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VCファンドにおける公正価値評価の留意点

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 VCファンドにおける公正価値評価の留意点

近年、国内外の機関投資家からの要請や会計基準への対応を背景に、日本のVCファンドにおいても公正価値評価の導入が急速に求められるようになりました。

しかし、非上場株式の評価には特有の難しさがあり、多くのGPが導入の壁に直面しています。また、導入後も業界内で統一された「標準的な型」が確立されておらず、各ファンドが試行錯誤を続けているのが実情です。

こうした課題を解決するため、2024年12月、GP・LP・監査法人という三者が垣根を越えて議論するべく「公正価値評価タスクフォース」を立ち上げました。複数回のセッションを通じ、IPEVガイドライン等の理論と国内外の公正価値評価実務を橋渡しするプラクティスの集約に努めてまいりました。

タスクフォースでの議論をまとめた資料「VCファンドにおける公正価値評価の留意点」を公開します。

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Transcript

  1. 本資料の公開にあたって―事務局の想い 公正価値評価の「実務の指針」を目指して 近年、国内外の機関投資家からの要請や会計基準への対応を背景に、日本のVCファンドにおいても公正価値評価の導入が急 速に求められるようになりました。しかし、非上場株式の評価には市場価格がないことや将来の不確実性が大きいといった特有 の難しさがあり、多くのGPが「具体的に何から手をつければよいのか」という導入の壁に直面しています。 また、導入を果たした後であっても、業界内で統一された「標準的な型」が未だ確立されていないため、各ファンドは現場で試行 錯誤を繰り返しながら運用を続けているのが実情です。 こうした課題を解決するため、本タスクフォースは立ち上がりました。最大の特徴は、GP(運用者)、LP(投資家)、そして監査法人 という、ファンド決算の実務に直接携わる全てのプレーヤーが垣根を越えて参加している点にあります。私たちは、立場の異なる 三者が対話を重ねることで、IPEV等の理論と日本の実務現場を橋渡しするプラクティスの集約に努めてまいりました。

    本資料は、単なる理論解説書ではなく、現場の知見と議論を凝縮した「実務の指針」です。これが各GPの皆様にとって、透明性 の高いファンド運営とLPに対する説明責任を果たすための確かな一助となることを、事務局一同、心より願っております。
  2. ⽬次/前提 目次 0 導入時における検討事項 <ガバナンス> 1 評価者・牽制組織 2 評価頻度 3

    投資先の情報収集 4 投資実行時の意思決定 5 バックテスト <メソドロジー> 6 直近ファイナンス価格 7 キャリブレーション 8 定量評価(マルチプル法) 9 定性評価 10 評価調整 11 アロケーション 12 バリュエーション・ポリシー Appendix メンバー 記載内容について 各論点スライドごとに以下を記載しています。 (A)概要・考え方:IPEVの基本的な考え方や参考書籍の該当箇所を記載 (B)プラクティス:本タスクフォースにおけるディスカッション内容を参考に事例 などを記載 (C)留意点:一般的に留意すべき事項を記載 参考書籍・資料 • 『VCファンド・VC投資の会計・評価実務Q&A 改訂改題』/EY新日本有限責 任監査法人・EY税理士法人 編(中央経済社, 2024)。ISBN 978-4-502- 49441-3 • International Private Equity and Venture Capital Valuation Guidelines December 2025(以下、「IPEV2025」。参照リンクはこちら )
  3. 5 公正価値評価タスクフォース 公正価値導⼊を検討するファンド 0.導⼊時における検討事項 概要・考え方 【公正価値評価がVCファンドに求められる背景】 VCファンドが国内外の機関投資家からの資金供給を受けるにあたり、機関投資家の投資評価方法(パフォーマンス評価) の1つである公正価値ベースでの評価が、投資先であるファンド側にも求められることが増加している。背景には、IFRSや US GAAPといった会計基準への対応に加え、LPからファンド価値算定プロセスの透明性や説明責任を重視する要請が

    強まっていることがある。 ※ 詳細は「VCファンド・VC投資の会計・評価実務Q&A」Q7-1参照 【VC投資における公正価値評価の難しさ】 VC投資においては、投資対象が非上場企業であり市場での観察可能な価格が存在しないこと、事業フェーズごとの不確 実性が極めて大きいこと、さらに参照可能なマーケットデータが限定的であることなど、公正価値評価を行う上で特有の 難しさが存在する。 【公正価値評価を導入する意義・期待される効果】 一方で、公正価値評価を導入・運用することにより、ファンド価値の比較可能性や評価手法の一貫性が高まり、LPに対す る説明力やコミュニケーションの質を向上させることが可能となる点に意義がある。
  4. 6 公正価値評価タスクフォース 公正価値導⼊を検討するファンド 0.導⼊時における検討事項 プラクティス 【導入対象となるファンド規模・LP構成】 日本では、国内外の機関投資家を呼び込む観点から、概ね100億円規模以上のファンドで公正価値評価を導入するケー スが多い。一方、近年では50億円規模であり、機関投資家が不在の場合でも将来を見据えて導入を検討する事例が散 見される。 【導入タイミングと契約・ガバナンス面の留意点】

