Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
工学系の関数解析輪読会 - 第1章 線型空間
Search
Convergence Lab.
September 07, 2019
Technology
0
74
工学系の関数解析輪読会 - 第1章 線型空間
工学系の関数解析 輪読会の第1章の資料です。
突貫で作ったものです。ご了承ください。
Convergence Lab.
September 07, 2019
Tweet
Share
More Decks by Convergence Lab.
See All by Convergence Lab.
NeurIPS2018読み会@PFN Dialog-to-Action: Conversational Question Answering Over a Large-Scale Knowledge Base
mssmkmr
0
2k
考える技術・書く技術まとめ
mssmkmr
0
480
Global-Locally Self-Attentive Dialogue State Tracker
mssmkmr
1
240
RNNとLSTM
mssmkmr
0
270
Other Decks in Technology
See All in Technology
PHPerのための計算量入門/Complexity101 for PHPer
hanhan1978
6
1.3k
日本版とグローバル版のモバイルアプリ統合の開発の裏側と今後の展望
miichan
1
150
プロダクト組織で取り組むアドベントカレンダー/Advent Calendar in Product Teams
mixplace
0
500
終了の危機にあった15年続くWebサービスを全力で存続させる - phpcon2024
yositosi
28
24k
効率的な技術組織が作れる!書籍『チームトポロジー』要点まとめ
iwamot
2
160
【令和最新版】ロボットシミュレータ Genesis x ROS 2で始める快適AIロボット開発
hakuturu583
1
830
スケールし続ける事業とサービスを支える組織とアーキテクチャの生き残り戦略 / The survival strategy for Money Forward’s engineering.
moneyforward
0
120
サイバー攻撃を想定したセキュリティガイドライン 策定とASM及びCNAPPの活用方法
syoshie
3
1.5k
[Ruby] Develop a Morse Code Learning Gem & Beep from Strings
oguressive
1
200
MasterMemory v3 最速確認会
yucchiy
0
230
マイクロサービスにおける容易なトランザクション管理に向けて
scalar
0
200
10年もののバグを退治した話
n_seki
0
110
Featured
See All Featured
How to train your dragon (web standard)
notwaldorf
88
5.7k
Performance Is Good for Brains [We Love Speed 2024]
tammyeverts
7
530
Why Our Code Smells
bkeepers
PRO
335
57k
The Language of Interfaces
destraynor
155
24k
Fantastic passwords and where to find them - at NoRuKo
philnash
50
2.9k
Faster Mobile Websites
deanohume
305
30k
The World Runs on Bad Software
bkeepers
PRO
66
11k
Building Applications with DynamoDB
mza
91
6.1k
Optimising Largest Contentful Paint
csswizardry
33
3k
Stop Working from a Prison Cell
hatefulcrawdad
267
20k
A Modern Web Designer's Workflow
chriscoyier
693
190k
Measuring & Analyzing Core Web Vitals
bluesmoon
5
180
Transcript
工学系の関数解析 第 1 章線形空間 Convergence Lab. 木村 優志 September 7, 2019
1. 自己紹介 2. 工学系の関数解析 3. 第1章 線形空間 4. 1.1 線形空間 5.
