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精神疾患患者のアクティビティデータを利用したリハビリテーションのためのシステムに関する研究

 精神疾患患者のアクティビティデータを利用したリハビリテーションのためのシステムに関する研究

発表年月日:2023/11/16
発表テーマ: 精神疾患患者のアクティビティデータを利用したリハビリテーションシステムに関する一考察
会議名:第109回モバイルコンピューティングと新社会システム(MBL)・第95回高度交通システムとスマートコミュニティ(ITS)合同研究発表会
主催者:情報処理学会
学会区分:全国学会
発表形式:口頭(一般)
開催期間 :2023/11/15 ~ 2023/11/17
発表者・共同発表者:髙橋勇人,松井 加奈絵

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Transcript

  1. はじめに • 精神疾患の深刻な増加による課題 •日本の精神疾患増加傾向 • 総務省の取り組み[2] • 医療,介護,健康分野の情報化を 推進し,個人の各分野の情報を一 元的に管理するパーソナルヘルス

    レコード(PHR)データの利活 用を提唱 • 医療の診断の精密化を図るため, 患者の同意のもとウェアラブルデ バイスから得られる日々の活動 データとPHRデータとの連携を 目指し,データ流通基盤の構築 [1]厚生労働省,図表1-2-9 こころの病気の患者数の状況,URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/01 -01-02-09.html (2023/11/16閲覧) [2]総務省,PHRデータ利活用の推進URL:https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/ictriyou/iryou_kaigo_kenkou_page2.html(2023/11/16 閲覧). 心の病気の患者数の推移[1]
  2. 関連サービスおよび研究 マインドスケール[3] 本サービスはストレスの数値化,ストレスの 軽減による,精神疾患の予防,早期発見を目 指した サービスの概要 • ストレスの算出をする脈拍の交感神経およ び副交感神経の変化の計測 •

    音声による脳疲労 • ストレス診断票からなるストレスの度合い の算出 • 公認心理士カウンセラーによる相談等によ るカウンセリング メンタル患者予兆検知アルゴリズム[4] 齋藤らはウェアラブルデータを活用したメン タル疾患予兆検知アルゴリズムについて研究 を行った 研究結果 JMDCデータベースにおける4,612名のウェア ラブルデータ,および直近の健康診断データ を機械学習で解析し,将来1か月間のメンタル 疾患の予測発症確率をアルゴリズムの予測性 能を示すAUCにおいて0.712の値で算出 [3]横山道央,山形大学,“コロナ禍で増すストレスを可視化メンタルケアの新ツールを開発”URL:https://www.yamagata-u.ac.jp/jp/hitotohito/research/20210315/ (2023/10/23 閲覧). [4] Tomoki Saito, Hikaru Suzuki, Akifumi Kishi,Predictive Modeling of Mental Illness Onset Using Wearable Devices and Medical Examination Data: Machine Learning Approach, URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35493532/ (2023/10/23閲覧).
  3. 提案の支援システム…センサ部 ① センサ部 • 腕時計型ウェアラブルデバイスFitbit Sense2 収集データ No. データの種類 使用デバイス,アプリ

    データ収集間隔 1 心拍数 Fitbit Sense 2 / iPhone 1日間隔 2 歩行数 Fitbit Sense 2 / iPhone 1日間隔 3 睡眠の質,時間 Fitbit Sense 2 / iPhone 睡眠中
  4. 提案の支援システム…情報処理部 ② • 質問用トークルーム • 利用者がIDを入力し,紐づけ • 質問のボタンをタップすると、Tips, アンケート,対応するデータを送信 Slack

    • 情報通知用トークルーム • 通知するグラフ・数値 • 2時間毎のグラフ • 心拍数グラフ(5,10秒間隔), • 歩数グラフ(1分間隔) • 1日のサマリーグラフ • 心拍数グラフ(5,10秒間隔), • 歩数グラフ(1分間隔), • 積上歩数グラフ, • 睡眠の質グラフ LINE • 情報通知用ワークスペース • 通知するグラフ・数値 • 2時間毎のグラフ • 心拍数グラフ(5,10秒間隔), • 歩数グラフ(1分間隔) • 1日のサマリーグラフ • 心拍数グラフ(5,10秒間隔), • 歩数グラフ(1分間隔), • 積上歩数グラフ, • 睡眠の質グラフ
  5. 提案の支援システム…情報提示部 ① • 質問用トークルーム • 利用者がIDを入力し,紐づけ • 質問のボタンをタップすると、Tips, アンケート,対応するデータを送信 Slack

