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ジョブ理論: 顧客の「進歩」から発想する イノベーション設計の実践

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November 29, 2025
260

ジョブ理論: 顧客の「進歩」から発想する イノベーション設計の実践

ジョブ理論とは?――イノベーションを「運任せ」にしないための共通言語
https://note.com/nishiba/n/n02effcb2e9ad

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November 29, 2025
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  1.   INNOVATION STRATEGY FRAMEWORK ジョブ理論 ワークショップ 顧客の「進歩」から発想する イノベーション設計の実践 

    2025.11.29  @m_nishiba  OBJECTIVE 理論の基礎概念を正しく理解し、 顧客インサイトを事業戦略に落とし込む 実践スキルを獲得する。 Jobs to be Done Focus on Progress, Not Product.   
  2.  Agenda ワークショップ構成 * 各章末に実践ワークショップを含みます ジョブ理論とは?  「進歩」を軸にしたイノベーション思考の基礎と、従来の属 性ベース思考との違いを学ぶ。 01

    02 機能ではなくジョブで考える  ジョブ・ストーリーの記述法を習得し、クックパッド等の事 例から深層心理を読み解く。 アイデア発散の7手法  パフォーマー、シチュエーション、代替手段など、多角的に ジョブを見つける実践的テクニック。 03 04 価値の階層化  タスク・日常・人生の3階層で価値の連鎖を描き、プロダクト のインパクトを可視化する。 競合分析と勝敗パターン  無消費を含む「真の競合」を定義し、シチュエーションごと の勝敗条件を分析する。 05
  3. CHAPTER 01: INTRODUCTION ジョブ理論とは?  「顧客は誰か?」ではなく、 「顧客はどんな進歩を遂げようとしているのか?」 イノベーションと事業戦略を組み立てるための実用的な思考フレーム  進歩を買っている

    顧客は製品そのものではなく、今の生活を望ま しい状態へ一歩進めるための「進歩」を求めて いる。  一時的に雇う手段 製品やサービスは、その進歩を実現するために 一時的に「雇われる(Hire) 」手段にすぎな い。  ジョブの構造 ジョブ 「達成したい進歩」 + 「望ましい結果(アウトカム) 」 Source: Clayton M. Christensen, "Competing Against Luck"
  4.  視点の転換:プロダクトは「手段」 顧客はミルクシェイクそのもの(味や成分)が欲しいわけではない。 「朝の退屈 で空腹な通勤時間を解決する」というジョブを片づけるために雇っている。  真の競合はカテゴリを超える 同じジョブ(朝の通勤時間の空腹・退屈対策)を解決する手段すべてが競合となる。  ベーグル

    手が汚れる・運転中 危険  バナナ/果物 すぐ食べ終わる・腹 持ち悪い  スニッカーズ 罪悪感がある・朝か ら重い Based on Clayton Christensen's Milkshake Dilemma  HIRE (雇用) CHAPTER 01: CORE CONCEPT 顧客はプロダクトではなく「進歩」を買っている  ジョブ理論の出発点  現状の生活・文脈 「渋滞する通勤時間... 空腹でイライラしたくない」 Start  望ましい進歩 「退屈な時間を紛らわせ、 昼までお腹を持たせる」 Goal  ミルクシェイク 片手で飲める 腹持ちが良い手段
  5.  初めての就活 不安と焦り WHEN (状況) 企業の探し方も進め方も分からず 不安で、何から手をつけていいか 分からないとき WANT (動機)

    多くの企業情報を一括把握し、必 要な行動を漏れなく確実にこなし たい OUTCOME (結果) 取り残されることなく、納得でき る会社から内定を得る安心感   脂っこい会食 健康への罪悪感 WHEN (状況) 健康診断が気になる中、周りがお 酒やジュースを頼んでいる飲み会の とき WANT (動機) 場の雰囲気を壊さず、脂肪への負 担を少しでも軽くできそうな飲み 物を選びたい OUTCOME (結果) 場を楽しみつつ「今日は気をつけ た」と自分に言い訳できる安心感   日々の料理 報われない努力 WHEN (状況) 家族から感謝も評価もされず、料 理作りが当たり前として受け取ら れているとき WANT (動機) 自分の工夫やアイデアを外の世界 に残し、誰かから反応をもらえる 場に載せたい OUTCOME (結果) 努力やセンスが他者に認められ、 報われなさが和らぐ実感   幼児と家事 ワンオペの葛藤 WHEN (状況) 家事に集中したいが、無作為な動 画を見せるのは教育上不安を感じ るとき WANT (動機) 年齢に合い、教育的で、親として 心配のないキャラクターアニメを 選んで流したい OUTCOME (結果) 罪悪感を抑えつつ家事に集中し、 「許容範囲」と納得できる状態   外での作業 集中力の欠如 WHEN (状況) 自宅やオフィスだと気が散り、集 中すべきタスクが溜まってモヤモヤ しているとき WANT (動機) 程よい雑音と他人の目があり、設 備が整った場所に移動して区切り をつけたい OUTCOME (結果) 気分を切り替えて集中し、 「やるべ きことに向き合えた」達成感  CHAPTER 01: EXAMPLES どんなプロダクトが想像できる?  ジョブ理論における5つのストーリー例
  6.  CHAPTER 01: THE PROBLEM 従来のやり方の限界  属性・機能・アイデア依存の罠 TRADITIONAL APPROACHES