線形空間の例 6. 部分空間 7. 線型結合 8. 線形多様体 9. 凸集合、凸関数 10. 1 次独立、1 次従属、次元 11. 同形な線型空間 2/45
自己紹介
自己紹介 • 木村優志 • 博士(工学) • Convergence Lab. 代表 •
[email protected]
• AI ベンダ向けにコンサルティングをしています。 • 風車犬(ふうしゃいぬ)っていうアプリを今作っているよ。 4/45
工学系の関数解析
工学系の関数解析 • 著者: 小川英光 • 東京福祉大学教授 工学博士 • IEICE フェロー 6/45
まえがきより抜粋 本書は、広い意味での推定問題、あるいは、逆問題を目指すも のになっている。すなわち、信号・画像の最適復元や、CT画 像再構成問題、標本化定理、機械学習、パターン認識などの問 題を論じるさいに必要となる関数解析の手法をまとめたもので ある 証明には2種類の役割がある。第1は言うまでもなく、論理的 な正しさを示すためである。重要なことは証明の持つ第2の役 割である。それは、証明を読むことによって初めて、その定理 を真に理解できるということである。
7/45
第1章 線形空間
1章の要約 線型空間とベクトル空間は同形です。 9/45
1.1 線形空間
1.1 線形空間 集合 X を考える。集合の中身は実数でも複素数でもベクトルで も関数でも良い。そこに与えられた構造だけに注目する。 定義 (線形空間) 集合 X
の任意の 2 元 , と、任意の複数または実数 a に対し、 和 ⊕ ∈ 及び積 ∘ ∈ と呼ばれる演算が定義されてい て、それらが次の条件を満たしているとき、 を線形空間 (linear space) という。ただし、, , ℎ は の任意の元とする。 (i) ( ⊕ ) ⊕ ℎ = ⊕ ( ⊕ ℎ) (和の結合律) (ii) 任意の ∈ に対して ⊕ = となる元 ∈ が存在す る。 (零元の存在) (iii) 任意の ∈ に対して ⊕ ′ = となる元 ′ ∈ が存在 する。 (逆元の存在) (iv) () ∘ = ∘ ( ∘ ) (積の結合律) 11/45
1.1 線形空間 定義 (線形空間 (続き)) (v) ( + ) ∘
= ( ∘ ) ⊕ ( ∘ ) (分配率) (vi) 1 ∘ = (vii) ∘ ( ⊕ ) = ( ∘ ) ⊕ ( ∘ ) (分配率) 混乱の恐れがないときは、 ⊕ を + で表し、 ∘ を で 表すことが多い。 また、定理よリ、和の交換率が成立する。 (あとで証明) ⊕ = ⊕ (1) 12/45
1.1 線形空間 - 係数体 の元に掛けられる数 の全体を係数体 (field of scalars) とい
う。 • 係数対に R(実数全体) を選ぶ: 実線形空間 (relal linear space) • 係数対に C(複素数全体) を選ぶ:複素線形空間 (complex inear space) 13/45
1.1 線形空間 - 零元と逆元 • : 零元 • ′: f
の逆元 混乱の恐れがないときは を 0、′ を − で表す。 14/45
1.1 線形空間 - 零元と逆元の一意性 補題 整形空間 の元に対して、次の関係が成立する。 ⊕ = ⊕
ℎ ならば = ℎ 証明 ′ ⊕ = (2) ⊕ = (3) まず、上式を示す。 15/45
証明 (続き) = ⊕ = ⊕ (′ ⊕ ″) =
( ⊕ ′) ⊕ ″ = ⊕ ″ ′ ⊕ = ′ ⊕ ( ⊕ ″) = (′ ⊕ ) ⊕ ″ = ′ ⊕ ″ = よって、(1) が成立する。 16/45
1.1 線形空間 - 零元と逆元の一意性 証明 (続き) (2) 式は、 ⊕ =
( ⊕ ′) ⊕ = ⊕ (′ ⊕ ) = ⊕ = 以上をもとに補題の証明を行う。 = ⊕ = (′ ⊕ ) ⊕ = ′ ⊕ = ′ ⊕ ( ⊕ ) = ′ ⊕ ( ⊕ ℎ) = (′ ⊕ ) ⊕ ℎ = ⊕ ℎ = ℎ 17/45
1.1 線形空間 - 零元と逆元の一意性 定理 零元および逆元は一意に定まる 18/45
