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October 19, 2025
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  1. iRICフォーラム 2025/10/06 ◼ 濱木道大@(株)開発工営社 2 https://www.kai-koei.co.jp/ 濱木 道大 2000年入社 北海道出身、札幌を拠点とする建設コンサルタントに入

    社し、主に道内の国管理河川における河川計画を担当 業務では主にNays2DHやNays2DFloodを使用 前身ソフト(RIC-Nays)の開発当時から、iRICの周辺整備 (境界条件等の入出力修正や事例作成等)のお手伝い。 独自にモデル改良を行い業務に活用。 ほぼ毎日iRICを使用して業務を遂行しています。 はじめに(簡単な自己紹介)
  2. iRICフォーラム 2025/10/06 目次:iRIC-GELATOによる魚の挙動追跡シミュレーション 1.はじめに ・豊平川の概要 ・研究概要 2.魚類調査(バイオテレメトリー調査)in豊平川 ・調査概要 ・調査結果 3.数値解析(iRIC-GELATO)による遡上シミュレーション

    ・計算モデル ・計算条件 ・仮想魚の遊泳プロセス ・計算結果 4.他河川への適用例 5.まとめ 3 https://i-ric.org/solvers/utt/ https://kawatabi-hokkaido.com/ いままで実測と の比較検証が不 足していた…
  3. iRICフォーラム 2025/10/06 床止め Flow 図 床止めにおける魚類の遡上 跳水の発生 魚類の遡上障害 魚道 床止め

    Flow 跳水の発生 1.1 豊平川概要 ➢ 概要 ・毎年約1000尾のサケが遡上し,自然産卵を確認 ・野生サケの産卵を促進する市民活動が行われる サケ産卵環境保全の重要度が高い ・豊平川は河床低下傾向で,河床安定のため7基の床止めを設置 ・落差が魚類の遡上障害となる 魚類移動の連続性確保のため魚道設置 ※北海道開発局 (石狩川流域委員会第18回) 8号床止 6・7号床止 5号床止 4号床止 3号床止 1号床止 ※Guide to the structural design of Grandsills,1998. 魚道 魚類の遡上障害 4 The Toyohira River
  4. iRICフォーラム 2025/10/06 1.2 豊平川における課題および検討の目的 ➢ 検討の目的 ・本研究では,数値解析による魚類の遡上性能評価手法の開発および評価を目的として, 既往の遡上状況調査結果を基に数値解析による遡上経路の再現を試みた ※北海道開発局 (石狩川流域委員会第18回)

    ➢ 課題 ・床止区間では砂州堆積等による魚道の閉塞が発生 遡上阻害が懸念 ・遡上状況調査は,現地モニタリング調査が主体 ※直接的な手法(トラップ調査,定点カメラ,魚カウンター等) ※間接的な手法(生息状況調査,産卵床調査等) ※事前評価手法(手引・マニュアル,模型実験等) ※移動経路追跡(バイオテレメトリー,数値解析) 実河川において魚道設置前に 数値解析等により事前に遡上性能を評価した 事例は少ない 5
  5. iRICフォーラム 2025/10/06 8号床止 Flow サケの遡上経路 調査結果 数値解析 落差工 魚道 1.2

    検討概要 ➢ 概要 ・対象の魚道は8号床止 中央部分に魚道,両側に落差工が設置 ・遡上経路の調査結果は, サケ科魚類の テレメトリー調査結果 (H30 公益社団法人北海道栽培漁業振興公社) を参考とし,サケ科魚類はサケを対象とした ・数値解析には 物質輸送追跡モデルiRIC-GELATOを 活用し,サケ科魚類の遡上経路を再現 6 魚道形式等 形式:石組み台形 型階段式魚道 縦断勾配:1/20 プール間落差:0.2m 隔壁間隔:4m 側壁勾配:1:1.0 魚道幅:10m これを再現したい!
  6. iRICフォーラム 2025/10/06 遡上経路 : Velocity(m/s) 魚道 供試魚No.1の遡上経路 右岸側の流速が速い 魚道中央の流速は約1m/sであり, 魚道の側壁付近を遡上

    図 No.1の遡上経路および流況調査図 ※ H30河川横断工作物に係わる魚類調査(公益社団法人北海道栽培漁業振興公社) 2.2 魚類調査結果(バイオテレメトリー調査) 流速が速い 流速が遅い 8
  7. iRICフォーラム 2025/10/06 1 2 3 45 6 7 8 9

