滑空スポーツ講習会2022(EMFTオンライン学科講習/EMFT実技講習) http://www.japan-soaring.or.jp/2022jsaemft/ 公益社団法人日本滑空協会
講師 公益社団法人日本グライダークラブ 櫻井 玲子
12022 年度 JSA EMFT 講習会(スピン特化訓練)実施要領(機体共通) 日付: 年 月 日 氏名:フェーズ 科目 実施要領 着目点飛行前点検 重量重心位置と舵のストロークの確認・使用する機体で、本日の飛行の重心位置を計算し、飛行規程の許容重心位置範囲と比べて前方、中間、後方かを確認する・舵のフルストロークの動きが何センチくらいかを確認する本日の重量重心位置でのスピン特性を理解するしかしながら、重心位置が変われば、スピン特性も変わることを認識しておくべき曳航 索切れ処置 ・口頭で「ここで切れたらどうする?」の質問に答える・曳航中、どの高度でどの位置であったら旋回して滑走路に帰ろうとするのかを答える・不時着地が取りにくいエリアで索切れがあった場合、ロジカルな対処方法をどのように考えているかを口頭で答える・機体性能を考慮し、設定した場所に着陸可能かを判断する・滑走路が見えている間は前に降りるというが、見えなくなると高度と位置を確認する前に、旋回して滑走路へ帰ると答える心理状況(帰巣本能)を認識する・何を根拠に旋回するタイミングを決めたかを確認する(風、滑走路からの位置、障害物等)3 次元視野 ・追随中の占位点の見方:全体の背景を視野に入れ、曳航機は自分の目の前にあることを確認する曳航機を凝視すると全体の背景が見えなくなることを確認・曳航機に焦点を合わせた場合と、景色を広く画面で見ている場合とバンク角の変位に対する検知時間の違いを認識する・曳航中、注意をそらす質問に対し、適切な対応を行う・全体を見る時は 45°の視野の広さで遠方を見る(眼の焦点を近くに合わせない)。曳航機の JA ナン バーを読もうとすると視野が狭まることを確認する・視野が狭いと変化率が一番小さいところを見ることになるので、大きくずれないと変化を検知できないが、広く見ていると小さいずれでも検知可能なことを認識する・機長責任で飛行中の作業の優先順位を決めるフライト 低速飛行姿勢確認 ・離脱の無線を入れ、下方のクリアを確認しながら風に正対する・水平姿勢で 80km/h の低速飛行を行い、その舵の位置を確認する訓練中、すべての失速・スピンはエルロン・ラダー中立、エレベーターは低速飛行の舵の位置を維持し、回復が可能かどうかを検証し、回復後、縦の安定性が働く(機首が上がる)ことを確認するフルスピン・バンク 10°旋回・バンク 30°旋回・80km/h でバンク 10°旋回確立・左ラダー:ハーフトラベル踏み込み(糸のすべり量を確認)・踏んだラダーの方向にバンクがつき、機首が下がり始めるタイミングでエレベーターを引く(エルロンでバンクの維持をしない)・スピンに入った時のエレベーター量を認識する(水平失速時と差異はあるか)・スピンに入って 1/2 自転したら、上記の姿勢で回復操作・回復操作をしてどれくらいの自転で自転が止まるかを確認・回復したら、傾きをエルロンで修正・速度 170km/h 程度になるので、機首上げは 3 秒くらいかけて低速飛行の位置まで戻す。・ASK21 はスピンが持続せずスパイラルに移行することを確認し、スパイラルの回復操作を行う。・高度が許せば、バンク 30°旋回からのスピンも実施(スピンの入りやすさは機体による。・スピンに至るまでに水平失速の兆候があったかどうかを見る(バフェット、低速、舵の効き、風切り音、ノーズアップ姿勢、舵の位置、沈下率)・自転が始まった時の舵感、エレベーターの位置の確認・スピンとスパイラルの違い(すべった旋回と自転)の認識(スピンは後ろに落ちて行く感じ、スパイラルは前を向いて円弧を描いて旋回する)・エレベーターを引くときにバンクが深くならないようにエルロンを使うと、スピンではなくスパイラルになる傾向がある・スピン中、速度計の針は大きく振れる・足の感覚はおおざっぱなため、ラダーを踏んでいないのに、いるつもりのことも多い・下を向いて自転している時、ラダー操作が重く感じられるので踏み足りていないことがある
