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地図づくりはイノベーションで安堵されるか

 地図づくりはイノベーションで安堵されるか

地図調製技術協会技術シンポジウム これからの地図づくりを考える ~地図づくりはAIに凌駕されるのか~

Hidenori FUJIMURA

November 22, 2019
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Transcript

  1. Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
    Geospatial Information Authority of Japan
    地図づくりはイノベーションで安堵されるか
    藤村 英範
    国土地理院企画部地理空間情報政策調整官
    国連ベクトルタイルツールキット主任
    地図調製技術協会技術シンポジウム これからの地図づくりを考える
    ~地図づくりは AI に凌駕されるのか~ 2019-11-22T10:00/[email protected]測量年金会館2F大会議室

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  2. 貴重な機会を下さり、ありがとうございます。
    発表内容は、必ずしも所属する組織を代表するものではありません。
    地図づくりを自分の一生の専門性と考える一人として
    地図調製技術の発展に微力ながら貢献できればと思っています。

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  3. 私について
    1 情報工学採用 ロボットビジョン・超並列処理
    2 地球地図プロジェクト 1:100万デジタル地図技術移転
    3 情報普及課 電子国土ウェブシステム運用
    地形図立体視
    4 ハノーファー大学写真測量・地理情報研 だいちで道路中心線の自動検証
    5 測図技術開発室 地理識別子、街区
    住居表示住所
    6 国土交通省海外プロジェクト推進課 下水道・地図の海外プロジェクト
    7 情報普及課長 地理院地図・地理院タイル
    8 国際課 電子基準点網技術の海外展開
    地球地図プロジェクト完了
    9 国連地理空間情報課 ウェブ地図技術の移転
    国連ベクトルタイルツールキット
    10 地理空間情報政策調整官 技術の政策調整(2019-08~)
    11 ISO/TC 211 に継続的に関与 ICTと地図の関わりを長く考える
    藤村 英範(ふじむら ひでのり)

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  4. 地図づくりは AI に凌駕されるのか
    地図づくり は AI に凌駕されるのか
    設定されたテーマ

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  5. 地図づくりは AI に凌駕されるのか
    地図づくり は AI に凌駕されるのか
    事業 道具
    設定されたテーマ

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  6. 地図づくりは AI に凌駕されるのか
    道具
    AI

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  7. 地図づくりは AI に凌駕されるのか
    事業
    “AI”という言葉で
    表現されたもの

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  8. 地図づくりは AI に凌駕されるのか
    地図づくり は AI に凌駕されるのか
    事業 道具
    地図づくり AI
    設定されたテーマ

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  9. 地図づくりは AI に凌駕されるのか
    地図づくり は AI に凌駕されるのか
    事業 事業
    地図づくり
    “AI”という言葉で
    表現されたもの
    実相に関する私の認識

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  10. 地図づくりは AI に凌駕されるのか
    地図づくり は AI に凌駕されるのか
    地図づくり 新技術で押してくる
    地図づくり
    実相に関する私の認識
    地図づくり
    「地図づくり」自体は不滅だが,誰がどうやるか,を問うている.
    “AI”という言葉で
    表現されたもの

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  11. 地図づくりは AI に凌駕されるのか
    結局は人
    相手を知り、
    自分を知って
    対応する

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  12. 地図編集と地図刊行
    地図づくり
    Edit
    地図作成
    Publish
    地図刊行

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  13. 地図作成での地理院の努力
    基盤地図情報の自動作成に挑む
    国土地理院地理地殻活動研究センター
    地理情報解析研究室長 大野裕幸
    ※インタビューくださりありがとうございます。

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  14. 自動化を考えるなら仕様も合わせて再考する
    大野:
    自動化に進むなら
    使い手が何を求めているか、
    本当に重要なものは何かを見極めながら、
    仕様を変えていく必要がある。
    伝統的な仕様
    本当に
    重要な
    もの
    自動化に適した仕様
    150ある
    地図記号
    高速更新








    自然植生ポリゴン

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  15. セマンティック・セグメンテーション
    • ディープラーニングを用いて画素単位でどの
    地物であるか分類する。
    • 精度管理の手法も検討する。
    <順調なもの>←トレーニングデータが多い
    自然植生、道路、建物、水域、既耕地
    <困難なもの>←トレーニングデータが少ない
    擁壁、水制、雪覆い
    研究の現状:5年計画の2年目
    成果は災害対応で先行公表する可能性あり

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  16. 段階的な導入
    Ø検査工程など一部の工程への先行導入
    → 更新頻度の向上に貢献
    Ø研究成果への公共測量への水平展開
    → コスト低下&更新頻度向上を実現したい

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  17. 地図編集と地図刊行
    地図づくり
    Edit
    地図作成
    Publish
    地図刊行

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  18. なぜ地理院が地図刊行にこだわるのか(私見)
    測量法
    第27条 …
    2 国土交通大臣は、…地図…を刊行し…なけ
    ればならない。