     属性ベースの発想 年齢・性別・年収などの「ペルソナ属性」から考える。 「20代女性向け」等  機能・スペック起点 自社技術や機能差分を起点に、 「何が作れるか」から考える。 Product-Out思考  アイデア勝負 ブレストやカン・経験に依存し、再現性が低い。 運任せの発想      The Gap  動機の核心に触れられない 「なぜこのタイミングで選ぶのか」という文脈が見えない。 ? 行動のギャップが説明できない 「似た属性の人でも行動が違う」 「アンケート通りなのに売れな い」理由が不明。  ヒットは運任せのギャンブル 「出してみないとわからない」状態からの脱却が困難。 再現性のあるイノベーションが不可能
  7.  ジョブ理論は、 「ヒットかどうかは運任せ」という状態から抜け出すためのフレームワーク CHAPTER 01: BENEFITS ジョブ理論がもたらす3つの効用  イノベーションの再現性 

    「当て勘」を 再現可能なプロセスへ 「どのジョブにフォーカスすれば勝てるか」を 論理的に議論できるようになる。  機会領域の意図的な発見  UX設計への直接的な接続 1  「本当の競合」が 見える化される カテゴリ横断の競合や「無消費」まで含めて戦 場を描き直せる。  タクシー vs オンライン会議  メモツール vs ホワイトボード撮影 2  組織の共通言語となり 一貫性を生む 戦略〜開発〜マーケティングまでの全工程を同じ ジョブに向かって揃えられる。  機能要件とメッセージの整合  「機能のための機能」の防止 3
  8. ジョブは単なる機能的なタスクだけでなく、感情的・社会的な文脈を含んだ3つの次元で構成される。 製品が選ばれる理由は、しばしば機能以外の側面に隠されている。 3つの構成要素  機能的ジョブ FUNCTIONAL 「何を可能にするか」 特定のタスク処理や実用的解決。 例:移動する、穴を開ける 

    感情的ジョブ EMOTIONAL 「どう感じたいか」 個人の内面的な感情や心理状態の変化。 例:安心したい、自信を持ちたい  社会的ジョブ SOCIAL 「どう見られたいか」 他者からの評価や社会的立場の確立。 例:認められたい、良い親と思われたい 具体的な再解釈例  黒烏龍茶 高価格帯トクホ飲料 機能 脂肪の吸収を抑え、体外への排出を助ける。 社 会 飲み会で脂っこい食事の罪悪感を消し、自分だけソフトドリンクでも 「健康意識が高い」と いう免罪符を得て、場を壊さず参加する。  高級掃除機 Dyson等の高機能機 機能 微細なゴミまで強力に吸い取り、部屋をきれいにする。 感 情 家事の負担を減らし、 「掃除しなきゃ」という強迫観念を消し去り、部屋綺麗に維持できてい るという安心感を得る。 CHAPTER 01: DIMENSIONS 機能・感情・社会の3次元  多層的なジョブの理解
  9. プロダクト開発において、ジョブ理論は単なる分析ツールではなく、 「正しい問い」を設定するための思考フレームワークとして機能する。  問いの単位 BEFORE 「どんな機能を作るか?」 機能スペック起点  競合・市場定義 BEFORE

    「製品カテゴリ単位」 例:同じSaaS製品と比較  学習・改善ループ BEFORE 「売れたか/使われたか」 ビジネス成果のみで判断  結論:ジョブ理論は「汎用の思考インフラ」である 戦略・企画・UX・マーケ・組織の会話の質を底上げし、プロダクトの価値を計測可能なものに変える。  AFTER (JOB THEORY) 「どのジョブの、どの状況の、どのアウ トカムギャップを埋めるのか?」  AFTER (JOB THEORY) 「状況 × ジョブ単位」 例:無消費や代替行動も含めた競合Landscape  AFTER (JOB THEORY) 「狙ったジョブのアウトカムがどれだけ 改善されたか」 顧客視点での成功指標 CHAPTER 01: IMPACT ジョブ理論は「問いの質」を引き上げる  思考インフラの転換
  10. ※ 機能的には同じ「レシピサービス」でも、解決している深層心理(ジョブ)によって、デザインやコア機能が全く異なる。 Cookpad COMMUNITY / EMPATHY USER INSIGHT 深層心理 「毎日頑張っている私を認めてほしい」