定理 和の演算は可換である。すなわち、 の任意の元 , に対して 式 (1) が成立する。 証明 (1
+ 1) ∘ ( ⊕ ) = (1 + 1) ∘ ⊕ (1 + 1) ∘ (略) = ⊕ ( ⊕ ) ⊕ 一方、 (1 + 1) ∘ ( ⊕ ) = 1 ∘ ( ⊕ ) ⊕ 1 ∘ ( ⊕ ) = ⊕ ( ⊕ ) ⊕ 以上から、以下が導ける。 ⊕ = ⊕ 19/45
補題 0 ∘ = (6) ∘ = (7) (−1) ∘
= ′ (8) ( ⊕ )′ = ′ ⊕ ′ (9) ( ∘ )′ = (−) ∘ = ∘ ′ (10) ″ = (11) ∘ = ∘ かつ ≠ 0 ならば = (12) ∘ = ∘ かつ ≠ ならば = (13) 証明略 20/45
線形空間の例
線形空間の例 • = として、演算 ⊕, ∘ を通常の和と積で定義したもの。 零元 0 逆元
− • = として、演算 ⊕, ∘ を通常の和と積で定義したもの。 零元 0 逆元 − • 正の実数全体を + として、演算 ⊕, ∘ を、 ⊕ = , ∘ = と定義したもの。零元は 1、逆元は 1/ となる。 • N 次元複素数 に対して、ベクトルどうしの和を要素ご との和で定義し、ベクトルと複素数の積を各要素への積で 定義したもの。 • etc. 22/45
差の演算 ⊖ = ⊕ ′ (14) 補題 ⊕ = ℎ
ならば = ℎ ⊖ (15) ⊖ = (16) (−1) ∘ ( ⊖ ) = ⊖ (17) ( ⊕ ℎ) ⊖ ( ⊕ ℎ) = ⊖ (18) ∘ ( ⊖ ) = ( ∘ ) ⊖ ( ∘ ) (19) ( − ) ∘ = ( ∘ ) ⊖ ( ∘ ) (20) 証明略 23/45
部分空間
部分空間 の部分集合 が同じ演算に対して再び線型空間担っている とき、 を の線型部分空間、あるいは単に部分空間と呼ぶ。 1. の任意の元の和が に属する 2.
の任意元のスカラー倍が に属する 補題 1. の部分空間は必ず の零元をふくむ 2. , が の部分空間 の元ならば、逆元 ′ および差 ⊖ も の元になる 25/45
線型結合
線型結合 の元 { } =1 と数 =1 に対して = ∑
=1 ∘ で与えられる の元 を、{ } =1 の線型結合、または一次結 合という。 を の部分集合とする。 の元の線型結合の全体 は部分空間になる。この部分空間を線形包といい、[] で表す。 が部分空間ならば、[] = となる。 27/45
線形多様体
線形多様体 部分空間を平行移動したものを、線形多様体あるいはアフィン 部分空間という。線形多様体 は = ⊕ (21) と表される。 ( )
= となる関数 () を求める問題は補間とよばれ、多 くの場面に現れる。たとえば、実験データを滑らかな関数で補 間する問題、画質を改善する画像復元問題、ニューラルネット ワークによる学習の問題は、すべて補間の問題として定式化す ることができる。 29/45
凸集合、凸関数
凸集合、凸関数 3次元空間における急や立方体の性質を抽象化したもの。 の 2 元 1 , 2 に対して、 =
( ∘ 1 ) ⊕ ((1 − ) ∘ 2 ) ∶ 0 ≤≤ 1 (22) となる元 の全体を 1 と 2 を結ぶ線分といい、[1 , 2 ] で表す。 の任意の2点を結ぶ線分が に含まれる時,S は凸集合である という。 凸集合を を 0 だけ移動したもの、すなわち ⊕ も凸集合 である。したがって、線形多様体もまた凸集合である。 31/45
凸結合、凸包 以下の式の を凸結合という。 = ∑ =1 ∘ ∶ ≥ 0,
∑ =1 = 1 (23) 凸結合の全体を凸包といい、() で表す。 32/45
凸関数 線型空間 の凸部分集合 の上で定義された実数値関数 が、 任意の , ∈ と、0 ≤
≤ 1 を満たす任意の実数 に対して、 (( ∘ ) ⊕ ((1 − ) ∘ )) ≤ () + (1 − )() (24) を満たす時、 を 上の凸関数という。特に、 ≠ かつ 0 < < 1 にたいして等号が成立しない時、 を狭義凸関数と いう。 33/45
