$30 off During Our Annual Pro Sale. View Details »

科学教育の読書会を中心とした新しい研究活動の展開

Daiki Nakamura
September 21, 2023

 科学教育の読書会を中心とした新しい研究活動の展開

日本科学教育学会第47回年会@愛媛大学
課題研究発表3A1
「テーマ:オンラインコミュニティを基盤とした科学教育の新しい研究活動―若手研究者が取り組む対話と共創―」
代表:中村大輝

Daiki Nakamura

September 21, 2023
Tweet

More Decks by Daiki Nakamura

Other Decks in Education

Transcript

  1. オンラインコミュニティを基盤とした科学教育の新しい研究活動
    ―若手研究者が取り組む対話と共創―
    1
    中村 大輝 (宮崎大学)
    雲財 寛 (東海大学)
    荒谷 航平 (北海道教育大学)
    長沼祥太郎 (九州大学)
    2023年9月20日
    9:30-11:30
    日本科学教育学会年会
    @愛媛大学
    日本科学教育学会第47回年会
    3A1 課題研究発表

    View Slide

  2. コロナ禍での研究活動 2
    2019年 第43回(宇都宮) :対面
    2020年 第44回(姫路) :オンライン
    2021年 第45回(鹿児島) :オンライン
    2022年 第46回(愛知) :オンライン
    2023年 第47回(愛媛) :ハイブリッド
    対面での研究活動が大きく制限された
    研究に関する様々な機会の損失
    ⇒ オンラインでの研究活動へ
    基盤 オンラインコミュニティ
    研究内容を学ぶ 研究方法を学ぶ
    共同研究の推進
    インプット
    アウトプット
     新しい研究活動の構造
    • 時間と空間を超える
    • メンバーの多様性
    • テクノロジーの活用
    • ゆるやかな包摂性
    • 対話と共創
     コロナ禍での工夫はこれからの研究にも役立つ部分があるのではないか。
     これからの時代の研究活動について広く議論したい!

    View Slide

  3. 課題研究発表の構成 3
    オンラインコミュニティ
    研究内容を学ぶ
    研究方法を学ぶ
    共同研究の推進
    「オンライン研究コミュニティの運営事例の紹介」
    雲財 寛(東海大学) @h_unzai
    「科学教育の読書会を中心とした新しい研究活動の展開」
    中村 大輝(宮崎大学) @d_nakamuran
    「国際共同研究プロジェクトROSESの運営体制」
    長沼 祥太郎(九州大学) @ShotaroNaganuma
    「若手の科学教育研究者の対話:「質的研究勉強会」を事例として」
    荒谷 航平(北海道教育大学) @ArayaKohei
    全体討論
    指定討論者:稲垣成哲 先生(立教大学) @si_rokko
    特別ゲスト:???

    View Slide

  4. 科学教育の読書会を中心とした新しい研究活動の展開
    1
    中村 大輝 (宮崎大学)
    2023年9月20日
    日本科学教育学会年会
    @愛媛大学
    全15枚
    日本科学教育学会第47回年会
    3A1-A02 課題研究発表

    View Slide

  5. 発表の趣旨 2
     コロナ禍での若手の研究活動
    • 様々な分野の若手研究者が中心となってオンラインのコミュニティを形成
     科学教育の読書会(Science Education Book Club in Japan, SEBCJ)
    • 2020年7月に科学教育に関わる若手研究者で設立
    • 若手研究者が場所や所属に関係なく誰でも自由に議論できる場を目指す
    ⇒ SEBCJの活動紹介を通して、新しい時代の研究活動の在り方について検討する

    View Slide

  6. SEBCJの概要 3
    • 週1回3時間程度、Zoomを利用してオンラインで開催
    • 毎週、科学教育に関する学術書の1章分を担当者がスライドにまとめて紹介
    • 参加者は該当章を読んできることが前提
    • 発表よりも参加者同士の議論が中心
    発表
    30%
    議論
    50%
    関連情報
    10%
    その他
    10%
     活動時間の構成

