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CARTA HOLDINGS流、事業をエンジニアリングする技術者の育て方

CARTA HOLDINGS流、事業をエンジニアリングする技術者の育て方

「第2回 クラウド時代のエンジニア像とは? 」での登壇スライドです。

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「CARTA HOLDINGS流、事業をエンジニアリングする技術者の育て方」

CARTA HOLDINGSは、2019年にVOYAGE GROUPとサイバー・コミュニケーションズが経営統合して生まれました。本セッションでは20を超える子会社があるなかで、どのように「事業をエンジニアリングする技術者たち」が育てられてきたかについて、制度及び取り組みを交えながらお伝えします。

CARTA Engineering

November 04, 2022
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Transcript

  1. CARTA HOLDINGS Inc. CARTA HOLDINGS流、 事業をエンジニアリングする技術 者の育て方 株式会社CARTA HOLDINGS 執行役員CTO

    鈴木 健太 (@suzu_v, すずけん) 2022/11/04 第2回 クラウド時代のエンジニア像とは?
  2. CARTA HOLDINGS Inc. 自己紹介 データエンジニアリング ウェブ技術が好きです 本も書きました(いずれも共著) 鈴木健太 すずけん 経歴

    2012年 VOYAGE GROUP新卒入社 2019年 fluct(子会社) 取締役CTO 2022年〜 CARTA HD 執行役員CTO ポッドキャスト「 https://ajito.fm 」 得意なこと このへんにいます Twitter: @suzu_v
  3. CARTA HOLDINGS Inc. これまでのキャリアを少し詳しく • 2012年: 株式会社VOYAGE GROUPにエンジニアとして新卒入社。 ◦ 子会社のfluctでごりごりと新規サービス立ち上げ。

    4-5人チーム。 • 2014年: データ解析チームをつくる。マネージャーをやる 。 • 2015年: やっぱりマネージャーやめてfluctでエンジニアに専念 ◦ 検索、データ基盤づくり、リアーキテクティング • 2017年: 結局またfluct開発チームのマネジメントをやりはじめる ◦ エンジニアリングマネージャー, テクニカルプロダクトマネージャー的な動きをしつつ コードも書く ◦ 開発者は20-30人くらい。 • 2019年: 株式会社fluct 取締役CTO就任 • 2022年: 株式会社CARTA HOLDINGS 執行役員CTO就任 ◦ 10年CTOを務めた小賀さんから引き継いだ ◦ 開発者170人ほど。
  4. CARTA HOLDINGS Inc. CARTA HOLDINGS は 2019年1月 VOYAGE GROUP と

    CCI が経営統合して誕生しました 多くの事業・サービスを運営しています(下記は一部を抜粋)
  5. CARTA HOLDINGS Inc. 書籍: 「事業をエンジニアリングする技術者たち ― フルサイクル開発者がつくる CARTAの現場」 “フルサイクルエンジニアによる「アフターDX」の世界がこ こにある”

    • 株式会社CARTA HOLDINGS 監修、和田卓人 @t_wada 編 • ITエンジニア本大賞2021年技術書部門大賞『Engineers in VOYAGE ― 事業をエンジニアリングする技術者たち』の改題改 訂版 さまざまな事業を展開するIT企業のエンジニアたちが、常に変化し続け るソフトウェア開発の潮流の中で自分たちの事業にどう向き合い、レガ シーを乗り越え続けているか。本書を通して語られるのは、まさに「企業 がDXを達成した後に待っている世界」です。 目次 第1章 fluct ― 広告配信の舞台裏の技術者たち 第2章 Zucks ― フルサイクル開発者の文化 第3章 VOYAGE MARKETING ― 20年級大規模レガシーシステムとの戦い 第4章 VOYAGE Lighthouse Studio ― 数十万記事のメディアをゼロから立ち上げる 第5章 サポーターズ ― 事業の成長を止めない手段としてのシステム刷新 第6章 データサイエンス ― エンジニアによるビジネスのための機械学習 第7章 テレシー ― テレビCMをDXする 第8章 基幹システム統合プロジェクト ― ICT本部
  6. CARTA HOLDINGS Inc. フルサイクル開発者 出典:https://techblog.cartaholdings.co.jp/entry/2019/02/04/171325 "開発したものが運用する " “責任を外部化するのではなく開発チームに与える ことで、ダイレクトなフィードバックループと共通のイ ンセンティブを持つことができる

    ” “各開発チームは開発上の課題、パフォーマンスの バグ、キャパシティープランニング、アラートの欠 如、パートナーサポートといったものを受け持って いる” “アラート対応の自動化やパートナー向けのセルフ サービスツールの開発は、 ビジネス上の要望と同 じレベルで優先順位付けされる必要がある 。十分 な人員と優先順位付けとパートナーシップによっ て、チームは自分のビルドしたものを運用すること ができる。”
  7. CARTA HOLDINGS Inc. 事例 - ECナビ (2017年) オンプレミスのデータベースを Amazon RDS

    for Oracle に移行 https://aws.amazon.com/jp/solutions/case-studies/voyage-group/
  8. CARTA HOLDINGS Inc. 原因1:組織構造 事業部/本部/子会社の責任者は技術に 詳しいわけではない 責任者はシステムの内部構造が見えない ので、見えやすい実績を高く評価してしま う 原因2:技術の多様化