    料理は孤独な家事労働。家族から感謝されないのが辛い。 JOB TO BE DONE 解決するジョブ  承認と共感(承認欲求) レシピを投稿したり「つくれぽ」をもらうことで、誰かとつながり、感謝さ れたい。 PRODUCT ESSENCE プロダクトの本質 「レシピ検索」は副産物。 本質は、主婦同士が生活の知恵を称え合う「コミュニティ」 。  クラシル QUALITY / EFFICIENCY USER INSIGHT 深層心理 「プロの正解を知って安心したい」 失敗したくない。献立を考えるのが面倒。素人レシピは美味しいのか不安。 JOB TO BE DONE 解決するジョブ  失敗回避と確実性(機能的欲求) プロ監修のレシピ通りに作ることで、味を保証し、効率的にタスクを完了さ せたい。 PRODUCT ESSENCE プロダクトの本質 「検索と動画」がコア。 本質は、最短距離で美味しい食事に到達する「ユーティリティ」 。 CHAPTER 02: FUNCTIONAL VS JOB 機能ではなくジョブで考える(作者主観の分析)  ケーススタディ比較 VS
  11.  The Job Story Formula ペルソナ(属性)ではなく、文脈(コンテキスト)を記述する標準フォーマット 3 GOLDEN RULES When

    ______ , I want to ______ , so that ______ . // [ Situation ] , [ Motivation / Action ] , [ Expected Outcome ] [ ______ という状況のとき ] 、 [ 私は ______ したい ] 、 [ その結果、______ という状態になりたい ] SITUATION いつ・どこで・何をきっかけに? MOTIVATION どんな行動をとりたいか? OUTCOME 機能的・感情的・社会的成果    CHAPTER 02: FORMAT ジョブ・ストーリーの記述フォーマット  コンテキスト重視の記述法 1 プロダクト名は禁止 「iPadを使いたい」ではなく「大画面で情報を閲覧し たい」と書く。手段ではなく目的を書くこと。 2 主語は常に「私」 「システムが〜する」ではなく、 「私が〜したい」と 書く。ユーザーの能動的な意思に焦点を当てる。 3 1文1ジョブ 複数の動機を混ぜない。状況が変わればジョブも変わ るため、別のストーリーとして切り出す。
  12.  Tip: 具体的なシーン(映像)が浮かぶレベルまで解像度を上げると、開発すべき機能が自然と見えてくる。 悪い例(曖昧・属性ベース) 解像度が低く、対策が打てない "営業担当者として、 CRMにもっと早くデータを入力したい。"  MISSING CONTEXT

    「いつ・どこで」がないため、PCなのかスマホなのか、移動中なのかデスク なのか不明。  VAGUE OUTCOME 「早くしたい」だけでは、どの程度の速さが必要か、なぜ早くしたいのか (動機)が見えない。  CHAPTER 02: EXAMPLES ジョブ・ストーリーの記述例  Before vs After  良い例(具体的・3層構造) 状況・行動・結果が明確 WHEN (状況) 顧客との商談が終わった直後、記憶が鮮明なうちに、移動中の タクシーの中で、 I WANT TO (行動) スマホだけで素早く議事録とネクストアクションを登録した い。 SO THAT (結果) 帰社後の事務作業をゼロにし、直帰して家族との時間を確保し たい(感情) 。 上司への報告遅れをなくし「仕事が早い」と評価されたい(社 会) 。  SPECIFIC CONTEXT 「移動中のタクシー」 「スマホ」という制約条件が明確→UI/UXの要件が決ま る。  DEEP MOTIVATION 「家族時間」 「社内評価」という本質的な動機(感情・社会的ジョブ)まで捉 えている。 
  13. 同じ「カフェ」に行くという行動でも、 状況(When)が変われば、ジョブも競合もガラリと変わる 。  Case 1: 眠気覚まし JOB TO BE

    DONE 「朝の通勤中、まだ頭がボーッとしている ので、カフェインを入れてシャキッと目を 覚ましたい」  本当の競合  コンビニコーヒー  エナジードリンク  カフェイン錠剤  Case 2: 集中作業 JOB TO BE DONE 「家だと誘惑が多くて進まないタスクを、 他人の目がある環境に身を置いて一気に片 づけたい」  本当の競合  図書館  コワーキング  ノイズキャンセリング  Case 3: 会話の場 JOB TO BE DONE 「友人と久しぶりに会うので、周りを気に せずゆっくりお喋りを楽しめる時間を過ご したい」  本当の競合  ファミレス  公園のベンチ  友人の家  一つのプロダクトであっても、 「どのジョブで雇われるか」によって、比較される相手(競合)は全く異なる。 CHAPTER 02: CONTEXT 同じプロダクトでも異なるジョブ  カフェの雇用事例
  14.  題材リスト 以下の中から(または任意の題材で) 、採用されうるジョブを5個以上考える。  モバイルSuica / 決済  フードデリバリー