    公正価値評価の導入はファンド組成時が原則であり、組成後に他の評価方法から切り替える場合には、LPAに基づきLP からの同意取得が必要となる。また、監査人が公正価値評価に対応可能かについても事前確認が不可欠である。 【海外ファンド・海外LPとの関係】 海外ファンドではIFRSやUS-GAAPに基づき公正価値評価が必須であることに加え、LPから評価根拠や前提条件に関す る詳細な情報開示を求められるのが一般的である。 【コスト・将来ファンドへの影響】 公正価値評価の導入には、人件費、評価・管理システム利用料、監査報酬などのコスト増加が伴う。固定費への影響も 大きいため、当該ファンド単体のみならず、次号以降のファンド規模や想定LP構成(国内外の機関投資家の有無)も踏ま え、中長期的視点で導入可否を検討する必要がある。 【評価基準】 投資先のステージや規模によって何をもって「公正価値」とするのか、どのような手法で評価を行うのかといった方針を社 内で決定、明文化をし、そのルールに則って評価を実施する。
  5. 7 公正価値評価タスクフォース 公正価値導⼊を検討するファンド 0.導⼊時における検討事項 実務上の留意点 【評価手法決定に向けたプロセス、検討事項】 ①関係者間の連携とプロトコル整備 キャピタリスト、コントローラー、監査人の間で、評価に必要な情報の内容、共有タイミング、役割分担をあらかじめ整理し 、円滑な情報共有が行える体制を前提に導入を進めることが重要である。 ②全社的コミットメントの必要性

    公正価値評価の実施には、GPおよびキャピタリストの協力が不可欠であり、管理部門のみで完結しない業務であること から、全社的なコミットメントを前提とした導入が求められる。 ③LP及び監査法人との確認 導入にあたりLPAへの反映、LPへの周知が不可欠。また、監査法人が公正価値評価に対応をしているかの確認を行う必 要がある。 【既存モニタリング活動との連動】 公正価値評価には一定の計算・文書化負担が生じるものの、評価の前提となる情報は投資先の状況を踏まえたもので あり、通常のファンドモニタリング活動で検討されている事項を最大限活用することで、効率的な運用が可能となる。 【法制度・評価方法選択に関する留意点】 有責法ファンドにおいては、時価評価(公正価値評価)が原則として位置付けられている(投資事業有限責任組合契約に 関する法律施行規則 11条2項)一方、作業負担やコストを踏まえ、LPの合意を得ることで原則とは異なる従来の評価方 法(旧通産省モデル、金融商品会計基準等)を採用する(既に設立されているファンドにおいては採用した評価方法を継 続適用する)ことも可能と整理されている。 (参考)投資事業有限責任組合会計規則(案)に対する意見公募手続の結果について(令和5年12月5日 経済産業省 経 済産業政策局 産業組織課)
  6. 9 公正価値評価タスクフォース 公正価値評価の運⽤ 1.評価者・牽制組織 概要・考え方 • 公正価値ベースで時価評価する場合は、マーケットアプローチやインカムアプローチ等による評価を少なくとも年1回、 投資先ごとに行う必要がある。また、その評価にあたっては必要な情報を継続的に収集・把握する体制も必要となる。 加えて、これらを運用するためのパートナークラスのリソース捻出やミドルバックの管理体制強化が必要となり、必然的 に高水準の管理コストが求められることとなる。

    ※ 詳細は「VCファンド・VC投資の会計・評価実務Q&A」Q7-7参照 プラクティス • 担当人数は各ファンドの規模によって異なる。また、一部の作業については会計士やその他専門家へ業務委託するケ ースもある。 【例:国内ファンド①】 • バリュエーションシートを使って、キャピタリスト(投資担当者)が評価作業し、ミドルバックオフィスで検討を行い、評価委 員会(評価会議)で決定している。 【例:国内ファンド②】 • 評価作業は、各ミドルバックオフィスから人を出して作業チームを組成している。 • 作業期間として、評価基準日ごとに1か月程度かけて業務を行っている。 実務上の留意点 運用体制はファンド規模やミドルバックオフィスの陣容により異なることも想定されるが、重要なのは評価作業者と検証者 の牽制体制が維持されることである。また、ミドルバックオフィスで評価作業を行う場合でも、評価結果についてキャピタリ ストとディスカッションを行い、投資先の実態を評価に反映させることが一般的である。
  7. 11 公正価値評価タスクフォース 評価頻度 2.評価頻度 概要・考え方 • 公正価値評価については投資家に決算書を提供する年1~2回(中間・年度)の過程で実施されることが一般的であるが 、最近ではQuarterly Reportを作成しているケースもあり、このようなファンドでは四半期ごとの評価を実施している場 合もある。

