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事故事例に学ぶ、安全なグライダー飛行

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February 09, 2020

 事故事例に学ぶ、安全なグライダー飛行

滑空スポーツ講習会2019 東京 
日時:2020年2月9日(日)10:30 – 12:00 / 13:00-17:00
場所:新橋 航空会館 801 会議室
主催:公益社団法人日本滑空協会  
後援:国土交通省 航空局

事故事例に学ぶ、安全なグライダー飛行
講師:日口 裕二

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JSA seminar

February 09, 2020
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Transcript

  1. 事故事例に学ぶ 安全なグライダー飛行 SATA オペレーション・ディレクター インストラクター 日口 裕二 1 • JSA滑空スポーツ講習会2019

    2020.1.25(土)大野町グリーンホテル小松屋 2. 9(日)東京・航空会館
  2. 自己紹介: 日口裕二(ひぐち・ゆうじ) 職業:地方公務員…滝川市観光国際課所属 スカイスポーツによるまちづくりを担任 (SATA:オペレーションディレクター/フライトインストラクター) ・北海道大学航空部出身 ・総飛行時間・距離 9,850時間、120,000km+ ・滑空記章:3ダイヤ+1,000km章(No. 409)

    ・普段は、雲と風をこよなく愛し、日本初の「空のガイド」を目指す ・NZ国内選手権4位(2019年)、3位(2017年) ・著書に「ソアリングエンジン1、2」(訳書:雲と風出版)など ・1960年大阪生まれ 2
  3. 事故はなぜ起こる? <パイロットの場合> • 知識の不足(誤解や情報不足を含む) • 技量/経験の不足 • 予測(イメージ)の不足 • 身体や心の準備不足/限界

    3 ※この講習では、知識の補充(再確認)と 意識のチェンジ!
  4. 飛行する前に 具体的に確認すべき事項とは? 1.機体特性に応じた飛行前点検 2.重量重心位置 3.その日のウェザー特性の把握 4.予想される飛行プランの準備と態勢 5.使用空域の制約と予想されるトラフィック 6.曳航機(ウィンチ)の特性の把握 4

  5. 1.機体特性に応じた飛行前点検(一般) ・整備部位、整備内容(具体的に処置した事項)の事前確認 ・整備工具の置き忘れの有無 ・スリップマークのズレ→付け忘れ or 弛み ・整備以前の状況との差異 ・前後左右から見た全般的な形状→特に違和感の有無 ・エルロン、フラップのヒンジの亀裂の有無 ・脚

    タイヤの偏磨耗、尾輪のコントロール (曳航機、MG) ・燃料量の確認→ゲ-ジ及び目視確認 ・オイル漏れ→何故? ・エンジン関係 各ハーネスの取付 (亀裂の有無、特にゴムのカバーをしてある部位は要注意) 排気管とシリンダーとの接合部の弛み、スプリング スターターギヤ及びリングギヤの異常の有無 プロペラスピナーのネジの弛み、取付け部の亀裂、ベルトの亀裂 各ラインの取付部(特にエルボー) 各リンケージの取付(特にスロットル系統) 5
  6. 機種/機材の特性を踏まえた飛行前点検 ・エンジン格納式MG…振動の影響 ・AS社Kaシリーズ…ラダー取り付け部 ・Astir…アルミ製レバー類の強度不足 ・PW-5…付属の折り畳み式スペーサーを使わない ・Discus…座席レバー/脚レバーのロック甘い ・ル・ホッティラー接続 ・Gadringerシートベルト/ハーネス 6

  7. ル・ホッティラー接続(操縦系統) 7 (出典:BGA Manual of Standard Procedures & Basic Sailplane

    Engineering) 接続は目と手の両方で確認!
  8. シートベルトの抜け防止 8 ※Gadringer製の シートベルト/ハーネス (出典:Soaring誌)

  9. 2.重量重心位置 ・計測時期の確認・・・標準:4年に1回 ・最適位置・・・許容範囲中心 →飛行状態での計測 ・そのトリムウェイトは何kg相当? ・水バラスト搭載?テールバラスト使用? ・重量が飛行に影響を及ぼす気象条件とは? 9

