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Scrum Fest Morioka 2026

Scrum Fest Morioka 2026

Regional Scrum Gathering Tokyoは15年間継続運営され、毎年18秒で完売し、ボランティアスタッフは5年以上定着し、Scrum Festとして全国に広がりました。
この講演では、一つのカンファレンスの内側で何が起きているか(エンジン)と、それをどう広げてきたか(スケーリング)の二部構成で、15年間の実践を振り返ります。

■ エンジン ― 一つのカンファレンスの内側
野中郁次郎先生の知的コンバット、カーネマンの認知的不協和とSystem 2、エドモンドソンの心理的安全性、スクラムの経験主義とカイゼン。「認知的不協和が生じた時にSystem 2が起動される。その刺激が自分の認識をアップデートする。検査と適応はそこで起こる」——この構造を、カンファレンスの設計にどう埋め込んでいるかを語ります。

■ スケーリング ― どう広げるか
アセモグルの包摂的制度と収奪的制度、狭い回廊、赤の女王効果。Bob Suttonのスケーリングの7原則、30%ルール、カルチャーバブル。マクロの制度論とミクロのカンファレンス運営が同じ原理で動いていることに光を当てます。

■ キーワード
System 1・System 2 / 知的コンバット / 心理的安全性 / 経験主義とカイゼン / 正統的周辺参加 / 包摂的制度 vs 収奪的制度 / 狭い回廊 / 赤の女王効果 / カルチャーバブル / 30%ルール / 着眼大局、着手小局

■ 登場する人と理論
野中郁次郎 / ダニエル・カーネマン / ダロン・アセモグル / Amy Edmondson / Bob Sutton / Dave Snowden / Jim Coplien / Bjarte Bogsnes / Carol Dweck / 関将俊

■ メッセージ
メンバー一人ひとりのトライと失敗が、世界の全体像を徐々にアップデートしていく。その美しい連環のイメージの中に、私たちのギャザリング、私たちのフェスがある。
「やってみたくなる」知的刺激って、最高の栄養素だと思うんです。
敵なんていないんです。

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Yasunobu Kawaguchi PRO

February 20, 2026
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Transcript

  1. http://innovationsprint.com/ Innovation Sprint 2011 - 2011年1月14日 楽天タワー、365名 - 野中郁次郎先生と ジェフ・サザーランド

    博士の歴史的な出会い - 16年間会いたかった 二人を引き合わせた日 - ここから全てが始まった
  2. https://2026.scrumgatheringtokyo.org/ 15年間の数字 - 18秒完売 (2025年9月販売分) - 15年間継続 - ボランティア定着5年以上 -

    全国にScrum Festとして発展 (開催のない月の方が少ない) …でも正直なところ、 ほとんどラッキーの積み重ね
  3. https://www.infoq.com/presentations/The-Roots-of-Scrum/ Graphic by Conchango, Ken Schwaber, and Microsoft UK スクラムスプリントサイクル

    プロダクトバックログ 顧客が求める機能の 優先順位付きリスト スプリント バックログ スプリント内で完 成させる機能 機能をより小さな タスクに分解する 新しい機能 スプリントの 終わりにデモする 毎日15分のミーティ ングを行う。 スクラムマスターは 3つの質問をする 1)昨日なにを達成し ましたか? 2)ゴールを満たすた めに障害になってい るのは? 3)明日までになにを た達成しますか? スプリント: 1か月 作業日: 1日
  4. 枠組み : 内発的動機付けを中心に置く - 外発的動機付け (数字で測れる成果、報酬、評価) を設計から排除 - 内発的動機で動く人 だけが残る構造を作る

    - 好きな人は来ればいい、 そうでもない人は わざわざ来ないほうがハッピー - 全ては自分で選択した結果
  5. 枠組み : 心理的安全性とGrowth Mindset 心理的安全性 (Edmondson / Google Project Aristotle)

    「リスクを取っても安全、 発言しても大丈夫」 Growth Mindset(Dweck) 比較優位で語らない(矢印を自分に向ける) = Fixed Mindset を誘発しない 「来年に向けてのチャレンジを 思い描けるか」
  6. YouTube → ブログ → 地元Scrum Fest → RSGT参加 → スタッフ

    正統的周辺参加 : だんだん入っていく
  7. ✓ 引継ぎ負荷を下げる ✓ 会場など運営にかかわる カウンターパートにとっ ても話が通じる ✓ トラブル時の安定性 ✓ 疲れない運営

