚫ 知識労働者への影響を考慮すると、大学の事務業務に対する生成AIの影響も同

    様に大きいと考えられる ✓ 生成AIサービスの特性は、 大学の事務業務に対して、どのように適応し得るのか 先行文献に対する質的調査により、 生成AIの特性と、大学の事務業務に対する適応について論じ、 思考的枠組みを導入・構築することで本課題を明らかにする
  3. 8 方法:「基本的視点」(柿沼,2023)を援用し、思考的枠組みを構築する 生 成 A I を 企 業 内

    で 活 用 し て 生 産 性 や 創 造 性 を 上 げ る うまく使う 安全に使う ③他者の権利侵害、法令違反に ならない使い方で使う ①生成AIが強い領域で、その 強みを引き出す使い方で使う ②生成AIの原理的な限界(ハル シネーション等)を知って使う 技 術 的 ・ シ ス テ ム 的 対 応 社 内 ル ー ル ( G L ・ 教 育 ) 柿沼(2023)
  4. 9 方法:「基本的視点」(柿沼,2023)を援用し、思考的枠組みを構築する 生 成 A I を 企 業 内

    で 活 用 し て 生 産 性 や 創 造 性 を 上 げ る うまく使う 安全に使う ③他者の権利侵害、法令違反に ならない使い方で使う ①生成AIが強い領域で、その 強みを引き出す使い方で使う ②生成AIの原理的な限界(ハル シネーション等)を知って使う 技 術 的 ・ シ ス テ ム 的 対 応 社 内 ル ー ル ( G L ・ 教 育 ) 具体的対応 生成AI 導入の目的 ガイドラインの策定 なぜ使うか いかに使うか どのような生成AIを 生成AIの特性 柿沼(2023)
  5. 11 GPT等のAIモデルが持つ4つの特徴 データ依存性 予測不可能性 普遍性 https://arstechnica.com/gadgets/2023/01/the-generative-ai-revolution-has-begun-how-did- we-get-here/ • AIモデルはその性能や機能が訓練データに大きく依存する •

    質の良いデータと十分な量のデータが与えられると、AIはより正確になる • AIモデルは基本的に確率的であり、同じ入力に対しても異なる出力をすることがある 創発的振る舞い • 大規模なモデルは予期しない新しい機能や能力を示すことがよくある • これはモデルの複雑さとその訓練方法に起因するものである • これらのモデルは多岐にわたるタスクやドメインで機能することができる • 一つのモデルが多くの異なるタスクを学ぶ能力を持つことがよくある (基盤技術・モデルとしての) 生成AI
  6. 14 ChatGPT等の対話型生成AIの特性を表す10の命題(Dwivedi et al,2023) 1. 生成AIツールは、知識労働者が行う作業の一部を代替するために使用することができる 2. 生成AIツールは、知識労働者の能力を増強することで生産性を向上させることができる 3. 生成AIツールは、誤情報、偽情報、または操作を増幅するために悪用される可能性がある

    4. 生成AIツールの基盤となるデータと学習モデルは、 その全体的な性能に影響を与える可能性がある 5. 正式および非公式なルールの欠如は、 生成AIツールの悪用と誤用の可能性を高める可能性がある。 6. 先行技術と比較して、生成AIツールは、 さまざまなステークホルダーにとって、より大きな倫理的ジレンマをもたらす可能性がある 7. 生成AIツールの知性は、主観的であり、 時には欺瞞的である可能性があり、これにより信頼のリスクが増大する 8. 生成AIツールはその自然言語能力を持ってビジネスや社会で重要な役割を果たす可能性がある 9. 生成AIツールは、データとトレーニング方法によって 超人的または専門的なエージェントとしての役割を果たす可能性がある 10.歴史上のさまざまなツールと同様に、 生成AIツールは独特の能力を約束するが、責任ある使用が必要である
  7. 15 Dwivedi et al(2023)の諸命題を生成AIの5つの特性として整理 [1] 知識労働への有用性と影響(1,2) • 知識労働者が行う作業の一部を代替するために使用することができる • 知識労働者の能力を増強することで生産性を向上させることができる

    [2] 誤用の可能性と倫理的な考慮事項(3,5,6) • 誤情報、偽情報、または操作を増幅するために悪用される可能性がある • 正式および非公式なルールの欠如は、悪用と誤用の可能性を高める可能性がある。 • さまざまなステークホルダーにとって、より大きな倫理的ジレンマをもたらす可能性がある [3] データと訓練モデルの影響(4,9) • 生成AIツールの基盤となるデータと学習モデルは、その全体的な性能に影響を与える可能性がある • 生成AIツールは、データとトレーニング方法によって 超人的または専門的なエージェントとしての役割を果たす可能性がある [4] 過去のテクノロジーとの相違(7,8) • 生成AIツールの知性は、主観的であり、時には欺瞞的である可能性があり、 これにより信頼のリスクが増大する • 生成AIツールはその自然言語能力を持ってビジネスや社会で重要な役割を果たす可能性がある [5] 使用における責任(10) • 歴史上のさまざまなツールと同様に、生成AIツールは独特の能力を約束するが、責任ある使用が必要である
  8. 17 方法:「基本的視点」(柿沼,2023)を援用し、思考的枠組みを構築する 生 成 A I を 企 業 内