    法に定められた、全国民を代表する選挙された
    議員の中から通常選ばれる大臣の義務を実施
    するための組織としては、時代が変わっても
    大臣の地図が刊行され続けることを確保する
    最大の努力をする必要がある(と私は考える。)

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  19. (ことば)デジタル地図、デジタル刊行…
    デジタル地図
    デジタル刊行
    デジタル変革
    地図
    刊行
    デジタルが主流化すれば,
    デジタルがデフォルトになる.
    そうすると,かえって
    デジタルの接頭は不要になる.
    c.f. 電子国土→地理院地図
    ここでは,測量法上の「これらの内容である情報を電磁的方法(電子情報処理組織を使用す
    る方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。以下同じ。)であつて国土交通省令
    で定めるものにより不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置」を指す.
    c.f. 電子○○,電磁的○○

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  20. メディア
    Media is the message
    地図
    地図
    利用
    よい地図こそ、よく伝わる必要がある
    迅速更新
    刊行

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  21. デスクトップ GIS と比較してのウェブ地図
    メディア デスクトップ ウェブ地図
    ターゲットユーザ 専門家 人々
    データ形式 ZIPしたShapefile タイル
    主な利用モード 地理解析 見る・読む
    デスクトップGIS
    専門家
    ウェブ地図
    人々

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  22. タイル

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  23. 画像タイル ベクトルタイル

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  24. 画像タイル ベクトルタイル
    描画済み
    画像
    機械判読
    可能なデータ

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  25. 25
    画像タイル ベクトルタイル
    35KB 9KB
    データ量 75% 削減(当社比;概算)
    → 配信コスト低減
    → 速度向上(生産速度,配信速度)

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  26. ベクトルタイルはインクルーシブ・イノベーション
    画像タイル時代よりも,ベクトルタイル時代の方が,
    誰でもかんたんに地図配信を実現できる
    →ツールを国連ベクトルタイルツールキット(UNVT)として
    パッケージ化

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  27. 国連ベクトルタイルツールキット創設までの流れ
    2003 国土地理院,ベクトルタイル技術を使ってウェブ地図を開始する.
    →誇るべきことであると同時に,地図づくりを知る者として当然の決断とも言える.
    2012 国土地理院,オープンソースソフトウェアをウェブ地図の運用のため採用する.
    当時のオープンソースソフトウェアは画像タイル技術に基づくものであった.
    →技術的な妥協と引き換えに,システムの透明性やアカウンタビリティを強化.
    2014 オープンソースライセンスに基づくベクトルタイル技術が提供される.
    国土地理院ベクトルタイル提供実験が開始される.
    →技術動向を捉えて,技術的に正しい方向性を改めて回復する.
    2015 国連オープンGISイニシアティブが設立される.
    →国連活動の効率化のためのオープンソースGISの導入を追求が開始される.
    2017 日本政府,上級地理空間専門官を国連事務局に派遣する
    →技術による国連活動への人的貢献を実現.地球地図プロジェクトの伝統に基
    づく実装志向と技術移転重視の技術が,国連事務局から要請された.
    2018 国連オープンGISイニシアティブが国連ベクトルタイルツールキットを創設する
    →国連内部用のウェブ地図を,連続自動更新されるベクトルタイルに転換する.
    そのための技術を持続可能にし,多様なウェブ地図を持続可能にするために,
    その技術をオープンソースソフトウェアプロジェクトとして自立させる.
    2019 国連ベクトルタイルツールキットを用いた地理院地図 Vector が試験公開される.
    →自らの責務を果たす中で国連とともに歩む姿勢を明確にする.
    27

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  28. 国連ベクトルタイルツールキット:技術的な構成
    あらゆる組織が基本図規模のベクトルタイルを
    生産・ホスト・スタイル・最適化できるよう,
    既存のオープンソースソフトウェアをパッケージ
    生産 Tippecanoe
    ホスト カスタム Node プログラム
    スタイル カスタム Node プログラム
    最適化 vt-optimizer

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  29. BEFORE UN enterprise web map with image tiles
    29
    UN data
    Not very
    responsive
    Detailed
    map not
    globally
    available

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  30. BEFORE UN enterprise web map with vector tiles
    30
    30
    UN data
    Less
    responsive
    More details

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  31. AFTER Proposed UN enterprise web map using UNVT
    31
    UN data
    Building-
    level details
    with global
    coverage
    Responsive
    as in video
    games
    ウェブ時代の地図では,新たに連続するズームと速度が重要な要素となる.