    ※ 詳細は「IPEV2025」5.19参照 プラクティス 【例:国内ファンド①】 • 評価は1年に1回行い、四半期ではキャピタリストと意見交換を実施のうえ、減損したほうがいいと判断したもののみ洗 い替えを実施している。 【例:国内ファンド②】 • 全ての銘柄について詳細なフルスペックの公正価値評価を2Q,4Qで実施し、1Q,3Qは上場銘柄の株価洗い替えのみ行 っている。 • 外貨建て銘柄の場合は評価頻度に合わせて、為替レートの洗い替えを行っている。 【例:その他国内ファンド】 • 最近ではLP要望で四半期での公正価値の情報提供を検討しているファンドが増えている。その場合、2Q,4Qはフルス ペックの評価を行い、1Q,3Qは重要な変化(ex.直近ファイナンス、経営破綻)が生じた場合のみ見直すという運用を検討 していることが多い。 実務上の留意点 評価頻度やその評価方法はファンドの方針によっても異なるが、特に期中に監査対象外で投資家に公表する公正価値 情報については、事前に監査人と意見交換を行うことが推奨される。 評価頻度に関して、最近ではLPから四半期での評価をリクエストされることも多いため、そのようなニーズも事前に把握し 、ファンドの方針に織り込む必要がある。
  8. 13 公正価値評価タスクフォース 投資先の情報収集(全般) 3. 投資先の情報収集 概要・考え方 • 非上場株式の公正価値評価にあたっては主観的・客観的評価が必要となるため、投資先の状況を示す様々な情報を 収集・把握し、総合的な判断を行うこととなる。また、既知または知りうる情報の考慮も必要である。そのため、そのよう な情報を適切に評価に反映し、説明できる体制を築くことが必要である。

    ※詳細は「VCファンド・VC投資の会計・評価実務Q&A」Q7-6、および「IPEV2025」2.4、2.5、5.18参照 プラクティス 【例:国内ファンド】 • 公正価値評価時に使用するバリュエーションシートには様々な情報の記入が必要で、その情報の収集に時間がかか るため、評価確定の1ヶ月ほど前倒しで投資先から情報収集を始める運用フローに変更した (監査法人との連携も見 据えて把握する必要があり、必要な情報は格段に増加)。 • 情報の取得については効率的に行うために、情報管理システムを導入。 • キャピタリストはスタートアップの事業に集中させたいと考える一方、ファンド管理メンバーはLPからの要請や監査法人 からのコメントに対応しなければならない。こうした利害関係を乗り越えるためには、公正価値評価の効果をしっかりと 説明し、社内で意識を共有することが重要。 • リード投資家とフォロー投資家で投資先からの情報の感度や情報獲得の難しさも異なり、情報を取得しやすいリード投 資家は公正価値評価を導入しやすいが、情報を取得しにくいフォロー投資家の場合は公正価値評価を導入していると 限られた情報に基づいた評価結果となっている。また、海外の投資先については情報収集に制約がある場合もあり、 同様に限られた情報での評価結果になってしまう課題がある(これらの情報格差を認識した上で導入を検討すべき)。 実務上の留意点 情報収集では、キャピタリストが投資先とのコミュニケーションの中で入手した情報を文書化・保存し、投資チーム及びコ ントローラーと情報共有することが望ましい。 フォロー投資家の場合に情報の非対称性が生じてしまう可能性は想定されるが、担当キャピタリストが公正価値評価に 必要な情報を理解したうえで、当初投資実行時から投資先と建設的なコミュニケーションを重ね、必要な情報を可能な限 り入手できるような関係性を築くことが重要となる。
  9. 14 公正価値評価タスクフォース シード・アーリーステージ時の対応 3. 投資先の情報収集 概要・考え方 • シード・アーリーステージ時の評価にあたっては「直近の投資価格」を基礎とするケースも多いと想定されるが、当該価 格をそのまま使用することはできず、投資時点からの事業計画の進捗やキャッシュランウェイの状況など様々な状況を 検討し、評価を行っていくことになる。そのため、これらの判断に必要な情報を入手するとともに文書化していく必要が

    ある。 ※ 詳細は「VCファンド・VC投資の会計・評価実務Q&A」Q7-26,27参照 プラクティス 【例:国内ファンド①】 • シード・アーリーステージの投資先で定量データを定期的に提出できない場合の対応として以下を中心とした対応を行 っている。 ① 四半期ごとに投資チームとディスカッションを実施して対応 ② 投資契約に従って定量データを共有できる状態を目指し、財務報告体制が確立される前は簡略化されたB/S・P/L で必要最低限の情報で対応する ③ 投資契約に従って財務情報を定期的に受け取る権利を確保しているため現状特段の問題はないが、そうなった場 合は経営陣との直接コミュニケーションに頼らざるを得ない 【例:国内ファンド②】 • シード・アーリーステージの投資先で定量データが得られないような場合、順調な追加ラウンド時はファイナンス条件( 誰がリードか、エントリー時バリュエーションやオーナーシップ、事業会社が参加していないか)を重視して判断。他のフ ォローオン投資家やダイリューション等のピッチブックから得られる範囲の情報を公正価値評価に反映。 実務上の留意点 特にシード・アーリーステージでは情報が限られているが、財務数値に限らず、非財務も含めたKPI/マイルストーン/キー パーソン/外部環境等の投資先にとって重要となる様々な情報を入手し、総合的に判断していくこととなる。
  10. 16 公正価値評価タスクフォース 投資実⾏時の検討とモニタリング 4.投資実⾏時の意思決定 概要・考え方 • 直近の投資価格にキャリブレーションを実施する場合、投資時点で検討を行った定性・定量(採算分析・KPI・マイルスト ー ン 含

