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滑空スポーツ講習会2022(実技講習)EMFT学科講習 参考資料/JSA EMFT 2022 Appendix

JSA seminar
February 10, 2023

滑空スポーツ講習会2022(実技講習)EMFT学科講習 参考資料/JSA EMFT 2022 Appendix

滑空スポーツ講習会2022(EMFTオンライン学科講習/EMFT実技講習)
http://www.japan-soaring.or.jp/2022jsaemft/
公益社団法人日本滑空協会

講師 公益社団法人日本グライダークラブ 櫻井 玲子

JSA seminar

February 10, 2023
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Transcript

  1. 公益社団法人日本滑空協会
    2022年度 EMFT学科資料 参考資料
    公益社団法人 日本グライダークラブ
    櫻井 玲子
    Emergency Maneuver Flight Training

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  2. 2022/06/18 2
    本資料の作成に当たり、ご協力及びご助言をいただきました皆様に深く感謝申し上げます。
    ・中部日本航空連盟岐阜支部 佐藤 文幸様 : 滑空機性能計算ツールの作成と提供
    ・九州大学大学院工学研究院航空宇宙工学部門 東野伸一郎様:
    滑空機の航空力学に関する監修及び助言
    本編
    1. グライダーの危険
    2. 失速のメカニズム
    3. スピンのメカニズム
    4. 失速・スピンの兆候と回避
    5. パイロットに必要な能力
    6.ケーススタディ
    7. EMFT実技実施要領
    参考資料
    1. 飛行の根拠「滑空機計算ツール」
    2. 空間識失調とサブG感覚
    3. 空中衝突
    4. 低酸素症(ハイポキシア)
    5. 滑空機安全啓発動画
    EMFT学科講習会 内容

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  3. 1. 飛行の根拠 「滑空性能計算ツール」
    Special Thanks to
    Mr. F.Sato
    2022/06/18 3
    ■作成者紹介
    中部日本航空連盟 岐阜支部 佐藤 文幸 氏
    1977年 福岡県生まれ
    2002年~ 航空機の研究開発、飛行試験、型式証明審査業務に従事
    37歳でグライダーを始める
    中部日本航空連盟岐阜支部所属、自家用操縦士(上滑、動滑)

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  4. 滑空性能計算ツール
    1. 旋回時の沈下率
    グライダーの旋回中の沈下率から、ソアリング旋回時に選ぶべき参考速度とバン
    ク角を知る。また沈下率とバンク角から180度旋回の失高を知り、離陸直後の索切
    れ等で滑走路に逆進入可能かの判断材料とする。
    2. 風の中での滑空性能
    グライダーが直線コースを飛ぶ際に、風向と風速(正対風、背風、横風など)が滑
    空性能にどのような影響を与えるかを計算する。
    3. 風の中での航跡
    第3旋回及び第4旋回においてどの程度風に流されるのかの確認し、旋回開始の
    タイミングを知る。
    4. 地上目標旋回
    地上目標を取って正円を描く場合のバンク角とWCAを確認する。
    4
    2022/06/18

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  5. 5
    ツール1 :旋回時の沈下率
    2022/06/18
    グライダーの旋回中の沈下率から、ソアリング旋
    回時に選ぶべき参考速度とバンク角を知る。ま
    た沈下率とバンク角から180度旋回の失高を知
    り、離陸直後の索切れ等で滑走路に逆進入可能
    かの判断材料とする。

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  6. サーマル旋回の最適速度は?
    6
    2022/06/18 6
    ・最適速度を決める要素:サーマルの大きさ、沈下率、失速速度、旋回半径
    TWIN Ⅱ ポーラーカーブ

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  7. 旋回中の沈下率
    出典:佐藤文幸「旋回中の沈下率について」
    2022/06/18 7
    n
    n
    w
    w
    ×
    =
    =
    φ
    φ cos
    1
    cos
    1
    直線
    旋回
    旋回中の沈下率比=
    バンク角 荷重倍数n 沈下率比
    30° 1.15 1.23
    45° 1.41 1.67
    60° 2.00 2.83
    (注)この計算は基準のポーラーカーブの
    精度に強く依存しており、また、旋回の曲
    率により風が胴体に真っすぐに当たらな
    いこと、及び舵面を動かすことによる抵抗
    増を考慮していないため、この結果を参
    考程度にとどめること。

