知らない用語の調べ方〜「Googleの外側」を活用するための3つのTips〜 2017-10-05, 東北大学乾研究室, 研究Tips
知らない用語の調べかた「Googleの外側」を活用するための3つのTips東北大学乾研究室「研究Tips」, 2017‑10‑05 (木)横井 祥 (D1)
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知らない用語の調べかた:よくある失敗例(“ロジスティック回帰”がよく分からない…)(教えてGoogle!)線形回帰分析が量的変数を予測するのに対して、ロジスティック回帰分析は発生確率を予測する手法です。(???)
学術用語を調べたい場合に「適当にググる」のは悪手前提:世の中には信頼度の高い情報と信頼度の低い情報がある検索結果の上位には信頼度の低い情報が大量に存在“調べてみた”系 blog記事,メンテナンスされていない “事典”フィルタする必要がある書籍としてのみ存在する(電子化・オンライン化されていない),または有料DBとして存在する信頼度の高い情報はたくさんある専門事典,教科書一概に「ググるのはダメ」というわけではない良質なネットコンテンツも増える一方どんな分野の話かを知るするためにググってみるのも効果的しかし,書籍や有料DBを活用しないと調べ物の効率が大幅に落ちる
今日触れるTips辞書事典ポータルとしてジャパンナレッジを使う分野くらいは分かっている用語に対しては専門事典を使う教科書や講義資料をストックしておいて用語集として使う
情報源の粒度↑情報の粒度が粗い,初学者向け,古い(確立している),先に調べる1.百科事典;レファレンス・サービス2.専門事典3.教科書; OCWs, MOOCs,講義資料4.サーベイ論文5.原著論文,著者スライド↓情報の粒度が細かい,専門家向け,新しいほか,各種インターネットリソース (blog,掲示板, etc.)
1.百科事典「何も分からない…何も…」「どんな分野に属する用語なのかも分からない…」という状態でまず調べるべきものありとあらゆることに関して基礎的な説明を与えることを目指した事典ここに書いてあることは既知の事実として扱われる(と思って良い)分野や関連キーワードのあたりをつけるのに使う(図書館に行って引いても良いが…)紙の百科事典は大部で辛い→ネット資源に頼るi.ジャパンナレッジで検索できる各種百科事典ii. Wikipedia
ジャパンナレッジ,ニッポニカジャパンナレッジ百科事典をはじめとした多くの辞書事典のオンラインポータルたとえばこのような事典が入っている:小学館『日本大百科全書 (ニッポニカ)』,約14万項目平凡社『改訂新版 世界大百科事典』,約9万項目調べ物の強い味方年間2万円程度で利用できる→ (それなりに大きな)大学の附属図書館は団体契約してくれているので,大学に所属していると無料で利用できる電子ブック ‑東北大学附属図書館ジャパンナレッジ同時利用人数:基本コレクション:4利用終了時は必ずログアウトしてください
…次にどんな分野の文献を辿れば良いか分かる
小学館『日本方言大辞典』百科事典以外にも色々な辞書事典が入っている
『日本国語大辞典』(通称“日国”, 50万項目,唯一の“大事典”)も利用可語源や語史の記述に優れる
Wikipediaよくある前時代的な批判: 「匿名なので信用できない」紙媒体・記名性の百科事典と同程度の信頼性 [Giles'05, etc.]我々が調べるドメインの品質は別に悪くない(とくに英語版)著名な人が書いた信頼できない記事だっていくらでもあるよくある小学生向け指導: 「信用できないので引用してはいけない」そもそも辞書事典は引用しない理解の助けになりそうならどんどん使う(特に我々のドメインに関しては)英語版推奨“References”が結構充実しているので活用するWikiwandで少し見やすく
2.専門事典専門事典=分野別の事典その道のプロが「一言で言うと…」「1ページでまとめると…」をやってくれている,日常的な調べ物の初手として非常に便利日常的に調べたくなる用語はだいたい分野くらいは分かっている,百科事典まで戻らなくて良い図書館の参考図書コーナーには各分野の専門事典が揃っている2017年現在ほとんどオンライン化されていない,紙で引くしかない個人的おすすめ:『言語処理学事典』, 『人工知能学大事典』,『MIT認知科学大事典』; 『言語学百科事典』, 『英語学要語辞典』; 『現代数理科学事典』; 『岩波数学入門辞典』, 『プリンストン数学大全』; 『岩波哲学・思想事典』, StanfordEncyclopedia of Philosophy (SEP); etc.全部研究室にあります
『MIT認知科学大事典』目次哲学,心理学,神経科学,計算論的知能(所謂人工知能),言語学,文化・認知・進化 のトピックについてそれぞれ2ページ程度の解説我々に馴染み深いテーマ多数.超おすすめ
『岩波数学入門辞典』s数学用語のみならず, “数学語”も多数掲載.気持ちをたくさん書いてくれている稀有な数学辞典.著者のひとりによる紹介最終段階では,700ページの辞書を最初から最後 まで通して読む,という,かなり非人間的な作業を,何人もの執筆者が行い,たとえば筆者は少なくとも1 0回は繰り返した.
3.教科書; OCWs/MOOCs,講義資料ググるよりも,事典を引くよりも,教科書を調べてしまうのが早い話題はたくさんある講義資料のPDFやOCWs/MOOCsの動画が今は山ほど手に入るいずれも一般にその辺の blogよりもはるかに正確で分かりやすいおすすめアクション有用な(自分にとって分かりやすく正確な)教科書を探す,リストアップしておく有用な講義資料はまとめてダウンロードしておく,全文検索の対象にする
例えば…ロジックの用語が分からない →教科書: 『論理と計算のしくみ』, 『情報科学における論理』;新井『数学基礎論』機械学習用語が分からない →教科書: 『はじめてのパターン認識』,中川『機械学習』, 『統計的学習の基礎』, Murphy『Machine Learning: AProbabilistic Perspective』講義資料:Bonen&Ng2017鈴木&野村2015杉山2013鹿島2010※オンライン用語集朱鷺の杜Wikiも有用
まとめ百科事典分野すら分からない場合は百科事典を使うジャパンナレッジを使う (ニッポニカ,日国, etc.)専門事典専門家による“まとめ記事”,調べ物の初手としておすすめほとんど電子化されていないので紙で引く教科書; OCWc/MOOCs,講義資料教科書や講義資料も大事な“用語集”自分にとって分かりやすい&有用な教科書のリストを作る有用な講義資料はローカルに保存して全文検索の対象にする
蛇足1:勿論ネットリソースも極めて重要たとえば数学の調べ物: Stack Exchange Mathematics; MathOverflowTechな話:各種公式 Docs, Stack Overflow論文に関する議論,速報: reddit, Twitter分野毎に「どこに調べに行けば良いか」は異なるリストを更新し続けましょう
蛇足2:ポエム「Googleの外」をも活用し,不案内な概念の正確な定義に素早くたどり着く力は,高等教育で身につけるべき重要な情報リテラシー武器を買い替え,磨き,鍛え続けましょう研究活動を通して「調べ方」そのものをチューニングし続けましょう有用な文献・ウェブサイトのリストを常に更新し続けましょう