  10. 3.その日のウェザー特性の把握 • 天気は回復傾向?崩れ傾向? • 風は? • 湿気は? • 発雷は? •

    ウェーブ (ローター)? 10 ※どのような情報源を基に 判断する?
  11. 4.予想される飛行プランの準備と態勢 • 飛行形態ごとの危険要素の抽出 バッタ ソアリング(サーマル、ウェーブ、 前線、リッジ) クロスカントリー • 個人の対応、運航組織の対応 11

  12. 5.使用空域の制約と予想されるトラフィック • 法的な制限空域 • 個人の技量上の制限空域 • 機体性能上の制限空域 • グライダー以外の航空機の情報把握 •

    自分と同様の飛行をしているグライダーの 情報把握 12
  13. 6.曳航機(ウィンチ)の特性把握 • 機材特性 • 風、密度高度と離陸出力の余裕度 • パイロット(オペレーター)の習熟度 13

  14. 離陸・曳航(AT) (1)地上滑走時 ウィングドロップと偏向 (2)浮揚後 ポーポイズ(PIO:Pilot Induced Oscillation) (3)曳航中 曳航機の吊り上げ ロープのたるみ

    14
  15. 15 曳航機の吊り上げ (出典:Sailplane & Gliding Jun/Jul 2006 “How to deal

    with tug emergences”)
  16. 離陸・曳航(WT) (1)出発直後 ウィングドロップと偏向 (2)曳航中 失速・スピン パラシュート・索への突入 16

  17. 17 (出典:BGA Safe Winch Launching “Stop the Drop”)

  18. 18 (出典:Sailplane & Gliding Apr/May 2006 “Six eventful seconds”)

  19. 19

  20. 20 (出典:Sailplane & Gliding Feb/Mar 2009“Wing strike vs wing drop”)

  21. “空飛ぶ”ケーブルパラシュート 21 (出典:Sailplane & Gliding誌 Aug/Sep 1985 “Flying Cable Parachute-2”)

  22. エンドセットの標準配列 1.規格に合ったダブルリング 2.3mの長さの、曲がりにくいチューブを被せた安全索(輪ができてグライ ダーに巻き込まれるのを防止するため) 3.曳航用ウィークリンクは、曳航されるグライダーの飛行規程を参照のこと。 (ウィークリンクはダブルリングと安全索の間に取り付けることも可能) 4.直径1.5m以上のパラシュートを使用する場合、10mの長さの接続索。 5.最大直径2mのパラシュート 6.クイックリリースコネクター(またはカラビナ) 7.曳航索

    22 (出典:Flying and Sailplane by Helmut Reichman
  23. ウィンチ曳航時のトラブル例: Cartwheel 23

  24. 24 ウィンチ曳航時のトラブル例: 索切れ後の失速

  25. 離陸操作のポイント • 離陸前点検 • 離陸目標 • アイポイント • 地上滑走時の手足の操作 •

    航空機曳航の占位点 • ウィンチ曳航の速度と姿勢 • スロットル操作と速度・風に応じた各舵の操 作 25
  26. 離陸前点検 • 漏れを無くするには? チェックリスト(自分に合った) CB SIFT CB、PRICE 「点検の流れ」の構成 • ダブルチェック(システム化)

    26
  27. 離陸目標 • 地平線上のピンポイント(左右の変移) • 航空機曳航 航空機が視界を制限 ↓ どうする? • ウィンチ曳航

    上昇中は? 27
  28. アイ・ポイント • 凝視(一点集中)になっていないか? • クロスチェック 地平線(基準)→機体の傾き ヨー方向の目標→機首の変移 地面→高度判定 28

  29. 地上滑走時の手足の操作 • 脳は不安を感じると、むやみに何かをしたく なる→傾いていなのにエルロン操作 ↓ 手足が一致した操作 この結果、翼が傾く →修正すると機首が偏向 29

  30. 航空機曳航の占位点 • 航空機が地上滑走中 高さは1~2m程度(低くし過ぎない) 予期しない接地はポーポイズを惹起 • 航空機が浮揚したら 航空機と同高度 30

  31. ウインチ曳航の速度と姿勢 • 常に索切れ(パワーストール)に対応できる 飛行姿勢が前提 • 曳航速度:ASK21の場合 55~60kt(最少操縦速度の1.3~1.4 倍) • 加速に応じて上昇姿勢に移行

    31
  32. 32 (出典:BGA Instructors’ Manual 2nd Edition “Wire Launching”)

  33. スロットル操作と速度・風に応じた各舵の操作 (AP/MG) • スロットルはスムーズに(機首偏向) • ラダーの効き 加速しやすい 適度なテール上げ 浮揚が早い •