     クラウド写真管理  動画配信サブスク  キャッシュレス決済  フリマアプリ  オンライン英会話  家事代行サービス  カーシェア / レンタカー  オンライン共同編集  進行手順 1 INDIVIDUAL WORK 20分:ジョブ作成  2 GROUP WORK 40分:発表・クイズ  WORKSHOP SESSION 01 ワーク1:ジョブストーリーを記載する  20 min TIME LIMIT  ワークのルール  プロダクト名は書かない 「Uber Eatsを使う」ではなく「家から出ずに温 かい食事を摂る」と書く。  主語は「私」にする 機能説明にならないよう、ユーザー視点の物語に する。  Whenを先に量産する 状況(いつ・どこで)を変えれば、自然とジョブ も変わる。まず状況をたくさん出す。 OBJECTIVE 「同じモノでも状況によって動機が全く 異なる」ことを体感する。
  15. EXAMPLE THEME テーマ:「平日の夕食づくり」  同じ状況でも視点でジョブが変わる  PERFORMER 自分(作る人)  PERFORMER

    配偶者(食べる人)  PERFORMER 子ども(出される側)  PERFORMER 離れて暮らす親 01 「短時間で栄養バランスの良いものを作り、 『ち ゃんと家事をしている』という自己肯定感を得 たい」 「疲れて帰宅したとき、温かい食事が用意され ていることで、家庭での居心地の良さと癒やし を感じたい」 「野菜など嫌いなものを無理強いされず、好き な味でお腹いっぱいになって満足したい」 「息子/娘家族がきちんとした食生活を送ってい るかを知り、健康面での安心感を得たい」 CHAPTER 03: IDEATION METHOD 01 発散方法①:ジョブパフォーマーを増やす  視点の多様化 誰のジョブか? 一番シンプルで効果的な発散方法。 「自分」 だけでなく、そのプロダクトに関わる全ての 人の視点になりきってジョブを書き出す。  本人(自分)  配偶者・パートナー  子ども  上司・同僚  取引先・顧客
  16. Whenを3軸で刻む 「When(いつ) 」を「朝・昼・夜」だけで終わらせな い。3つの軸で掛け合わせると、利用シーンが一気に広 がる。  Time (時間帯) 朝 /

    通勤中 / 勤務中 / 帰り道 / 夜 / 週末  Place (場所) 自宅 / 職場 / 電車 / 店 / 実家 / 出先  Trigger (きっかけ) 通知受信 / 締切直前 / 指摘 / 体調不良 量産のための2ステップ 1 Whenだけを10個書き出す まずは状況のバリエーションを増やす。 「I want to」は後 回し。  2 後から中身を埋める 各Whenに対して「どうしたいか」 「どうなりたいか」を 追記。 Time × Place  通勤電車の中 × 始業前 Trigger × Place  会議中に通知が来た時 Place × Time  自宅 × 子どもが寝た後 Trigger × Time  体調の不調を感じた時 I WANT: 今日の予定をスマホで確認 SO THAT: 出社後すぐに仕事に入りたい I WANT: 緊急度だけを目立たず確認 SO THAT: 会議を壊さず不安を消したい I WANT: 誰にも邪魔されず没頭したい SO THAT: 一人の時間を取り戻したい I WANT: 原因と対処法を即座に知る SO THAT: 漠然とした不安を解消したい CHAPTER 03: IDEATION METHOD 02 発散方法②:シチュエーションを細かく切り分ける  状況の細分化
  17. 03 EXAMPLE THEME テーマ:「オンライン会議」  会議そのもの以外にも多くのジョブがある Before 会議が始まる前 TO BE

    DONE During 会議の最中 TO BE DONE After 会議が終わった後 TO BE DONE アジェンダを整理し、議 論の脱線を防ぐ準備をし たい  必要な資料やURLを一箇所 に集め、探す時間をゼロ にしたい  参加者の予定変更や遅刻 連絡をスムーズに受け取り たい  無駄話を減らし、決定事 項を明確に合意したい  発言していない人からも 意見を引き出し、公平感 を保ちたい  タイムキーピングを自動 化し、時間内に結論を出 したい  決定事項とネクストアクシ ョンを忘れずに記録・共 有したい  参加できなかった人に、 重要なポイントだけを手 早く伝えたい  CHAPTER 03: IDEATION METHOD 03 発散方法③:Before / During / After  時系列分解 時間軸で分解 1つの行為の前・中・後には、 必ず別のジョブが存在する。メ インの行為(During)だけで なく、その前後にも目を向ける ことで機会を見つける。 RULE 各フェーズで必ず 2〜3本 のジョブを出す   
  18. テーマ:「料理」での組み合わせ例 Case Study  TIME 時間が全くない(帰宅直後)  CONTEXT 子どもが小さく、お腹を空かせている 