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2フェーズ 科目 実施要領 着目点フライト スピンとスパイラルの違い・80km/h でバンク 30°確立・左ラダー:ハーフトラベル踏み込み・踏んだラダーの方向にでバンクがつき、機首が下がり始めるタイミングでエレベーターを引く(エルロンでバンクの維持をしない)・スピンではなく、スパイラルに入ったことが確認できたら、手足一致でバンクを戻し、機首をゆっくり上げるスパイラルの特徴・G がかかる・舵はずっと効いたまま(舵感あり)・自転ではなく、滑った旋回(前へ進む)・剥離していないので、大きな風切り音・速度計の針は振れず、速度が最初から増加傾向・最初の機首の落ち方がマイルドスリップからのスピン①・80km/h で右エルロン・左ラダーをハーフ~フルトラベル・エレベーターを引いてスピンに入るかどうかを確認・機首が上がってもその姿勢を維持できるため失速していることがわかりにくいが、バリオで沈下率が-2 以上であれば、失速状態となっている・そのままエレベーターを引き続けていると、当初右に傾いているが、最終的にラダーを踏んでいる方向(左)にスピンに入る・スリップからのスピンは、自転方向(ラダーを踏んでいる方向)と逆にエルロンでバンクをつけているので、自転を妨げる方向に働いている・スキッドは自転と旋回の方向が同じなので、自転を助長する方向に働く・機首が下がらなくても失速状態になっていることを認識する旋回→自転の移行 ・80km/h でバンク 10°旋回確立・左ラダー:ハーフトラベル踏み込み(糸のすべり量を確認)・踏んだラダーの方向にバンクがつき、機首が下がり始めるタイミングでエレベーターを引く(エルロンでバンクの維持をしない)・スピンの兆候(意図しない自転開始)の認識・認識したら指定の回復操作を行う・スピンの唯一の兆候(意図しない自転)の認識能力を向上するこの時点で回復操作が遅れると自転が始まり、少ない高度損失での回復は非常に難しい・しかしながらこの時点ではスピンもスパイラルもほとんど同じように見えるため、1/4 の初期で止める場合、スピンかスパイラルかの判断は難しい上昇失速 ・100km/h から 30°ピッチアップし、失速したらスティックは低速飛行の位置で待つ。・バフェットなしで失速することを確認する。・回復時、エレベーターは低速飛行の姿勢まで戻す。二次失速 ・水平失速後、ノーズが下がっても回復せずにスティックを引き続け、二次失速をさせ、機体の動きを見る。・機首が上下することを観察し、水平安定板が働いていることを確認する。失速近辺の傾き修正(時間があれば)・水平姿勢で機首を上げ失速手前で不安定になり傾いたら、ラダーだけ、エルロンだけで修正する・この修正方法はスピン誘発のリスクがある・機首を抑えてから傾き修正を行うラダーの副次作用(水平姿勢から)・水平姿勢からラダーをハーフトラベル踏む・他の舵を使っていないのに、バンクがつき、機首が下がることを確認する・一つの舵を操作しても、その軸だけでなく、他の軸にも影響を及ぼす。・エルロン、ラダー操作に起こる現象ラダーの副次作用(低速緩旋回から)・80km/h でバンク 10°旋回確立・ラダーの僅かな踏込でも低速旋回中は機首下げ、バンクが表れる・浅いバンクの時はエレベーターを引いたら機首が上がるが、バンクが深くなると引いても機首は上がらない・ラダー、エルロンを中立にすると機首が上がることを確認・機首上げを行う舵は、エレベーターだけではなく、エルロンもラダーもピッチ軸をコントロールする舵であることを認識する・エレベーターのコントロールする要素は取扱いを誤ると失速と破壊に直結するので、根拠のある時しか操作をしてはいけないスピン移行中の糸の動き・80km/h でバンク 10°旋回確立・ラダーをハーフトラベル踏む・ノーズが下がり始めたら、エレベーターを引き、スピン初動に入れて、糸の動きを見る・ラダーを踏んだ時は、外すべり側に糸が動くが、初期スピンに入って、ノーズが下がると糸が中立になり、内すべり側に動くこともある。・糸はすべりではなく、気流の当たる方向のみを示している。
