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惑星間往復技術 ── 2026年世界最前線

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April 30, 2026
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惑星間往復技術 ── 2026年世界最前線

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Atsushi Ishii

April 30, 2026

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  1. 石井 敦 | Atsushi Ishii クーガー CEO couger.co.jp 日本IBMを経て、楽天やライコスの大規模検索エンジン開発を担当。その後、 日米韓を横断したオンラインゲーム開発の統括、Amazon

    Robotics Challenge上位チームへの技術支援、ホンダへのAI学習シミュレーター提供、 NEDOクラウドロボティクス開発統括などを務める。現在、人型AIプラット フォーム「LUDENS」の開発を進めている。スタンフォード大学2018年AI 特別講義の講師。電気通信大学 元客員研究員。 2 自己紹介
  2. 有人:惑星間往復実績(Apolloのみ) Apollo計画の概要 • 1969年から1972年にかけてNASAが実施した有人月面探査計画で、人類が初めて天体へ到達し地球へ帰 還したミッション ミッション構成 • 地球から月へ移動し月面へ着陸、その後月面から離陸して地球へ帰還するという往復ミッションを実現 技術的要素 •

    大型ロケット、月着陸船、軌道ランデブー技術、地球大気圏再突入など当時の最先端宇宙技術を統合 宇宙開発史における意義 • 人類が地球以外の天体へ到達し帰還した唯一の有人往復ミッションであり、宇宙開発の歴史的成果 現在との関係 • 月往復技術は現在のArtemis計画や将来の火星ミッションの技術的基盤となっている
  3. 有人・無人惑星間往復:NASA Artemis計画 • NASAはArtemis計画により人類を再び月へ送り、持続的な月面活動と火星探査に向けた技術基盤の構築 を進めている 月往復輸送システム • SLSロケットとOrion宇宙船による月往復輸送を軸に、人員と物資を地球と月の間での輸送システム構築 月周回拠点(Gateway) •

    月周回軌道に宇宙ステーションGatewayを建設し、月面ミッションや深宇宙ミッションの中継拠点計画 無人往復ミッション • 小惑星サンプルリターンや火星サンプルリターンなどの無人往復ミッションを実施 長期目標 • 月を拠点として技術と運用経験を蓄積し、将来的には火星往復ミッションを実現することを目指す
  4. 有人・無人惑星間往復:SpaceX 火星往復輸送の構想 • SpaceXは人類の火星移住を最終目標とし、地球と火星を往復する大規模輸送システムの構築を推進 Starshipシステム • 完全再利用を前提とした大型宇宙船StarshipとSuper Heavyブースターによって大量輸送と低コスト化を 実現する設計 軌道上燃料補給

    • 地球周回軌道で宇宙船同士が燃料を補給することで、火星往復に必要な推進剤を確保する運用を計画 火星燃料生成 • 火星のCO2と水を利用してメタン燃料を生成し、帰還用の燃料を現地で生産する構想を採用 宇宙輸送の変化 • 民間企業が大型宇宙輸送システムを開発することで、惑星往復ミッションのコストと頻度を大きく変える 可能性がある
  5. 有人・無人惑星間往復:中国 国家主導の宇宙開発 • 中国は国家プロジェクトとして宇宙開発を急速に進めており、月探査・火星探査・宇宙ステーションなど を並行して推進している 月探査計画:嫦娥(じょうが)計画 • 嫦娥計画により月周回探査、月面着陸、月サンプルリターンなど段階的に技術を実証してきた 有人月面探査 •

    2030年前後の有人月面着陸を目標に大型ロケットや月着陸システムの開発を進めている 火星探査 • 「天問1号」により火星周回機・着陸機・ローバーの運用に成功 • 2028年前後に向け「天問3号」による火星サンプルリターンを計画中 長期目標 • 月面基地の建設や深宇宙探査を視野に入れ、米国と並ぶ宇宙大国としての地位を確立しようとしている
  6. 距離と移動時間 惑星間距離の大きさ • 地球と火星の距離は約5,000万kmから4億km以上まで変化し、非常に長い航行が必要となる 移動時間 • 現在の化学ロケットでは火星到達までおよそ6〜9か月程度の航行が必要とされる 往復ミッションの期間 • 地球帰還までを含めるとミッション全体は2〜3年規模になる可能性がある

