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Social capital I: measurement and associations with economic mobility

M. Takano
January 18, 2024
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Social capital I: measurement and associations with economic mobility

第13回ウェブ・ソーシャルメディア論文読み会 資料 高野担当分

M. Takano

January 18, 2024
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  1. Social capital I: measurement and associations with economic mobility Raj

    Chetty, Matthew O. Jackson, Theresa Kuchler, Johannes Stroebel, Nathaniel Hendren, Robert B. Fluegge, Sara Gong, Federico Gonzalez, Armelle Grondin, Matthew Jacob, Drew Johnston, Martin Koenen, Eduardo Laguna-Muggenburg, Florian Mudekereza, Tom Rutter, Nicolaj Thor, Wilbur Townsend, Ruby Zhang, Mike Bailey, Pablo Barberá, Monica Bhole & Nils Wernerfelt Nature volume 608, pages108–121 (2022) 2024/1/18 ウェブ・ソーシャルメディア論文読み会 CyberAgent, Inc. All Rights Reserved 高野雅典 株式会社サイバーエージェント 学際的情報科学センター [email protected] 1
  2. 自己紹介: 高野雅典 株式会社サイバーエージェント所属 リサーチャー; 博士(情報科学) 名大 情報科学研究科 複雑系科学専攻(博士課程)→ システムインテグレータでSE →

    サイバーエージェント: Webフロントエンジニア→ データサイエンス・計算社会科学研究 ▪ 業務 • 自社メディアデータを用いた計算社会科学研究 • 当社事業・組織運営への学術的知見の導入・活用 ▪ 具体的にやってること • 事業プロダクトのユーザー間コミュニケーション活性化、健全化 • Trust & Safety: SNS未成年誘い出し、有名人へのネットハラスメントの対策 • ユーザの社会関係増進・メンタルヘルス向上(→ エンゲージメント向上・問題行動減少) • マッチングアプリの提供する「新たな出会い」の社会的意義の探求(格差のない社会や少子化緩 和) • 当社内のDiversity, Inclusion & Equity 推進 ▪ よくいく学会 • 国内: 人工知能学会、計算社会科学会(+ 心理や社会科学系) • 国外: ICWSM, IC2S2, etc. 2
  3. 背景とアプローチ ▪ 社会的資本: 社会ネットワークやコミュニティ • 教育・健康・所得などなど様々な成果を決定する潜在的な要因(超重要) • どのような社会的資本がどんな結果につながるか? はまだまだ ▪

    社会的資本データの不足 • フィールド調査 → 小規模・対象範囲が狭い • よく使われるのは「全米青少年成人健康縦断研究(Add Health)」 • 米国の132校の約20,000人の生徒(地域が限定的) • 携帯電話データのネットワーク → 社会関係の観測が間接的 • 国勢調査 → ネットワークデータがない ▪ Facebookの社会関係データを使う • 年齢層を多少絞れば、米国での利用率はめちゃくちゃ高い • → サンプリングバイアスが弱い • 「ネットの社会ネットワーク」ではなく「リアルの社会ネットワーク」の代理データとして 使って、社会的資本研究に取り組む • 具体的には「社会的資本 → 経済的移動性」の関連とメカニズムを調べた • 郡レベルで関連性を分析 • (米国だと)郡レベルならば先行研究のデータも紐付けて分析に取り込める 3
  4. 分析対象 ▪ 地域 • 米国在住 ▪ 年齢 • 25歳〜44歳 •

    米国のこの年齢層はFacebook利用率が80%以上(!)[37] • おおむね米国全体の25-44歳を代表していると言える ▪ Facebook利用 • 過去30日に1回以上、Facebookを利用 • 米国在住のFacebookフレンドが100人以上 ▪ この人たちの以下を使用 • 交友関係 • 居住地(Location History, 郵便番号, 郡) • 個人とその親の社会経済的地位(SES; 後述) 4
  5. 目的変数 Upward income mobility (上昇所得移動?) ▪ 低所得家庭に生まれた子供が成人になって低所得でなくなること ▪ 米国では地域によって上昇所得移動の頻度は大きく異なる [10]

    • 間接的な証拠 [15, 16, 71] では地域差はソーシャルキャピタルの違いに関連と示唆 → この仮説を検証する ▪ データは文献 [72] のものを利用 • 1978-1983年生まれの親の所得が下位25%ileの人の成人期の予測世帯所得の順 位 • 国勢調査の結果を使って郡ごとに評価 5
  6. 説明変数の元になる指標 社会的経済的地位(SES) ▪ 社会経済的地位の高い人との交流にはメリットがある • 情報の伝達、メンターシップ、夢の実現へのプラン形成、仕事の紹介, etc. ▪ 先行研究での社会経済的地位の計測 •