    む ) か ら の 状 況 の 変 化 を モ ニ タ リ ン グ を 通 じ て 確 認 し 、 そ れ に 基 づ い た 評 価 を 行 う 。 ※詳細は「VCファンド・VC投資の会計・評価実務Q&A」Q7-8、7-22~25、「IPEV2025」2.6、2.7参照 プラクティス 【例:国内ファンド】 • 公正価値導入により投資実行時の検討とモニタリングの業務負担は増えた一方で以下のポジティブな意見が挙がって いる ① 業務負担が増えたのではなく、これまできちんと管理すべきものがされていなかった。大口LPから資金を預かるた めには、こうした管理体制を整えることは重要。 ② 投資先の状況をきちんとモニタリングする意識が高まった。 ③ 投資時点の見込みが現時点でどうなっているかを検証するため、状況が悪い投資先を早期に発見することにも繋 がっている。客観的に判断する情報を整理できる体制とすることで着実なファンド運営に繋がる。 【例:その他国内ファンド】 • 最近では公正価値導入と合わせて投資実行時の検討項目を再整理するケースは多い。 • 再整理した場合においても新しい確認事項が増えるということは多くなく、これまで投資時に口頭で議論されていた事 項を投資委員会資料に文書として落とし込み、その後のモニタリングでもそれを参考にディスカッションする運用として いる。 実務上の留意点 投資期間のモニタリングは通常、投資実行時の計画や状況に照らした分析を行っていくことになるため、投資先ごとに投 資実行時に特に重視してモニタリングすべき事項をファンド内で認識しておくことが重要である。 なお、投資時点の方針を起点にその後の評価方法も検討することとなるため、投資時においても想定Exitを踏まえた評価 方法を選択するとともに、特にIPOとM&Aの両方が想定されるタイミングには、それぞれの確度やタイミング及び、それぞ れの状況を踏まえたバリュエーションを考慮する必要がある。
  11. 18 公正価値評価タスクフォース バックテスト 5.バックテスト 概要・考え方 • 未上場株式の公正価値は見積りの要素が強いため、事後的に確定した売却額等とその直前の評価額とを比較、その 差の要因分析し、そのフィードバックを通じてその後の評価に活かす手続き(バックテスト)をすることが有用とされてい る。 •

    会計監査上も見積り要素が強い場合、バックテストの検討が必要で、会社側にその体制を要求されることが多い。 ※ 詳細は「VCファンド・VC投資の会計・評価実務Q&A」Q7-7、「IPEV2025」2.7参照 プラクティス 【例:国内ファンド①】 • 全社でバックテストを実施(頻度は四半期~年度一括)している。 【例:国内ファンド②】 • バックテストについて四半期ごとにEXITした投資先の直前四半期までの評価をさかのぼり、EXIT価格との差異比較や 推移の検証を行っている事例あり。評価の差異が大きい場合には、なぜそうなったのか、当時知りうる情報で適切な評 価が行えていたのか、今後に向けて示唆はあるか、という視点で議論(ただし、IPO、M&AともにEXIT時の価格付けはロ ジカルでないケースもあり、EXIT価格との単純比較だけで検証するのは限界もある)。 • バックテストを行っている中で評価方法によって、以下のような印象を持っている。 ① 計算結果と肌感覚のズレはしばしば感じており、難しさを感じる。多額の資金調達をしながら成長を続けている先の 評価が悩ましい。 ② トレードセール Exitの場合、例えば、公正価値が簿価を下回る数値となっていても、投資の現場では簿価1倍に拘っ て交渉したり、より高く評価してもらえるように努力しているため、出口価格と公正価値との差異自体はあまり気にし ていない。ただし、出口に至るまでの推移をみたときに、それぞれのタイミングで取得できる情報を用いてより適切 に評価できていたかという振り返りを現在行っている状況。 実務上の留意点 バックテストにあたっては実際の取引価格が生じた際に、それと期末の評価額や投資時点の予測Exit価格などと比較し、 検証することが想定される。その際には単に金額だけを比較するのではなく、評価の前提(ex.Exit方法)や評価方法、イン プット、マーケット環境など様々な要素に分解して検討することが重要となる。 バックテストは単に1社のみの投資先を検証して、何かの結論を導き出す性質のものではなく、トラックレコードを積み重 ねる中で、自社の改善ポイントを発見する性質のもののため、事後的に遡って見やすい形で検証結果を保存することが 望ましい。 なお、特にトレードセールの場合、交渉の過程でコントロールプレミアム、サイズプレミアムなどに相当する状況が個社毎 に異なることが多々あり、評価調整をどのように考えるべきか検討の素材になることもある。
  12. 20 公正価値評価タスクフォース 直近ファイナンス価格の使⽤期間 6. 直近ファイナンス価格の利⽤ 概要・考え方 • IPEVガイドライン2015年版までは、「直近ファイナンス価格(The Price of