    SKILL 料理が苦手でレパートリーが少ない  04 × ×  NEW JOB STORY 「包丁も火も使わず、5分以内に子供が絶対に喜んで食べるメインデ ィッシュを出して、 『待たせなかった』安心感と『手抜きではない』 言い訳が欲しい」 CHAPTER 03: IDEATION METHOD 04 発散方法④:制約条件を変える  変数の組み合わせ 5つの制約カード 制約条件を極端に変えることで、同じテーマでも全く異なるジョブが 浮き彫りになる。 「カード」を選んで強制発想する。  時間 (Time) 全くない / たっぷりある / 特定の時間帯  お金 (Money) 予算ゼロ / 節約したい / 金に糸目はつけない  情報 (Information) 何も知らない / 専門家レベル / 情報過多  スキル (Skill) 超初心者 / 慣れている / プロ級  人間関係 (Context) 一人きり / 家族・子ども / 上司・取引先
  19. 1 起点となるジョブを選ぶ 機能的なジョブは一旦忘れ、感情的・社会的欲求のリストから、 「このプ ロダクトで解決できそうな強い感情」を一つピックアップする。 2 その感情が強く立ち上がる「場面」を逆算する 「どんな状況なら、この感情が最大化されるか?」を考えることで、 機能から発想しても出てこない生々しい利用シーン(When)を発見できる。 具体例

    「罪悪感を減らしたい」という感情ジョブから逆算 ? 問い 「どんな時に、人は最も強い罪悪感を感じるのか?」 When 1 脂っこい食事をしているとき → 「健康や体型への悪影響」に対する罪悪感 When 2 子どもに動画を見せて家事をしているとき → 「育児放棄しているのではないか」という罪悪感 When 3 仕事を家に持ち帰って家族時間を削っているとき → 「家族サービスできていない」という罪悪感  結果 「罪悪感解消」という価値提案が刺さる具体的なコンテキストを発見  Pro Tip: 感情起点にすると、プロダクトの機能スペックに引きずられにくく、本質的な動機にたどり着きやす い。 CHAPTER 03: IDEATION METHOD 05 発散方法⑤:感情・社会的な結果から逆算する  逆転の発想で状況を発見  感情的ジョブ (Emotional)  安心したい / 不安を減らしたい  イライラを減らしたい  堂々としていたい / 自信を持ちたい  罪悪感を減らしたい  面倒くささから解放されたい  社会的ジョブ (Social)  認められたい / 評価されたい  責められたくない / 怒られたくない  ちゃんとしている人に見られたい  ダサい人だと思われたくない  家族・同僚といい関係を保ちたい 
  20. Ex テーマ:「情報を保存する」 人々が実際に行っている代替行動の分析  INSIGHT 「保存機能」ではなく、 「忘却防止」 「証拠保全」 「責任転嫁」がジョブの本質かもしれない。 

    06 Process  Action 1 自分宛にメールする URLやメモを自分に送る WHY (I WANT TO) 受信箱は毎日必ず見る場所だか ら、そこに置いておきたい RESULT (SO THAT) 「忘れて埋もれる」リスクをゼ ロにし、確実に処理する安心感 を得たい  Action 2 スクショを撮る 画面ごと画像として保存 WHY (I WANT TO) リンク切れや、どの部分が重要 だったか忘れるのを防ぎたい RESULT (SO THAT) 一瞬で「見たまま」を保存し、 後で再現できる確実性を担保し たい  Action 3 LINE・Slackに貼る 家族や同僚とのチャットに投げる WHY (I WANT TO) 保存と同時に「共有・確認」の タスクを完了させたい RESULT (SO THAT) 自分のボールを手離し、 「伝え た」という責任完了の状態にな りたい CHAPTER 03: IDEATION METHOD 06 発散方法⑥:競合・代替手段から拾う  現行行動の分析 行動の裏側を探る ジョブは「プロダクト」からだけで なく、 「人が今すでにやっている代 替行動」の中にこそ隠れている。 不完全な解決策(Workaround)を 見つけ、その裏にある「本当の願 い」を言語化する。  Key Question 「なぜわざわざ、そんな面倒 なやり方をしているのか?」
  21.  EXTRACT 3 構成要素に分解する  METHOD BENEFIT 「机上の空論」を避け、実際に血の通った言葉でジョブを定義できる 1 自分のエピソードを書く