    10 11 12 13 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 21:13 21:14 21:15 21:16 21:17 21:18 21:19 21:20 21:22 21:23 21:24 21:25 21:26 21:27 21:28 21:29 21:31 21:32 21:33 21:34 21:35 21:36 21:37 21:39 21:40 21:41 21:42 21:43 21:44 21:45 21:47 21:48 21:49 21:50 21:51 21:52 21:53 Swiming speed [m/s] Time [hh:mm] Critcal swimmg speed Ucrit =1.31m/s Timing of passage through fishway baffles 図 8 号床止めの魚道におけるEMG 値から変換された供試魚No.1 の遊泳速度 41 分間 項目 値 備考 魚道通過時間(min) 41 隔壁13箇所 平均遊泳速度(m/s) 0.6 EMG値による変換値 最大遊泳速度(m/s) 2.2 EMG値による変換値 平均遊泳継続時間(sec) 66.7 臨界遊泳速度以下 平均遊泳継続時間(sec) 4.3 臨界遊泳速度以上 表 EMG値による供試魚No.1 の行動分析結果 臨界遊泳速度 U crit =1.31m/s 魚道の隔壁を通過 したタイミング 2.2 EMG発信機によるサケの挙動分析 9 突進 巡航 ※臨界遊泳速度Ucrit 有酸素運動と無酸素運動の 境界となる遊泳速度であり, 長時間の連続的な遊泳が可 能な遊泳速度の目安となる 項目 値 備考 体長 553 mm 全供試魚の平均は587mm (最大629mm,最小549mm) 体高 117 mm 全供試魚の平均は128mm (最大144mm,最小103mm)
  8. iRICフォーラム 2025/10/06 3.1 使用した数値解析モデルと検討フロー ➢ 物質輸送解析-GELATO ・流れとともに輸送される様々な物質の 輸送,移動特性を追跡するモデル ・魚に巡航速度や突進速度およびこれらの 継続時間などを指定することで,魚の

    遡上シミュレーションを行うことが可能 ➢ 平面2次元流況・河床変動解析-Nays2DH ・河川の流況や河床変動を平面的に解析するモデル ・地形情報 ・水理条件(流量・粗度係数・樹木等) ・各計算格子の標高・流速・水深等の解析結果 ・魚の遊泳条件(突進速度・巡航速度・最低水深等) 数値解析による 魚類の遡上経路の 追跡 バイオテレメトリー 手法による実際の魚 類遡上経路 遡上経路 の再現 iRIC-Nays2DH 河川の平面2次元流況・河床変動解析 iRIC-GELATO 物質輸送モデル 10 ▪iRIC-GELATO https://gelato-rewrite-documents.readthedocs.io/ja/v2.0_jp/index.html by清水康行@北海学園大学,星野佳太@北開水工コンサルタント
  9. iRICフォーラム 2025/10/06 0 1 2 3 4 5 6 7

    0 20 40 60 80 100 120 遊泳速度(m/s) 経過時間(s) サケのサイクル時間 突進時間 巡航時間 巡航時間 3.2 iRIC-GELATOに用いたサケの遊泳条件 魚が移動可能な水深 項目 設定値 備考 巡航速度(m/s) 1.2 体長の2倍程度 突進速度(m/s) 5.9 体長の10倍程度 巡航時間(s) 66.7 8号床止魚道内における U crit 以下の平均遊泳時間 突進時間(s) 1.0 瞬間的な遊泳が可能な 時間として想定 1サイクル時間(s) <巡航時間+突進時間> 67.7 巡航時間+突進時間 魚が存在できる 最低水深(m) 0.15 体高程度 ➢ 魚の運動特性は,文献値や8号床止魚道内における平均遊泳時間等を参考に設定 表 サケの遊泳条件 11
  10. iRICフォーラム 2025/10/06 3.3 iRIC-GELATOにおける魚の移動方向のプロセス ➢ 魚が泳ぐ向きを変えるプロセスは,実際には様々な要因が含まれる複雑なプロセスであるため,今後改善が必要 : 計算された流れ a) 魚の遊泳能力

    (巡航速度と突進速度) b) 計算流速 c) 魚の移動速度 ※ c) = a) – b) 最低水深以下のエリア 魚は計算された流れの方向を基本と して正規分布を使用したランダム ウォークモデルに則って泳ぐ 遊泳可能な領域を求めて向き を変え異なる経路を探す 12
  11. iRICフォーラム 2025/10/06 流速の 速いエ リア 魚道 3.4 遡上シミュレーション ➢ 50分間の解析期間内に14尾中12尾の仮想魚が魚道内に到達し,4尾の仮想魚が魚道上流側への遡上に成功.遡上に