    a Recent Investment)」はマーケット・アプロー チの一例として明示されていたが、2018年版以降は個別の評価技法から削除された。 • 直近ファイナンス価格は、それ単独で独立した評価技法とはみなされないものの、その後の評価日における公正価値 の見積りに際しては、適切な出発点として用いることが可能。 • ファイナンス実行後における市場環境の変化、投資先企業の業績や財務状況の変化等を十分に考慮した上で、直近 ファイナンス価格から調整なしで用いることが妥当と判断されるケースもある。 ※ 詳細は「VCファンド・VC投資の会計・評価実務Q&A」Q7-22、「IPEV2025」3.10参照 プラクティス 【例:国内ファンド①・海外ファンド】 • 国内外ファンドにおいて、「原則として直近ファイナンス価格を調整しない」とする期間(投資後3~12か月程度)を設定 する事例もある 【例:国内ファンド②】 • 当該期間を設定せずに、投資先の進捗状況やマーケット状況に応じて柔軟に対応するとしている事例もある • 直近ファイナンス価格の使用期間を投資後6か月と設定しているものの、IPO蓋然性が高いと判断できるケースでは、 たとえ6か月以内であってもマルチプル法を選択可能としている事例もある 実務上の留意点 直近ファイナンス価格を使用する実務上の期間を長く設定してしまうと、当該期間におけるモニタリングが手薄になり、状 況変化を適切に捉えられなくなる可能性が高まる点に留意。当該使用期間を設定する場合には、期間が長くなればなる ほど、実態としてその期間内の状況をモニターすべきという議論に帰結することもあるため、モニタリングプロセスと合わ せて、その合理性を適切に検討した上で、会計監査人と事前に合意する必要がある。
  13. 21 公正価値評価タスクフォース 直近ファイナンス価格を使⽤できないケース 6. 直近ファイナンス価格の利⽤ 概要・考え方 • 「IPEV2025」3.10項において、直近の投資が以下の該当する場合、その直近ファイナンス価格が公正価値を表していない ことを示唆している可能性がある、としている。 ü

    新規と既存の投資に異なる権利が付与されている ü 新規投資家の参入が既存投資家の持分の著しい希薄化を招く ü 新規投資家が戦略的な動機を有する ü クロージングのタイミングと価格合意時点の市場の状況が大きくことなる ü 当該取引が強制売却や「レスキュー・パッケージ(救済策)」に該当する可能性がある • これらの状況に該当する場合は、その直近ファイナンス価格が公正価値を反映していることの合理的な理由がない限り、 公正価値の最善の見積りとして使用できないことになると考えられる。 ※詳細は「VCファンド・VC投資の会計・評価実務Q&A」Q7-23、「IPEV2025」3.10参照 プラクティス 【例:国内ファンド】 • 直近ファイナンス価格を使用するのは既存株主以外の投資家が参加したファイナンスラウンドに限る(複数の投資家が含 まれる一般的なファイナンスであれば、直近ファイナンス価格が公正価値を表している可能性は高いという発想) 【例:評価システム導入済ファンド】 • 新規と既存の投資で、優先株式の権利の条件が異なる場合には、オプションプライシングモデル(OPM)*1 を用いたバック ソルブ法で公正価値を算定する事例もある(ただしスプレッドシートではなく評価システムを導入しての算定) 実務上の留意点 直近ファイナンス価格の背景を把握することは非常に重要である。自社も投資している場合には、投資採算分析によりマー ケット情報に基づいて算定された指標と比較し、差分が合理的といえるかどうかの検討も重要である。 また、自社が参加しないラウンドにおいても、直近ファイナンス価格を使用できるか否かの分析が必要となる。 *1 OPM・・・種類株式のみなし清算時の分岐点の金額を権利行使価額とみなして、普通株式と種類株式を企業価値に対するコール・オプションとしてモデル化する評価法
  14. 23 公正価値評価タスクフォース 直近ファイナンス価格からのキャリブレーション 7.キャリブレーション 概要・考え方 • 投資日時点での定量的指標・定性的指標が、評価日時点でどの程度変化したかを検証し、変化に応じて、直近ファイナンス価格 に調整を加えるもので、IPEVガイドラインでは当該調整が求められている。 ※詳細は「VCファンド・VC投資の会計・評価実務Q&A」Q7-24,7-25、「IPEV2025」3.10参照 プラクティス

    【例:海外ファンド】 • 海外VCの事例では、定量的指標・定性的指標の変動分析は実施するものの、重要な変動がなければ調整ゼロとして、直近ファイ ナンス価格を据え置くケースが多い • アーリーステージの企業で利用できる財務情報が少ない場合は、直近ラウンド時に設定したマイルストーンの達成度や事業進捗 等をもとにキャリブレーションを実施している • ただし、定量的指標のうちマーケット要因(類似上場会社のマルチプルないし時価総額の変動)のみ調整するケースや、稀にパフ ォーマンス要因(投資先の投資実行時の予測と評価日までの期間の実績の差異)のみ調整するケースも見られる • また、直近ファイナンスから時間が経つにつれ評価額との関連は薄くなるため、キャリブレーション可能な直近ファイナンスからの 経過期間を最大2年程度と定めている例もある 【例:国内ファンド】 • 定量的指標・定性的指標の大きな変動が認められる場合、直近ファイナンス価格に一定のディスカウントを反映するケースもある • また、アップラウンドがみえていればプレミアムを反映するケースも考え得るが、公正価値を上げる場合はマルチプル法等により 新たな公正価値を算出することが多い 【例:評価システム導入済ファンド】 • 評価システムを使用し、直近ファイナンスからの期間経過に伴って直近ファイナンス価格とマーケットアプローチを混ぜていくアプ ローチとしている 実務上の留意点 直近ファイナンス価格が公正価値を反映している場合においても、時間の経過に伴う投資先企業や関連するマーケットの状況変化 が、評価日時点の公正価値に影響を与えることから、直近ファイナンス価格を調整ゼロと判断した場合には、それが合理的と判断し た理由を十分に文書化することが求められる。 特にシード・アーリーの期間は実質的に前回評価額が引き継がれるケースが多いと考えられるが、マイルストーン分析を含め、定量・ 定性分析が行われた結果である点に留意。
  15. 25 公正価値評価タスクフォース マルチプル法で使⽤する指標(PER, PSR, EV/EBITDA等) 8. 定量的な評価(マルチプル法、DCF法等) 概要・考え方 • スタートアップ企業の評価に用いられるマルチプル法において、一般的に用いられる評価指標としては、以下のものが

