2016年8月6日、State of the Map Japan 2016にて発表。
避難所支援システムにおけるOpenStreetMapの利用2016年8月6日 State of the Map Japan 2016東海職業能力開発大学校 生産電子情報システム技術科山下幸祐
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自己紹介2
山下幸祐• 所属:東海職業能力開発大学校生産電子情報システム技術科• Twitter:@ochaochaocha3• 興味:Web技術、組込み技術• マッピング– 初心者– 生活範囲を少しずつ3
短大の卒業研究でこんなものを作りました
避難所支援システム「避難所てだすけくん」5太陽光発充電システム避難者名簿作成支援システム無線通信システム避難所統計システム
背景
災害発生時は避難所が開設される7
東日本大震災における課題• 安否情報の確認困難• 救援物資の需要の把握–食糧の配給の過不足–配給食糧によるアレルギー症状• 災害時要援護者(妊婦・身体が不自由な人等)への対応8
避難者名簿作成の実情• 解決のためには避難者名簿を作ることが有効9• 手作業で名簿を作成–作成や集計が困難–原因:電力・通信インフラ喪失→ コンピュータが使えない、通信できない• 名簿様式の不統一–得られる情報が救援ニーズと対応しない実情は…
目標電源喪失下でも単独で動作可能な避難者名簿作成・伝送支援システムを作る10
避難所てだすけくんのシステム図11バッテリースマートフォンタブレット端末入力端末「にゅうりょくん」市役所等災害対策本部避難所統計システム避難所支援サーバーWi-Fi 無線通信モジュールZigBee無線通信モジュール無線通信システム
避難所てだすけくんができること12避難者数を数える 避難者名簿をつくる 名簿や救援ニーズを送る太陽光による充電で動く避難者の入退室管理救援物資配給食物アレルギーへの対応
避難者名簿作成支援システム13
用途避難者名簿を素早く作る14避難者名簿作成支援システムサーバー 入力端末
コンセプト• 実際に必要な情報を入力• 災害発生当日:避難者の人数のみ• 災害発生後2日目以降:浜松市の避難者名簿様式• コストを抑える• 避難者の識別にバーコードを利用15
サーバーの構成・提供機能16ZigBee無線通信モジュールWi-Fi 無線通信モジュールサーバー(Raspberry Pi 2)無線通信用サーバーWebアプリケーションサーバーデータベース避難者の情報を入力する各端末との無線通信を行う避難者の情報を格納する
Webアプリケーション:避難者用17ホームページ 個人情報 アレルギー
Webアプリケーション:スタッフ用18ホームページ 登録避難者一覧 お知らせ
用途以下を素早く入力する• 避難者の人数• 入退室情報避難者の識別バーコードをリーダーで読むサーバーとの通信ZigBee無線通信19避難者情報入力端末
避難者名簿作成支援システムの運用実験• 浜松職業能力開発短期大学校の避難訓練で実施(2015年11月19日)• 約150名が参加• 10分間で避難者数を何人分数えられるか?–避難者数=参加者の家族の人数20
避難者名簿作成支援システムの運用実験運用実験の様子 10分間で数えられた人数21567人
実証結果避難者名簿作成支援システムを使うと数百人規模の大きな避難所でも避難者数を素早く把握できる22
無線通信システム23
無線通信システム• 避難所情報の無線データ通信を可能にする• ディジタル簡易無線を使用:無線免許不要24避難所市役所災害対策本部救援物資の送付避難所の状況
中田島砂丘付近浜松職業能力開発短期大学校© OpenStreetMap contributors避難所データの通信実験2.6 km約2.6 kmの距離で避難者数の無線データ通信ができた
避難所統計システム• 災害対策本部で使用するWindowsアプリケーション• 避難所に置いたサーバーとデータ通信• 避難所の情報を地図上に可視化• OpenStreetMapのデータを使用26
避難所統計システム(避難所みえるんです)
避難所統計システム(避難所みえるんです)29
避難所統計システム(避難所みえるんです)30
避難所統計システム(避難所みえるんです)31
避難所統計システム(避難所みえるんです)32
地図表示の仕組み33JSONファイルアプリケーション避難所情報を受信Webブラウザ部品書き出しHTMLファイルJavaScriptで読み込み地図描画Leaflet表示
通信インフラ途絶下での地図描画• あらかじめ地図のデータや画像(タイル)を用意しておく• 必要な地域のデータ・必要なズームレベルに限定し、容量を抑える– 今回は浜松市南区、ズームレベル13〜15のみ用意した(画像サイズ:約9 MB)34通信インフラが途絶した場合でも地図を表示できるようにするには…
地図データのダウンロードPlanet.osm extracts (BBBike.org)• http://extract.bbbike.org/• 地図上で指定した領域の地図データをダウンロードすることができるサービス35
地図画像(タイル)の生成1. ダウンロードした地図データをPostgreSQLに取り込む(osm2pgsql)2. CartoCSS・OpenStreetMap Cartoを使用してMapnikの設定用XMLファイルを作る3. Mapnikを使用して地図画像を生成する– OpenStreetMap.orgで使われているスクリプトを一部変更して使用– http://svn.openstreetmap.org/applications/rendering/mapnik/generate_tiles_multiprocess.py36
OSMだからできたオフラインレンダリングGoogleマップ• APIはインターネット上– 通信インフラ途絶時は使えない• タイルのダウンロードは規約で禁止されている– https://developers.google.com/maps/terms の10.1OpenStreetMap• オープンデータ• タイル生成・描画のためのツールが充実– すべてオープンソースソフトウェア37
今後の課題• 地図上に表示するデータの種類を充実させる• 無線通信の距離や信頼性を向上させる• 使いやすい検索機能を実装する• 地図データの変更や更新を行いやすくする• 地域の方にとって使いやすくなるように改良する38
謝辞• 共同研究者– 株式会社ユー・エス・ピー天城康晴様– アツミ特機株式会社山口高男様– 株式会社シーポイントラボ小川拓也様– 神奈川工科大学安部惠一准教授• 静岡県危機管理部– 竹馬徹様– 内山敬介様• 浜松市– 栗田幸紀様• 下り専門さん• 浜松職業能力開発短期大学校– 西出和広講師– 橋本隆志准教授– 前年度まで制作を行った先輩方– 川合寛人氏– 久野雅治氏– 福田万希也氏– 花崎祐貴氏– Hoang Huu Dung氏39
まとめ• 組込み技術とWeb技術を組み合わせて避難者名簿作成・伝送支援システムを製作した• システムの運用実験を行い、迅速な避難者情報の入力と伝送が行えることを実証した• OpenStreetMapのデータと関連ツールを利用し、通信インフラ途絶下でも収集した情報を地図上で可視化できるようにした40
補足41
ソフトウェアのURL• osm2pgsql– https://github.com/openstreetmap/osm2pgsql• CartoCSS– https://github.com/mapbox/carto• OpenStreetMap Carto– https://github.com/gravitystorm/openstreetmap-carto• Mapnik– http://mapnik.org/• 避難所てだすけくん– 制作したソフトウェア– https://github.com/hinanjo-tedasukekun42
無線通信システムの特徴• ディジタル簡易無線機を使用• 使用周波数帯域351 MHz• 長所– 無線免許がなくても使用可能– 音声通信及びデータ通信が可能– データの暗号化が可能– 無線機の出力は5 W– 約10 kmの範囲で通信可能• 短所– 1度に5分以上送信できない43