    長期宇宙滞在の課題 • 長期間の宇宙滞在では放射線、微小重力、心理的ストレスなど人体への影響が問題となる 宇宙航行の制約 • 距離と移動時間は宇宙ミッション全体の設計に大きく影響し、燃料量、ミッション期間、宇宙船設計など 多くの要素を決定する要因となる
  7. 燃料問題 ロケットの質量構成 • 宇宙ロケットは打ち上げ質量の大部分を燃料が占めており、ミッションの規模は燃料量に強く制約される 化学ロケットの限界 • 現在主流の化学ロケットでは推進効率に限界があり、長距離の惑星間ミッションでは大量の燃料が必要 質量の連鎖問題 • 燃料を増やすとロケットの重量が増え、その重量を打ち上げるためにさらに燃料が必要になる問題

    ミッション設計への影響 • 燃料制約は宇宙船のサイズ、搭載できる装備、ミッション期間など宇宙探査の設計全体に影響する 惑星往復の核心課題 • 惑星間往復では「往路だけでなく帰還までの燃料」を考慮する必要があり、燃料問題は最も重要な技術課 題の一つとなる
  8. 再利用ロケット 宇宙輸送の最大の変化 • 再利用ロケットの登場により、宇宙輸送のコスト構造が大きく変わりつつある 従来のロケット • 従来のロケットは使い捨てであり、打ち上げごとに新しい機体を製造する必要があった 再利用という発想 • ロケットの第一段などを回収し再利用することで、打ち上げコストを大幅に削減できる

    代表例 • SpaceXのFalcon 9は第一段の回収と再利用を実用化し、打ち上げ頻度とコストの両方を改善した 惑星往復への影響 • 再利用ロケットは宇宙輸送のコストを下げ、大量の物資や宇宙船を打ち上げる惑星往復ミッションを現実 的にする重要な技術となっている
  9. 大型宇宙船 惑星間輸送のための宇宙船 • 惑星往復ミッションでは人員や大量の物資を長距離輸送するため、従来よりはるかに大型の宇宙船が必要 となる 輸送能力の拡大 • 火星ミッションなどでは数十トンから100トン規模の貨物輸送能力が求められ、大型宇宙船の開発が進め られている 代表例:Starship

    • SpaceXが開発するStarshipは人員輸送と大量貨物輸送を前提とした次世代宇宙船として設計されている 惑星輸送インフラ • 将来的には大型宇宙船が地球、月、火星の間を定期的に往復する宇宙輸送インフラとなる可能性がある
  10. ISRU(現地資源利用) ISRUとは • ISRU(In-Situ Resource Utilization)は、月や火星などの天体に存在する資源をその場で利用する技術 宇宙輸送の制約 • 宇宙では地球からすべての資源を運ぶことが非常に困難であり、現地資源の利用が重要になる 利用できる資源

    • 月や火星には水氷や鉱物資源が存在すると考えられており、水・酸素・燃料の生成に利用できる可能性 宇宙基地との関係 • 月基地や火星基地では現地資源を活用することで輸送コストを大きく削減できる 惑星往復への影響 • ISRUは帰還燃料や生命維持資源の確保を可能にし、長期宇宙ミッションの成立を支える重要技術
  11. 基地運用AI 宇宙基地の運用課題 • 月基地や火星基地では限られた人数で多くの設備を管理する必要があり、効率的な運用が重要となる 設備管理と故障対応 • AIは電力システム、生命維持装置、通信設備など基地インフラの状態を常時監視し、異常の早期検知や故 障予測を行う ロボットとの連携 •

    建設作業や資源採掘などの作業をロボットが担当し、AIが作業計画や運用を管理する形が想定されている 人間の活動支援 • AIは作業計画の提示や情報整理などを行い、宇宙飛行士の活動を支援する役割を持つ 将来の宇宙基地 • 月基地や火星基地ではAIが基地運用の中枢となり、人間と協力して長期滞在を支える想定