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  8. TWIN Ⅱ 旋回中のポーラーカーブ
    出典:佐藤文幸「旋回中の沈下率について」
    2022/06/18 8
    速度[km/h]
    -3
    -2
    -1
    0
    0 50 100 150
    旋回中の沈下率[m/s]
    基準のポーラーカーブ
    バンク20°
    バンク40°
    バンク60°
    理論曲線(バンク0°)
    理論曲線(バンク60°)
    最大滑空比
    最小沈下率
    失速
    理論曲線(0°)
    バンク角を増すと、沈下率は悪化し、速度を増さなければ失速するという実際の現
    象を正しく再現できている。
    定常旋回中に最小沈下率及び最大滑空比となる迎え角はそれぞれ直線飛行時と
    同じであることが分かる。
    ×は各バンク角の定常旋回において直線飛行時の失速時と同じ迎え角である点
    ▲は同様に最小沈下率と同じ迎え角である点
    ○は同様に最大滑空比と同じ迎え角である点

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  9. TWIN Ⅱ 旋回半径と沈下率
    出典:佐藤文幸「旋回中の沈下率について」
    2022/06/18 9
    旋回半径[m]
    -3
    -2
    -1
    0
    0 50 100
    沈下率[m/s]
    バンク20°
    バンク30°
    バンク40°
    バンク45°
    バンク50°
    バンク55°
    バンク60° 60°
    55°
    50°
    45°
    40°
    30°
    20°
    バンク角40~45度付近で旋回すると、旋回半径と沈下率が程よく小さくなる。
    コアのみが強いタイプの上昇気流に対してソアリングの上昇速度のみを追求すると、失速(×
    のマーク)と隣り合わせになる可能性が高くなる(TWINⅡに限らず、他の機体でも同様)。
    小さな旋回半径には、より速い速度と大きなCL値(迎え角)が必要。
    重量が重いほど早く最大CL値に達してしまう。
    旋回中は内側の翼がより低速で進むこと、及びエルロンの当て舵により旋回内側のエルロン付
    近の迎え角が増え、図中の×よりも速い速度で失速が始まる。
    90km/h
    80km/h
    105km/h
    77km/h
    バンク0°の失速速度=75km/h

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  10. 10
    ツール2 :風の中での滑空性能
    2022/06/18
    グライダーが直線コースを飛ぶ際に、風向と風速(正対風、
    背風、横風など)が滑空性能にどのような影響を与えるか
    を計算する。

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  11. 2022/06/18 11
    沈下率
    対気速度・対地速度

    無風時のポーラーカーブを
    風速分だけそれぞれ平行移動
    無風時のポーラーカーブ
    =対気速度のポーラーカーブ
    向かい風時の
    ポーラーカーブ
    追い風時の
    ポーラーカーブ
    向かい風 追い風
    追い風時の最大滑空比速度(対地)
    向かい風時の
    最大滑空比速度(対地)
    追い風時に
    パイロットが選ぶべき速度
    向かい風時に
    パイロットが選ぶべき速度
    向かい風または追い風時の最大滑空比速度の求め方

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  12. 2022/06/18 12
    横風を考慮したポーラーカーブ
    偏流修正角∠WCA
    風速Vwind



    TH
    、対



    Vtas



    TC



    度GS
    コースに対する風向
    ∠wind
    -5
    -4
    -3
    -2
    -1
    0
    0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260
    対地速度[km/h]
    昇降率[m/s]
    ポーラーカーブ(無風)
    ポーラーカーブ(風あり)
    失速(無風)
    失速(風あり)
    最大揚抗比(無風)
    最大揚抗比(風あり)
    最大滑空比
    図7 コースに対する横風30kt時のポーラーカーブ(TWINⅡ、最大重量、海面高度)
    風力三角形
    偏流修正角の取り方

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  13. 2022/06/18 13
    正対風が40ktの場合の最適速度
    約風速の半分である20ktを無風時の最
    適速度(最大揚抗比となる速度)に足すと、
    向かい風時の最適速度になります。それよ
    りも風速が弱い場合は足すべき風速の割
    合が少なくなる。
    背風が40ktの場合の最適速度
    背風の場合は、風が強くなると最適速
    度は最小沈下率となる速度に近付く。
    ポーラーカーブからわかること