    要した時間は11~40分間であった. 図 シミュレーション結果 落差工 Flow 遡上時間 仮想魚①11分 仮想魚②31分 仮想魚③32分 仮想魚④40分 : 仮想魚 最低水深以下のエリア (魚の進入不可) 実際の遡上経路 (魚類調査) 13 項目 値 備考 計算格子数 476×300 縦断方向0.8m間隔, 横断方向0.4m間隔 計算時間間隔 0.02sec 50分間の流況を計算 地形・標高 点群 2021測量のALB点群をもとに, 施工時図面をもとに魚道や 水叩き等の敷高を修正 対象流量 10.65 m3/s 藻岩観測所の日平均流量 (2018/10/3)を参考に取水 の影響考慮 下流端水位 等流計算 河床勾配 1/160 最低水深以下のエリア (魚の進入不可)
  12. iRICフォーラム 2025/10/06 魚道 落差工 Flow 最低水深以下のエリア (魚の進入不可) : 遡上経路(仮想魚) :

    遡上経路(魚類調査) 最低水深以下のエリア (魚の進入不可) 実際の遡上経路 (魚類調査) 3.4 遡上経路の重ね図 14 ➢ 実際の遡上経路の傾向(①落差工ではなく魚道を選択して遡上すること,②魚道内を概ね41分程度で通過すること, ③魚道内では流速の遅い側壁付近を遡上すること)を概ね再現できた. 50分間あたりの 魚道到達率86%, 遡上成功率29%
  13. iRICフォーラム 2025/10/06 タイムラプス カメラ 帯工 (袋型根固) L=52.5m 巨礫 L=21.3m R06.10

    帯工上面の土砂堆積・植生 (主に草本)繁茂が進行. 帯工上流には粗礫(19~47mm) が堆積.R6は産卵床の確認なし. ※R5:粗礫,産卵床確認あり ※R4:粗礫,産卵床確認あり 巨礫は河床変動に追従して移動しており,帯 工の変状はみられない. 4.他河川への適用例 ➢ 河床低下対策として袋型根固めと巨礫による帯工群が設置されている河川を例として,将来的な落差拡大に対 する魚類遡上性能を評価したケーススタディを紹介する. ➢ 当該箇所の帯工は完成から6年経過しているが,現在時点では落差拡大等の遡上障害は発生していない.ただし, 将来的に落差が拡大した場合,サケ科魚類の遡上障害が懸念される. ➢ このため,iRIC-GELATOを用いてサケを対象とした単位時間あたりの遡上率の変化を定量的に評価した. 15 R06.11 UAVによる航空写真          名称 項目 名称 項目 規格(出来高寸法) 2t用 φ2.1m×H0.45m 目合い:75mm 4t用 φ2.7m×H0.55m 目合い:75mm 写真 工法概要・特徴 ・ポリエステル繊維を使用した、極太ラッシェル網地に る袋型根固め工。 ・耐久性があり、摩耗が懸念される箇所への適用が 待される。 設置状況 ・平面形状が円形のため、隙間が生じる可能性があ 高耐久性袋型根固め工 パワフルユニット 袋型根固め 2t用 φ2.1m×H0.45m
  14. iRICフォーラム 2025/10/06 16 項目 値 備考 計算格子数 354×111 縦断方向0.5m間隔, 横断方向0.5m間隔

    計算時間間隔 0.05sec 60分間の流況を計算 地形・標高 R3点群 2021測量のALB点群をもとに, 将来予測結果を踏まえた帯 工下流の洗掘状況を考慮 対象流量 7.15 m3/s 観測所の平水流量 ※近10か年平均2014~2023 下流端水位 78.9m 等流計算(河床勾配1/160) 4.他河川への適用例 現況(R3点群) 将来(R3点群) ※将来的な河床低下考慮 ▪単位時間遡上率 25/32=78% ▪単位時間遡上率 2/32=6% 帯工下流が河床低下 ➢ 将来的に帯工下流の落差が 拡大するとサケ科魚類の遡 上障害が懸念される. ※単位時間遡上率78%→6% 流況解析(Nay2DH) 河床変動解析結果を反 映し,再度,流況解析 項目 値 備考 巡航速度(m/s) 1.2 体長の2倍程度 突進速度(m/s) 5.9 体長の10倍程度 巡航時間(s) 66.7 8号床止魚道内におけるU crit 以下の平均遊泳時間 突進時間(s) 1.0 瞬間的な遊泳が可能な 時間として想定 最小水深(m) 0.1 体高程度 魚の遊泳条件(GELATO) : 仮想魚
  15. iRICフォーラム 2025/10/06 18 4.他河川への適用例(左右岸のどちらの落差を解消?) 帯工下流が河床低下 ▪単位時間遡上率 25/32=78% 帯工下流が河床低下 左岸落差解消 ※袋2個撤去

