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6G/テラヘルツの取り組み

 6G/テラヘルツの取り組み

2023年3月16日に開催された「SoftBank Tech Night Fes 2023」の講演資料です。

約10年ごとに進化してきた無線通信。2030年には第6世代の無線通信「6G」が登場すると期待されています。
6Gでは、5Gを超える超高速通信を実現するために、これまで使われてこなかった新しい周波数 テラヘルツ帯の開拓が必要となります。
テラヘルツとは何なのか?周波数が高くなるとどういった課題があるのか?本当に実現するのか?など、ソフトバンクの取り組みを交えながら紹介します。

■関連リンク
・移動通信でのテラヘルツ帯の利用に向けた取り組み(ソフトバンク先端技術研究所)
https://www.softbank.jp/corp/technology/research/story-event/002/

・Beyond 5G/6Gのコンセプトおよび実現に向けた挑戦を公開
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2021/20210714_01/

■作成者
矢吹 歩(やぶき あゆむ)
ソフトバンク株式会社
先端技術研究所 無線イノベーション部 先端無線開発課
課長

■SoftBank Tech Nightについて
ソフトバンク株式会社のエンジニア有志が開催するテックイベントです。
各分野のエキスパートが、日頃培った技術や事例、知見について発信しています。
イベントは開催スケジュールはconnpassをご確認ください。
https://sbtechnight.connpass.com/

SoftBank Tech Night Fes 2023公式サイト
https://www.softbank.jp/biz/events/tech-night-fes-2023/

SoftBank Tech Night

March 16, 2023
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Transcript

  1. © SoftBank Corp. 2023 自己紹介 ◆ 名前 ◆ 矢吹 歩(やぶき

    あゆむ) ◆ 経歴 ◆ 2007年 WILLCOM新卒入社 → 2011年SBに吸収合併 ◆ 次世代PHSの基地局・端末の受け入れ試験(デバッグ) ◆ AXGPネットワーク立ち上げ(実フィールドでの性能測定) ◆ MassiveMIMOの実証実験, 3.5GHz-LTEの実証実験 ◆ Cloud-Gaming サービスの立ち上げ ◆ テラヘルツ通信の基礎研究 ◆ 主な専門分野 ◆ 無線通信の物理層(MIMO, 電波伝搬)〜L3まで ◆ 趣味 ◆ スプラトゥーン3(クラブラ無印)、ミニ四駆(片軸派) © SoftBank Corp. 2023
  2. © SoftBank Corp. 2023 9 9 通信方式はOFDMAで完成を迎えた形 周波数あたりのデータ密度は もう上がらない。 =>

    新周波数の開拓によって通信速度を向上 4G 2010年代 OFDMA 5G 2020年代 OFDMA Sub6+ミリ波 700MHz〜3.5GHz 6G テラヘルツ波 2030年代 *4G/5Gは日本の通信事業者に割り当てられている全国免許の周波数幅の合計。 6Gは割当周波数幅の予測。 4G以降の通信方式
  3. © SoftBank Corp. 2023 「5G」と「ミリ波」 「mmW」とも書かれ 5Gでは「10Gbpsを実現できる」と期待されている。 波長が 1mm ~10mm

    程度のため、その単位から 「ミリ波」という呼び名が付いている。 正しくは、30 GHz 以上が「ミリ波」に相当するが 世間一般的に、なんとなく 10 GHz以上は「ミリ波」 と呼ぶ雰囲気になっている。 10 超高速 10Gbps 超低遅延 <1msec 多数 同時接続 5Gに求められる無線性能
  4. © SoftBank Corp. 2023 11 11 11 テラヘルツは, 6Gで「100Gbpsを実現できる」と 期待されている周波数で

    周波数: 0.1 THz 〜 10 THz 波長: 3mm 〜 0.03mm の周波数帯のことを「テラヘルツ」と呼ぶ 超高速 100Gbps 超低遅延 <0.1msec 超多数 同時接続 6Gに求められる無線性能 (5Gの拡張のみ抜粋) 「6G」と「テラヘルツ」
  5. © SoftBank Corp. 2023 1MHz 1GHz 10GHz 100GHz ~10THz 100THz

    1000THz 短波 / VHF / UHF マイクロ波 ミリ波 赤外光 可 視 光 紫外光 テラヘルツ波 人によって100GHz ~ 300GHz は ミリ波, 300GHz ~ 3THz は サブミリ波と呼んだり 100GHz ~ 500GHz は サブテラヘルツ と呼んだりする 正直、はっきり決まっていないけれど 最近は 100GHz ~ 10THzを”テラヘルツ”と呼ぶ人が増えてきた
  6. © SoftBank Corp. 2023 ※ WRC (世界無線通信会議)で固定/移動通信向けに特定されている周波数マップ 100 GHz 150

