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製造業の課題解決に向けた機械学習の活用と、製造業特化LLM開発への挑戦

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July 29, 2025

 製造業の課題解決に向けた機械学習の活用と、製造業特化LLM開発への挑戦

Sansan & CADDiが語るSaaS R&DとML最前線 https://sansan.connpass.com/event/361003/ の登壇資料です。

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July 29, 2025
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  1. © CADDi Inc. © CADDi Inc. Sansan & CADDiが語るSaaS R&DとML最前線

    製造業の課題解決に向けた機械学習の 活用と、製造業特化 LLM開発への挑戦 キャディ株式会社 Analysis Group 由川 拳都 1
  2. © CADDi Inc. • 学生時代 ◦ フェイクニュースの拡散過程を数理モデルでシミュレーション する研究をやっていた ◦ 機械学習はバイトと趣味でやっていた程度

    • 社会人になってから ◦ 2021/04〜2024/05:LINEヤフー株式会社で機械学習エンジニア ◦ 2024/06〜:キャディ株式会社 機械学習エンジニア ▪ 図面内の記号を読み取る機械学習モデルの開発・デプロイ ▪ 類似図面検索機能の改善に向けたPoC ▪ 製造業特化LLMの開発 自己紹介 2 名前:由川 拳都 (ヨシカワ ケント)
  3. © CADDi Inc. • お話すること ◦ 機械学習 /LLMに関する R&Dについて、 CADDiというtoB

    SaaSを提供している会社での実体験を共有 ▪ Development:製造業という実産業に対して、どのように機械学習を使っているのか • 意図:皆さんが学んでいる画像処理技術がどのように社会実装されているか知ってもらう ▪ Research:製造業特化 LLMに関する取り組み • 意図:LLMという最新技術を社会実装することを意識した、研究事例を知ってもらう ◦ 研究で行う機械学習 /LLM開発との違いをリアルに感じてもらいたい • お話しないこと・できないこと ◦ 機械学習モデル、製造業特化 LLMのアルゴリズムの詳細 ◦ 顧客図面に関する情報 お話すること・しないこと 3
  4. © CADDi Inc. 研究と実務の機械学習の違い (一般論) 5 研究 実務 要求 ベンチマークデータセットで最高精度を

    出すモデルを作ること 一概に決まらない 様々な利害関係者 (プロダクトマネージャー、プラットフォーム エンジニア、機械学習エンジニアなど )が持つ要求から適切 な落とし所をつける データ 静的 動的 (特徴量、ラベル分布の傾向が時間に応じ て変わりうる ) 公正さ 重視されない (研究対象にしない限り) 考慮する必要がある (優先度は要求次第) 説明性 重視されない (研究対象にしない限り) 考慮する必要がある (優先度は要求次第) • また、提供するサービスによって以下の傾向がある (事例でわかるMLOps 機械学習の成果をスケールさせる処方箋 より) ◦ toC向けサービス:データの鮮度 (e.g., 毎日、推論結果の更新が必要)と推論速度 (e.g., 遅くても0.何秒)が求められる傾向 ◦ toB向けサービス:データの鮮度と推論速度は toCよりは求められないが、高精度が求められる傾向 表は機械学習システムデザイン をもとに作成
  5. © CADDi Inc. 研究と実務の機械学習の違い (一般論) 6 研究 実務 要求 ベンチマークデータセットで最高精度を

    出すモデルを作ること 一概に決まらない 様々な利害関係者 (プロダクトマネージャー、プラットフォーム エンジニア、機械学習エンジニアなど )が持つ要求から適切 な落とし所をつける データ 静的 動的 (特徴量、ラベル分布の傾向が時間に応じ て変わりうる ) 公正さ 重視されない (研究対象にしない限り) 考慮する必要がある (優先度は要求次第) 説明性 重視されない (研究対象にしない限り) 考慮する必要がある (優先度は要求次第) • また、提供するサービスによって以下の傾向がある (事例でわかるMLOps 機械学習の成果をスケールさせる処方箋 より) ◦ toC向けサービス:データの鮮度 (e.g., 毎日、推論結果の更新が必要)と推論速度 (e.g., 遅くても0.何秒)が求められる傾向 ◦ toB向けサービス:データの鮮度と推論速度は toCよりは求められないが、高精度が求められる傾向 表は機械学習システムデザイン をもとに作成 toB向けサービスの 例として CADDiの事 例を紹介
  6. © CADDi Inc. CADDiの機械学習モデル開発サイクル:顧客ニーズ理解 10 • 営業やプロダクトマネージャー (プロダクトの戦略やロードマップ立案などをする人 )経由で収集してい る顧客からの要望集がある。要望集をもとに以下観点で優先順位をつけ

