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医療、レセプト、DX、いまむかし

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February 06, 2025

 医療、レセプト、DX、いまむかし

2024年11月16日 IT勉強宴会「診療実績管理とレセプト処理合理化のためのデータモデル@新横浜」 発表資料

日本における医療とITの歴史を、資料の引用を中心として解説しています。

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February 06, 2025
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  1. 自己紹介  小貫陽介(オヌキヨウスケ)  33歳男 北海道出身 埼玉県在住  元病院事務員の現Webエンジニア 

    大まかな経歴  4年制大学(文学部)卒  2013/04~ 総合病院の医事課勤務  2018/04~ ITエンジニアへ転身、業務システム開発  2020/10~ 医療系のシステム開発ばっかり (※サラリーマンです) 4
  2. 電子カルテの普及率は 6割弱  施設数  病院(20床~)約8,000  診療所(~19床)約100,000 • 400床以上では9割以上

    • 200床未満では5割を切る • 診療所も5割に留まる 厚生労働省 医療分野の情報化の現状 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/index.html 7
  3. 電子カルテ、オーダリングシステムってなんだい カルテ  「診療録」。診療の経過が記載され、患者に対 する診療の記録の中心  記録する事項がある程度法令で定められている 例)氏名、住所、年齢、病名、主要症状、治療方法、 診療年月日、保険資格、初見 

    医師は、診療に関する事項を遅滞なく診療録に 記載しなければならない(医師法第24条第1項)  5年間の保存義務がある(療養担当規則第9条) オーダリングシステム  オーダエントリシステムとも  各部門システムをつなぐ役割をもつ  指示伝票による部門間連携をコンピュータシス テム化したもの 8
  4. 医療機関の現場のようす  新規開業では電子カルテの導入が前提となる一方、既存施設ではいまひとつ導入がすすんでいない  (よく揶揄される)FAXが現役  USBメモリが現役  紹介状の交付は用紙・封筒とCD(レントゲンなどの画像)を患者に渡す 

    こうした状況を打開するためのクラウドのITサービスも登場しているが…  カルテが紙であるために情報の入力・転記の手間が生じたり、オンプレの場合も連携に制約が生じたりする 基幹であるカルテが電子化しないと状況の根本的な改善は難しい 9
  5. なぜ電子カルテが普及しないのか?  医療スタッフの人員不足  労働集約型ビジネス  現場の疲弊、働き方改革  地域偏在、都市部流出、職員の高齢化・固定化 

    IT人材の不足  ITリテラシーの不足  業務専用端末、PCを操作する限られたスタッフ  算定のための記録  診療報酬算定のための記録・委員会・書類・手続き  転記、転記、転記…  専門家集団  合意形成が難しい、経営への関心の薄さ  変化を厭う、現行踏襲  医療に対する「かくあるべし」のこだわり  医療機関の経営状況、体力  サービスの価格が公定(診療報酬)  高額で手が届かない製品、ソリューション  高額医療機器への先行投資  補助金依存のシステム化対応  新規ベンダーの参入障壁の高さ  日本特有の国民皆保険、診療報酬制度  カスタマイズ前提  専門性の高さ、運用の違い  部門・科・病棟  「運用にシステムがあわせろ」  従来のベンダーのビジネスモデル 10
  6. 医療機関の収支構成  収益  9割弱が医業収益  入院は外来の3倍近い  費用 

    4割強が人件費  3割強が材料費  0.5割程度が減価償却 福山市民病院(506床)2021年度予算 | 病院事業の業務状況 https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/koho-detail01/koho-202107/188782.html 11
  7. 日本の医療の特徴  自由開業医制とフリーアクセス  医療サービスの現物給付  国民皆保険  診療報酬による公定価格 

    混合診療の禁止 14 住民は医療機関を選んで受診し、医療費の支払は保険証に記載の自己負担を支払う
  8. 診療報酬の支払と審査  審査支払機関はレセプトを審査し、返戻や査定を決定する  返戻 .. レセプトの内容に不備があるとして差し戻すこと(C/F・B/Sに影響)  事務的な理由が多いが、算定内容に対する疑義による返戻も多い 

    返戻事由の例)保険資格の不備や資格喪失、生年月日誤り、算定内容や実施内容の疑義、計算ミス  査定 .. 医学的または診療報酬のルール上、誤りや過剰と見なして支払を減額すること(P/Lに影響)  査定事由の例)病名漏れ、過剰算定、禁忌医薬品の投与、算定要件を満たさない 24
  9. 1960年代末~1970年代  医療機関の各部門ごとに、省力化・効率化を狙ってコンピュータシステムが導入されはじめる  医事会計システム(レセプトコンピュータ)が先駆け  診療報酬の複雑で多量な計算を処理し、請求業務を省力化  臨床検査システム 

    検査で取扱うデータは数値がメインで、コンピュータとの相性がよかった  分析装置が自動化し、コンピュータ接続により検査業務の自動化がすすむ  経理・会計システム 導入されたシステムは、あくまで部門内での運用に限られた 部門間の通信・連絡は紙による伝票が介在 30
  10. 1980年代後半~1990年代  効率化や記録のためのシステムが、次第に診療支援機能を備えていく  検査結果の照会や変遷のグラフ表示機能  医薬品情報(DI)の提供  PACS(放射線画像の電子的な保存・管理) 

