計算論的精神医学の論文データベース(CPSYMAP)のコンセプト

B9876944233f30c903c2c22da2ee00b2?s=47 CPSYMAP
March 31, 2020

 計算論的精神医学の論文データベース(CPSYMAP)のコンセプト

計算論的精神医学分野をより発展させるため、計算論的精神医学の論文を 神経科学、精神医学、数理モデルの観点で整理し 可視化できるデータベースを構築しました。https://ncnp-cpsy-rmap.web.app/
この資料はそのデータベースの概要とコンセプト、目指している未来についてお伝えします。

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CPSYMAP

March 31, 2020
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  1. 1 version 2020.03.30 計算論的精神医学の論⽂を 神経科学、精神医学、数理モデルの観点で整理し 可視化できるデータベースの構築 加藤郁佳 ⼭下祐⼀ 国⾥愛彦 沖村宰

    ⽚平健太郎 計算論的精神医学コロキウム
  2. 2 version 2020.03.30 計算論的精神医学 Computational Psychiatryとは 数理・理論的⼿法を精神医学研究に応⽤して新しい 知⾒をもたらそうとする研究領域 脳における知覚・認知をある種の“計算”ととらえ、そ の情報処理プロセスを数理モデル化することで精神

    疾患への理解を深める 精神疾患に関する⼤規模データに対して、機械学習 の⼿法を適⽤し、識別モデル等を開発する 精神医学が直⾯する問題を解決することが期待
  3. 3 しかし、神経科学・精神医学・数理モデルの観点間での 接続が不⼗分で研究の伸展が妨げられている場合がある 1. 神経科学 どんな認知機能や⾏動・回路などの分析 単位を対象にしているのか 1. 精神医学 どんな精神障害や症候学的徴候・精神病

    理学的問題が扱われているのか、何が扱 えていないのか 1. 数理モデル どんな⽅法論やデータ・理論・モデルを ⽤いているのか さらなる領域の発展のためには、個々の研究を以下の観点から整理し、俯 瞰できるようにする必要がある version 2020.03.30
  4. • 計算論的精神医学の論⽂を神経科学、精 神医学、数理モデルの観点でタグ付け • 2次元マップ上でタグに沿って研究領域の 状況を整理・可視化(⾊の濃淡で論⽂が 多い領域と少ない領域がわかる) • Webアプリケーションとして、誰でも CPSY研究の検索や登録、概観ができる環

    境を構築 その問題を解決するためにデータベースを作りました! 4 version 2020.03.30
  5. 5 WebアプリのTopページ URL: https://ncnp-cpsy-rmap.web.app/

  6. 6 可視化部分は縦軸と横軸を選ぶことができます を押すとmapのページ へ! version 2020.03.30

  7. 7 特定のマスに含まれる論⽂を⼀覧で⾒たり並べ替えたり、 フィルター機能でマップ中の論⽂を絞り込むことができます version 2020.03.30

  8. 8 から論⽂の登録も可能 登録したい論⽂を指定してタグ付けできます version 2020.03.30

  9. 9 これから計算論的精神医学の研究を始め たい研究者 研究を始めようとしている領域を概観し、 どこにニッチがあるのかを整理し、研究 計画を練ることができる 例えばこんな⼈に使ってほしいと思っています 計算論的精神医学の論⽂をすでに書いて いる研究者 ⾃分や共同研究者の研究成果を登録して

    他の研究者が利⽤しやすしくし、引⽤数 が増えるかも?! version 2020.03.30
  10. 10 ここから、可視化できる軸の選定についてお話しします 1. 神経科学 どんな認知機能や⾏動・回路などの分析 単位を対象にしているのか 1. 精神医学 どんな精神障害や症候学的徴候・精神病 理学的問題が扱われているのか、何が扱

    えていないのか 1. 数理モデル どんな⽅法論や理論・データ・モデルを ⽤いているのか version 2020.03.30
  11. 研究領域基準 Research Domain Criteria(RDoC) 従来の疾患カテゴリー分類にとらわれない、⾏動神経科学の知⾒に基づいて精 神医学研究を体系化する枠組み(⽶国国⽴精神保健研究所:NIMHが提案) https://www.nimh.nih.gov/research-priorities/rdoc/research-domain-criteria-matrix.shtml version 2020.03.30 11