    横風に対処するエルロン・コントロール 33
  34. 上空 • 空中衝突 (1)場周エントリー (2)グライド中(コンバージェンス、斜面) (3)ガグル中 • 雲中飛行等によるDisorientation(バーティゴ) • フラッター

    • コントロール不能 34
  35. 衝突コース 35

  36. 空中衝突回避 • 目の限界: ・計器から外へは1~2秒 ・スキャンは頭を動かして ・物の識別範囲は10~20度 ・背景とのコントラスト • 見張りの技術; ・聞き張りによる危ない空間への注意分配

    ・コリジョンコースの回避 ・飛行パスの上下10度は見張る ・周辺視野(スキャンの範囲は10度以内で1秒 は見る) 36
  37. ・地上での気になることを引きずらない ・外は見える?…小道具(GPS、ビデオ)の排除 ・キャノピーの清掃は? ・ルールは守ってる? ・混雑を避けてる? ・飛行方向のスキャンは? ・衝突コースの認識は?…距離は関係ない 37 見張りのチェック項目

  38. 相手の旋回コース を把握 相手の後方に占位 同円弧の対角 内側からの追越厳禁 セパレーション 38 (出典: BGA Instructors’

    Manual 2nd Edition “Thermaling”)
  39. 雲中飛行 ※フラッター 39

  40. コントロール不能 (1)操縦系統の接続不良 (2)異物(バッテリー、バラスト等) (3)固縛不良+マイナスG、クッション 40

  41. 飛ばし続けることの大切さ • 曳航中、キャノピーが開いた! • 離陸直後(飛行中)、異音がする! • 操縦系統が動かない! 41

  42. コントロール不能時の対処 (脱出できない場合) 横方向 ↓ ・増速→エルロンの効き大 ・傾く側の反対のラダー ・傾く側への旋回はしない 縦方向 ↓ フラップ及びダイブでの

    コントロール ↓ 激突回避のため翼端か ら接地 42 最後まで諦めない強い意志
  43. 空中操作のポイント • スピン • 対リデュースG(サブG)感覚 • 空中衝突回避 • 見張りのチェック項目 •

    安全なガグル • コントロール不能時の対処 43
  44. スピン • 回復には: アイポイントは地平線に ヨーイングを止める→反対のラダー 失速からの回復→操縦桿を前 • 入らないためには: アイポイントは地平線をkeep 速度を維持

    重心位置はセンター又は前方 • 訓練は段階的に、そして安全高度で 44
  45. 対リデュースG(サブG)感覚 • アイポイントは地平線(外) • 速度計の活用 • 恐怖感の克服→段階的な失速訓練 • 「スティック前へ」ではなく、「ノーズダウン」 ※姿勢で教える

    「教官の正しい導き」がKey 45
  46. ウェザー特性に対応する飛行 • 雷にどう対応する? • ウェーブ及びローター • 強風下の飛行 • 低シーリング •

    スノーシャワー • オントップ飛行 • アイシング 46
  47. 雷にどう対応する? • 雷雲のエリア・進行方向を回避 • 全域が雷雲に覆われそうな場合は着陸 • (ウィンチの曳航索は巻き取る) 47

  48. グライダーへの落雷 48 (出典:The London Gliding Club Newsletter April 2000)

  49. 49

  50. ウェーブ及びローター • グライダーの設計上の滑空比は全く期待 できない • ローターラインは速やかに回避 • 滑空場から風下のウェーブラインへのト ライは慎重に •

    風下のウェーブラインから風上のウェー ブラインへの移動は極めて慎重に • ローターでの飛行機曳航は相当の経験者 のみ可能(MG曳航は?) 50
  51. 質問 酸素は10,000ftになったら吸う? 51 ※JSA Info前号、今号を精読してください

  52. 強風下の飛行 • 風上と風下の滑空比の極端な差異を常に 認識 • アプローチでのウィンド・グラディエン トを考慮 • 乱流対処 52

  53. ウインドグラディエントの影響 53 (出典:BGA Instructors’ Manual 2nd Edition “Circuit Planning 1”)

  54. 低シーリング • 基本的に飛行を中止する • 飛行せざるを得ない場合は 障害物の把握 安全高度の維持 最寄の適地にアウトランディング 引き返す勇気を持つ 帰巣本能との闘い