    GHz 200 GHz 250 GHz 300 GHz 350 GHz 400 GHz 450 GHz 365 - 450GHz 94GHz幅 252 - 296GHz 44GHz幅 基本的に、電波天文の分野でしか使われていない周波数であり 通信利用で見たときに競合がない。 100Gbpsを越える速度を狙うには、10GHz幅を超える 広い周波数を利用することになるため、250GHz以上の周波数が狙い目。 200GHz以下は、4GHz ~ 12.5GHz幅と 周波数が断続的に空いている状態。 250GHzを越えると 数十GHz幅の帯域が連続で確保可能 テラヘルツは桁違いに広い
  7. © SoftBank Corp. 2023 15 4G 5G 6G 20MHz 最大100MHz

    幅まで Carrier Aggregation 可能 100MHz(Sub6), 400MHz(mmW) 最大800MHz 幅まで Carrier Aggregation 可能 2.16 GHz (IEEE 802.15.3d) 最大 69GHz幅までBonding可能 ※ 1チャネル当たりの最大帯域幅 6G向けのキャリア幅
  8. © SoftBank Corp. 2023 16 中国 Huaweiが220GHzで屋外通信実験 日本 NTTが300GHzで固定通信 ドコモが110GHzで屋外実験

    SBが300GHzで通信実験 NICTの委託研究で300GHzを開拓 欧州 Hexa-Xで300GHzの研究 imecが140GHzの半導体アンプ(InP)の研究 R&Sが158GHzで屋外伝搬実験 エリクソンがCosmoteとW-Bandで通信実験 韓国 サムスンが140GHzで屋内通信実験 US FCCが95GHz-3000GHzを実験用に開放 Qualcommが145GHzで屋外通信実験 世界的に見ると、テラヘルツの研究開発は 140 - 160GHzで進んでおり 250GHz以上は もう少し先のロードマップ。日本とドイツが研究を先行。 ITU-Rでは、2027年頃から IMT-2030が規定され 100GHzを超える周波数利用が本格化する見込み 世界でも進むテラヘルツ開拓
  9. © SoftBank Corp. 2023 18 小規模オフィス, 1部屋分くらいの広さで 複数人が同時に利用するような場面を想定 THz 基地局

    「6G: 第6世代移動通信」ということで、まずは通信として使いたい。 屋内のPicoセルのような使い方を想定して、研究を実施 スポットライトのようなエリアでは不十分。 ある程度、広がりを持った「エリア」を作る 必要がある。 ソフトバンクの研究内容
  10. © SoftBank Corp. 2023 19 19 伝搬による減衰が大きい 距離10mに対する減衰(自由空間) 2.5GHz :

    約60dB 300GHz : 約100dB 増幅できない 100GHzを超えると、これまでの半導体では十分に 信号を増幅できない。 「テラヘルツギャップ」というものが知られていて、 光の技術も電波の技術も弱い。 反射・散乱の特性が未知 電波のように、壁も通過するのか? 光のように、ガラスしか透過しないのか? 電波がどこで反射するのか、どこからやってく るのかがわからず、どう設計したらいいか不明 ビームフォーミングの処理が大変 ビームフォーミングが必須なことは明確 しかし、帯域幅は広く、アンテナも増やす となると、信号処理が追いつかない懸念 WiFiの1万倍減衰が大きい エリア構築に向けた課題
  11. © SoftBank Corp. 2023 20 20 伝搬、反射・散乱の特性を測定 屋内/屋外での伝搬測定でその特性を解析する。 物体の反射率や散乱の強度を測定し、その特性 を解析する。

    アナログ技術を積極的に取り入れ デジタル処理が間に合わないのであれば、 アナログな機構を取り入れることで、信号処理 を楽にしようという考え。 ソフトバンクの取り組み
  12. © SoftBank Corp. 2023 21 21 装置の構造 導波管 一次放射器 (ホーンアンテナ)

    反射板が回転 (最大600 rpm以上) モーター ビームの方向 周波数変換器 信号入力 装置外観 <特長> ⚫ 開発に時間がかかる、高周波のビームフォーミング技術 を早期に実現 ⚫ Phased Array Antennaでは実現できない、360度方向 のビーム走査を実現 ⚫ 通常の回転アンテナではありえない、高速回転を実現 通常何十分もかかる測定を、1分以下に短縮 ⚫ 上部の反射鏡を取り替えることで、ビームの形を変える ことが可能 ⚫ 低コスト、低電力 アンテナ開発の紹介①:回転反射鏡アンテナ
  13. © SoftBank Corp. 2023 22 22 ビームパターン アンテナ外観 <特長> ⚫

    アンテナからの距離に対して、受信電力が一定となる。 ⚫ 既存の周波数で設計すると、大きくなって使えないが テラヘルツならでは、手のひらサイズ ⚫ ビームフォーミングを「使わない」技術 ⚫ 低コスト、電力 0 受信電力 強 受信電力 強 受信電力 強 アンテナ開発の紹介②:コセカントビームアンテナ