    挙げる。 ü PER(Price Earnings Ratio):株価を1株あたり当期純利益で除したもの ü PSR(Price Sales Ratio):株価を1株あたり売上高で除したもの ü EV/EBITDA倍率:企業価値(Enterprise Value)をEBITDA(税引前・支払利息前・減価償却前利益)で除したもの ü EV/売上高倍率:企業価値を売上高で除したもの • 市場参加者が着目しており、投資実行時の採算分析でも使用している指標をマルチプル法でも一貫して使用すること が望ましい。例えば、想定ExitがIPOでPERを着目すべき業績指標としている場合、赤字となる期はマルチプル法を断念 するのではなく、投資先のIPO時点での想定PERによりIPO時点での株主価値を算定し、評価日時点まで割引計算で算 定することも考えられる。 • 業績指標(売上・利益等)は、期待値がより反映されている観点で、予想ベースを用いることが望ましいが、実績が現在 の実力値を表していると認められる場合には、実績ベースを使用することも考えられる(投資先の業績指標を予想ベー スとする場合には、類似上場会社の倍率も予想ベースとし、時点を合わせる必要がある)。 ※詳細は「VCファンド・VC投資の会計・評価実務Q&A」Q7-11~7-14、「IPEV2025」3.4参照 プラクティス 【例:国内ファンド共通】 • 利益が出ていない段階では、売上マルチプル(PSR、EV/Sales等)を原則使用するところもあれば、業種や個別投資先 ごとに売上マルチプルが適しているかを検討した上で使用するケースもある • 投資先の売上・利益目標の精度を十分に検討した上で、目標に達しない傾向のある投資先については、キャピタリスト が売上・利益目標に調整を加えた上で、マルチプル法のインプットに用いるケースが多い • また、キャピタリストが複数ケース(例:マネジメントケース、ベースケース、ワーストケース)で算定した株主価値と、前回 ファイナンス価格などとクロスチェックした上で、最終的に決定するプラクティスもある 実務上の留意点 業績指標の選択や調整については、投資先の個別事情に鑑みて判断していくものの、チェリーピッキングにならないように 判断した根拠を十分に文書化することが重要である。 当初投資実行時もしくは直近ラウンドにおける採算分析の目線と整合性、キャリブレーションの考え方と合わせて検討する ことが望ましい。
  16. 26 公正価値評価タスクフォース マルチプル法で使⽤する類似上場会社の選定 8. 定量的な評価(マルチプル法、DCF法等) 概要・考え方 • 選定する会社は、通常、1社だけでなく複数選定する。類似性の高い会社があれば選定する会社は少数でよいと考えら れるが、反対に類似性が低い会社しか見つからない場合は、より多くの会社を選定する方が望ましい。 •

    投資先の個別性が高く、また事業ステージも多様なため、類似性の高い会社を選定することが困難なケースもあるが、 業界やサービスのような主要な類似性基準をすべて満たさなくても、それ以外の要素(例:事業規模、成長性など)で類 似性の高い会社を選定対象とすることも検討すべきである。 ※詳細は「VCファンド・VC投資の会計・評価実務Q&A」Q7-15、「IPEV2025」3.4参照 プラクティス 【例:国内ファンド共通】 • 類似上場会社の選定は、投資先やマーケットに精通しているキャピタリストが担当することが多いが、証券会社の提案 資料等を参考にすることもある • 類似上場会社の選定数(目安)を設定しているGPもあり、その場合、少なくとも4~5社、多いと10社超を目安として選定 している • 類似上場会社はセクターごとに同一のものを選定するのではなく、個社ごとに選定することが多い • 類似上場会社の指標が異常値を除外する方法として、平均値ではなく中央値を使用する、一定の倍率以上を外れ値と 定義して除外する(例:PER50倍以上、PSR20倍以上など)といった事例もある • また、類似上場会社との成長率の違いを考慮し、平均値や中央値を基本としつつ、成長率が一定程度高い場合は第3 四分位値(3rd quartile)、低い場合は第1四分位値(1st quartile)を採用している事例もある 実務上の留意点 投資時点の採算分析の際に選定した類似上場会社を、そのままマルチプル法の計算でも使用することが望ましい。 事業内容の変更や新たな類似企業の上場等に応じて、一部類似情報会社を変更するケースも当然有り得るが、その場合 には変更理由を文書化することが求められる。
  17. 28 公正価値評価タスクフォース 定性的な評価の概要 9. 定性的な評価 概要・考え方 • 直近ファイナンス価格がない場合、当初取得時の投資価格をロールフォワードする考え方が最も適切な測定アプローチ となる可能性もある。ただし、当初取得時から公正価値の変動を示す兆候があるか否かについて検討し、公正価値の 変動を見積もる必要がある。