    54
  55. スノーシャワー • 地形と風向に伴うスノーバンドの把握 • VMCからBellowまでの変化が急激 ↓ 予想される場合は訓練中止 • 巻き込まれたら、オントップに移行 雲のトップは通常5,000ft程度

    • ダイバート又は上空待機 55
  56. オントップ飛行 • 目的地の雲量は? • 予報は? • 雲頂/雲底の高さは? • エンルートは不時着可能か? •

    ダイバートと予備燃料は? • 霧と雲はつながっていないか? 56
  57. アイシング • 北海道は春と秋が要注意 • 霧の発生する朝 • キャブヒートは全か無 • 翼が結氷し始めたら、高度を下げる 57

  58. 状況判断 • 機材の不具合(AP/MG) • 場周飛行 • ローカルソアリング • ウェザー限界の設定 •

    曲技飛行(展示) 58
  59. 機材の不具合(MG) • 異常振動 → (床、ラダー) • 油圧の低下 → • 電圧計がマイナス→

    エンジン・マウントのゴム 点火系統 油温上昇→着陸 油温変らず→計器の故障 必要最小限の電装品の使用 59
  60. 60 場周飛行 (出典:BGA Instructors’ Manual 2nd Edition “Circuit Planning 1”)

  61. 61 ダウンウインド・パス A:12度以上 チェックポイント (出典:BGA Instructors’ Manual 2nd Edition “Circuit

    Planning 1”)
  62. 着陸パス角 10度以上 (6対1) 62 (出典:BGA Instructors’ Manual 2nd Edition “Circuit

    Planning 1”)
  63. 63 ファイナル (出典:BGA Instructors’ Manual 2nd Edition “Circuit Planning 1”)

  64. ローカルソアリング • 地形の考慮 山: ダウン・ウォッシュ トリガー・ポイント(風向・日照) • ウェザー特性の把握 ・一般的予報+ローカル特性 ・兆候を見逃さない

    ・ウェザーに適応した飛び方 • 帰投高度とアウトランディング ・L/Dは?…フライトコンピュータを信じない ・アウトランディング適地は? 64
  65. ウェザー限界の設定 • 機体特性(性能)に応じた数値 ・MG or ピュアー ・滑空比(ペネトレーション) ・装備 • スキル

    ・経験の有無 ・知識 65
  66. 曲技飛行(展示) • 演技前のHASELLチェック • 課目に応じた安全高度 • 飛行展示場所の特性を考慮した課目 • 気象条件に応じた課目の選定 •

    予行の実施 • 状況に応じた課目変更 66
  67. 着陸 (1)第3・4旋回 低空旋回時のスピン (2)進入中 サブGによる急降下・・・失速感 フォワードスリップ 高めのパス →速度超過+エアブレーキ閉によるPIO 67

  68. アクシデンタルスピン 68

  69. 着陸操作のポイント • アイポイント • やって良いことこと、悪いこと • ブレーキの使い方 69

  70. • アイポイント どうするために、どこを見る? ・アプローチでの優先は ・フレア開始後は ・接地後は • やって良いこと、悪いこと ・軸線と機軸 ・フォワードスリップ

    • ブレーキの使い方 ・ダイブブレーキ ・ホイールブレーキ 70
  71. 安全な運航システム(グライダー のSMS) • ブリーフィング…転ばぬ先の杖 • スーパーバイザーの配置…気軽に言い合 える環境 • ソロパイロットの技量管理 •

    技量に応じた運航基準の設定 • 訓練環境の整備(阻害要因の排除) • 機材の点検整備 • インストラクター間の情報共有 • 教育のスタンダリゼーション 71
  72. 安全なパイロットであるために • 基本動作の確行 • 経験(事例研究)を増やす • 飛ぶことに謙虚であれ • 不必要なリスクは避ける •

    自分なりのチェックリストを持つ 72
  73. 事故/ヒヤリハット情報(事例研究) • 航空事故調査報告書(日本) http://araic.assistmicro.co.jp/araic/aircraft/kensaku/index.ht ml • 航空安全情報自発報告制度 [ VOICES ]

    http://www.jihatsu.jp/ • 外国のグライダー雑誌(BGA HP) Sailplane&Gliding誌 accident/incident summary https://members.gliding.co.uk/library/accident-and- incident-summaries/ Soaring誌 safety corner • ハンガートーキング 73