2022-10-26 DERTA GIG vol.4 でお話したスライドです。 イベントページ: https://ddd-ng.connpass.com/event/262318/
事業フェーズごとに変化するCTO の思考株式会社モニクル塚田 翔也 / @gabu2022-10-26 DERTA GIG vol.4 @新潟
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自己紹介・塚田 翔也 / TSUKADA Shoya・札幌から来ました!・名古屋出身、札幌に移住して2年目・高卒でエンジニアになり現在37歳、エンジニア歴19年...・7歳と3歳の子育て中現在は、お金の診断・相談サービス「マネイロ」を開発している株式会社モニクルで執行役員 CTO をやっています。@gabu
昔取った杵柄
よろしくお願いします
事業フェーズごとに変化するCTO の思考
事業フェーズごとに変化するCTO(1人目エンジニア)の思考
事業フェーズとは?
本スライドでは以下のフェーズに分けて説明します・フェーズ0:入社前・フェーズ1:PMF 前・フェーズ2:PMF 後これから皆さんが1人目エンジニアとしてスタートアップに誘われる、もしくは、経営者の方が1人目エンジニアを採用する可能性を考え、入社前にもエンジニアとして考えるべき大事なことがあるのでフェーズ0としてご用意しました。PMF(プロダクトマーケットフィット)については次のスライドでご説明します。
PMFプロダクトマーケットフィットとは?
PMF(プロダクトマーケットフィット)とは?プロダクト(製品)がマーケット(市場)にフィットしている状態・口コミやネットの情報でユーザーや顧客が増え続ける、どんどんダウンロードされる・契約がどんどん取れる、有料プランへのアップグレードが止まらないなど「なかなか芽が出ない」「苦戦している」「手探り状態」という感覚よりも「ビジネスが勢いよく成長している」という感覚です。逆にそうでない場合は、あの手この手でとにかく資金が尽きるまでに PMF を目指します。つまり、PMF 前後で見える世界や課題・問題がガラッと変わります。なので、この PMF 前後でフェーズを分けました。
PMF までの道のりhttps://speakerdeck.com/tumada/pmf-nidao-rumadefalsesutezibie-zhi-zhen-ji
フェーズ0:入社前
CTO/1人目エンジニアとしてスタートアップに誘われたら何を考えますか?
ビジネスモデル?ミッション・ビジョン?解こうとしているイシュー(社会課題)?お給料やストックオプション?
私が最も重要だと思っていることは「編成」です
編成?
「編成」重要「編成」って重要ですよね。自分1人がどれだけ頑張っても「編成」次第でどうしても苦しい戦いってありますよね。一方で「編成」が良ければ余裕で勝てたりします。苦しい or 楽(らく)という話だけではなく、その「編成」によって自分が活躍できるかどうかがかなり変わりますよね。他のメンバーとの相性というのもありそうです。つまり、自分のパフォーマンスを最大化するためにも「編成」は重要なのです。
では過去の編成をふりかえってみます
私の経験・上場ベンチャーの新規事業(生活系アプリ)・BtoC スタートアップ(AR アプリ)・BtoB スタートアップ(IR・証券業界向けコミュニケーションプラットフォーム)・BtoC スタートアップ(お金の診断・相談サービス「マネイロ」)
上場ベンチャーの新規事業(生活系アプリ)成功:iOS/Android 合わせて300万DLを超え、マネタイズにも成功エンジニア開発全部PdM を半分Sさんマーケター特にアプリマーケ得意PdM を半分企画段階で企画の精度がかなり高そうだったので「勝てる戦(いくさ)で勝った感」がありました。
BtoC スタートアップ(AR アプリ)失敗:コアなファンしか獲得できず、マネタイズに失敗CTO開発全部開発チームのリードSさんCo-Founderビジョナリー企画・BizDev・PMが強いNさんCo-Founder元GS、ファイナンス・業界や著名人のネットワークが強いマネタイズよりも作りたい世界を優先した結果、後でとてもとても苦労することになりました。
BtoB スタートアップ(IR・証券業界向けプラットフォーム)個人的には失敗:業界で幅広く使われ無料サービスとしては成功、マネタイズに苦戦するなか退職CTO開発全部エンジニア採用PdMNさんFounder / CEO元証券アナリスト企画・BizDevが強いマネタイズよりもユーザー獲得を優先した結果、ユーザー獲得後のマネタイズで苦労することになりました。
BtoC スタートアップ(お金の診断・相談サービス「マネイロ」)現在進行系で成長中!マネタイズも・・・😊CTOフェーズごとに必要なロールを転々と、初期のPdMマーケティング採用(全職種)開発全部、エンジニア組織マネジメントCo-Founder / CEO元アナリスト・バンカー営業・マーケティングピープルマネジメントプロダクトマネジメントファイナンスが強いCo-Founder / CCO元機関投資家著書多数コンテンツ・ライティング・クリエイティブファイナンスが強いCOO元営業・経営者営業・ピープルマネジメント・プログラミングはできないけど設計まで出来てしまうITコンサル
累計サービス体験者数推移2022年9月時点で5万人突破!