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  14. 2022/06/18 14
    チャート(TWINⅡ、530kg、高度2,000ft)
    全方向の風に対する最大滑空比及び最適速度チャート
    チャートの左側には、1㎞あたりの
    最小失高を実線で、その往復分を
    点線で表示。
    無風時の往復による失高は、片道
    分の失高の2倍となる。
    風がある場合は、風が強いほど往
    復の失高は大きくなり、風が40kt
    の場合は片道分の失高の2倍では
    なく、3倍から4倍となる。
    注意:
    このチャートが作成された場合、シー
    ト名を変更して保存すること。
    そのまま保存すると、システムが動
    かなくなる。

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  15. 15
    ツール3 :風の中での航跡
    2022/06/18
    第3旋回及び第4旋回においてどの程度風に流され
    るのかの確認し、旋回開始のタイミングを知る。

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  16. 2022/06/18 16
    旋回開始からベースレグまでの距離
    (無風時のベースレグまでの距離)+(風速)×(無風時の旋回時間)より長くなる

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  17. 17
    ツール4 :旋回時の沈下率
    2022/06/18
    地上目標を取って正円を描く場合のバンク角
    とWCAを確認する。

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  18. 2022/06/18 18
    地上目標旋回の計算結果からわかること
    バンク角45度以内で行う必要がるため、高度1000ftにおける速度毎
    の旋回半径と最大バンク角が45度となる風速を表1に示す。

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  19. 2022/06/18 19
    地上目標旋回の計算結果からわかること
    ■条件
    風上側のクロスウィンドエントリー
    高度1000ft(標準大気)
    風速 25kt
    指示対気速度VIAS
    100km/h
    ロールイン時のロールレート 5 deg/s
    ロールアウト時のロールレート 2 deg/s

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  20. 2022/06/18 20
    地上目標旋回の計算結果からわかること

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  21. 2022/06/18 21
    地上目標旋回の計算結果からわかること
    基準のバンク角は25度。クロスウィンドで入るとWCAがわかるので、
    最大最小バンク角(φ)がわかる。風速毎のWCA0.8倍を25度にプラス
    マイナスするとその風速の最大最小バンク角(φ)がわかる。

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  22. 22
    ツール5 :おまけワイヤーフレーム描画
    2022/06/18
    学習資料作成時、上記のようなグライダーの描画をしたい時に

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  23. 2.空間識失調とサブG感覚
    2022/06/18 23

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  24. 人間の空間識
    1. 視覚
    3. 体性感覚
    (筋肉、皮膚、関
    節より)
    2. 内耳の感覚
    脳内で情報の統合処理 空間中の位置把握 身体各部へ指令
    http://code7700.com/spatial_disorientation.html リンク切れ
    2022/06/18 24
    3次元空間の中でどのように自分の姿勢や方向を知るのか?
    地上
    重力の方向は、体の各部分によって感じること
    ができ、地球がどの方向にあるかがわかる。
    空中
    遠心力と重力の合力がGとなり、体の感覚が姿
    勢指示器として役立たなくなる。

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  25. 内耳の働き
    FAA Pilot Handbook of Aeronautical Knowledge
    ①三半規管
    回転角加速度検出 ロール・ピッチ・ヨーの動き
    長時間一様な動きのあとのゆっくりした動きを感知することができない。
    ②耳石器
    直線加速度検出 上下・前後・左右の動き
    重力と運動による加速度を区別することができない。
    空間識失調
    正常な感覚機能を有したパイロットの空間識が混乱した状態。
    加速度による錯覚:地球に対する航空機の動きを正しく認知していない場合。
    視覚による錯覚、体性感覚による錯覚、平衡感覚による錯覚などがある。
    バーティゴ、飛行錯覚とも呼ばれる。
    2022/06/18 25
    https://www.skybrary.aero/index.php/Main_Page#operational-issues
    ①三半規管
    ②耳石器

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  26. 空間識失調の事故例
    1983年 妻沼滑空場
    機体:萩原式H-23C
    前席:ファースト・ソロの練習生
    機体損傷:大破
    パイロット:死亡
    2022/06/18 26
    事故の概要
    事故当日は雲が低く、今にも雨が
    降りそうであった。
    複座によるソロチェック後、パイ
    ロットはファーストソロでウィン
    チ曳航により発航したが、地上約
    250mで雲に入った。
    その後、機体が見えたときには垂直
    急降下姿勢になっており、そのまま
    地面に激突した。
    約250m
    雲に入る
    運輸安全委員会航空事故報告書検索より作成