    • 情報通知用トークルーム • 通知するグラフ・数値 • 2時間毎のグラフ • 心拍数グラフ(5,10秒間隔), • 歩数グラフ(1分間隔) • 1日のサマリーグラフ • 心拍数グラフ(5,10秒間隔), • 歩数グラフ(1分間隔), • 積上歩数グラフ, • 睡眠の質グラフ LINE • 情報通知用ワークスペース • 通知するグラフ・数値 • 2時間毎のグラフ • 心拍数グラフ(5,10秒間隔), • 歩数グラフ(1分間隔) • 1日のサマリーグラフ • 心拍数グラフ(5,10秒間隔), • 歩数グラフ(1分間隔), • 積上歩数グラフ, • 睡眠の質グラフ
  6. 提案の支援システム…情報提示部 ④ 送信されるグラフの説明 • 各グラフの種類 • 各グラフが送信される時刻 • 各グラフに記述されている単 語の補足

    ② 送信される心拍数,歩数,睡眠の説明 各グラフの説明を,オンライン上でも患者が把握できるように開発
  7. 提案の支援システム…情報提示部 ⑥ • 質問用トークルーム • 利用者がIDを入力し,紐づけ • 質問のボタンをタップすると、Tips, アンケート,対応するデータを送信 Slack

    • 情報通知用トークルーム • 通知するグラフ・数値 • 2時間毎のグラフ • 心拍数グラフ(5,10秒間隔), • 歩数グラフ(1分間隔) • 1日のサマリーグラフ • 心拍数グラフ(5,10秒間隔), • 歩数グラフ(1分間隔), • 積上歩数グラフ, • 睡眠の質グラフ LINE • 情報通知用ワークスペース • 通知するグラフ・数値 • 2時間毎のグラフ • 心拍数グラフ(5,10秒間隔), • 歩数グラフ(1分間隔) • 1日のサマリーグラフ • 心拍数グラフ(5,10秒間隔), • 歩数グラフ(1分間隔), • 積上歩数グラフ, • 睡眠の質グラフ
  8. 提案の支援システム…情報提示部 ⑧ • 24時間制を用いた時間をX軸 • 心拍数をY軸 • 心拍数の数値に関して,即座に識別で きるよう色を調整 •

    色の調整として,青,黄,赤とし, 100未満の場合は青,100以上120未 満の場合は黄色,120以上の場合は赤 1日の心拍数(5,10秒間隔)
  9. 提案の支援システム…情報提示部 ⑫ • 質問用トークルーム • 利用者がIDを入力し,紐づけ • 質問のボタンをタップすると、Tips, アンケート,対応するデータを送信 Slack

    • 情報通知用トークルーム • 通知するグラフ・数値 • 2時間毎のグラフ • 心拍数グラフ(5,10秒間隔), • 歩数グラフ(1分間隔) • 1日のサマリーグラフ • 心拍数グラフ(5,10秒間隔), • 歩数グラフ(1分間隔), • 積上歩数グラフ, • 睡眠の質グラフ LINE • 情報通知用ワークスペース • 通知するグラフ・数値 • 2時間毎のグラフ • 心拍数グラフ(5,10秒間隔), • 歩数グラフ(1分間隔) • 1日のサマリーグラフ • 心拍数グラフ(5,10秒間隔), • 歩数グラフ(1分間隔), • 積上歩数グラフ, • 睡眠の質グラフ
  10. 提案の支援システム…情報提示部 ⑬ • プライベートチャンネルに,医師を追加し情報を共有 • 患者ごとにグラフを通知また,各グラフをチャンネルで分割し,通知 画像送信用ワークスペース 通知するグラフ グラフ番号 グラフ・数値

    グラフ1 1日の心拍数 グラフ2 2-4時間ごとの心拍数 グラフ3 1日の歩数(1分間隔) グラフ4 1日の歩数(積上) グラフ5 2時間ごとの歩数 グラフ6 4段階の睡眠の質
  11. 実証実験 実証実験の方法 実験協力者 1. Fitbit Sense2のデバイスを着用 2. Fitbit Sense2とiPhone間で同期を維持できる範囲でiPhoneを携帯 3.