    で 活 用 し て 生 産 性 や 創 造 性 を 上 げ る うまく使う 安全に使う ③他者の権利侵害、法令違反に ならない使い方で使う ①生成AIが強い領域で、その 強みを引き出す使い方で使う ②生成AIの原理的な限界(ハル シネーション等)を知って使う 技 術 的 ・ シ ス テ ム 的 対 応 社 内 ル ー ル ( G L ・ 教 育 ) 具体的対応 生成AI 導入の目的 ガイドラインの策定 なぜ使うか いかに使うか どのような生成AIを 生成AIの特性 柿沼(2023)
  9. 19 大学の事務業務における利用方法 Dwivedi et al (2023) • AIチャットボットが学生をサポートすることで、 教育者、管理者、大学経営者の作業負担を軽減する ⇒事務業務の効率化

    • 評価の採点やよくある基本的な質問への回答などの 管理業務の自動化に利用できる ⇒事務業務の自動化 生成AIの創発的振る舞いに基づく「アイデアや創造のプロセスのサポート」 (Dwivedi et al 2023 命題.8,Berg 2022) 例:AIチャットボットによる学生対応の効率化、定型的な文章の作成・添削 例:アイデア出し、情報の変換・抽象化
  10. 21 具体的な事例:東北大学におけるChatGPTの利用 システム運営業務での活用 職員が用いるパソコン(仮想クライアント)の管理や運用を行う業務において、 RPA のフローを ChatGPT と対話をしながら作成し、管理・運用業務を自動化 広報業務での活用 本学が発出したプレスリリースを基に、

    ChatGPT を活用してニュース原稿を作成し、 AI ナレーターが読み上げることで、新たな音声・動画メディアを作成 イベント周知のために、ChatGPT を活用してキャッチコピーを作成する https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press0518_04web_chatgpt.pdf
  11. 22 具体的な事例:東北大学におけるChatGPTの利用 システム運営業務での活用 職員が用いるパソコン(仮想クライアント)の管理や運用を行う業務において、 RPA のフローを ChatGPT と対話をしながら作成し、管理・運用業務を自動化 広報業務での活用 本学が発出したプレスリリースを基に、

    ChatGPT を活用してニュース原稿を作成し、 AI ナレーターが読み上げることで、新たな音声・動画メディアを作成 イベント周知のために、ChatGPT を活用してキャッチコピーを作成する ここでも「IT関係スキル」と「改善業務」が提示されていることから、 「IT関係スキル」等の諸スキルを保有する大学職員が 生成AIサービスを利用することで「改善業務」を遂行するという 実践的な位置づけが考えられる。 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press0518_04web_chatgpt.pdf
  12. 25 高等教育におけるChatGPT利用のクイックスタートガイド(UNESCO,2023) ChatGPT使用時の留意事項 • 安全に使用するためのフローチャート 高等教育におけるChatGPTの応用 • 教育・学習 • 研究

    • 事務(管理・運営) 課題と倫理的影響 • アカデミックインテグリティ • プライバシー • 認知バイアス・アクセシビリティ 高等教育機関におけるChatGPTへの適応 • 慎重かつ創造的なChatGPTの使用 • ChatGPTを理解・管理するための能力の構築
  13. 26 高等教育におけるChatGPTの応用 事務(管理・運営) ChatGPTは以下のようなタスクに費やす時間を削減することができます: • 申込者(入学希望者)からの問い合わせ対応 • コースの申し込み、必要事項の記入、 • 管理情報(例:試験の時間割、クラスの場所)の確認

    • ニュース、リソース、その他の情報の検索 • リマインダーや通知の送信 • 留学生/スタッフのための情報の翻訳 タスク 使用を検討すべきサービス 申込者(入学希望者)からの問い合わせ対応 ChatGPTを特定の用途に 特化させたサービス …ドメイン知識を投入した ChatGPT(のような,LLM型のサービス)が望ましい 管理情報(例:試験の時間割、 クラスの場所)の確認 リマインダーや通知の送信 ニュース、リソース、その他の情報の検索 Bing Chat,Bard等の 検索可能な生成AIサービス 必要事項の記入 ChatGPT 留学生/スタッフのための情報の翻訳 様々な生成AIサービスを 混同して論じられている可能性が高い 発表者により 整理
  14. 28 生成AIサービスの選択肢の類型 ChatGPTをそのまま利用 Bing Chat等を利用 自分の大学専用の ChatGPTモドキを利用 ⇒セキュアかつ 利用ログを取得可能 (ほぼ)独自開発の