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  27. 直線加速度による空間識失調
    資料提供 嶋田 和人氏
    2022/06/18 27
    ・サブG感覚(空間識失調の一種)→1G以下からゼロG以上の重力状態とする。
    ・体が浮く、自由落下、失速したような感じ。→エレベーターを押し続けてしまう。
    ・正確には「Reduced G」と表現すべきである(3G→2Gの時も同様な感覚となる)。

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  28. Reduced Gにより空間識失調に陥りやすい状況
    Derek Piggott著 「Sub-Gracity Sensation and Gliding Accident」より出典
    ①乱気流やウィンドシアに遭遇し、機体が沈下して
    いる状態
    ②失速からの回復時に過剰な機首下げをした状態
    ③滑空中に機首下げをした状態
    2022/06/18 28
    ④ウィンチ索切れからの回復時
    ⑤スティックを押しすぎた時

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  29. 空間識失調防止の方法
    1. 視覚情報の確保
    視程が悪い、視野が狭い時に機械的にエレベーターを押す操作をしない
    地平線との位置関係や計器の読みを確認しつつ丁寧な操作をする。
    体の感覚だけで操作を行わない(根拠のある操作を行う)
    2. サブG環境への適応
    複座によるトレーニングを行う。
    サブG状態と失速状態の違いを認識し、正しい回復操作を理解する。
    失速、ウィンチ索切れからの回復方法を正しく理解する。
    2022/06/18 29

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  30. 3. 空中衝突
    2022/06/18 30

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  31. 空中衝突
    http://jeremy.zawodny.com/blog/archives/007288.html
    Mid-Air Collision of Glider and Jet near Reno: ASG-29 vs. Hawker XP800
    Mid-Air Collision of Glider and Jet near Reno: ASG-29 vs. Hawker XP800
    2022/06/18 31
    http://www.express.co.uk/news/ 掲載期限切れ
    競技会中、グライダー同志の衝突

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  32. 空中衝突の特徴
    https://www.tc.gc.ca/
    最近の米国における研究結果、下記の状況で空中衝突が発生している。
    ・事故の37%で操縦教員が同乗。
    ・多くは、ジョイフライト。
    ・VFR気象条件の週末の日中
    ・管制塔のない空港、もしくはその近辺、高度は 1,000ft以下。
    ・パイロットの経験レベルは関係なく、初単独飛行のパイロットから飛行時間
    2万時間のパイロットまで含まれる。
    ・日中の視界が5km以上の状況で発生している。
    JAPA インストラクター ハンドブック
    2022/06/18 32

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  33. 人間の視野
    BGA Instructor Manual
    高解像度3D視野は3度しかない。
    低解像度 1D視野
    低解像度 1D視野
    右眼の視野
    左眼の視野
    水平視野は約200度
    2022/06/18 33

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  34. 人間の視野と死角
    BGA Instructor Manual
    前方視界
    3D視野限界
    周辺視野限界
    垂直視野
    後方と真下は見えない
    2022/06/18 34

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  35. 人間の視機能の問題点
    FAA Pilot Handbook of Aeronautical Knowledge
    https://www.nidek.co.jp/eyestory/eye_9.html
    盲点(Blind Spot)
    誰にも眼には見えない点がある。
    http://www.skybrary.aero/
    Empty Field Myopia(空間仮性近視)
    コントラストがない空間を見ていると、焦点が自動的に手前に合ってしまうため、
    他機を見つけにくくなる状態。
    2022/06/18 35

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  36. 機体設計上の死角
    http://www.signalcharlie.net/ リンク切れ
    左右、上下のクリアを確認することが重要!!
    高翼、低翼などの航空機の設計上の違いから、パイロットの死角も機体に
    よって異なる事を理解する。
    高翼機と低翼機のパイロットの死角
    2022/06/18 36
    https://www.premierflightct.com/newsletters/TrainingArticles/AvoidMidair.html

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  37. 板倉滑空場周辺の
    働く航空機
    2022/06/18 37
    日本グライダークラブ オペレーションマニュアル

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  38. 他機の見え方
    http://www.meetup.com/ja-JP/Freeflight-Aviation-The-Neighborhood/events/220950124/?eventId=220950124
    上方の機体
    青空ならば比較的見やすい。雲が
    多いとバックの雲と区別しにくい。
    同高度の機体
    地平線上に見える。水平
    飛行している機体は細く
    て見にくい。
    下方の機体
    地平線より下に見える。
    市街地や雪山上空では
    区別しにくい。
    西日
    向かうと見えにくい。
    2022/06/18 38