    いきなり型に当てはめず、日記のように「あったこと」を書く。その 後、感情が動いた瞬間にマーカーを引く。  Step 2: 「願望」や「不安」にマーカーを引く 07  WHEN (状況) 仕事で疲れて帰宅し、思考停止状態だが、冷蔵庫 に半端な食材があるとき I WANT TO (動機) 献立をゼロから考えたり検索したりせず、あるも のだけで自動的に作れる料理を決めたい  SO THAT (結果) 「残り物をうまく片付けた」という達成感を得つ つ、家族にも手抜きだと思われない安心感を得た い   CHAPTER 03: IDEATION METHOD 07 発散方法⑦:ストーリーを書いてから抽出する  エピソード起点 昨日の夕食づくり。仕事で疲れて帰っ てきて、 もう献立を考える気力もなか った 。冷蔵庫を開けたら食材が中途半 端に残ってて、これを使うために 検索 するのが面倒くさい と心底思った。結 局、いつもの野菜炒めにしたけど、家 族に出すとき 「またこれか」と思われ ないか少し不安 だった。
  22.  利用シーンの抜け漏れ減少 「朝・夜」 「モバイル・PC」 「急ぎ・余裕あり」とい った多様な文脈(When)を網羅的に書き出すこと で、想定外の利用シーンや機会損失を防ぐことがで きる。  進歩ベースの優先順位付け

    機能単位ではなく、 「顧客にとって重要度が高く、か つ満たされていないジョブ」の順にロードマップを 組めるため、ビジネスインパクトを最大化しやす い。  チームの共通理解 When / I want to / So that の形式で整理された文脈 と目的が、PM・デザイナー・エンジニア間の共通言 語となり、 「誰の・何のための機能か」がブレなくな る。  解決策の幅が広がる 「状況と望む結果」を先に固定するため、 「このボタンを足す」だけでなく、別チャ ネル・自動化・フロー変更など、多様な解決策(How)を検討しやすくなる。  一貫したストーリーの指標化 リサーチ結果、開発機能、マーケティング訴求までを「どのジョブストーリーを支え るものか」というインデックスで紐づけ、一貫した説明責任を果たせる。 CHAPTER 03: BENEFITS OF QUANTITY ジョブストーリーを量産するメリット  量質転化の法則
  23. CHAPTER 04: VALUE HIERARCHY 価値の階層化:3階層の考え方  Impact Chain ジョブの解決は、単なる「作業の効率化」に留まらない。 小さな行動の変化が、日常を変え、最終的に人生や経営にインパクトを与える。

     STORYTELLING 「◯◯という面倒な行動を簡単にすることで、△△な日常の状態を安定させ、 結果として、□□な人生/事業の目標に近づける。 」という一文を作る。  行動・作業 (Task) TASK / ACTION  問い 誰の、どんな具体的な行動・作業が楽にな るか?  効果 手間が減る、ミスがなくなる、速くなる  日常・業務の流れ ROUTINE / WORKFLOW  問い 行動が変わることで、日常や業務フロー全 体はどう変わるか?  効果 習慣化する、リズムが整う、プロセスが短 縮される  人生・経営・組織 LIFE / STRATEGY  問い その状態が続くと、人生の質や経営目標に どんな影響があるか?  効果 健康寿命が延びる、利益率が上がる、意思 決定が変わる   Level 1: 直接的 Level 2: 一次的 Level 3: 二次的
  24. CHAPTER 04: BTOB EXAMPLE 階層の定義(BtoB例):経費精算SaaS  Corporate Context  直接的

     BEFORE (問題) 領収書の写真を撮り、金額を手入力し、申請書に添付するのが面倒。 ミスも多発。   AFTER (効果) スマホで撮影するだけで、日付・金額・内容が自動でデータ化され、 1分で申請完了。 → 「サクッと済ませたい」ジョブの解決 LEVEL 1 行動・作業  一次的  BEFORE (問題) 月末、経理担当者は従業員からの大量の紙申請と不備チェック・差し 戻しに忙殺される。   AFTER (効果) 入力不備や遅延が激減し、月次決算の締め作業が5営業日短縮され る。 → 経理部門全体の業務プロセス変革 LEVEL 2 日常・業務  二次的  BEFORE (問題) リアルタイムでコスト状況が見えず、経営判断が遅れる。経理が単純 作業員化している。   AFTER (効果) 正確なCF予測に基づいた迅速な投資判断が可能に。経理人材が戦略 的分析にシフト。 → 意思決定の質向上と人材価値の最大化 LEVEL 3 経営・組織
  25. CHAPTER 04: BTOC EXAMPLE 階層の定義(BtoC例):習慣化フィットネスアプリ  Personal Context  直接的