    、課題を決定 (この ような決め方をRICEという) ◦ Reach:リーチの広さ (e.g., 使ってもらえる顧客数 ) ◦ Impact:事業へのインパクトの大きさ (e.g., 使ってもらえたときの売上 ) ◦ Confidence:インパクトが実現する確信度 (e.g.,技術的に可能か、需要があるか ) ◦ Effort:工数の大きさ (e.g., 何人月かかるか) ◦ (イメージ) Reach, Impact, Confidence:高いほど優先度が上がる。 Effort:高いほど優先度が下がる。 • 顧客が直接は求めていないけどニーズがあるだろうという機能もある。その場合は 自分たちでデモを作りニーズがありそうか、顧客インタビューする
  7. © CADDi Inc. CADDiの機械学習モデル開発サイクル:顧客ニーズ理解 (例) 11 Reach (使ってもらえる顧 客数) Impact

    (売上) Confidence (技術的にできるか 需要があるか ) Effort (人月) RICEスコア 機能A ・幅広い顧客に使っても らえる ・技術的に難しい 10 9 8 10 大きいほど 開発に時間がかかる 72 機能B ・限られた顧客にしか 使ってもらえない ・技術的には簡単 2 2 8 2 16 機能C ・顧客に程々で使って もらえる ・技術的には普通 4 5 6 5 24 取り組む課題の決め方: RICEに基づく優先度決め 採点基準をもとにプロダクトマネージャーが決めるが、エンジニアもレビューする RICEスコアが 最も高いので 機能Aの開発を 進める
  8. © CADDi Inc. CADDiの機械学習モデル開発サイクル:顧客ニーズ理解 (例) 12 • 顧客インタビュー:開発案 として特定の部品と類似する図面を出す機能がある。需要があるか伺う ◦

    デザイナー、プロダクトマネージャーと、検索の仕方や結果の出し方に関するサンプルを作る。どう検索できると使い やすいか、伺う ◦ 検索結果のイメージを見せて、どんな部品に対してどんな図面が出てくるとよいか伺う。このような結果が出せるなら ば使いたいか、改善してほしいことは何かなどをアンケート • 生の声を聞けるのでエンジニアも顧客インタビューに参加するのはとても有益 (e.g., やはりこの部品に対しては良い結 果を出したい、重要かと思っていた部品がでていなくても業務には困らないなど ) 特定の部品をどのように検索するか指定 検索結果の出し方と、出てきてほしい図面のサンプル
  9. © CADDi Inc. CADDiの機械学習モデル開発サイクル:要件定義 14 • 自分たちで問題を解くべきか決める ◦ e.g., そもそも機械学習を使うかどうか決める。自分たちで開発せず、外部のソフトウェアを使うかどうか決

    める、など • 投資対効果の試算 ◦ 投資:開発にかかる期間 × 人件費、システム運用費など ◦ 効果:新規契約やプランアップに伴い、売上がどれだけ得られるか、など • 何をもって、成功・失敗とするか ◦ e.g., 基準となる計測可能な評価指標を決める、どのタイミングで判断するか • 顧客がやりたいことを実現をするために、必要最小限な機能を決める ◦ e.g., まずは機械学習で予測結果をデータベースに出力できれば OK。 ▪ モデルの自動更新や精度劣化の検出の実装はやりすぎなので後にする 何をやるかよりも、何をやらないかを決めることのほうが重要
  10. © CADDi Inc. CADDiの機械学習モデル開発サイクル:データ収集・アノテーション 16 • 機械学習モデルの学習 /評価データとして図面をアノテーションする必要がある。しかし、以下の理由で外部 に任せることは難しい ◦