    入院患者ごとの看護ワークシート(作業一覧表)の出力  検査、内服、注射などの作業の実施漏れを防ぐ  診療科を超えて一元化された診療情報  複数の科での同じ検査の実施や薬剤の重複投与を避けられる 32
  11. 1990年代中盤~2000年代  基準を満たせば電子データを原本とする電子カルテが認められた  1999年 厚生省の通知「診療録等の電子媒体による保存について」  電子保存の3原則 .. 真正性・見読性・保存性

     オーダ記録だけでなく診療記録すべてを電子化する電子カルテシステムが登場 ※「電子カルテ=完全なペーパーレス」というわけではない 33
  12. 法令関連  2003年 DPC/PDPS(診断群分類による包括払制度)開始  2002年 診療録等の外部保存に関するガイドライン  2005年 e-文書法、個人情報保護法、医療情報システムの安全管理に関するガイドライン

     2011年 レセプトオンライン提出原則義務化  2014年 マイナンバー制度開始  2021年 オンライン資格確認開始  2023年 電子処方箋、マイナ保険証開始  2024年 マイナ保険証に一本化…? 35
  13. システム化のレベル (JAHIS段階的定義)  部門内システム ↓  部門間システム ↓  医療機関内

    ↓  複数の医療機関間 ↓  医療情報+保険福祉情報 36 システム 化レベル 具体的システム化 コメント レベル1 部門内において電子化された患者情 報を扱うレベル 例えば、医事システムや検体検査システムなどの部門シス テムは稼動しているがその連携は紙の伝票で行われている ケース。 レベル2 部門間をまたがる電子化された患者 情報を扱うレベル 医事システム・薬剤システム・検体検査システム・給食シ ステムなどの部門システムが少なくともシステム化され、 医師入力のオーダリングが実施されているケース。 このレベルも他のオーダ種別や他部門のシステム化の有無 などにより、レベル間に差がある。 レベル3 一医療機関内の(ほとんど)全ての 患者情報を扱うレベル 一般的に電子カルテシステム導入といわれるレベルで、フ ルオーダ及びほぼ全部門のシステム化が行われ、紙のカル テや看護記録、画像情報が電子化されている。 また厚生労働省が求めている3原則に対する対応も出来て いることが必要である。 レベル4 複数医療機関をまたがる患者情報を 扱うレベル 電子カルテシステム化された医療機関と、例えば地域の診 療所とが紹介状やカルテ情報のやり取りやインターネット などを介した予約システムが行える。 レベル5 医療情報のみならず、保健福祉情報 もあつかうレベル 一般病院と長期療養系の病院、更には介護老健施設などの 福祉施設などとも情報連携が出来ている。また健診情報と の連携や患者宅との連携までも視野にいれたネットワクシ ステム。 電子カルテシステムが医療及び医療機関に与える効果及び影響に関する研究(報告)平成17年 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/03/s0303-8a.html
  14. データの利活用、二次利用 日本でのデータ活用・分析は、まだまだレセプトの色が強い印象  レセプトデータ  DPCデータ  NDB .. 匿名化されたレセプト・特定健診情報(名寄せに課題)

     National Clinical Database(NCD) .. 手術実績  病床機能報告  病院報告  死因統計、がん登録  その他、各種の実績報告 38
  15. HL7 FHIR  医療情報の交換・共有のための世界的な標準規格  Fast Healthcare Interoperability Resources 

    RESTfulな情報交換用フレームワーク  GET /Condition/condition-id .. 識別子が condition-id である傷病名(Condition)を取得する  データ交換規格だが、FHIR準拠の形式でそのままデータを永続化できるストレージを提供するサービス もある  利用者による20%の拡張を認める https://hl7.org/fhir/R4/index.html 41 GET /Condition/condition-id
  16. 医療情報システムの課題  多くの医療機関がJAHISレベル1~3で長年足踏みしている状況  長年の機能拡充により、重厚長大なシステムに成長  個別最適や拡充の積み重ねにより、UXに優れているとは言い切れない  旧世代のOSやハードウェアでないと運用できないものもある 

    セキュリティに課題、ランサムウェアの脅威  クラウドサービスやネットワークを介した外部とのシステム連携に課題  閉域網を前提とするオンプレシステムも多く、接続が困難あるいはひと手間必要  ベンダーを超えた共通規格の普及や連携基盤に課題  カスタマイズ開発が多い導入や運用  医療機関のローカルルールへの個別対応 44
  17. クラウドへのシフトの現状  既存製品のすすまないクラウド化  長年の歴史ゆえシステムが重厚長大  クラウド/オンプレのビジネスモデルの違い  クラウド版の再開発を要する 

    価格が高く手が届かない中小病院が多いが、代替となる製品が市場にない  高い参入障壁  診療報酬・保険制度の複雑性や医療ドメインの難しさにより、新規参入が難しい  クリニック向けのクラウド電子カルテ製品は多いが、病院向けは選択肢がない 45
  18. 日本をとりまく状況  2025年問題  日本人の3人に1人が65歳以上(前期高齢者)、5人に1人が75歳以上(後期高齢者)  超高齢社会の到来  生産年齢人口の減少 

    働き方改革  医療人材の地域偏在  医療・看護・福祉サービスの需要増、供給減  社会保障制度の存続の危機 47
  19. 具体的な施策及び到達点  (1)マイナンバーカードと健康保険証の一体化の加速等  (2)全国医療情報プラットフォームの構築  ① 電子処方箋・電子カルテ情報共有サービス  ②自治体、介護事業所等とも、必要な情報を安全に共有できる仕組みの構築

     ③医療等情報の二次利用  (3)電子カルテ情報の標準化等  ①電子カルテ情報の標準化等  ②標準型電子カルテ  (4)診療報酬改定 DX  (5)医療 DX の実施主体 51