    ChatGPTモドキを利用 ⇒将来的には増えるかもし れないが当面は無いと予想 https://twitter.com/tka0120/status/1671512617276375049/photo/4
  15. 30 方法:「基本的視点」(柿沼,2023)を援用し、思考的枠組みを構築する 生 成 A I を 企 業 内

    で 活 用 し て 生 産 性 や 創 造 性 を 上 げ る うまく使う 安全に使う ③他者の権利侵害、法令違反に ならない使い方で使う ①生成AIが強い領域で、その 強みを引き出す使い方で使う ②生成AIの原理的な限界(ハル シネーション等)を知って使う 技 術 的 ・ シ ス テ ム 的 対 応 社 内 ル ー ル ( G L ・ 教 育 ) 具体的対応 生成AI 導入の目的 ガイドラインの策定 なぜ使うか いかに使うか どのような生成AIを 生成AIの特性 柿沼(2023)
  16. 31 生成AI導入の思考的枠組みの構築 思考的枠組みに対応する生成AIの諸特性 生成AI導入の目的;なぜ利用するのか ➢ 事務業務の効率化 ➢ 事務業務の自動化 ➢ 自然言語による創造性のサポート

    具体的対応;いかに使うか ➢ 学生対応等のサポート ➢ 文章の作成・添削 ➢ アイデアや創造のプロセスのサポート [1] 知識労働への有用性と影響 [2] 誤用の可能性と倫理的な考慮事項 ガイドラインの策定; どのような生成AIを整備するのか どのような教育・周知が必要か ➢ 「外部サービス利用」の類型より選択 ➢ 「社内ルール(GL(ガイドライン)・教育)」 [3] データと訓練モデルの影響 [4] 過去のテクノロジーとの相違 [5] 使用における責任
  17. 33 生成AI導入にあたって ➢ 実際に生成AIを導入するためには、各大学の実情を踏まえたプロセスが不可欠 留意事項: ➢ 本発表の内容に言及された「生成AI導入の目的」や「具体的対応」は各大 学の実態を表すものではなく、先行して公表されている議論や検討に基づ いて整理・構成した要素である ➢

    生成AIサービスの有用な利用方法は現在も探索的に調査され続けている 例:メタ認知プロセスを用いたプロンプトの開発 ➢ 「どのような生成AIを整備するのか」という点で、2023年9月2日現在、 OSSのLLM開発が盛んであり「自社システムの利用」も検討される可能性 は大きい 今後の課題: • 各大学での実践報告や知見等を踏まえた思考的枠組みの修正・公開 • 大学の事務業務を改善するための一手段としての有用性の実証的検証
  18. 34 主要参考文献(最終閲覧日:2023年9月3日) Eloundou et al,“GPTs are GPTs: An Early Look

    at the Labor Market Impact Potential of Large Language Models”, https://doi.org/10.48550/arXiv.2303.10130,2023 Noy and Zhang,“Experimental evidence on the productivity effects of generative artificial intelligence”, https://doi.org/10.1126/science.adh2586,Science,Vol.381 No.6654,2023 Atlas,“ChatGPT for Higher Education and Professional Development: A Guide to Conversational AI”, COLLEGE OF BUSINESS FACULTY PUBLICATIONS,548,https://digitalcommons.uri.edu/cba_facpubs/548/,2023 Dwivedi et al,“Opinion Paper: “So what if ChatGPT wrote it?” Multidisciplinary perspectives on opportunities, challenges and implications of generative conversational AI for research, practice and policy”, International Journal of Information Management,Volume 71,2023 UNESCO,“ChatGPT and Artificial Intelligence in higher education Quick start guide”,https://www.iesalc.unesco.org/wp- content/uploads/2023/04/ChatGPT-and-Artificial-Intelligence-in-higher-education-Quick-Start-guide_EN_FINAL.pdf,2023 柿沼,”生成AIを利用する際に法的に注意すべきこと”,東京大学AIセンター連続シンポジウム 第15回「生成AIは世の中をどのように変え るのか?」, https://www.ai.u-tokyo.ac.jp/ja/activities/2334,2023 福島,”対話型生成系AIのインパクトと社会的課題”, AIと文化シンポジウム「生成系AIの活用」, https://www.ai.u- tokyo.ac.jp/ja/activities/2334,2023 HUANG,” The generative AI revolution has begun—how did we get here?”, https://arstechnica.com/gadgets/2023/01/the- generative-ai-revolution-has-begun-how-did-we-get-here/,2023 HUANG,” The generative AI revolution has begun—how did we get here?”, https://arstechnica.com/gadgets/2023/01/the- generative-ai-revolution-has-begun-how-did-we-get-here/,2023 木村,”大学職員人事異動制度の実証的研究 職務遂行高度化への効果検証”,東信堂,2023