    2m×4m×0.5m ➢ 遡上障害が懸念される場合, 簡易な対策(袋撤去等)に よる落差解消で,遡上率が 改善することを定量評価. 右岸落差解消 ※袋2個撤去 2m×4m×0.5m 流況解析(Nay2DH) 項目 値 備考 計算格子数 354×111 縦断方向0.5m間隔, 横断方向0.5m間隔 計算時間間隔 0.05sec 60分間の流況を計算 地形・標高 R3点群 2021測量のALB点群をもとに, 将来予測結果を踏まえた帯 工下流の洗掘状況を考慮 対象流量 7.15 m3/s 観測所の平水流量 ※近10か年平均2014~2023 下流端水位 78.9m 等流計算(河床勾配1/160) ➢ 効果的な対策箇所の選定等 に活用可能. ※単位時間遡上率 左岸側:6%→78% 右岸側:6%→28% 左岸と右岸のど ちらの落差を解 消すべきか? ▪単位時間遡上率 9/32=28% 将来(R3点群) ※将来的な河床低下考慮 将来(R3点群) ※将来的な河床低下考慮 : 仮想魚
  16. iRICフォーラム 2025/10/06 19 4.他河川への適用例(上下流のどちらの落差を解消?) 帯工下流が河床低下 ▪単位時間遡上率 25/32=78% 帯工下流が河床低下 左岸落差解消 ※上流の袋2個撤去

    2m×4m×0.5m 左岸落差解消 ※下流に袋2個追加 2m×4m×0.5m 流況解析(Nay2DH) 項目 値 備考 計算格子数 354×111 縦断方向0.5m間隔, 横断方向0.5m間隔 計算時間間隔 0.05sec 60分間の流況を計算 地形・標高 R3点群 2021測量のALB点群をもとに, 将来予測結果を踏まえた帯 工下流の洗掘状況を考慮 対象流量 7.15 m3/s 観測所の平水流量 ※近10か年平均2014~2023 下流端水位 78.9m 等流計算(河床勾配1/160) ➢ 効果的な対策箇所の選定等 に活用可能. ※単位時間遡上率 左岸上流側:6%→78% 左岸下流側:6%→50% 上流を下げるor 下流を上げる? ▪単位時間遡上率 16/32=50% 将来(R3点群) ※将来的な河床低下考慮 将来(R3点群) ※将来的な河床低下考慮 : 仮想魚 上流側の袋撤去 下流側に袋追加
  17. iRICフォーラム 2025/10/06 5. まとめと今後の課題 ➢ まとめ ・バイオテレメトリー手法を用いた魚類調査を基にサケ科魚類(サケ)の遡上シミュレーションを行い,実際 の遡上経路の傾向(①落差工ではなく魚道を選択して遡上すること,②魚道内を概ね41分程度で通過するこ と,③魚道内では流速の遅い側壁付近を遡上すること)を概ね再現できた. ・複数の仮想魚を追跡・比較することで,一定期間内における平均遡上時間や平均遡上数等の定量評価も可能

    ・本手法は,三次元的な挙動が支配的な魚道形式には適用が限定される.しかし,魚種や特定条件に過度に依 存せず,平面二次元流況解析モデルと基本的な遊泳条件を用いることで,水路実験等のコストを抑えつつ魚 類の遡上傾向を再現し遡上率等の定量評価ができる点が大きな利点である ➢ 今後の課題 ・今後,遊泳サイクルやジャンプの有無等に関する設定,側壁や障害物等への挙動に関するモデル改良等,さ らなる改良が必要ではあるが,魚道設置位置の妥当性検証や魚道形式の事前選定等の迅速な初期検討ツール として活用が期待される.特に,サケ等の遡河回遊魚では,魚道設置等による改善効果検証に1年単位の期間 を要するため,効果検証の評価期間短縮も期待できる 23