Cohenの規準(一般的なベンチマーク) 161 Cohen (1988) は、標準化効果量を解釈する際の目安となる基準を「小(small)」 「中(medium)」「大(large)」の3段階で示している d 判定 d = 0.2 Small d = 0.5 Medium d = 0.8 Large r 判定 r = 0.1 Small r = 0.3 Medium r = 0.5 Large ⚫ Cohenの規準の問題点 • Cohenの基準は行動科学分野の研究を通してこれまでに得られた効果量を参考にして作成さ れた経験則であり、全ての分野において適応できるものではない • Cohenの基準で小さいとされる効果量も、分野によっては大きな意味を持つ • 研究者は、得られた効果量を現実的な文脈や研究分野ごとの文脈に位置づけることでその実 質的な意味を解釈すべきであり、Cohenの規準のようなベンチマークを機械的に当てはめて 解釈を放棄することは望ましくない
分野ごとに細分化された規準 162 • Cohenの規準への批判は、それに代わる新しいベンチマークを生み出すことにつながった。 • 新しいベンチマークの修正の方向性は主に2点にまとめられる。1点目は、Cohenの基準の段階 をより細かくすることである。2点目は、分野を限定し、過去の知見から経験的に段階を設定す ることである。 ➢ Sawilowsky (2009) は、近年のメタ分析によって得られた効果量の値が大きくなっていること を根拠に、Cohenの基準を以下のようにプラスの方向に拡張することを提案している。 d 判定 d 判定 d < 0.1 Tiny 0.8 <= d < 1.2 Large 0.1 <= d < 0.2 Very small 1.2 <= d < 2 Very large 0.2 <= d < 0.5 Small d >= 2 Huge 0.5 <= d < 0.8 Medium
分野ごとに細分化された規準 163 ➢ Gignac & Szodorai (2016) は、心理的な構成概念や行動の相関に関する708件のメタ分析を収 集した結果、この分野の効果量分布はCohenの基準よりもより小さいものであることを明らかに した。そして、相関係数rの判断基準を以下のように修正することを提案した。 判定 Cohen (1988) Gignac & Szodorai (2016) Very small r < 0.1 r < 0.1 Small 0.1 <= r < 0.3 0.1 <= r < 0.2 Moderate 0.3 <= r < 0.5 0.2 <= r < 0.3 Large r >= 0.5 r >= 0.3 ➢ その他にも、心理学(Funder & Ozer, 2019)や社会心理学(Lovakov & Agadullina, 2021)と いった分野特有の規準が提案されてきた。また、老年学(Brydges, 2019)や教育介入(Kraft, 2020)といったより細かな分野ごとの基準も提案されている。 Funder & Ozer (2019) Lovakov & Agadullina (2021) Kraft (2020) r < 0.05 - Tiny 0.05 <= r < 0.1 - Very small r < 0.12 - Very small 0.1 <= r < 0.2 - Small 0.12 <= r < 0.24 - Small d < 0.05 - Small 0.2 <= r < 0.3 - Medium 0.24 <= r < 0.41 - Moderate 0.05 <= d < 0.2 - Medium 0.3 <= r < 0.4 - Large r >= 0.41 - Large 0.2 <= d - Large r >= 0.4 - Very large