    製造業のドメイン知識が必要 ◦ 顧客の図面を扱うことになるので、セキュリティ上、公開できない。 • CADDiではアノテーション専門チーム・プロダクトマネージャー・エンジニアで連携し、アノテーション ・製造業のドメイン知識を持つ ・ドメイン知識的を考慮した アノテーション設計 ・学習・評価しやすいデータを作るためにエ ンジニアもアノテーション設計に 関わる ・アノテーターのマネジメント ・アノテーション結果のレビュー
  11. © CADDi Inc. CADDiの機械学習モデル開発サイクル:アノテーション (例) 17 エンジニア・ プロダクトマネージャーで作成 アノテーターが実施 オペレーションマネージャーがレ

    ビュー・質問対応 判断が難しい場合は プロダクトマネージャーも対応 アノテーション 定義書作成 アノテーション アノテーション結果の レビューやアノテーター からの質問対応
  12. © CADDi Inc. CADDiの機械学習モデル開発サイクル:アノテーション (例) 20 アノテーション 定義書作成 アノテーション アノテーション結果の

    レビューやアノテーター からの質問対応 オペレーションマネージャーがレビューしている例 アノテーターが質問をしている例。 Slackのスレッドやアノ テーションツールのコメント機能で回答する
  13. © CADDi Inc. CADDiの機械学習モデル開発サイクル:モデルの学習 22 • 顧客がやりたいこと:図面に書かれている情報から、製品を作るのにかかる費用を見積もりたい • 機械学習モデルの役割:見積もりに必要な情報を抽出することで、見積もり効率化 ◦

    そのために、図面の記号や寸法抽出と類似する図面の検索機能を提供 部品の形状 (丸、直角など )に 関する誤差の許容度 誤差が小さいほど費用が高くなる ので程度を見積もりたい 幾何公差 ⼨法 mm と inch が併記されていることも ある。単位含めて判断が必要。 類似図⾯検索 見た目以外にも 類似してほしい観点がある 表⾯粗さ 表面の粗さの度合い 粗さが低い(=滑らか)ほど 費用が高くなるので程度を知りたい
  14. © CADDi Inc. CADDiの機械学習モデル開発サイクル:モデルの学習 23 • 図面から読み取れる情報に対して以下のような機械学習技術を使っている 部品の形状 (丸、直角など )に

    関する誤差の許容度 誤差が小さいほど費用が高くなる ので程度を見積もりたい 表⾯粗さ 表面の粗さの度合い 粗さが低い(=滑らか)ほど 費用が高くなるので程度を知りたい 幾何公差 ⼨法 mm と inch が併記されていること もある。単位含めて判断が必要。 類似図⾯検索 見た目以外にも 類似してほしい観点がある ・YOLOXで記号の検出と分類 ・OCRで粗さの数値を読み取り ・YOLOXで記号の検出と分 類 ・OCRで許容度を読み取り ・部品の形状や製品のカテゴリなどを学習 ・学習には EfficientNetなどを利用 中間表現となるベクトルで類似度計算 ・mmとinch両方学習したうえで VQAで単位と寸法の値を回答
  15. © CADDi Inc. CADDiの機械学習モデル開発サイクル:モデルの評価 25 • 何を評価指標するか + 重視したい指標を決める ◦

    指標でわかること、得意・不得意を知ったうえで、複数の指標を採用 ◦ 誤った意思決定につながることもあるので、ビジネス指標 (≒売上)と相関のある評価指標を決め ることが実務では大事。しかし、相関する指標を決めることはとても難しい。 • 評価した結果、期待する精度を満たさなければ、以下のように対応 ◦ アノテーションでデータを増やす ◦ モデルの前処理などロジックを改善 ◦ 解決策が適切でないと判断し、開発をストップ (事業背景など他の要因も考慮したうえで) ◦ 一発では満たさないことが多い。可能な限り繰り返すので、一定の根気が必要
  16. © CADDi Inc. CADDiの機械学習モデル開発サイクル:モデルの評価(例) 26 評価の進め方をOCRで数値を読み取るタスクで説明(≒数値が正解と一致するかどうかの二値分類) • 採用指標:数値を正しく読み取れること + 取りこぼしを見つけるため、