「編成」が強すぎるんよ・・・(私を除く)
Aパート完
フェーズ1:PMF 前
創業フェーズの CTO は実質1人目エンジニア創業フェーズの CTO は2人目以降のエンジニアを雇うまでは実質1人目エンジニアとしての動きが求められます。では、創業フェーズの1人目エンジニアがやるべきことは何でしょうか?PMF を目指し、MVP を作ります。MVP(Minimum Viable Product)とは、顧客に価値を提供できる最小限のプロダクトのことを指します。 完璧な製品・サービスを目指すのではなく、顧客が抱える課題を解決できる最低限の状態で提供します。資金が尽きるまでに PMF しないと次の調達が難しく、売上がなければ事業が継続できず、最悪の場合このフェーズでゲームオーバーになるので、とにかく PMF を目指します。それ以外のことは考えません。
PMF するために1人目エンジニア(私)が考えたこと資金が尽きるまでに PMF するためにはスピードが命、つまりプロダクトを最速で開発し、さらに高速に変更を加え続ける必要があります。では、速くつくるためには何をするべきでしょうか?・不慣れな流行りの技術よりも、自分が最速で開発できる言語やフレームワークを選ぶ 2人目以降のエンジニアを雇う前に会社が潰れるかもしれませんので、自分が最速で使える武器を迷わず使いましょう。・技術的負債は考えない 同上。むしろ負債と引き換えにスピードを得ましょう。・無駄なものを作らない とても重要なので次ページにて。
無駄なものを作らない = フォーカスする「限られた開発リソース(エンジニア俺ひとり)で最大の成果を出すためにフォーカスしましょう。優先度の高いものは何だと思いますか?」経営陣に対して、この呪文を毎日毎日唱えます。非エンジニアの人は「これも簡単にできるんじゃない?」「エンジニアは魔法使い」「塚田さんなら余裕っしょ」と思っても仕方ないぐらい開発のことが分かりません。ただしそれは決して悪いことではありません。僕らが営業やマーケティングの真の部分が理解できないのと同じです。
フォーカスする文化を根付かせる「限られた開発リソース(エンジニア俺ひとり)で最大の成果を出すためにフォーカスしましょう。優先度の高いものは何だと思いますか?」この呪文を創業フェーズから唱え続けることで「フォーカスすることの重要さ」が時間とともに経営陣に根付いていきます。そして、その根付いた思想は PMF 後も活きます。フォーカスできる経営陣の元であれば、開発チームは安心して納得感をもって社として重要な開発にだけ取り組めるはずです。これはもはや CTO として会社に対する戦略です。
PdM の役回りになることが多い優先度の高いものを経営陣とすり合わせるのと同時に、自分なりの工数イメージと照らし合わせて、最終的な着手順序を決めます。もちろんその着手順序も経営陣とすり合わせます。優先度高い 普通 低い工数 大 3: 簡単に実現できないか考える 思いついたらやる 思いつかないなら4へやらなくても良いかも 無視中 2: やる 5: (4)の後にやる小 1: 一番美味しい=最優先 4: (3)が終わるかスキップになったらやる
これって完全にプロダクトマネジメントなんですよね
このフェーズは特に開発工数や開発効率の良い順序のイメージを持てるエンジニアがイニシアチブをとるべき
MVP の育て方何をどの順番で作るかまで決まれば、あとは楽しい楽しい開発タイムです。この時には作るものに関する迷いはなくなっているはずなので、作るべきものをガッと作って、さっさとリリースすることだけ考えます。そして定性・定量のフィードバックを何らかの方法で得て、次の手を考え改善を繰り返します。PMF するまで、これをただただ高速に繰り返します。BuildLearn Measure
