Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

「Agent開発の歩き方〜人が介在する意味とこれからのエンジニア像」

Avatar for Magy Magy
August 03, 2026

 「Agent開発の歩き方〜人が介在する意味とこれからのエンジニア像」

GDG古都 - Build with AI お披露目LT会基調講演
https://gdgkyoto.connpass.com/event/391704/

Avatar for Magy

Magy

August 03, 2026

More Decks by Magy

Other Decks in Technology

Transcript

  1. HALLOW 曲沼宏美 Hiromi Magamuma 株式会社インテージ データテクノロジー部 副部長 Insight Architect /

    Data Scientist / ML Engineer / Data Engineer 広告代理店を経て IT ベンチャーで分析コンサルティングに従事。 2006 年より CCC で提携先への T カードデータ分析コンサルや大学連携を 推進。 2012 年よりリクルートでデータ活用を推進。全社横断 PJ や CRM 分析な ど多数のプロジェクトに携わる。 人材領域のアルゴリズム開発により全社表彰 ARINA ENGINE 受賞。 2022 年よりインテージにてデータ活用を推進。 • Google Developer Expert • ML女子部オーガナイザ よろし くお願 いしま す
  2. 生成AIとは 「理解」をしているのではなく、 次のトークン(単語)を確率的に予測する処理の連鎖 膨大なテキストから 事前学習で 大量のテキスト上のパ ターンを学習する 確率的に予測し 学習したパターンを基に 「次に来そうな言葉」を

    選び続ける “それらしい答え”を出す (理解ではなく)統計的 に妥当な文を生成して いる 正解が決まっている問題は得意、 正解のない問題は、情報と考え方を指示する必要がある
  3. AI時代に人がすべきこと AIを『手足』として制御し、人間が『司令塔(脳)』として主体性を持つ」ために必要な能力 What どんな問いを 生成AIに投げるか How 生成AIにどのように 問いを投げるか Decision/Action 生成AIの答えを

    どう判断し行動するか 課題設計 解決すべき本質を見極め、 AIに託すべき「問い」を定義する 対話の構造化 AIのポテンシャルを最大化させ るための、論理的な対話・指示 の構成(探索の初期値設定) 価値判断と遂行 出力の妥当性を多角的に検証・ 評価し、実社会での価値、行動 へと結びつける 「意思」を持つこと 「手足」を操ること 「魂」を宿すこと
  4. AIのはらむリスク ①表面的な学習に陥る ② 生産性が下がる 場合がある ③脳への影響 (認知負債) 「それっぽい回答」に満足 し、深く理解しないまま学 習が完了したと錯覚する“表

    面的学習”のリスク 「若手の生産性が下がった」 衝撃データ • シニア層:生産性が3〜5割 向上 • 若手層:逆に生産性が2〜3 割低下 • 自力で文章を書いた学生に比 べて脳の接続性(エンゲージメ ント)が著しく低下 • AI利用者は、執筆から数分後 には自分の書いた内容をほと んど記憶していない (出典)arXiv 2025年11月3日 From Superficial Outputs to Superficial Learning: Risks of Large Language Models in Education (表面的な出力から表面的な学習へ:教育における 大規模言語モデルのリスク) 研究機関: 香港科技大学 https://arxiv.org/abs/2509.21972 (出典)ファインディ事業戦略発表会レ ポート 単にAIを使っただけでは人の 能力は向上しない 「問いを立てる力」がないとAIを 使いこなすことはできない https://productzine.jp/article/detail/4035?utm_s ource=seid_regular_20260129&utm_medium=e mail (出典)_Arxiv 2025年12月31日 Your Brain on ChatGPT: Accumulation of Cognitive Debt when Using an AI Assistant for Essay Writing Task (ChatGPT利用時の脳:エッセイ執筆におけるAIアシスタン ト利用に伴う「認知負債」の蓄積) 研究機関: MIT Media Lab https://arxiv.org/abs/2506.08872 AIに任せきりにすると、人間の 脳が退化してしまう
  5. 対策の鍵は「人間中心(Human-Centered)」 単純にAIに置き換えるのではなく、 「人間が学び育っていく設計」を残すことが重要 設計したい状態 避けたい状態 • AIを“ブラックボックスの答え”として渡さ ない • 若手の経験機会を意図的に確保する

    • 出力を批判的に読み解くトレーニングを組 み込む • Human-in-the-Loopで判断ポイントを残す • 「とりあえずAIに聞け」で思考停止させ る • AIの回答を無批判にコピペで完成とする • 成果物だけ評価して過程を見ない • 全工程を自動化して、学びの場を奪う
  6. 生成AIを使いこなすには専門知識が必要 研究結果 Computer Science の素養と作文力が Vibe Coding の成果を予測する 研究機関: チューリッヒ工科大学(ETH

    Zurich)、コンピュータサイエンス学科 (Department of Computer Science) Computer Science Achievement and Writing Skills Predict Vibe Coding Proficiency (コンピュータサイエンスの達成度と文章執筆能力は、バイブ・コーディングの習 熟度を予測する) ※本研究は、2026年4月にスペインのバルセロナで開催の、ヒューマン・コ (出典)arXiv 2026年3月14日 ンピュータ・インタラクション(HCI)分野で最も権威のある国際会議の一つ、 2026(Conference on Human Factors in Computing Systems)の論文とし https://arxiv.org/abs/2603.14133 CHI て採択されています 。 • “AIを使えば誰でも作れる”は、過大 評価 • 知識・素養のある人ほど、AIから引 き出せる成果が大きい • 「正しく問いを立てる力」も、結局は 知識の上に乗っている • 言語化・要件分解の力 = AI時代に 伸びる力 AI を使いこなすための「暗黙知」ブームが来る
  7. Agent (AIエージェント) とは何か 従来のAI (チャット) 1問 1答 人 が 問う