    • 前回評価額をロールフォワードする前に、以下の事項を考慮する必要がある。(一例であってこれに限定されない) ü 前回資金調達時において開発されたキャリブレートされた評価モデルの有無 ü 事業計画に沿った業績の進捗の程度 ü 製品またはサービスについて顧客または市場からの受入れの状況 ü 事業政略の変更、市場の変更などの事業のピボットの状況 ü 前回資金調達時以降に発生した投資の評価に影響を与える重要な事象(内部/外部)の有無 ü キャッシュ不足に陥るまでの残存期間の観点からの事業の存続可能性 ü 測定日における追加的資金調達の予定の有無 ※詳細は「VCファンド・VC投資の会計・評価実務Q&A」Q7-27、「IPEV2025」3.10参照 プラクティス 【例:国内ファンド】 • KPI達成状況、事業マイルストーン、ランウェイ等のチェック項目を設定し、これを確認した上でリスクがなければ、前回 の公正価値を据え置く • 売上が立っておらずマルチプル法が使えない会社の場合、IPOの蓋然性がまだ高いとは言えず、前回公正価値据え置 きという判断になることが多い • 進捗が芳しくない投資先においては、ロジックツリー上は個別調整としている。(コストアプローチを適用するか、一定の 掛け目を乗じた評価にするかは検討中) 【例:海外ファンド】 • シード、アーリーステージで収益がなく開発を継続している投資先の評価方法は、ケースバイケースで、開発の進捗だ けでなく、事業開発、他社との戦略的連携、バーンレート、なども考慮する 実務上の留意点 公正価値の変動を示す兆候があるか否かについて複数の検討項目を用いて総合的に検討し、その結果、直近評価を引 き継ぐべきかを決定することとなる。そのためには、定量的評価と同程度かそれ以上に、結論に至るエビデンスの収集、合 理的な説明が要求される点に留意が必要である。
  18. 30 公正価値評価タスクフォース ⾮流動性ディスカウント 10. 評価調整 概要・考え方 • マルチプル法での類似上場会社の株式に比べ、非上場株式は流動性が低く、換金には時間や追加的なコストを要する 場合が多いため、この流動性の欠如を反映した「非流動性ディスカウント」を考慮することが考えられる。 •

    直近ファイナンス価格を使用する場合やVCレートにより割引したケースでは、当該インプットに非流動性ディスカウント が織り込まれていると考えられ、追加での非流動性ディスカウントの考慮は不要と考えるケースが多い。 ※「IPEV2025」3.6 (iii) 参照 プラクティス 【例:国内ファンド】 • マルチプル法で算定した株主価値に対し、非流動性ディスカウントを固定の率を適用する事例もあれば、案件ごとの個 別事情やマーケット環境、上場予定時期までの見積り期間等によって率を変える事例もある(10-30%の事例が 見られる) • 固定での率としては20%を使用(国内証券会社の資料では20%としている事例が多数であったため) 【例:海外ファンド】 • 非流動性ディスカウントの水準は0~40%程度で、固定の率を適用するVCもあれば、マーケット状況を考慮し調整してい る事例があるものの、基本的には40%を出発点としている事例もある。 • 非流動性ディスカウントを適用しない事例もある(売却時の価格決定プロセスにおいてディスカウントを考慮しないことや ドラッグアロング・タグアロングによりM&A時に売却可能であることなどが理由) 【例:評価システム導入済ファンド】 • 評価システムを導入している場合は、上場予定時期までの見積り期間や市場ボラティリティ等に基づき案件ごとに自動 計算された値を適用している事例もある。 実務上の留意点 非流動性ディスカウントの採用根拠、適用率の選定理由、評価対象の特性などを十分に説明可能な形で文書化し、事前 に会計監査人と協議しておくことが重要と考えられる。
  19. 32 公正価値評価タスクフォース アロケーション⼿法の選択 11. アロケーション 概要・考え方 • スタートアップ企業は普通株式に加えて種類株式などを発行しているケースが多く、両者で権利内容が異なる可能性があるた め、算定された株式価値総額をどのように配分(アロケーション)するかが論点になりうる •