    1.神経科学との接続
  12. ⾏:コンストラクトとドメイン • 観測可能な⾏動神経科学的な基本 コンポーネントをコンストラクト として規定 • コンストラクトのスペクトラムと して精神疾患をとらえる • 関連するコンストラクトをドメイ

    ンとしてまとめる RDoC Matrix version 2020.03.30 12
  13. RDoC Matrix version 2020.03.30 13 列:分析単位 (Unit of analysis) •

    分析単位の変数をミクロからマ クロまで列挙 • Genes, Molecules, Cells, Neural circuits, Physiology, Behaviors, Self-reports, Paradigms から構成される
  14. カテゴリー的⽅略 vs 次元的⽅略 RDoCへの期待と懸念 カテゴリー的⽅略 次元的⽅略(RDoC) • DSM等が蓄積してきた診断 信頼性(inter-rater reliability)

    利点 • 蓄積されてきた神経科学の知⾒ を活⽤できる • ⽣物学的妥当性がない • 予測妥当性がない ⽋点 • 精神疾患の症状を⼗分にとらえ きれていない(精神症候学) • 臨床に実⽤的な診断分類基準に は結びつかない version 2020.03.30 14
  15. • 従来の疾患カテゴリー分類にとらわれない、⾏動神経科学の知⾒に基づいて 精神医学研究を体系化する枠組みとしてRDoCが提唱されている (⽶国国⽴精神保健研究所:NIMHが提案) • しかし多くの論⽂において、扱っている内容とRDoCとの対応は明⽰されて はいない。 15 version 2020.03.30

    既存のCPSY研究がどんな認知機能や⾏動・回路などの分析単位を対象にしてい るのかをRDoCを通じて対応させていくことが必要 1.神経科学との接続 まとめ データベースでは という項⽬でカバーしている
  16. 16 • RDoCは、従来の精神障害の疾病分類学、精神症候学をカバーできてはいな い。 • また、CPSYに取り組む研究者(特に精神医学を専⾨としない者)にとって、 精神症候学、精神病理学の観点から、どの症状が重要か、何を研究対象と すべきかを⾒通すのは難しい。 2.疾病分類学、精神症候学との接続 version

    2020.03.30
  17. 17 version 2020.03.30 RDoCでとらえきれていない精神疾患の症状の例 訴え 症状 想定される精神疾患 RDoC 思考の流れ、 まとまりの障害

    思考の進みが遅く停滞 思考の流れが突然遮断 思考制⽌ 思考途絶 うつ病 統合失調症 該当するコンス トラクト無し? 思考体験の障害 不合理な内容の考想、語句 などを意志に反して考えず にいられない 強迫思考、 強迫観念 強迫性障害 該当するコンス トラクト無し? 妄想 妄想気分、世界没落体験 妄想知覚、妄想着想、妄想 追想、被害・迫害妄想 微⼩妄想、誇⼤妄想 妄想 統合失調症、 躁うつ病、その他 該当するコンス トラクト無し?
  18. • RDoCは、従来の精神障害の疾病分類学、精神症候学をカバーできてはいな い。 • どの症状が重要か、何を研究対象とすべきかを⾒通すのが難しい。 18 version 2020.03.30 2.疾病分類学、精神症候学との接続 まとめ

    CPSY研究において、どんな精神障害や症候学的徴候・精神病理学的問題が扱 われているのか、何が扱えていないのかを⾒渡すことが必要 データベースでは という項⽬でカバーしている DSM: 疾患カテゴリーとの対応をタグ付け Symptomatology: 症状(不安、抑うつ、幻覚・妄想、など…)をタグ付け
  19. • CPSY研究では、様々な数理的理論・技術が⽤いられる。 • 例えば 「理論駆動 vs データ駆動」 「モデルフィッティングvs 損傷シミュレーション」 など“culture”が異なる⼿法があるが、⼀般には分かりにくい。