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  39. 39
    上空での見え方
    https://www.dg-flugzeugbau.de/bibliothek/sehen-will-gelernt-sein
    シルエットで見えている場合、シルエットから推測
    ・遠ざかっているのか? ・近づいているのか?
    2022/06/18 39

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  40. 40
    衝突コース (Collision Course)
    http://www.langleyflyingschool.com/
    相手機の見え方
    他機の位置がお互いに止まって見えた
    ら、「衝突コース」にあるといえる。
    BGA Manual
    衝突コース(Hudson Midair Collision)
    2022/06/18 40

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  41. 過去の事故例(三重県桑名市衝突事故 2001年)
    状況
    回転翼アエロスパシアル式AS332L1型は、訓練飛行のため、名古屋空港を離陸し、民間訓練/試
    験空域の中部近畿訓練空域1-1を飛行中であった。セスナ式172P型も、訓練飛行のため、約10分
    遅れて名古屋空港を離陸し、同じ訓練空域を飛行中であったが、三重県桑名市上空において両機
    は衝突し、両機とも墜落し、搭乗者計6名全員が死亡した。
    http://www.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/rep-acci/2002-8-JA4201-JA6787.pdf
    原因
    両機が同一訓練空域での訓練飛行を実施中、両機の教官及
    び訓練生の見張りが不十分であったため、両機が接近し、衝
    突、墜落したものと推定される。見張りが不十分であったため
    相互に視認できなかったことについては、次に掲げる要因が
    関与したものと推定される。
    1.衝突約1分前から両機は衝突コースに入っており、接近する
    相手機を発見しにくくなっていたこと。
    2.回転翼においては、操縦練習の監督者である教官が訓練生
    の操縦の監視に集中し、外部の見張りが疎かになったこと。ま
    た、回転翼の訓練生も、訓練に集中していたこと。
    3.セスナの教官及び訓練生にとって、外部の見張りには高翼
    機特有の主翼や窓枠がつくる死角、教官の場合は、それに加
    えて訓練生によって生じた死角が影響したと考えられること、
    また、教官及び訓練生とも、特有の死角に対処した適切な見
    張りの方法をとっていなかった可能性があること。
    2022/06/18 41

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  42. 過去の事故例(三重県桑名市衝突事故 1997年)
    対策:法制度の整備
    全国の民間訓練試験空域の管理運用体制を変更した。
    (1) 全国各地にある民間訓練試験空域47を細分化し119カ所とした。
    (2) 全国の民間訓練試験空域使用予定、使用状況等の情報を航空交通流管理センターを中心とし
    て管理するとともに関係機関間でデータ交換し情報の共有化を図る。
    (3) 民間訓練試験空域使用に係る計画書は、航空交通流管理センター又はいずれの空港事務所で
    も受け付けることが可能。なお、運航者に対してはすべての民間訓練試験空域について、使用予定
    等の情報を提供することが可能となる。
    http://www.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/rep-acci/2002-8-JA4201-JA6787.pdf
    2022/06/18 42

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  43. サーマリング中の衝突パターン
    BGA Instructor Manual
    2022/06/18 43

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  44. Collision Course
    BGA Instructor Manual
    2022/06/18 44

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  45. サーマリング中の衝突事例
    空中衝突を避けるために 相島敏
    2022/06/18 45

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  46. 46
    同一サーマルでのセパレーション
    BGA Instructor Manual
    2022/06/18

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  47. 4. 低酸素症(ハイポキシア)
    2022/06/18 47

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  48. ハイポキシア(低酸素症)
    • 高度が上がると気圧が下がることによる酸素量が不足して生じる障害を
    低酸素症という。
    • 吸う酸素が足りず結果脳に酸素が送り届けられないという現象
    2022/06/18 48
    https://www.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/rep-acci/AA2017-5-2-JA21BB.pdf

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  49. 酸素供給装置の装備
    運用様式限界等判別表(飛行規程別添) 運用様式区分に規定
    3000~4000mまでの高度で飛行:
    当該飛行に係わる飛行時間から30分を減じた飛行時間中搭乗者が必
    要とする量。
    4000mを超える高度で飛行:
    当該飛行に係わる飛行時間中搭乗者が必要とする量。
    2022/06/18 49