    いろいろな変数をつかった様々な定義がある • 所得、資産、学歴、職業、家庭環境、近所付き合い、消費 • → この研究ではいくつかの尺度を組み合わせて社会経済的地位を計測 ▪ アプローチ • 教師データ作成 • FBのロケーションヒストリ(LH)を有効にしているユーザを取得 • そのユーザの居住地 → 国勢調査ブロックの世帯所得の中央値を割り当て(これがSES) • 推定 • 以下の素性を使ってGBRT (gradient-boosted regression tree) でSESを推定 • 年齢、性別、言語、交際ステータス、位置情報(ZIPコード)、大学、寄付、携帯電話モデルの価格 と携帯キャリア、(携帯端末ではなく)インターネット上でのFacebookの使用状況、Facebook使用 関連のもろもろ • 推定SESを出生コホートごとに、全米のSES分布を使って、パーセンタイルランクを 割り当てる 6
  7. 説明変数: 経済的接続性 ▪ 経済的接続性 EC • 「SESが中央値以下の人の中でSES中央値以上の友人が占める割合の2倍」 • 値が大きいと「SESが低い人が高い人と繋がっている」ことを表す 7

    当人と友人のSESランクに正の相関 → 強い同類性 • 自分のSESが1%ile pt増加すると友人のSESは 0.44%ile pt増加する • 両端を除きほぼ線形 • 非常にSESの高い人は特にSESの高い友人を持つ 全友人を使っても、親しい(やりとりが多い)友人に限定し ても結果はほぼおなじ → 友人関係の強さやFacebookの友人数の影響は弱い SESと友人のSESの関係
  8. 子供時代の経済的接続性 ▪ 「子供時代の経済的接続性 → 成人の経済的接続性」の発展は、世代間の 所得移動(家は貧乏だけど大人になって成功するなど)に関連するはず 8 親と友人の親のSESランク(子供は高校生) 成人のときより傾きが緩い →

    親のSES=子供のSESとすると、子供時代の方が   SESの同類性が低い ◾: 先行研究(Add Health)のデータを用いて同じことを やってみた結果。ほぼ同じ結果。 → Facebookデータを代理データとしてうまく使える   ことを示す
  9. 説明変数: ネットワーク凝集性 ▪ 「ある2名の行動が協調するか否かを見る人」がいる • → その2名は協調しすいはず(間接互恵) ▪ 以下の3つの指標は地域間で高い相関を示した(0.51 –

    0.64) • ECとは弱い負の相関 – 相関なし(-0.25 – 0.01) クラスタリング係数 ▪ いつものを郡単位で平均したもの • ある個人の友人ペアのうち、互いに友人であるペアの割合を、郡内の全個人につい て平均したもの Support ratio ▪ 郡内で「任意の友人関係が少なくとも1人の共通の友人を持つ」頻度 Spectral homophily ▪ 郡内の社会ネットワークがどのぐらい分断されているかを表す 10
  10. 説明変数: 市民参加 ペンシルベニア州指数 ▪ 先行研究63で計算された郡レベルのもの ▪ 市民団体への参加やその他の市民的関与の指標 Civic Organization ▪

    郡の人口あたりの市民団体orNPOのFacebookページの数 Volunteering rate ▪ Facebookユーザがボランティアグループに所属している人の割合 ▪ ベンシルベニア州指数と0.58の相関 → だいたいあってる 11
  11. 各説明変数の地域分布 全体として地域で大きく異なる ▪ EC • 中西部の農村地域・東海岸が高い (a) • 南東部・南西部・中西部の工業都市 で低い(a)

    • もっと細かく見ても大きく異なる • bはロサンゼルス都市圏: 高所得地区 でEC高、低所得地区でEC低 • ※ そうでもない地域もある(エコー パークなど) ▪ Clustering • ECとは違うパターン (相関: -0.25〜0.01) ▪ Volunteering • ECとは違うパターンを示した(相関: -0.25〜0.01) 12 EC クラスタリング係数 Volunteering
  12. 相関係数と重回帰分析結果 ▪ ECが特に強い関連をしめし た ▪ 他は(統計的に有意であって も)効果量は大きくない • ネットワーク凝集性 •