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  32. 地理院地図 Vector (7月公開) も UNVT 使用
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  33. we the peoples of the United Nations have resolved to combine our efforts
    - Preamble of the Charter of the United Nations
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  34. The UNVT Team
    UNGIS
    GeoThings Geospatial Information Authority of Japan National Astronomical Observatory of Japan
    National Institute for Agro-Environmental Sciences
    Mapbox Mapple On
    OSGeo Japan Chapter UN Geospatial Information Section UN Global Service Centre
    34

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  35. 基本戦略
    ① 我々は,コンテンツと表現で勝負する.
    ② そのための道具はコモディティであってほしい.
    ③ よって道具は自由で開かれた形で共有.
    結果として地図の多様性を守る.
    →道具が多領域で共有されることで,それぞれの
    コンテンツと表現の本領が安堵される.

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  36. 例1:統計地理空間統合
    UN-GGIM-AP:
    「地理院さん,国連アジェンダである統計と地理
    空間情報の統合について語ってみませんか.」

    UN-GGIM-AP WG-3(統計と地理空間情報の
    統合)の副議長に就任.
    我が国統計局担当者と調整の上,「国連ベクト
    ルタイルツールキットで統計局データをベクトル
    タイルにしてみた.」を11月5日に発表.
    →道具を自由で開かれた形で共有した利益

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  37. 国連ベクトルタイルの国連枠組みへの貢献
    Value Commitment to implementation are critical.
    Element 1 Implement access mechanisms that provide
    greater efficiency. Allow adaptation and
    evolution through time.
    Element 2 Develop common solutions. Promote reuse
    and avoid duplication of efforts.
    Element 3 Ensure that tools are free and open. No
    information loss or interoperability issues.
    37
    Principle 4

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  41. 例2:土地管理への応用
    ESCAP:
    「WG3副議長さん,統計地理空間情報統合の
    文脈で,国連ベクトルタイルツールキットの
    土地管理への応用について語りませんか」

    ウズベキスタン・タシュケントで開催された
    ESCAP の中央アジア向けワークショップで
    土地利用管理への応用可能性を発表
    (11月15日(1週間前))

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  43. The UNVT Team
    UNGIS
    GeoThings Geospatial Information Authority of Japan National Astronomical Observatory of Japan
    National Institute for Agro-Environmental Sciences
    Mapbox Mapple On
    OSGeo Japan Chapter UN Geospatial Information Section UN Global Service Centre
    43

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  44. 土地情報管理アプリケーションプロトタイプ 44
    最新の地形図情報に
    農地の筆ベクトルタイルを重ね合わせ

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  45. 土地情報管理アプリケーションプロトタイプ 45
    最新の空中写真に
    農地の筆ベクトルタイルを重ね合わせ

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  46. 土地情報管理アプリケーションプロトタイプ 46
    1880年代の地形図に
    農地の筆ベクトルタイルを重ね合わせ

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  47. 国連ベクトルタイルツールキットの「好循環」
    自由で開かれた
    ソフトウェア
    領域・セクター
    横断パートナー
    シップ
    多分野への
    展開
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  48. デモと技術移転のための超小型PC実装
    ① 情報管理・情報セキュリティの観点から,国連
    のための成果は直接外部と共有できない.
    ② プロジェクト持続のため,志願者をオープンに
    巻き込む必要がある.
    ソフトウェアとデータを超小型PCに詰め込んで,
    デモや技術移転ができるようにする.
    STEM 教育や IoT 実験に使われる超小型 PC
    本体1,000 円程度~5,000円程度
    48

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  49. View Slide

  50. https://ggim-tokyo-2020.github.io

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  51. 地図づくりは AI に凌駕されるか
    私の結論(あるいは解釈):
    (1)地図づくりは「天下」のように不滅である.
    我らが心配しなくても,誰かしらの手で行われる.願わくば我らの手で行いたい.
    なぜならば,我らには地図づくりをする理由があり,地図づくりを知悉している.
    (2)誰が何のためにやるか,が変わりゆく.
    【具体的な意志の例】
    使い手が何を求めているか、本当に重要なものは何かを見極めな
    がら仕様を変えていく.(大野)
    メディアをコモディティ化しウェブ地図の多様性を守ることを通じて,
    測量法第27条第2項の健全な実施を維持する.(藤村)

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  52. 地図づくりはイノベーションで安堵されるか
    御社がイノベーションで安堵される
    彼の社がイノベーションで安堵される
    地理院がイノベーションで安堵される
    +) パートナーがイノベーションで安堵される
    地図づくりがイノベーションで安堵される
    イノベーションは道具であり,重要なのは人の意志
    ͨͩ͠ɼ୭΋ޙ໭ΓͰ͖ͳ͍

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  53. 地図づくりは AI に凌駕されるか
    いい地図つくりましょう

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  54. Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
    Geospatial Information Authority of Japan
    地図づくりはイノベーションで安堵されるか
    藤村 英範
    国土地理院企画部地理空間情報政策調整官
    国連ベクトルタイルツールキット主任
    地図調製技術協会技術シンポジウム これからの地図づくりを考える
    ~地図づくりは AI に凌駕されるのか~ 2019-11-22T10:00/[email protected]測量年金会館2F大会議室

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