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  50. 酸素システム
    1.パルス・ディマンド(EDS)
    高度に応じて自動的にパルスにより酸素のフローが決定される。
    ~25,000ft
    2.コンスタント・フロー
    酸素フローは一定で常に流れる。飛行高度に合わせ手動で調整する必
    要がある。~25,000ft
    3.ダイリューター・ディマンド
    高度により呼吸時は自動的に酸素と外気の比率が 調整される。
    酸素の割合が増して行き32,000ftでは100%となる。~35,000ft
    4.プレッシャー・ディマンド
    高々度での低い外気圧のため十分に肺に酸素を送るため+の圧力を
    かける。~45,000ft
    2022/06/18 50

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  51. EDSとコンスタントフロー酸素システム
    https://www.mhoxygen.com/
    Pulse-Demand™ Electronic
    Delivery System (EDS)
    Portable Constant-Flow
    Systems
    2022/06/18 51
    カンニュラー
    18000ftまで
    マスクタイプ
    18000ft~30000ft
    Diluter Demand Pressure Demand

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  52. 低酸素症の事故例
    2016年 福島エリア山中
    機体:グラスフリューゲル式304CZ-17
    機長:自家用操縦士
    機体損傷:大破パイロット:死亡
    2022/06/18 52
    <事故の概要>
    機長が発航前に酸素ボトル開閉弁
    を開けることを失念したまま、
    ウェーブにより25000ftに上昇。
    低酸素症状態で意識が混濁する中
    で急旋回に入り失速状態となった
    後、乱気流帯を急降下したため、
    機体の終局荷重を超過し、空中分
    解した。
    運輸安全委員会航空事故報告書検索より作成
    https://www.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/rep-acci/AA2017-5-2-JA21BB.pdf

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  53. 酸素に関する注意
    • フライト前に酸素ボトルの栓が開であることを確認する。
    • 酸素ボトルの圧力を確認する。
    (特に長時間、高高度を飛行する場合、人によって、容量が足りなくなる場合があ
    る。)
    • EDSのバッテリーテストの実施と予備バッテリーの携帯
    • EDSは定期的にオーバーホールする。
    • 酸素系統の漏れがないかをチェック
    • バックアップ・システム(コンスタントフロー、エマージェンシーボトル等)の準備
    • 喫煙者は血液中の残留一酸化炭素のため、地上で既に5,000ftの高さにいる。
    • 貧血症の人、風邪をひいている人、飲酒や二日酔いの人、疲労、抗ヒスタミン剤精神
    安定剤鎮痛剤などを服用した人、炭酸飲料を飲んだ人は血液の酸素の運搬能力
    が低下しているため、人より低い高度から低酸素症の症状が現れ、5,000 ftでも
    発病する人もいる。
    • 低酸素症を防ぐには酸素吸入装置を早めに用いればよい。
    2022/06/18 53

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  54. 5. 国土交通省 滑空機安全啓発動画
    2022/06/18 54

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  55. 滑空機の安全対策
    2022/06/18 55
    https://youtu.be/JCk-FatW_mI
    国土交通省 滑空機安全動画

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  56. パイロットの安全対策
    2022/06/18 56
    国土交通省 滑空機安全動画
    https://youtu.be/JCk-FatW_mI

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  57. 2022/06/18 57
    国土交通省 滑空機安全動画
    組織的なパイロットの安全対策
    https://youtu.be/JCk-FatW_mI

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  58. 2022/06/18 58
    国土交通省 滑空機安全動画
    組織的なパイロットの安全対策
    https://youtu.be/JCk-FatW_mI

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  59. 2022/06/18 59
    国土交通省 滑空機安全動画
    組織的なパイロットの安全対策
    https://youtu.be/JCk-FatW_mI

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  60. 組織的な安全カルチャーの構築
    近年における交通事故死者数減少理由
    警察庁は「交通安全教育の普及や車の安全性の向上、信号機や道路の
    改良などが進んだ結果」と分析している。
    パイロットとしての人間の能力の限界を限られた時間で高めることには限
    界がある。→安全機器の導入の検討
    パイロットだけでなく、ピストや曳航担当者の状況認識力と判断力向上は、
    安全に直結する。→CRM(Crew Resource Management)
    組織的に教育や安全体制などの安全カルチャーを構築する。
    運営・運航に関わる方全員の力を合わせてグライダーの事故防止に務め
    ましょう!
    2022/06/18 60

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  61. Safe Flying!
    ご清聴ありがとうございました。

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