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モノタロウでCursorを導入してみた理想と現実、それと未来

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August 24, 2025
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  1. Cline配ってみた件 2025年1月〜5月の取り組み 仮説: 「全員にAIツールを配れば生産性が上がる」 選定理由: VS Code拡張で導入が容易 APIキー配布で素早く展開可能 (背景: Claude

    APIの確保ができていた) コミュニティの熱量が高い 導入規模の推移 1月:20名でスタート 3月:100名に拡大 5月:250名まで到達(開発者の半数以上) 8 © MonotaRO Co., Ltd.
  2. (方針から抜粋) 1. Devin 方針: 当面の間、利用を継続します。 背景・理由: Devinは開発生産性に大きく貢献していると評価されています。 直近では月間約300のプルリクエスト(マージ済みのもの)を生成しており、その費用は約5000ド ルと試算されています(1プルリクエストあたり約2500円) 。

    コードレビューも可能であり、開発者の増強に匹敵する貢献があると判断しています。 将来の展望: 年内を目途に継続利用を予定していますが、将来的にCursorのバックグラウンドエージェン ト、Copilot Workspaceなどの代替サービス、新規サービスの登場等により、Devinの優位性が低下し た場合は、方針を見直す可能性があります。 13 © MonotaRO Co., Ltd.
  3. (方針から抜粋) 2. IDE (GitHub Copilot および Cursor) 方針: 開発者の皆様には、GitHub Copilot(+VSCode)とCursorのどちらかを選択して利用してもらう

    方針です。 GitHub Copilot(+VSCode): ベースラインのツールとして位置づけられ、希望すれば開発者は誰でも利用できます。 Cursor: AIを積極的に活用して開発や業務を行うヘビーユーザー向けです。より高度なAIによる開発支援機 能を持ちます 開発者だけでなく、デザイナー、プロデューサー、PMなど、モノタロウのシステム改善業務に携 わる幅広い役割のユーザーも対象となります。 補足: CursorはVS CodeのPython拡張機能の一部が古いバージョンでしか使えない可能性があり、特定 の開発環境でネックになる可能性があります。 14 © MonotaRO Co., Ltd.
  4. (方針から抜粋) 3. Windsurf 方針: 検証を停止し、当面利用しないこととします。 背景・理由: 2025年6月1日から検証を開始しましたが、モノタロウの開発環境には適さないと判断されまし た。 WSL (Windows

    Subsystem for Linux) の対応が不十分であることが主たる理由です。 モノタロウの開発で不可欠な「devcontainer on Docker in WSL」が動作しない点が致命 的でした。 WSL自体への接続は可能ですが、安定性が非常に低いという問題もありました。 15 © MonotaRO Co., Ltd.
  5. (方針から抜粋) 4. Cline 方針: 利用は継続しますが、利用の縮小を促します。 背景・理由: 費用面が高額であることが最大の理由です。ヘビーユーザーの場合、月に数百ドルに達する可能性 があります(例:1日で15ドル使用するユーザーは月換算で300ドルに達する可能性) 。 GitHub

    CopilotやCursorへの移行を推奨します。 ただし、業務都合などでCopilotやCursorが利用できない場合は、Clineの継続利用も許容されま す。 現在APIキーを保有している方で、1ヶ月以上利用実績がない場合はAPIキーを停止する可能性があ ります。高額な費用を発生させているユーザーの方には、優先的にCursorへの移行を案内しま す。 16 © MonotaRO Co., Ltd.
  6. 比較して 観点 Cline Cursor コスト管理 従量課金(予測困難) (ちょっと高い) 月$40固定(+従量課金) 観測可能性 APIログのみ

    詳細な利用分析可能・ダッシュボード 運用性 APIキー個別管理 コスト・アカウント管理がやりやすい SSO設定可能 使いやすさ 情報は豊富・使いやすい・エージェント特化 情報は豊富・使いやすい・機能が豊富 19 © MonotaRO Co., Ltd.
  7. ありそうな可能性 PR数以外の部分に価値が出ている 例) AIによるコードレビューや調査タスクによる品質向上 例) マネージャやリーダー層などの開発への参加 (一人当たりの開発数は増えていないが、コミッター数は増えているのでは) 生産性の向上はあるが、他の仕事に時間を使っている 例) コードレビューの時間が減った分、企画したり、調査したり、PRの品質を上げることに時間

    使ったり、Slackを眺めたり 例えば、5%だけ生産性が向上するなら1日8時間として 24分。この時間を果たして使い切 って開発するか...? 季節(PJ)の変動が大きい 会社のシーズンや大きいプロジェクトの進行による変動が大きい 使いこなせていない ... いずれもありそう 27 © MonotaRO Co., Ltd.
  8. Cursor 130アカウントの実態 現在の利用状況 発行済み:130人 アクティブ:100人 休眠:30人 500 Premium Requestsを使い切る人:10〜20人 月に100

    Premium Requests以上使う人:50人 つまり、 「使いこなしている人」は少数...! 28 © MonotaRO Co., Ltd.
  9. 内部ネットワーク効果を作る 狙い: 「使わないと置いていかれる」空気を醸成 個人の成功 ↓ チームへ伝播 ↓ 他チームが真似る ↓ 組織の文化に

    必要なのは「ムーブメント」 外部発信も含めて、継続的に語り続けることが重要 33 © MonotaRO Co., Ltd.
  10. 三本柱アプローチ 1. AI駆動開発トレンドラボ 4ヶ月で6回開催、延べ300人以上が参加 最新情報の共有と 座談会形式 → ヘビーユーザーの生の声を届ける 2. DOJO

    「帯」制度を備える、社内教育機関 AI系ツールを活用したエンジニアリングの「基準」を作って講座を開催(鋭意準備中) 3. AIエバンジェリスト制度 各チームに配置 現場主導のEnabling、成功事例の横展開 34 © MonotaRO Co., Ltd.
  11. 例: 監視・運用の自動化 事例: Sentry × MCP × AIの連携 エラー検知(Sentry) ↓

    初期調査(MCP) ↓ 修正案作成(Cursor/Devin) ↓ PR作成(Cursor) ↓ レビュー(Human + Cursor) 39 © MonotaRO Co., Ltd.
  12. 組織変革の本質 ツールから文化へ Tool(道具) ↓ Process(プロセス) ↓ Practice(実践) ↓ Culture(文化) 大事なのは

    ツールの優劣ではない 組織としての学習速度 変化への適応力 40 © MonotaRO Co., Ltd.
  13. まとめ:3つの学び 1. 配るだけでは上がらない ツール導入 ≠ 生産性向上 使いこなしの格差を埋める仕組みが必要 2. 観測可能性が鍵 Cursorの利用ログで現実を直視

    データに基づく介入と改善 3. タスク置換を目指せ 5%改善は余りの時間として消える 100%置換で大きな効果を狙う 41 © MonotaRO Co., Ltd.
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