    技術マネージャは全ての技術においてメ ンバーより詳しいわけではない フロントエンド(Web/iOS/Android)、バック エンド、データベース(RDB/KVS)、インフラ (AWS/GCP/オンプレ)、データ分析、セ キュリティなど多岐にわたる 2010年当時: 課題が生まれた原因 事業部A 本部B 子会社C 会社 事業責任者・ 技術マネージャ エンジニア 技術力 評価 技術力 評価 技術力 評価
  9. CARTA HOLDINGS Inc. 評価資料のイメージ • 資料はGitHubへ • 概要、テーマ、背景、チーム、解決手 法、今後の展望などについて書く •

    全員の評価資料が閲覧可能 • 図や説明は業務中につくったものを なるべく再利用する • 書いたパッチやissueへのリンクをな るべくたくさん貼る
  10. CARTA HOLDINGS Inc. 評価者からのよくある質問 • そもそもなぜこれをつくりましたか?他の選択肢はどういうものがありますか? • チームのなかでどういう役割で 価値を届けていますか? •

    ソフトウェアの質を高めるためにどういう工夫をしていますか? • 技術的な投資判断はどのようなプロセスを経てなされましたか? • リリース後に効果は得られましたか?計測していますか? • サービスが拡大するとどこがボトルネックになりますか?
  11. CARTA HOLDINGS Inc. 評価レポート 以下の項目を書く。 • 総評 • 評価者が被評価者の状況ならこう考える、こう動く •

    能力向上に関するアドバイス 定量化するのではなく、 フィードバックとなる文章をしっかり書く。
  12. CARTA HOLDINGS Inc. 技術力評価会によって生まれた・加速したこと • 専門性による評価が行われるようになり、 納得度があがった • 定期的なフィードバックの機会となるため、学習効率があがった •

    内部品質の向上への投資が進んだ さらにいえば、 • 変化への対応: 方法もツールも(もちろんクラウドも)アップデートされ続けるなかで、評価者も被評 価者も互いに学び続ける合理性が生まれた。 • 価値観の共有: なにがわたしたちにとって より良いエンジニアリングなのかがチームを越えて共有 された。 • チーム外からの学び : チームを越えたフィードバックにより、外のチームにある知見が取り込めるよ うになった。人的ネットワークが広がった。
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  14. CARTA HOLDINGS Inc. suzuken体験談: 評価者として • 2013年(新卒2年目)には他のエンジニアの評価もやりはじめるようになった ◦ その当時はマネージャーでもないし、いわゆるエンジニアとしてやっている ◦

    のだけど、他のチームのエンジニアの評価をやらないといけない • わからないので勉強する ◦ この事業はそもそもなんなんだ・・?どうやって儲けてるんだ・・? ◦ とりあえずコードも読んでみよう・・ • 半年ごとに1-3件ほど繰り返すので徐々に 複数の事業の構造やエンジニアリングの課題がわかっ てくる ◦ 事業ごとの共通構造も見えてくる ◦ 評価会を終えた後、感想戦的に「あのへんのつくりってなんで複雑なんですかね〜」という雑 談が他の事業部のエンジニアともできるようになる 事業A 目的 制約 事業B 目的 制約
  15. CARTA HOLDINGS Inc. suzuken体験談: 学習の転移 • 評価者の経験を重ねることで、 他の事業の試行錯誤 から学ぶように ◦

    気づいたら社内のいろんな事業とプロダクトから学べるようになっている ◦ 「自分ならどうする?」を想像する機会がたくさんある • 社内ですべての評価者の評価レポートが 公開されている ◦ 「あの先輩が評価するとこういう視点でフィードバックできるのか・・!」という気づきが生まれ る ◦ シニアなエンジニアの 着眼点はすごい ◦ 判断力が磨かれている ▪ 組織の問題?方法の問題?事業理解度の問題?というのが次々に切り込まれる
  16. CARTA HOLDINGS Inc. 学びは現場にある • CARTAでは10年以上、技術力評価会を中心にエンジニアの育成・評価に投資している ◦ みんなで技術力評価会をまわし、相互にフィードバック ◦ 人的ネットワークが広がり、文化が広まり、変化に適用していく組織へ

    • 実際に開発しているエンジニアの成長こそ、エンジニア組織の成長 ◦ 実践のなかで「なぜ」の判断を積み重ねていることが、 判断力の向上につながる ◦ 成長のためにフィードバックが不可欠 ◦ フルサイクルな開発スタイルにより、実践から洞察を得て行動へ • 他のエンジニアの評価会から判断を追体験する ◦ 半年ごとに「私ならどうする?」を考える ◦ 組織的な学習の転移が進む • とはいえコストはかかる ◦ はじめるには事業側の納得感も必要。 ◦ 組織にコミットすれば、エンジニアが育ち、プラスになって返ってくる ◦ 結果として組織全体のエンジニアへの信頼がさらに増す好循環へ