    文化祭運営を避ける : スタッフの継続性 文化祭運営 : 高校などで一学年ずつ代替わりする ような運営のことを指しています。
  8. 包摂的制度 Inclusive 政治制度 ✓ 権力の分散と多元主義 ✓ 法の支配(誰も法より上に立てない) ✓ 広範な政治参加の保障 ✓

    権力に対する制約とチェック機能 経済制度 ✓ 財産権の保護(誰でも所有できる) ✓ 契約の自由と履行の保証 ✓ 公平な競争環境(参入障壁が低い) ✓ 教育・インフラへの公共投資
  9. 収奪的制度 Extractive 政治制度 ✓ 権力の集中(少数者による独占) ✓ 法の恣意的な運用 ✓ 政治参加の制限・排除 ✓

    チェック機能の欠如または形骸化 経済制度 ✓ 財産権の不安定さ(いつでも奪われうる) ✓ 特権階級(エリート)への独占・特許の付与 ✓ 参入障壁による競争の制限 ✓ 教育・機会へのアクセス制限
  10. 包摂的 vs 収奪的 包摂的制度 収奪的制度 権力 分散・多元的 集中・独占 法 法の支配

    恣意的運用 参加 広範 制限・排除 財産権 保護される 不安定 競争 公平・開放的 独占・参入障壁 情報 透明・共有 独占・非公開 創造的破壊 許容 抑制
  11. 決定的岐路 Critical Junctures 出来事 時期 影響 ペスト(黒死病) 14世紀 西欧の農奴制崩壊 大西洋貿易の開始

    16-17世紀 商人階級の台頭 名誉革命 1688年 議会主権の確立 明治維新 1868年 日本の近代化
  12. 決定的岐路 Critical Junctures 出来事 時期 影響 ペスト(黒死病) 14世紀 西欧の農奴制崩壊 大西洋貿易の開始

    16-17世紀 商人階級の台頭 名誉革命 1688年 議会主権の確立 明治維新 1868年 日本の近代化
  13. 新しい概念 ✓ 狭い回廊(The Narrow Corridor) ✓ リヴァイアサン(国家の力) ✓ 赤の女王効果(Red Queen

    Effect) 「自由は設計できない。 闘い取り、守り続けるものである。」 自由の命運(2019)
  14. 1. ホットな原因とクールな解決策 2. 口先だけでなく、マインドセット 3. 迷ったら削れ。認知負荷を下げる 4. 些細なことが大きな力になる: さりげない合図がマインドを動かす 5.

    人をつなぎ、卓越性を連鎖させる 6. マインドセットは操舵輪、 インセンティブはジュース 7. 破壊的な信念や行動を許さない スケーリングの原則
  15. 原則2 口先だけでなく、マインドセット • 強い信念は、行為によって伝 わる • JetBlue の Bonny Simi

    はある 施策についてスタッフに聞いた 「これがうまく行くと思っている 人は何人いる?」だれも手を上げ なかったので、とりやめた。
  16. Dunbar’s Number ダンバー数 • 一人が対応できる人数の 認知的限界は100-250人 (150人くらい) https://ja.wikipedia.org/wiki/ ダンバー数 “ダンバー数を超えると、大抵の場合

    で、グループの団結と安定を維持する ためには、より拘束性のある規則や法 規や強制的なノルマが必要になると考 えられている。”(Wikipedia)
  17. 原則5 人をつなぎ、卓越性を連鎖させる • 働いている人が、 次に他の人のメンターになる • よいフランチャイズ店と 悪い店舗をペアにする • 米Zynga

    「まず自分の代わりに なる人を育てる」 • まず多様性の高いチームを作る。 似た者同士になる力(power of similarity)を使って能力を高める
  18. 原則7 破壊的な行動を避ける • 悪い行動の印象は、 よい行動の印象の5倍残る • Cost Plus Market 社のCEOの

    店舗観察のポイント 1. 快くゲストを迎えてくれるか 2. トイレは清潔か
  19. Beyond Budgeting — 資源配分を収奪から包摂へ 従来の予算管理の問題 ✓ 年次予算 = 資源の中央統制 ✓

    予算獲得競争 = 社内政治 ✓ 予算消化 = 無駄な支出 ✓ 予算未達 = 罰則 → 収奪的制度の特徴そのもの
  20. Cynefin — 文脈に応じた意思決定の分散 領域 特徴 意思決定 Clear(明確) ベストプラクティス 標準化OK Complicated

    (煩雑) 専門家の分析が必要 専門家に委ねる Complex (複雑) 因果関係が事後 にしかわからない 実験・探索 Chaotic (混沌) 因果関係なし まず行動