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チームのテスト力を総合的に鍛えてシフトレフトを推進する/Shifting Left with...

チームのテスト力を総合的に鍛えてシフトレフトを推進する/Shifting Left with Software Testing Improvements

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Hiroki Iseri

October 23, 2025
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  1. 自己紹介 ⚫経歴 • 開発者、テストエンジニア、コンサルタント、QAエンジニアとさまざまな立場 でさまざまなプロダクトのソフトウェアテスト業務に従事 • テストについて執筆・講演・研究・技術指導多数 • 現在は車メーカーで車載開発のQA/テストテックリードを担当 •

    JSTQB技術委員、テスト設計コンテストU30クラス初代審査委員長 ⚫主な著作 • 「ソフトウェアテスト徹底指南書」 「実践ソフトウェアエンジニアリング第9版」(共訳) 「シフトレフトテストを支える現代的なテスト設計」 「システムテスト自動化標準ガイド」(共著)など Copyright(C) 2025 Hiroki Iseri 2
  2. 現代的なソフトウェアプロダクトの様相 ⚫プロダクト形態がサービス化 • XaaS(SaaS、PaaS)など。 • パッケージや組込みも継続的な改善・運用で顧客満足を支える • OTAによるIVI改善 ⚫開発ライフサイクルが長大化 •

    リリースして終わりではなく、サービスとしての継続運用や、継続的に改善を 行って、プロダクト価値をアップデートしていく 5 Copyright(C) 2025 Hiroki Iseri
  3. チームのスピード、レジリエンス、開発持続性はプロダクト品質 と不可分であり、プロダクト価値に直結する ⚫開発チームのスピードが速いと: • 開発とビジネスのフィードバックループを迅速化 • ユーザのニーズを迅速に・効率的に実現 • 顧客満足のための試行錯誤を迅速化 ⚫開発チームのレジリエンスが高いと:

    • プロダクトの障害・不満点を早期解消 • リスク許容度が高まりよりチャレンジできる ⚫開発チームの開発持続性が高いと: • ユーザへの継続的なプロダクト価値の提供実現 • プロダクトの改善機会を確保 7 Copyright(C) 2025 Hiroki Iseri
  4. 総合的なビジネスパフォーマンスは 開発チームのスピード、レジリエンス、開発持続性に連動 ビジネス パフォーマンス エリート 高い 中間 低い 変更リードタイム 1日未満

    1日~1週間 1週間~1か月 1か月~ デプロイ頻度 いつでも (1日複数回) 1日1回~ 1週間に1回 1週間に1回~ 1か月に1回 1か月に1回~ 変更失敗率 5% 20% 10% 40% 障害復旧時間 1時間未満 1日未満 1日未満 1週間から1か月 DORA Accelerate State of DevOps 2024 現代的なソフトウェア開発の成功のためには 品質実現に加えて、開発チームのスピード、レジリエンス、 開発持続性の総合力強化が必要 8 Copyright(C) 2025 Hiroki Iseri
  5. スパイラル型品質作りこみの実現 ⚫中短期の正当な反復型プロセスの採用 • 反復ごとに妥当性確認可能なリリースを確保し、品質フィードバックを確保 • 避けるべきアンチパターン: • リリーススプリント肥大化、全体統合なきインクリメンタル開発、 アジャイル形骸化(例:ゾンビスクラム) ⚫アプローチを支える施策

    • シフトレフトテスト(テスト実行のシフトレフト)の推進 • ウォーキングスケルトンのサポート • 早期からのユーザ視座のフィードバック機会の確保 • 顧客満足観点のテストや、包括的な品質確認テスト • 差分開発の品質確保のサポート • 自動テスト充実、CI/CD充実、疎結合アーキテクチャ推進、ブランチ戦略洗練 19 Copyright(C) 2025 Hiroki Iseri
  6. 開発者テストの充実の実現: 開発者が責任をもって自動テストを書く習慣の醸成 1. 習慣の定着 • ガイドラインやプロセスであるべき姿を提示 • テスト駆動開発/Cover & Modifyの奨励

    • モブプログラミング/ペアプログラミングによる総合力の共有 • CI/CDによる自動テストの資産化 2. 習慣づけへの短期フィードバック • PRレビュー/MRレビューでの有識者によるチェック • CI/CDからのカバレッジのフィードバック 3. 習慣づけへの中長期フィードバック • フォールトインジェクション/ミューテーションテストによる評価 • バグ流出を評価して改善サイクルをまわす 22 Copyright(C) 2025 Hiroki Iseri
  7. スクラムでのWモデルの推進例 ⚫例)ユーザーストーリ作成にテストの視座を注入する ユーザーストーリ:検索履歴の呼び出し 「システム利用者として、過去の検索 履歴の一覧を表示し、履歴の検索構 文を選択して再実行できる。それによ り、以前検索した内容をすばやく実行 できるようにする」 境界値テストを考える。表示履歴数の最小 値・最大値を確認し、受け入れ基準に明

    記する ユーザストーリをテスト担当交えて共同作成する or 作成直後にテストの視座でレビューする テストの検討を行い、早期に対策を打つ テストに必要な情報を確保する。詳細なUI 仕様を確保・補完する リリース判定の観点でチェックする。「検索 履歴の削除」「検索履歴のセキュリティ」な ど、関連するユーザーストーリや仕様の存 在を確認し、不足があれば是正する 25 Copyright(C) 2025 Hiroki Iseri
  8. テスト容易性(試験性、テスタビリティ) テストしやすさについてのプロダクトの内部品質特性 Copyright(C) 2025 Hiroki Iseri 27 品質特性 内容 具体例

    観測容易性 テスト対象の観測のしやすさ エラーログの充実度 制御容易性 テスト対象の操作のしやすさ APIの充実度 セットアップ容易性 テストのセットアップのやりやすさ コンストラクタの単純さ 実行容易性 実行の容易さ テスト実行のブロック要因の少なさ 分解容易性 テスト対象の分割・置換の容易さ 接合部の充実度 網羅容易性 テストでの網羅のしやすさ デッドコードの少なさ 安定性 テスト対象の安定性・バグの少なさ 変更頻度の少なさ 環境構築容易性 テスト環境の構築のしやすさ 環境の冪等性 問題検出性 バグの特定のしやすさ 解析ログの充実度 対象によってより具体的な品質特性がある。例)自動化:仮想化容易性、並列化容易性、CI/CD統合容易性
  9. 品質リスクの分離によるシフトレフト推進 32 Copyright(C) 2025 Hiroki Iseri 低リスク 高 リスク 低

    リスク ・・・ 疎結合設計で品質リスクの分離を実施 (例:接合部配備、信頼できるインターフェース手段採用、カプセ ル化/状態や副作用の局所化、インターフェースのシンプル化/ 契約による設計) 品質の積み上げの推進 •コンポーネントレベルで品質担保 •高リスクコンポーネントは、ユニットテスト・統合テスト でバグだし・品質確認を済ませる • 低リスクリリースはスピード重視のテストで。システムテスト緩和 • 総体として品質と開発のスピードを共立