「昨日、AIエージェントを使いましたか?」
この問いに自信を持って答えられる方は、まだそれほど多くないかもしれません。ChatGPTをはじめとする生成AIは今や多くの人にとって身近な存在になりつつありますが、「AIエージェント」となると、言葉は聞いたことがあっても、何がどう違うのかが腑に落ちていない——そんな方がほとんどではないでしょうか。
実は、この問いへの答えの中に、これからの数年間を左右する非常に大きな変化が潜んでいます。
生成AIが「質問すると答えてくれる便利なツール」であるとするならば、AIエージェントは「自ら考え、計画を立て、必要なツールを呼び出しながらタスクを完遂する、自律的なソフトウェアシステム」です。単に精度が上がったのではなく、AIの「振る舞い」そのものが、根本から変わったのです。市場調査に2時間かかっていた業務が2分に短縮された企業が実際に存在します。20〜30分かけてウェブサイトを操作しながらマニュアルを作成し、コードを書き、動画を制作する——そんなエージェントが、もはや実験の域を超えて本番運用され始めています。
しかし同時に、「作れたはいいが、本番に持っていけない」「どこから始めればいいかわからない」「自分たちの職場や仕事にどう関係するのか」という声もまた、至るところで聞かれます。本セッションは、その問いに真摯に向き合う50分とします。
本セッションでは、AWSのシニアソリューションアーキテクトとして数百社の技術支援に携わりながら、自らもAIエージェントアプリケーション「Bedrock Engineer」をオープンソースとして開発・公開し続けてきた淡路が、「理論」と「実践」の両面から、AIエージェントの現在地と未来を解き明かします。
まず「AIエージェントの現在地」として、LLM・RAG・Agentという三つのキーワードがどのように関係し、どのような順序で技術が進化してきたかを、ゼロから丁寧に紐解きます。「LLMには3つの根本的な制約がある」「RAGはその一つを、Agentはその先を乗り越える技術だ」という視点で整理することで、個々の技術用語がバラバラに感じられていた方も、一本の筋が通った理解を得られるはずです。
次に「AIエージェント時代のソフトウェア開発の姿」として、コーディングエージェントの登場が開発の現場に何をもたらしているかを論じます。1940年代の登場以来80年間、ソフトウェアは「人間が一行ずつ書くもの」でした。ところがKiro、Cline、Cursorに代表されるAIコーディングエージェントの登場により、その前提が崩れ始めています。コーディング支援のレベルを「行単位の補完」から「マイルストーン単位の自律開発」まで4段階に整理しながら、「コードを書く能力」よりも「アーキテクト目線でAIに作らせる能力」がより重要になっていく構造的な変化を示します。
続いて「AIエージェントをクラウドで動かす」では、PoC止まりになりがちなAIエージェント開発が抱える「プロトタイプから本番へのキャズム」を正面から取り上げます。長時間実行・セッション分離・スケーラビリティ・セキュリティ——AIエージェント特有の要件を踏まえたアーキテクチャ設計の考え方と、Amazon Bedrock AgentCoreが提供するフルマネージドなエージェントランタイム・ゲートウェイ・アンビエントエージェントといった概念を、実際に手元で動かしたデモの成果物を見せながら紹介します。「20〜30分かけて自律的に仕事を届けるエージェント」のリアリティを、数字と映像で体感していただけるはずです。
「AI活用を進めるAWSのソリューション」では、企業・自治体が「今日から動き出す」ための具体的な入り口を提示します。AI活用のゴールが「社員が生成AIを使える割合」から「生成AIが仕事を担えている割合」へとシフトしつつある今、プロンプトの知識がなくても鉄板ユースケースをすぐに使い始められるアプリケーションや、AWSアカウントがあれば10分程度で本番相当の環境が立ち上がるワンクリックデプロイの仕組みを紹介します。
そして最後の「AI時代の人材」では、本セッション最大のテーマに踏み込みます。2025年以降、「人間が計画してAIをアシスタントとして使う」から「AIエージェントが計画して実行し、人間がレビューしてアドバイスを与える」という主体の逆転が静かに、しかし確実に進行しています。世界経済フォーラムの雇用レポートが示す「総雇用の22%に相当する構造変化」は、決して遠い未来の話ではありません。ただし、これは「仕事が奪われる」という単純な話ではなく、「新しく生まれる職種と能力をどう育てるか」という問いへの答えを、私たち一人ひとりが今考え始める必要があるという話です。エンジニアがAI駆動開発への不安と好奇心の両方を抱える中で、心理的安全性の高いコミュニティが果たす役割と、AWS Japan社内での実践例も交えながら、「使いこなす側になるための具体的な一歩」を提示します。
技術の話が中心でありながら、テクノロジーそのものよりも「私たちはAIとどう向き合い、どう協働していくか」という問いを軸に据えた構成とします。エンジニアの方はもちろん、開発の経験がない方、経営・企画・行政の立場でAI活用を推進したい方、そしてこれからのキャリアを考えている学生の方にも、それぞれに持ち帰れる何かがある60分を目指します。
新潟情報通信研究所/信越情報通信懇談会 主催 自律型AIセミナー2026資料
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