    Precision, Recallを採用 • 重視したい指標:多少数値を取りこぼしても、費用見積もりに影響が少ない。正確な見積もりには、数値を正 しく読み取れることのほうが重要なので Precisionを重視 正解:0.015 予測:0.015 正解:0.020 予測:0.030 Precision:0.6 Recall:0.5 基準を満たしていないの でNG。 ・データを増やす ・モデルを変える など行う 評価図面 評価 スクリプト デプロイ基準 ・Precision:0.8 ・Recall:0.7
  17. © CADDi Inc. • 以下のように、学習済みモデルを使って推論コードを書く ◦ 注:せっかくモデル学習・評価でうまく行ったのに、推論時には思わぬ結果が出るという事態を防ぐために、 学習・評価時となるべく処理を揃えておく (思ったよりズレることがある +

    意外と気づかない ) ◦ 対策として、 Regression Test(推論結果が正解とズレてないか確認 )を事前に実施 • 推論コードをDockerイメージ化 CADDiの機械学習モデル開発サイクル:デプロイ 28 コードをビルド するツール Dockerイメージ 擬似コード
  18. © CADDi Inc. • Dockerイメージ化したコードを、 Google Cloudを用いて図のような推論システムとして稼働 ◦ 10種類ほどのモデルに対して適用 ◦

    MLOpsエンジニアと連携して一連のシステムを作っている CADDiの機械学習モデル開発サイクル:プロダクトへの装着 30
  19. © CADDi Inc. • 個別タスクに対して機械学習モデルを作る場合、 Public LLM(e.g., OpenAI, Gemini)と同等の精度出すた めに一定の努力が必要

    ◦ 開発費/推論速度のバランスを考慮したうえで、同等の精度を出すために 10回ほどデータ追加や  ロジッ ク改善を行った • 機械学習ではなく PublicなLLMを使っているだけだと競合優位性がない + Public LLMでも苦手なタス クがある • CADDiには町工場から大手メーカーまで様々な顧客に契約いただいていることで、多様なデータがあ る(図面などの画像、仕様書などの文書、 3DCADなど) • 競合優位性を保つ + CADDiの持つデータで open sourceのLLMをFine-tuningすることで、様々な製 造業の課題を解決できる LLM(+VLM)を作ろう! なぜ、製造業特化LLM(+VLM)を作るのか? 34
  20. © CADDi Inc. • 機械学習 / LLM開発では、モデルを作るだけ、 APIを使うだけではない • 様々な利害関係者と連携して、ビジネス的に価値があるのか判断、データづくり

    システム化、運用を繰り返す。一発ではうまくいかないことが多く、一度作って終わりではない • 機械学習エンジニアは考慮することが多く難しい。けど、面白いと思えるならばとても楽しい職 業 実務における機械学習 / LLM開発は泥臭く難しい 38
  21. © CADDi Inc. We are hiring! 39 機械学習エンジニアの募集要 項 AIエンジニアの募集要項

    カジュアル面談 TechBlo 中途採用向けに書かれていますが 新卒も採用対象です!
  22. © CADDi Inc. • キャディと機械学習の結びつきについて:Information for ML/MLOps Engineer • 紹介した機械学習ライフサイクルの詳細:CADDiの機械学習モデル開発の流れと継続的な改善

    • 機械学習プロジェクトの進め方について:キャディの機械学習プロダクトマネジメント〜要件定義 から学習・評価まで〜 • 顧客インタビューの詳細:良いインタビューとは何かを考えてみた • アノテーションの進め方の詳細:MLの裏側を支えるアノテーション組織運営の実践禄 発表に関する補⾜資料 41