    AIエージェント 目標を与える AI が 答える 毎回、人が次の指示を出す必要がある Agent が自律的に: • 分解 • 実行 • 検証 • 修正 🤖 …のループを繰り返す
  8. Agentの構成要素 Agentは仕事というダンジョンを攻略するための冒険者パーティ LLM (推論エンジン) Memory (記憶) Planning (計画) 賢者 案内人

    魔法使い Gemini等の基盤モデル 推論・計画・生成の中核を担う タスクを実行可能な サブゴールに分解する能力 Tools (ツール) 戦士 外部システムへの接続 MCPがその標準プロトコル 短期=コンテキストウィンドウ 長期=外部DB・Memory Bank System Prompt 依頼書 ロール・スキル・制約を定義する 指示書
  9. Agentの設計パタン ① エージェントの数 マルチ (Multi) 単一 (Single) Orchestrator Agent Sub

    1 Sub 2 Sub 3 計画・実行・検証を1体で担う オーケストレーターが専門サブAgent に指示を出す ü シンプルで制御しやすい ü 小規模タスク向き ü 複雑タスクの分業が可能 ü 役割分担で品質向上
  10. Agentの設計パタン ② タスクの流れ方 直列 (Sequential) 並列 (Parallel) ループ (Loop) A1

    Step S1 S2 S3 IN A2 Check OUT A3 前のステップの出力を次へ 順序依存処理に最適 複数Agentが同時実行 速いが結果の統合設計が要る ※どのAgentの出力を使うか・どう合成す るか 条件を満たすまで同じ処理 を反復 品質チェック向き 停止基準の設計が必要
  11. Agentのオーケストレーション ルーティング (どのステップに進むか) を誰が決めるかで分類される 種別 ルーティング 各ステップの処理 固定フロー型 設計者が決める AIが担う

    動的型 AIが判断する AIが担う ハイブリッド型 ★ 大枠は固定、分岐を AIが判断 AIが担う 向いているケース 監査・コンプライア ンス・再現性が必要 な業務 正解が一つでないオ ープンエンドなタス ク ほとんどの本番シス テム (実務の主流) 実務では「ハイブリッド」が多数派 完全な動的型はハルシネーション・コスト・レイテンシの問題から本番採用が難しい 「全体フローは固定、各ノード内の判断はAIに委ねる」構成が現実解
  12. Agentのプロセス ① 推論のループ 自己批評(Reflection) パターン / Critic Agentパターン • Reflection

    (自己批評) パターン: 1つのエージェントが自分の出力を自分でチェック・修正する • Critic Agent パターン: 別の専門エージェント (Critic) がレビュー役を担う 回答生成 評価 修正 Worker Agent が初回 出力を作る Agent /Critic Agent が品質をチェック 不足を補い、再生 成する 品質基準を満たすまで繰り返す 出力品質を継続的に底上げできる一方、ループ回数・終了条件の設計 を誤るとコストと時間が膨らむ。終了判定にも“人の基準”が必要。
  13. Agentのプロセス ② 記憶(Memory)を通じた改善 Memory Bank セッション記憶 会話内 ( 短期 )

    一つの会話が終わると消える 直近のやり取りを文脈として保持 会話をまたぐ ( 長期 ) 明示的に保存・参照される永続的 な記憶 ユーザーの好みや過去の判断を持 ち越す 例 例 • 直前の質問内容 • 今回の作業対象ファイル • 対話中の修正履歴 • 過去のタスク結果 • ユーザーの好み・スタイル • 学習した事実・前提知識
  14. 身近な業務をAgent化する4ステップ 最初からマルチAgentを目指さない。ナレッジを獲得しながら徐々に難易度を上げていく。 STEP1 STEP2 STEP3 STEP4 Gem で ロール理解 GASで

    ワークフロー 自動化 シングル Agent化 マルチ Agentへ拡張 まずは“AIに何が できるか”を体感 する 最初からAgentじ ゃなくてもいい 会議録画→文字起 こし→要約・Todo 配信など、決まり 切った流れを自動 化 一つの目的に特 化したAgentを作 る プロンプト・記 憶・ツールを設 計する オーケストレータ ー+専門Agentで業 務全体を再構築 再現性を持って運 用へ
  15. 参考 Webアプリ開発をAgent化する流れ 最初は“要件定義Agent”だけ作ってもいい。完成度も低くてもいい。 見直しを繰り返しながら1工程ずつ置き換えていく。 要件定義 Agent 設計 Agent 実装 Agent

    テスト Agent ヒアリング → 要件書 ドラフト → 不足の質 問返し 要件 → 機能設計 → 画 面・API設計 設計 → コード生成 → セルフレビュー 実装 → テストケース 生成 → 実行 レビュー Agent コードレビュー → 改 善提案 → 人へのエス カレーション
  16. Human-in-the-Loop の組み込み 「人がどこで何を意思決定するか」を組み込んでいくのが設計のコツ 入力 AI分析 人の 承認 AI実行 人の レビュー

    出力 判断ポイント コンテキスト提示 ログと学習 リスクの高い分岐や、後戻り しづらい操作の直前に置く AIの根拠・代替案・信頼度を、 人が判断できる形で渡す 人の判断結果をMemory Bankへ 蓄積。次回の品質向上に活かす