    19 version 2020.03.30 3.数理モデルとの接続 国⾥, ⽚平, 沖村, ⼭下, 「計算論的精神医学」, 勁草書房, 東京(2019)
  20. 「データ駆動アプローチ」 識別関数 識別モデル ⼊⼒:脳・⽣体情報 出⼒:クラス(ラベル/確率) ⼿法:サポートベクターマシン、回帰など 例:疾患 or 健康?/再発予測 f

    • 精神疾患に関する⼤規模データに対して、機械学習の⼿法を適⽤し、データ のクラスタリングや識別モデルの開発を試みる。 version 2020.03.30 20 Demirci, Oguz, et al. "A review of challenges in the use of fMRI for disease classification/characterization and a projection pursuit application from a multi-site fMRI schizophrenia study." Brain imaging and behavior 2.3 (2008): 207-226.
  21. 知覚・認識・判断・意志決定 感覚 運動・⾏動 種類、強さなどに応じ て数値化 関節⾓度、⾏動のパタ ーンなどで数値化 ⽣成モデルを⽤いた「理論駆動アプローチ」 • 脳における知覚・認知をある種の「計算」ととらえその情報処理プロセスを数

    理モデル化 version 2020.03.30 21
  22. ⽣成モデルの種類とモデル化の対象 国⾥, ⽚平, 沖村, ⼭下, 「計算論的精神医学」, 勁草書房, 東京(2019) version 2020.03.30

    22
  23. ⽣成モデルを⽤いた研究⼿法1 モデルフィッティング • 個⼈や疾患群のデータに近いデータを⽣成するモデルのパラメータを推定 することで、その個⼈や疾患群の認知・⾏動特性とその偏り・変調を表現 できる。 version 2020.03.30 23

  24. • モデルにおける変調と実際の⾏動・症状の類似性から精神障害の病態仮 説を形成する。 ⽣成モデルを⽤いた研究⼿法2: 損傷シミュレーション(Simulated lesion) による仮説形成 version 2020.03.30 24

    病態仮説形成
  25. 25 version 2020.03.30 3.数理モデルとの接続 まとめ • CPSY研究では、様々な数理的理論・技術が⽤いられる。 • “culture”が異なる複数のアプローチがあるが⼀般には分かりにくい。 どんな⽅法論やデータ・理論・モデルを⽤いているのかを⾒渡すことが必要

    データベースでは の3つで整理している。 Data type: Human data, Simulation などデータの種類 Experimental design: Generative model, Model fitting などの研究デザイ ン Models: Reinforcement learning, Neural network などモデルの種類
  26. • 計算論的研究が、従来の精神医学と神経科学とをリンクをすることに貢献す る。 • CPSYでは、どこが調べられていないのか、どのトピックが重要なのか?と いった点が、⾮専⾨家にとって⾒通しがよくなる。 • CPSYでは、⾼度な数理モデルや計算機シミュレーションが⽤いられるため、 精神医学、神経科学の専⾨家のみならず、情報学、物理学、⼯学など理⼯系 のエキスパートの参⼊が望まれる。

    • 異なる⼿法間の統合、特に、理論駆動とデータ駆動アプローチなどの相互 的・循環的な発展に貢献できる。 • 情報を、整理し蓄積するプラットフォームを構築することで、研究の効率化、 領域の活発化に貢献できる。 データベースが⽬指す未来 26 version 2020.03.30
  27. 27 • 川瀬 佑司(システム開発エンジニア) • Chris Salzberg (システム開発助⾔) • 本プロジェクト構想の発端は、全脳アーキテクチャ(WBAI)勉強会に

    おける⼭川宏⽒との議論に刺激を受けたものです。 • また、本プロジェクトの⼀部は、JST CREST #JPMJCR16E2、JSPS 科研費#JP18KT0021、#JP19H04998の⽀援を受けたものです。 version 2020.03.30 謝辞 運営団体:計算論的精神医学コロキウム 「計算論的精神医学」領域研究者のネットワーク構築・情報交換・ ディスッションのための有志の研究会です。