    効果が弱い/むしろマイナス • 緊密なコミュニティを形成 • 低所得層同士なので所得上昇 につながるような機会・資源・情 報が得られない • 市民参加 • 先行研究とは異なる結果 • 計算方法が違うからかも(市民 参加が所得上昇につながる地 域の重みが低い) → 各郡内で同様の分析も実施 ・郵便番号間の地域差を評価  → ECは同じ結果だが他の指標は    郡によって異なる • Ex Fig4 13
  13. なぜECは所得階層の移動に効果があるのか? ▪ いろんな説がある • 逆因果、場所の選択効果、脱落変数バイアスの観点で検証する ▪ 逆の因果関係 • 「所得階層の移動が多いとECが高くなる」という説明 •

    上昇流動性が高い地域では、低所得家庭の子の多くが成人して高所得を得やすい • 上昇移動した人が子供のころの(低所得階層のままの)友人関係を保っていれば、逆因果が成立 する ▪ 逆因果の検証 • 上昇所得移動を子供時代のECで説明する • 少し下がったものの十分に高い相関(FBデータ: 0.44, Instagramデータ: 0.62) • → 逆の関係もあるが、EC→所得階層移動はあると言える 15
  14. なぜECは所得階層の移動に効果があるのか? ▪ 場所の選択効果 • ECの高い地域に住む家庭は、高所得ではなくとも所得が上昇しやすいデモグラ特徴を 持っていて、その結果、ECと上昇所得移動に相関が生まれる という説明 • 人種・民族によって居住地が異なり、かつ所得階層の移動率も(人種差別などにより)異なる •

    所得は低いが教育熱心 など ▪ 場所の選択効果の検証 • 1. 人種が極端に偏っている郵便番号地域のみを使って評価する • → ECは依然として強い関連(左表) • 人種による居住地の差では説明は難しい • 2.(観測の難しい)教育熱心さ→引越しイベントを用いた準実験的デザインで因果効果推定 • 推定した因果効果は右図(EC以外はほぼ相関なし) 16
  15. なぜECは所得階層の移動に効果があるのか? ▪ 脱落変数バイアス • 重要な変数が入ってないため変な結果になってしまうこと ▪ 考えられる他の要因 • 地域の特性(質の高い学校があるなど)が上昇所得移動に効く •

    地域の特性とECに相関がある ▪ 地域の特性で統制した上で、上昇所得移動へのECの効果を評価 • 低所得地域に住むことはECを下げるがECが高いければ階層移動は起きる 17 地域特性で統制しても強い正の効果 地域特性指標の中でもECは高い相関
  16. 議論 ▪ というわけで社会的経済的地位階層の上昇にはECが強力な予測因子と言 える • 社会的経済的地位の高い層とつながると 低→高 の階層移動が起きやすい ▪ 様々な研究がこれまでにあり、様々な仮説や理論があった

    • Facebookデータと国勢調査などなどのデータをうまく組み合わせて、米国内全地域 を対象にして検証した ▪ 様々な種類の社会的資本 • それぞれ「何にどのように効くか」が異なる • 階層移動にはEC。他はあまり効かない。 • ちゃんと区別する必要がある 19
  17. 所感 ▪ Facebookのデータと米国の地域差に基づいて国勢調査などなどのデータとうまく連結して 分析してる • 同じようなことは日本ではできる? • Facebookのようなバイアスが少ない活用できるサービスやデータセットはあるか • LINEぐらい?

    • 年代や性別、ライフステージを絞れば他のサービスでも何かあったりする? • 活用できるほどの地域差はあるか ▪ この論文はSocial Capital 1。2もある(Natureの同じVolに続いて載っている) • Social capital II: determinants of economic connectedness | Nature • 各個人のECの決定要因を研究 • 同じコミュニティ(学校・宗教団体など)に属していても、SES階層が似た人と友人になりやすい(友達バ イアス) • 大規模で多様性のある集団の方が友達バイアスが強い • 宗教団体は友達バイアスが弱い • ※ ちなみにMMORPGのコミュニティは友達バイアスは弱い [Kobayashi2010] • 友達バイアスが弱いコミュニティ作りが重要 ▪ (日本の?)社会階層研究は概ね「出身階層」「学歴」「成人した子供の階層」の関連の分析 が多いような気がする • ECは出身階層 → 学歴 に効く? 20 出身階層 到達階層 学歴