このフェーズは思いっきりリーンスタートアップそのままです
Bパート完
フェーズ2:PMF 後
PMF 後に考えること試行錯誤を繰り返し、めでたく PMF したら次はスケールですね。PMF の前後でいくつか変化があります。・2人目以降のエンジニアを採用するエンジニア採用やチームビルディングの時間を確保するため、PdM を引き継いでチーム開発にフォーカスしたい。ここでもフォーカスの重要さです。その時々に重要なことにフォーカスする、もしくはフォーカスできるように他の要素を戦略的に動かしていきましょう。たまに CTO or VPoE 兼 PdM の人がいますが(最近立て続けに2人会いました)とてもとても大変そうでした・・・
PMF 後は向き合うべき課題が変化するPMF 前はプロダクトを PMF させることが最優先事項だったので、顧客とプロダクトに向き合い続け、プロダクトマネジメントにフォーカスしていれば良かったのですが、PMF 後の最優先事項・フォーカスするべきポイントは何でしょうか?
人です!採用です!組織開発です!
1人目エンジニアはエンジニアリングマネージャーにそういう意味だと CTO(1人目エンジニア)って大変ですね〜。PMF 前は PdM(プロダクトマネージャー)をやり、PMF 後は EM(エンジニアリングマネジャー) をやるんですね〜。逆説的には、プロダクトマネジメントができて、エンジニアリングマネジャーもできる人がCTO や1人目エンジニアになるのが良いのですかね...このスライドを準備しながらふと思いました...さて、そんな時でもこの2冊だけ読んでおけば大丈夫だと思える個人的な推し本を紹介します。
自信を持ってやっていきましょう(自分に言い聞かせてる)幸いにもビジネス的には PMF しているので、その点は心配がなくなっていて、ビジネスよりもエンジニア組織にフォーカスできる状態になっているはずです。個人的には前者の不安やプレッシャーの方が桁違い(資金が尽きるまでに PMF できなかったら会社が潰れるかもしれませんからね)だったので、このフェーズは会社やビジネスという基盤がしっかりした状態で臨めるので、自信を持ってやっていけると思います。さらにその先について、例えばエンジニアが10人、20人、30人以上の世界線は経験したことがない(エンジニア50人ぐらいの会社にいた経験はありますが、マネジメントではなく平社員だったので特に学びがない)ので私からお伝えすることはできません。このまま弊社が成長して、来年・再来年にお話できたら嬉しいです!!
Cパート完
まとめ・CTO(1人目エンジニア)が事業フェーズごとに考えてきたことについてお話しました・入社前には、経営陣の「編成」を見極めましょう・入社後 〜 PMF 前は、リーンスタートアップそのままに、資金が尽きるまでに MVP をPMF させることだけを考えて突っ走ります・PMF 後は、芽が出たビジネスを大きくスケールするための仲間集めと組織づくり、これまた大変ですが頑張ってやっていきましょう <= ただいま挑戦中CTO や VPoE や1人目エンジニアの方、これからそういうポジションや経験に興味がある方がいらっしゃいましたら、ぜひ懇親会でお話聞かせてください〜。
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