    View Slide

  7. 活動の工夫 4
     クラウドを活用したデータ共有
    • Google Driveを利用してクラウド上で各種データを
    共有し、議論の活性化を図る
    • 各発表の資料に対してオンラインでコメント
    • 欠席者に向けてZoomの録画を共有
     機械翻訳の活用
    • 機械翻訳の技術を用いて日本語へ翻訳
    • 機械翻訳は不正確なこともあるが、
    原文と照らし合わせながら読むことで
    効率を高めることができる
    • 適切に訳すことの難しい専門用語の誤訳は
    参加者で原文に立ち返って議論する機会になる

    View Slide

  8. 活動の工夫 5
     メンバーや議論の多様性
    • 全国の若手研究者、大学院生、現職教師、研究所職員など、様々な立場が所属などに
    関係なく自由に議論に参加 ⇒多様な観点からの議論を実現
    • チャット機能を活用することで、複数の話題を同時に扱う複線型の議論が可能に
    • 1回の活動でやり取りされるチャットの文章量は平均して9000文字
    • チャットでは発表内容に対する意見や質問、関連する文献や派生的な議論について自
    由で多様なやり取りがなされている
     心理的安全性
    • 発言するかどうか、画面をオンにするかどうかなどの参加形態が強制されない
    • 聴くだけの参加も可能であり、毎週参加しなくても問題ない
    • 対面の勉強会よりも参加の敷居が低く、心理的安全性が担保されている
    • 参加者同士に師匠と弟子のような関係は無く、誰もが対等な関係で議論に参加できる
    • 子育て世代に配慮して開始時間を遅くするとともに、画面越しの子連れでの参加を歓
    迎している

    View Slide

  9. 2022年8月27日の活動時のチャット “A Framework for Modeling-Based Learning, Teaching, and Assessment”
    6
    09:57:41 From AK: <疑問>
    learning with modelは、モデルを持ち続ける学習、学習者って感じですかね
    10:01:04 From UH : <解決の提案>
    learning by modeling: 学習者が人間のひじの模型を構築、修正、検証する(モデリングする)
    learning with model: 教員が粒子モデルを使って、学習者に蒸発現象を説明して理解させる
    model-based learning: 学習者の素朴概念を表出させるために紙?に書かせて、その概念を実験を
    通して修正させていく
    10:02:46 From AK: <納得感>
    なるほどなるほど…目的で分けるのが良さそうということですね
    10:03:03 From UH :<補足>
    やっていることの9割は同じなんですけどね。
    10:58:39 From KM : <関連づけ>
    確かに、教師がギリ説明出来ないモデルを提示するのはモデリングベース学習を念頭に置いておかな
    いとなかなか出てこないですよね。教師のモデリングPCKとか出てきそうな気がしました。

    View Slide

  10. これまでの活動 7
    • 2020年7月以降、140回以上の活動をオンライン上で実施
    • 各回の参加人数は平均10名程度だが、延べ参加人数は60名を超える
    • 1つの本を読む期間を1シーズンと位置付けており、これまでに10シーズンで10冊の本を扱う
    • 各シーズンの書籍はどれも参加者の希望に基づく投票で決定したもの

    View Slide

  11. 特別回の様子 8
    • 2022年5月には、第7期で扱っていた書籍の
    著者の1人である小川正賢先生をゲストにお
    迎えして本書の成立経緯と出版プロジェクト
    の立ち上げ方について教えていただいた

    View Slide

  12. 外部への発信:X(Twitter)の活用 9
     活動後には議論の内容を日本語と英語で外部に発信 SNS上での著者との議論
    著者による拡散
    https://twitter.com/ScienceEducat10

    View Slide

  13. 外部への発信:note(ブログ)の活用 10
     ブログ記事を作成し、外部に向けた解説を作成
    https://note.com/rikaedu/m/m20ff68ba2652
     研究内容を非専門家へ伝える練習にもなる(サイエンスコミュニケーション)