    アロケーションは様々な手法があるが、実務上は①CSE、②CVM、③OPMのいずれかの採用がみられる ① CSE(Common Stock Equivalent):種類株式1株を普通株式1株と同等の価値とみなして株式価値を配分 ② CVM(Current Value Method):即時売却を想定した手法であり、優先分配分を種類株式に割り当て、残余の価値を普通株式 および種類株式に配分 ③ OPM(Option Pricing Method):種類株式の流動化事象発生時の損益分岐点金額を権利行使価額とみなして、普通株式と種 類株式を企業価値に対するコール・オプションとしてモデル化する手法 ※詳細は「VCファンド・VC投資の会計・評価実務Q&A」Q7-30~32、「IPEV025」3.10参照 プラクティス 【例:海外ファンド】 • 主にCSEを前提としたシンプルなアロケーションを適用しているが、事業進捗の悪化等により普通株への転換シナリオが見込 めない場合は、OPM等、その他のアロケーション方法を検討する事例がある • バリュエーション結果が前回ラウンド時以上である場合は基本的にCSEを使用し、下回った場合には残余財産分配権を考慮し てCVMかOPMを使ってExcelで計算するといった事例がある • 一方、基本的にOPMを使用し、OPMでは評価が歪む場合やIPOが近づいた場合は、CSEとOPMを一定比率で按分している事 例もある 【例:国内ファンド】 • 普通株式転換で採算分析を行っており、普通株式転換シナリオを想定しているのであればCSEを採用し、そうでない要素が入 っているなら個別検討としている例もある 【例:評価システム導入VC】 • 基本的にOPMを使用し、普通株式のみの場合や、上場直前で普通株転換することがほぼ確実でOPMだと逆に評価が歪んでし まう場合にはCSEを使うことも検討 • CSEとOPMをIPO確度で按分するアプローチを取っている事例もある • 評価システムでの評価は恣意性を排除できる一方、評価結果の一部でブラックボックス化しており、肌感覚に合わないところあ り、LPへの説明やバックテストでの文書化に苦慮するといった声もある
  20. 35 公正価値評価タスクフォース バリュエーション・ポリシー 12.バリュエーション・ポリシー 概要・考え方 • ファンドが作成するバリュエーション・ポリシーについては前述した各章の項目を総合的に勘案して運用方針が定められる プラクティス 【例:国内ファンド】 •

    日本においてはIPO Exitを想定している先が多いことを前提に普通株式転換で採算分析を行っており、普通株式転換シナリオ を想定しているのであればCSEを採用し、その他の場合は個別検討としている例がある(なお、個別検討として、トレードセール 等が想定される場合、Exitの交渉に種類株式の契約内容が考慮される場合や複数シナリオで評価される場合もある) 【例:評価システム導入国内ファンド】 • 基本的にOPMを使用し、普通株式のみの場合や、上場直前で普通株転換することがほぼ確実でOPMだと逆に評価が歪んでし まう場合にはCSEを使うことも検討 • CSEとOPMをIPO確度で按分するアプローチを取っている事例もある 【例:海外ファンド】 • 海外VCにおいてはExit戦略が様々あり、その取引交渉にも種類株式の契約条件が織り込まれることも多いため、以下のような 整理が多い。またバリュエーションポリシーは細かく文書化されておらずシンプルな原則のみ定め、一定程度の柔軟性をもって 運用されているケースが多い。 ①縦軸に事業進捗、横軸に直近ラウンド経過年数をおいたマトリクスで整理。 ②まず直近ラウンド直後であれば、直近ファイナンス価格を使ってCSEでアロケーションを使い、そこから年数が経ったが事業 進捗が順調であれば、直近ファイナンスからのキャリブレーションあるいはマルチプルを活用。 ③事業ケースが悪化した場合はケースバイケースの判断となり、キャリブレーションして直近ファイナンスからディスカウントを 入れる、優先株式の価値を考慮したCVMやOPMを使用、またはゼロ評価等を行う。 実務上の留意点 特にマーケット環境の成熟していない日本では、非上場株式の取引価格・公正価値の考え方もマーケット参加者によって今後議 論されていくことが見込まれるため、現在の環境下において、公正価値導入当初はバリュエーション・ポリシーについても汎用性 の利く形で設定し、バックテスト結果のトラックレコードを通じて改訂していくことが推奨される。 バリュエーション・ポリシーについては通常、少なくとも年1回、見直しの要否の検討が行われるため、バックテスト結果のトラックレ コードや実運用の課題等を踏まえた見直しの要否の判断が不可欠である。
  21. 36 公正価値評価タスクフォース メンバー(順不同) ANRI株式会社 インキュベイトファンド株式会社 エー・アイ・キャピタル株式会社 Eight Roads Ventures Japan

    グリーベンチャーズ株式会社 グロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社 株式会社Coral Capital 株式会社産業革新投資機構(JIC) 株式会社ジェネシア・ベンチャーズ ジャフコ グループ株式会社 第一生命保険株式会社 EY新日本有限責任監査法人 PwC Japan有限責任監査法人 事務局 株式会社ジェネシア・ベンチャーズ 伊藤 実希 株式会社スマートラウンド 加納 拓也(ほか数名) グリーベンチャーズ株式会社 中尾 俊輔 公正価値評価タスクフォース メンバー⼀覧
  22. 37 公正価値評価タスクフォース 1. 利⽤⽬的の限定 本資料は、VCファンドにおける公正価値評価に関する実務上の留意点を共有し、業界全体の実務⽔準向上に資 することを⽬的として作成されたものです。特定のファンド、投資先企業、または個別案件に対する評価・助⾔を⾏うものではありません。 2. 免責 本資料に記載された情報の利⽤に起因するいかなる投資判断、損失、損害、またはその他の不利益について、事務局、本タスク フォース参加者、および関係者は⼀切の責任を負いません。実際の評価・投資判断にあたっては、専⾨家への相談を含め、ご⾃⾝の責任

    において⾏ってください。 3. 著作権および禁⽌事項 本資料の著作権は公正価値評価タスクフォースに帰属します。事前の書⾯による承諾なく、本資料の全部ま たは⼀部について、転載、複製、改変、配布、または商⽤利⽤することを固く禁じます。 4. 情報の正確性 本資料の作成にあたっては正確性の確保に努めておりますが、記載内容の完全性、正確性、最新性を保証するもので はありません。 免責事項