     BEFORE (問題) 今日は何をどれくらいやればいいか決めるのが面倒で、結局何もやらず に1日が終わる。   AFTER (効果) アプリがメニューを自動提案。開始ボタンを押すだけでタイマーと記録 が始まる。 → 「迷わずにスタートしたい」ジョブの解決 LEVEL 1 行動・作業  一次的  BEFORE (問題) 運動頻度が安定せず三日坊主。生活リズムが乱れ、自己肯定感も下がっ ていく。   AFTER (効果) 週3回、同じ時間に運動する習慣が付き、 「運動している自分」が当たり 前になる。 → 日常レベルでの「健康感」や「生活リズム」の改善 LEVEL 2 日常・習慣  二次的  BEFORE (問題) 健康診断の数値悪化や体調不良により、将来の病気や仕事継続への不安 がある。   AFTER (効果) 数値が改善し、病気リスク低下。体力がつき、仕事や家族時間の質も向 上する。 → 「長く健康に働く」 「家族と元気に過ごす」人生の支援 LEVEL 3 人生・家族
  26. このテンプレートを使って、あなたのプロダクトがもたらす「価値の連鎖」を書き出してみましょう。 下層(タスク)から上層(人生・経営)へと矢印がつながるようにストーリーを構築します。 この積み重ねが... さらに上位では...  Point: 矢印のつながりに無理がないか、 「風が吹けば桶屋が儲かる」になっていないかチェック!  BEFORE:

    現状の問題 例:手入力が面倒、時間がかかる、ミスが多 い... (具体的な行動・作業レベルの痛み)  AFTER: プロダクトの効果 例:自動化される、1クリックで終わる... (機能によって直接解消されること) Level 1: 直接的 (Task)   BEFORE: 日常・業務の問題 例:月末が憂鬱、チームの雰囲気が悪い、習 慣化しない... (繰り返されることで起きている状態)  AFTER: 日常・業務の変化 例:余裕が生まれる、リズムが整う、ミスゼ ロが当たり前に... (生活や業務フローの質の向上) Level 2: 一次的 (Routine/Workflow)   BEFORE: 人生・経営のリスク 例:健康不安、経営判断の遅れ、離職率増 加... (長期的・根本的な課題)  AFTER: 人生・経営のインパクト 例:健康寿命延伸、利益率向上、企業文化の 変革... (最終的に達成したい大きなゴール) Level 3: 二次的 (Life/Strategy) CHAPTER 04: TEMPLATE 価値の階層マップのフォーマット  Workshop Sheet
  27.  ワークの対象  ワーク1で作成・選定した「最も有望なジョブ」を1つ選ぶ チーム内で「これはビジネスインパクトがありそうだ」と感じたジョブストーリーを深掘りします。  発散のステップ(下から上へ)  成果物イメージ 前のページ(P26)のテンプレートを使用

     ポイント いきなり「人生の幸せ」に飛ばず、具体的なタスクの変化から積 み上げることで、説得力のあるロジックになります。 1 TASK LEVEL 直接的:行動・作業の変化 「面倒な作業がどう楽になるか?」具体的なタスクレベルの問題と解決策を洗い出す。 2 ROUTINE / PROCESS LEVEL 一次的:日常・業務の流れの変化 「その積み重ねで、毎日/毎月のルーチンがどう変わるか?」生活や業務全体への波及効果を考える。 3 LIFE / MANAGEMENT LEVEL 二次的:人生・経営へのインパクト 「結果として、人生や組織経営にどんな価値をもたらすか?」究極的なゴールや幸福との接続。   Goal WORKSHOP SESSION 02 ワーク2:価値の階層マップを作る  30 min TIME LIMIT
  28. “ DECISION FACTOR 勝敗の分岐点 = 状況への適合性 (Context Fit) コスト 緊急度

    スキル CHAPTER 05: COMPETITION ANALYSIS 真の競合を見つける  Strategic View 問い: 顧客があなたの製品を使わなかっ た場合、 代わりに何をして そのジョブを片づけていただろう か? 製品のスペック比較だけでは見えない、顧客の「生活文 脈の中での選択肢」こそが真の競合です。  Key Insight 同じ「空腹を満たす」ジョブでも、 状況によって競合は「レストラン」にもなれば 「スニッカーズ」にもなる。  Context (状況)  直接競合 同類製品  代替手段 Excel, 手作 業... TARGET JOB 顧客の進歩  無消費 最大の競合 何もしない・我慢する
  29.  BOUNDARY CONDITION 分岐条件:社員数◯人、申請数月◯件  すべての顧客・すべての状況で勝とうとしない。負ける場所を定義することが戦略。  Bを捨てる  Aに集中する