    View Slide

  14. 共同研究への発展 11
     第4期で議論した科学の本質(Nature of Science)に関して、共同研究を実施
    • 中村大輝, 藤原聖輝, 川崎弘作, 小林和雄, 小林優子, 三浦広大, 雲財寛. 科学の本質の理解の評価方
    法とその特徴に関するレビュー. 日本科学教育学会 第45回年会, 口頭発表, 2021年8月22日, 鹿児
    島大学(オンライン開催). ⇒ 年会発表賞
    • 中村大輝, 藤原聖輝, 石飛幹晴, 川崎弘作, 小林和雄, 小林優子, 三浦広大, 雲財寛 (2023). 科学の本
    質の理解の評価方法とその特徴に関するシステマティックレビュー. 科学教育研究, 47(2), 137-
    154. https://doi.org/10.14935/jssej.47.137 ⇒ 査読付き論文
     諸外国での多様な議論を概観する中で、国内における議論をレビューする必要
    性が認識され、『科学教育研究』に掲載されている論文を包括的にレビューす
    るプロジェクトを実施
    • 荒谷航平, 雲財寛, 大谷洋貴, 小川博士, 川﨑弘作, 下平剛司, 田中秀志, 中村大輝, 長沼祥太郎, 岡部
    舞, 藤原聖輝, 三浦広大, 渡辺理文 (in press). 1977-2020年の『科学教育研究』のテーマと方法に
    関する研究動向. 科学教育研究, 47(4). ⇒ 査読付き論文

    View Slide

  15. 従来の研究活動と何が違うのか? 12
     関わり方の調整が可能
    • SEBCJはClubという名の通り、科学教育に興味のある若手が集まった緩やかな
    コミュニティであり、何かをしなければいけないという制約がほとんど無い
    • 議論への参加の程度やかかわり方に決まりはなく、コミットメントの度合いを
    各自が自由に調整できる
     時間・空間からの解放
    • 時間に関係なく録画を視聴できる
    • 場所に関係なく全国から参加できる
    • 年齢や所属などの立場に関係なく自由に議論できる
     このような時間と空間を越えた自由度の高い議論は、
    従来の対面開催の活動には無い重要な特徴

    View Slide

  16. 従来の研究活動と何が違うのか? 13
     テクノロジーの効果的な活用
    • Zoomによるビデオ通話とチャット機能は、ライブでの複線型の議論を可
    能にしている
    • Google DriveやSlackといったサービスは、非同期型の議論を可能にして
    いる
    • ChatAIは議論に新しい視点を与えている
    • DeepLのような機械翻訳技術は、効率的な読解を可能にしている
    • X(Twitter)のようなSNSは、海外の研究者とのやり取りを可能にしている
     様々なテクノロジーを活用することで、従来の研究活動よりも質的・量的
    に充実した議論を実現
    ※本発表に関して開示すべき利益相反関連事項はありません

    View Slide

  17. 従来の研究活動と何が違うのか? 14
     議論の多様性
    • インターネット上での広報活動や録画の共有、子育て世代への配慮などの
    取り組みを通して、メンバーの多様性を確保
    • Zoomのチャット機能を活用して、発表者が話している最中でも同時に複
    数の議論を行うことで、多様な議論を実現
    • 単に書籍の内容を無批判に受け入れるのではなく、常にその主張の妥当性
    を多角的に吟味しながら、講読を進めている

    View Slide

  18. 新しい時代の研究活動への示唆 15
     ポストコロナの時代にあっても、コロナ禍で培われた新しい研究活動の知見
    は十分に生かされるべき
     SEBCJの活動事例が示すのは、テクノロジーを活用して時間と空間を越えた
    自由度の高い多様な議論を実現する取り組みの重要性である
     このような取り組みは、学術コミュニティの現代的課題であるダイバーシ
    ティやインクルージョンといった課題にも対応するもの
     日本の学術コミュニティや研究室での指導体制が脆弱になりつつある中で、
    若手研究者が対話と共創に取り組む場としてのオンラインコミュニティの重
    要性はますます高まっている
     本発表がきっかけとなって、科学教育におけるオンラインコミュニティの取
    り組みがますます活性化することを期待

    View Slide