凸関数の例 つぎの関数 は [0, 1] 上の凸関数である。 1. 0 を区間 [0,
1] 上の固定した点とする時、() = |(0 )| 2. () = max 0≤≤1 |()| 3. () = ∫ 1 0 |()|2 34/45
凸関数と凸集合の関係 定理 を線型空間 の凸部分集合上の凸関数とし、 を任意に固 定した実数とすれば、 = |() ≤ は凸集合となる。
証明略 35/45
1 次独立、1 次従属、次元
1次従属、1次独立 線型空間 の元 { } =1 の中のある元が残りの現の線型結合 で表現できる時、{ } =1
は 1 次従属であるという。逆に、 { } =1 の中のどの現残りの現の線型結合で表現できない時 { } =1 は1次独立であるという。無限個の元は { }∞ =1 は、 もしその中の相異なる任意有限個の現が一次独立になる時、1 次独立であるという。 37/45
1次独立になるための必要十分条件 補題 { } =1 が1次独立になるための必要十分条件は、 ∑ =1 ( ∘
) = が全ての n に対して = 0 となる時、またその時に限って成 立することである。 証明は章末問題 に この1次独立な元があり + 1 個以上の元が常に1次 従属になるとき、 の次元は N であるといい、dim = と 表す。また、 は N 次元空間であるという。任意の自然数 に対して 個の 1 次独立な元が存在するとき、 は無限次元 空間であるといい、零元だけからなる部分空間の次元は 0 と定 義する。 38/45
余次元、超平面 を線型空間 の部分空間とする。 の元 { } =1 に対して、 ∑ =1
( ∘ ) ∈ (25) が成立するような全ては 0 でない複素数の組 { } =1 が存在す る時 { } =1 は を法として1次従属であるといい、 を法と して1次元独立であるという。 特に、 と { } =1 で貼られる部分空間が X と一致する時、 における の余次元が であるといい、このような有限個の { } =1 がなければ、 の余次元は ∞ であるという。 の余次元が 1 の時、 を超平面という。 39/45
基底 定理 を 次元線型空間とする。 の 個の 1 次独立な元 { }
=1 を使って、任意の ∈ が、 = ∑ =1 ∘ (26) の形に一意に表現できる。 { } =1 を の基底または基という。また、係数 { } =1 を の基底 { } = 1 に関する展開係数という。 40/45
ルジャンドル多項式 () = 1 2! (2 − 1) (27) と置くと、
は n 次多項式になる。展開係数は = 2 + 1 2 ∫ 1 −1 () () (28) によって決めることができる。この多項式は、ルジャンドル (Legendre) 多項式と呼ばれ、通常、 () とあらわされる。 41/45
ラグランジュ補間多項式 区間 [−1, 1] の相異なる + 1 個の点 { }
=1 に対して、 () = ∏ =0 ( − ) (29) とおくと、 () = () ( − )′( ) ∶ = 0, 1, 2, ⋯ , (30) は空間 ∏ [−1, 1] の基底になる。この多項式は、多項式補間に 利用でき、ラグランジュ補間多項式と呼ばれる。 42/45
同形な線型空間
同形な線形空間 線形空間の中に基底を導入するということは、その空間の中に 座標系を導入することである。このとき、展開係数は座標系の 座標成分になっている。こうして、線形空有を幾何学的に見る ことができるようになる。 の各元 に対して、展開係数の組が一意に定まる。この展開 係数の組からできる 次元ベクトルを で表し、
を に対 応付ける変換を で表す。 () = (31) 二つの線型空間 , の間に一対一写像 が存在し、任意の , ∈ と任意の複素数 , に対して、 (( ∘ ) ⊕ ( ∘ )) = ( ∘ ()) ⊕ ( ∘ ()) (32) が成立する時、 と は線型空間として同形であるといい、 を同形写像という。 44/45
定理 全ての 次元複素(実)線型空間 は、 次元ベクトル空間 () と同形である。 45/45