    Fitbit Sense 2から取得するデータと患者の精神的,精神的,睡眠の質に関 する相関性を確認するためにGoogle Formsで患者の感情アンケートを実施 医者 • Slackに通知を行い加工したグラフ・数値を閲覧してもらい,機能面に関する アンケートを実施
  12. 実験協力者属性 • 実際にうつ病等で病院に通っている4名の患者 実証実験期間 実証実験 実証実験の実施者 A B C D

    実施日 2022年12月20日 2022年12月21日 2022年12月27日 2022年12月27日 終了日 2023年03月20日 2023年03月20日 2023年03月20日 2023年03月20日
  13. 評価事項 定量的 • データの取得率,通知率の評価 • 患者の感情アンケートと患者の各データの相関性の評価 番号 質問内容 質問1 身体的な充足性

    質問2 身体の調子について気になる点があれば記入してください(任意) 質問3 精神的な充足性 質問4 精神状態の調子について気になる点があれば記入してください(任意) 質問5 睡眠の充足性 質問6 睡眠の調子について気になる点があれば記入してください(任意) 定性的 • 医師に使用感,機能面の有用性アンケートを行い提案アプリケーションを評価
  14. 評価事項 番号 質問内容 質問1 本アプリケーションを使用していただいた時間帯を教えてください. 質問2 本アプリを使用していただいた頻度を教えてください. 質問3 あなたが普段使用するSNSを教えてください. 質問4

    あなたは通知で有用だと思ったグラフはありますか. 質問5 はいと答えた方にお聴きします.どのグラフが有効でしたか(複数選択可). 質問6 有効であった理由を教えて下さい. 質問7 問4にていいえとお答えた方についてお聞きします.なぜそのように思ったの か理由を教えてください. 質問8 本アプリに追加してほしい機能があれば教えてください. 質問9 本アプリは,うつ病患者のヘルスケアに有用であると思いますか. 質問10 質問9についてお聞きします.なぜそのように思ったのか理由を教えてくださ い. 質問11 本システムでの改善点がありましたら教えてください.
  15. 結果 定量的 データの取得率,通知率の評価 • 患者の加工したデータ・数値に関しては,4名ともLINE・Slackを介して通知を確認 • 通知されない曜日は,Fitbit リソースサーバを確認しデータが存在しないことを確認 患者の感情アンケートと患者の各データの相関性の評価 •

    実験協力者のA,B,C,Dにそれぞれ計91日,90日,84日,84日間行い,1日毎に収集 • 回答数がそれぞれ9回,1回,0回,11回となり,回答率が,10%,1%,0%,13% 2点より,システムが取得・通知を行えているかを確認できた. 回答数が足りず,相関性を求めるにはデータ不足となる結果であった.
  16. 結果 定性的 番号 回答内容 質問1 19時~24時. 質問2 毎日. 質問3 Slack,その他.

    質問4 はい. 質問5 睡眠の質の画像,歩行の画像. 質問6 視覚的に分かりやすいから. 質問8 体温表示機能. 質問9 はい. 質問10 活動量や睡眠について定量的に評価できるから. 質問11 心拍数の表示はもっと目が粗くてもいいかと思った.例えば,12時間 / 24時間表示など.
  17. 考察 データの取得率,通知率の評価 • データの取得率,通知率の評価結果の2点より,システムが取得・通知を行えていると考える 患者の感情アンケートと患者の各データの相関性の評価 • 負荷の高いアンケートを依頼し行うことは難しいことが示唆され,アンケートデータに関して は患者本人から取得のではなく,医師からの問診から得る等の体制が効果的かと考えられる 医師に使用感,機能面の有用性アンケートを行い提案アプリケーションを評価 •

    アンケート結果の質問11より,患者の生活習慣と比べ易い画像を医師に通知する必要があると 考える • 医師が提案する12時間 / 24時間の時間幅に調整 • 各データの画像グラフを1週間単位で,週の最終日に送信 • 1日の心拍数の画像と1日の歩行の画像の組み合わせを行い,歩行していない状態で心拍数 が増加している間に起こる緊張状態などを手軽に医師が確認できるようにグラフの追加
  18. おわりに 検討事項 • ウェアラブルデバイスの着用や,同期による患者から取得するデータの欠損 • 使用デバイスを減らす等のシステムの簡素化 • 定期的なアンケートの回答などの負荷が高いデータ取得 • アンケートを特定の時間に送信する等の送信方法の見直し

    • 質問内容を減らす等の質問内容の見直し まとめ • 本研究では,患者からウェアラブルデバイスのセンシングデータを収集し,患者および医師 にそのデータが閲覧可能となるシステムを構築し,双方がデータを活用できる環境を構築 • 送信したデータが医師への高品質なデータ提供であるかを評価 • 今後はデータ取得における環境において,患者への負担を減らすことにより,安定的なデー タ取得が可能となり,医師への高品質なデータ提供が可能となることが示唆 ご清聴いただきありがとうございました