3フェーズ 科目 実施要領 着目点フライト バンク 45°急旋回からの失速・90km/h でバンク 45°旋回確立(旋回時の見え方を覚える)・エレベーターフルアップ・速度がつき沈下率が増大(スパイラル気味)することを確認・バンクが深いと適正荷重倍数をかけるためにエレベーターの引きしろを使っており、臨界迎え角を超えるのに必要な引きしろが僅かしか残っていない・急旋回中のスピン操作ではスピンに入りにくい着陸 エマージェンシー・アプローチ・100-150m 程度のウィンチ索切れ模擬を実施・本日は、索切れ高度に関係なく、逆進入に着陸するように計画する(考える訓練)・講師が I have して滑走路上空を追い風方向に直進し、ピスト付近で増速後ウィンチ上昇角にセットする・慣性がなくなり始めたら、訓練生に You have し、滑走路に安全に降ろす計画を口頭で言って、・すぐに 180°旋回をしようとせずに、90°旋回で滑走路の見える位置まで機首を振ってからパス角を判断し、飛行経路を調整する・十分高い場合は、高い高度で斜めに滑走路に向かわなくても、ベースレグを描けることを認識する・滑走路に正対した時に安心して気を抜かないように最後までコントロールして着陸する(拾った命をここで落とすか?)・通常時と比べ、ヒューマンパフォーマンスの低下があったかを認識する・飛騨高山のような、軍艦上の 800m 単滑走路に障害物を考慮して安全に着陸し、滑走路内に停止できる精度があったかを確認・実際の非常事態は、予告して行った非常操作訓練での出来と比べ、3 割程度であるとして、自己評価する・索切れした時にどちらに回るかの判断ポイント①障害物 ②風・滑空比 30 あれば、100m で 3km 進む性能があることを考慮の上、飛行経路を決定する・滑走路延長線上は障害物のクリアーが保障されているが、斜めから入ると保障されていないことを考慮する・旋回は高い高度で終了できるように計画する・180 旋回は、実際 225°+45=270°旋回することになることを認識する・低高度に障害物があると、スティックを引きがちになる(人間の本能)<エマージェンシーアプローチ・イメージ図>風滑走路に背風で進入し、加速する。→講師が操縦ピッチアップ後索切れシミュレーション→訓練生が操縦速度、高度、位置を確認し、帰投飛行計画を立てる。旋回中は速度とすべりをチェック。広く滑走路の状況を観る。滑走路内に正対風で着陸滑走路内に背を向ける時間を極力少なくする。
4<本日の実施手順>・使用機体: ・離脱高度:・無線要領:・コントロール:原則として受講生がすべて操縦と無線を実施する講師がコントロールを取る時は、「I have control」をコールする<重量重心位置>飛行重量 Kg 最大重量 Kg 重心位置 mm前方 中間 後方mm------------ mm--------------- mm<飛行習慣改善ポイント自己評価表>本日の訓練を振り返って、あてはまる項目にチェックをつけてくださいチェックがついた項目は普段からの飛行習慣改善を心がけましょう滑走路エンドでの「ここで切れたらどうする?」の質問に対して「えーっと」と考えてから咄嗟の判断で答えた曳航初期、「どこで何 m だったら旋回して滑走路に帰るか?」の質問に対して、風や場所、バンク角等の計算根拠なく、何となく答えたスピンの回復時に遠心力で背中が押しつけられてラダーに力が入らなかったためにトップラダーを踏み込めなかった(ラダー位置が遠かった)機首が下がった時が失速だと認識していたスパイラルに入っているのにスピンの回復操作をしていた低速時の傾きをラダーで修正していた索切れコールがあった時、機首を下げて速度をチェックしたが、高度計は見なかった索切れシミュレーション時の旋回で、速度・すべりチェックをしなかった索切れシミュレーションで高かった時、軸線合わせとダイブ操作を同時にできなかった普段、サーマリングでは速度を抜いて浅いバンクで旋回する傾向にある機首が下がったらエレベーターを引く操作を根拠なく感覚で行っていた<コメント>