    SITUATION A  月末締め前日、経費申請が大量に溜まっている  JOB 申請漏れなく素早く終わらせて、残業せずに帰りたい  競合 Excel台帳、紙の申請書、領収書のやま WINNING ZONE 勝てる理由  スマホで撮影・一括処理できる「速さ」 Target Context LOSING ZONE 負ける理由  複雑な例外処理への柔軟性(Excelが勝る) SITUATION B  少人数スタートアップ、経費精算の頻度が低い  JOB ツールを増やさず、コストをかけずにシンプルに管理したい  競合 Googleスプレッドシート、チャットで報告、口頭 LOSING ZONE 負ける理由  現状のスプレッドシートで十分(過剰品質・コスト) Non-Target Context WINNING ZONE 勝てる理由  (この状況では強い訴求ポイントがない) CHAPTER 05: MATRIX シチュエーション・コンペティター・マトリクス  Strategy Framework VS
  30.  Why it matters? 多くの企業は「① 直接競合」ばかり見てしまうが、イノベーションの機会はしばしば「② 二次的競合」や「③ 無消費」から顧客を奪うことにある。 CHAPTER 05:

    COMPETITION SPECTRUM 競合の3分類  Competitive Landscape ① 直接競合 DIRECT COMPETITORS  定義 同じカテゴリの製品・サービス。 機能やスペック、価格で比較される相手。 EXAMPLE (オンライン英会話)  競合他社A社  格安英会話B社  ネイティブ特化C社 NARROW VIEW  ② 二次的競合 SECONDARY COMPETITORS  定義 手段は異なるが、 同じアウトカム(結果)をもたらす代替手段。 EXAMPLE  英会話スクール  YouTube動画  学習アプリ  Netflixで英語学習  BROAD VIEW (HIDDEN OPPORTUNITY) ③ 無消費 NON-CONSUMPTION  定義 「何もしない」 「我慢する」 「先送りする」 現状維持という選択肢。 EXAMPLE  「いつかやろう」と思って何もしない  諦めて翻訳ツールで乗り切る  「英語が話せない自分」を受け入れる BIGGEST COMPETITOR  EXAMPLE CASE:  オンライン英会話サービス
  31.  分析プロセス 「7. ジョブから価値の階層マップを作る」の続きとして実施 1 競合を列挙する(発散) 作成したジョブの階層マップに対し、各ジョブの競合をリストアップ。 「直接・二次 的・無消費」の3分類で漏れなく出す。 

    2 状況別の勝敗と分岐条件を記載(発散) 各競合に対し、ジョブ単位で選ばれる状況と選ばれない状況の両方を書き出し、そ の分岐点(条件)を特定する。  3 戦略的意思決定(収束) 「あえて捨てるところ」 「今後巻き返しに行くところ」 「強化するところ」を選ぶ。  成果物イメージ シチュエーション別勝敗ゾーン WINNING ZONE 我々が勝てる状況 LOSING ZONE 競合に負ける状況 BOUNDARY CONDITION 勝敗を分ける変数(予算、スキル、緊急度など)  WORKSHOP SESSION 03 ワーク3:勝敗パターンを描く  30 min TIME LIMIT  判断のポイント  捨てる勇気 どんな状況では、競合(または無消費)に譲った方が、全体 として得策か?  攻める焦点 どんな状況・どんな顧客に対して、このプロダクトは特に強 いのか?
  32.  Key Takeaways 本日のワークショップの4つの要点  進歩起点 (Progress) 「顧客は誰か?」ではなく「顧客はどんな進歩を遂げたいか?」を問いの出 発点にする。 

    アウトカム (Outcome) 機能(Output)を作るのではなく、顧客の望ましい結果(Outcome)を実 現することを目的とする。  状況適合 (Context Fit) 勝敗は絶対的な性能ではなく、 「特定の状況(Context) 」への適合度で決ま る。  共通言語 (Shared Language) ジョブストーリーを通じて、開発・マーケ・営業が同じ顧客像を見て意思決 定する。  Next Action Plan 明日から実践 ? Q&A Session 理論の適用や、自社プロダクトへの落とし込みで迷う点 はありますか?  CONCLUSION & NEXT STEPS まとめと次アクション Workshop Complete ジョブの優先順位付け ビジネスインパクトと未充足度が高いジョブを特定する。 1 顧客インタビュー設計 「いつ・なぜ」を深掘りするインタビューを実施し仮説検証。 2 計測指標(KPI)の定義 「機能が使われたか」ではなく「アウトカムが改善したか」を測る。 3