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〈魂〉の居心地の悪さをめぐって:コミュニケーション研究は、共約不能な世界をどう引き受けるか

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July 03, 2026
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 〈魂〉の居心地の悪さをめぐって:コミュニケーション研究は、共約不能な世界をどう引き受けるか

日本コミュニケーション学会第55回年次大会シンポジウムにおける問題提起報告

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Kanta Tanishima

July 03, 2026

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Transcript

  1. 自己紹介 2 / 23 谷島貫太 二松学舎大学 専門:技術哲学/メディア論/記号論 今回の問題提起報告における立場 中島先生の基調講演を足場として、言語人類学や記号論の議論を参照しながら 世界を理解する理論的な枠組みのレベルでの違いに基づいた対話の可能性について考える。

    またその検討をもって、コミュニケーション研究にとって西洋パラダイムの〈外〉との関係を めぐる議論の手がかりを提供したい。 主な著書/編著 近刊 アテンション 資本論 新曜社 2026年7月末刊行予定
  2. 3 / 23 S E C T I O N

    0 1 〈魂〉という概念の居心地の悪さ
  3. 「のぞむ」という態度 5 / 23 「通じうるか(可能性)」ではなく「のぞむ」の態度を 〈魂〉という具体的な概念をめぐって考える。 カント的な態度 可能/不可能 成立を前提として「可能性の条件」を問う 転換

    中島基調講演 望む・願う「のぞみ」へ 成立を前提しない 「のぞみ」の次元とは コミュニケーションの成立を前提しない。 通じる/通じないでは捉えられない、保証のない次元 「のぞむ」という態度から出発するコミュニケーション理論とは?
  4. 6 / 23 S E C T I O N

    0 2 居心地の悪さを片付ける二つの道
  5. 二つの道――翻訳と包摂 7 / 23 扱いにくい概念を、私たちは「翻訳」か「包摂」で手早く片づけがちである (例:東洋医学)。 翻訳――個別の語を移し替える 気 → 血流・自律神経の働き

    経絡 → 神経・筋膜の走行 自分が扱える語彙へ移し替える 包摂――体系ごと枠に収める 東洋医学 → 〔西洋医学の枠〕の 「検証すべき前科学的技術」 体系ごと既存の枠の内部に位置づける 言語人類学者M. シルヴァスティンによる 「報告的較正(reportive calibration)」と「法則的較正nomic calibration)」 「報告的較正」: 記号が指示する対象が整合するかのフレーム調整プロセス(「気は血流と同じものだよね?」) 「法則的較正」: 記号を解釈する制度的フレームの調整プロセス(「気の理論は、西洋医学的にはこういうことだよね?」) 注意 成立させようとしつづけるというフレームの調整プロセスとしての較正
  6. 〈魂〉なら、どうか 8 / 23 同じ二つの道は、〈魂〉そのものにも働く。 翻訳――別の語彙へ移し替える 魂 → 自己・内面(心理) 魂

    → アニマ(西洋哲学) 自分が扱える語彙へ移し替える 包摂――中立を装う枠に収める 文化論:ある文化に固有の信念 進歩史観:「前科学」の一段階 周縁化:中心に対する周縁 特定の視座を普遍と装い、地図に置く 注意 どちらの道でも、〈魂〉に固有のもの(不滅・死後・宇宙論的な位置)は、こぼれ落ちる。 較正とは、単なる還元ではなく、メタ語用論的なフレームの調整である。 翻訳 = 報告的較正(報告レベル) 「この〈魂〉が指すのは、結局〈自己・ 内面〉のことだ」 ――二つの指示のフレームを擦り合わせ 、同じ対象として整合させていく。 包摂 = 法則的較正(法則レベル) 「〈魂〉の語りは、総じて前近代的なア ニミズム的発想のの一例だ」 ――語りの全体を、ある一般法則のもと に位置づけていく。
  7. 10 / 23 S E C T I O N

    0 3 マテオ・リッチ と「相互変容」の条件
  8. 同じ〈魂〉、違う世界 11 / 23 リッチと明末の仏教徒は、同じ〈魂〉という語を まったく異なる世界観で捉えていた リッチ 人間に固有の、不滅の個物 (生魂/覚魂/霊魂の序列) 魂は別の体に宿りえない

    仏教徒 転生し、動物にも交わりうる 流動的なもの 『孟子』の牛=動物への共感にも交わりを見る 肉食(殺生)をめぐる論争 法則的較正の機能不全 魂 リッチの世界:不滅・個物 仏教の世界:流動・転生 特定の理解枠組みに 収束しない
  9. 「相互変容」の条件 12 / 23 「相互変容」は、そもそも可能なのか。 ベラーの位置づけ リッチ = 翻訳を越えた「相互変容」の一つのモデル? だが

    可能だとして、どのような条件で成り立つのか ただし 世界観は異なっても、両者は〈魂〉という記号を足場として共有している。 この共有された足場こそ、相互変容の手がかりになるのでは?
  10. 13 / 23 S E C T I O N

    0 4 記号から考える
  11. 指示の基点(Origo) 15 / 23 「ここ」が何を指すかの手がかりは、記号の中にはない 基点は記号の外――話し手の身体(その場の共在)にある 記号 「ここ」 参照 記号の外

    基点 身体/共在 その場で参照できる だから「ここ」は確定する 語そのものではなく、発話の場にある特定の身体が指示を支える
  12. 〈魂〉も基点は記号の外にある 16 / 23 〈魂〉も基点を要する。だがその基点は、記号の外=話し手の世界=人生の 時間の蓄積に根差す世界観であり、その場では参照できない 記号 〈魂〉 参照 記号の外

    話し手の世界 = 人生の時間の蓄積 経験 記憶 社会 文化 個人的・瞬間的 ──→ 集合的・歴史的(スケールと奥行きが増す) 語そのものではなく、記号の外部にある 生きられた時間の蓄積が「魂」という概念を支える
  13. その基点を共有する――贈与 17 / 23 記号の外の基点は、情報として伝達できない。 分け与え、長い時間を共に生きることで共有される。 〈贈与〉 説法=自分の世界の一部を 分け与えること (情報の伝達ではない)

    時間をかけて 時間の蓄積を共に生きる 基点=人生の時間の蓄積 翠厳「三十年来…」 長く共に生きて分け与えられる 基点(=話し手の世界)は、生きられた時間の蓄積 その共有は、長い時間を共に生きることでしか起こらないのでは? ただし 何かを指し示しているがそれが何を指し示しているかはわからない という共通の記号(〈魂〉)を足場ととしたうえで
  14. 18 / 23 S E C T I O N

    0 5 コミュニケーション研究にとっての 〈贈与〉とは?
  15. 参考文献 ビューラー,K.(1983–1985)『言語理論——言語の叙述機能』上・下,脇阪豊ほか訳.クロ ノス.(Bühler, K. (1934). Sprachtheorie: Die Darstellungsfunktion der Sprache.

    Gustav Fischer.) ヤコブソン,R.(1973)「転換子と動詞範疇とロシア語動詞」川本茂雄監修『一般言語学』 所収,川本茂雄・田村すゞ子・村崎恭子・長嶋善郎・中野直子訳,新装版.みすず書 房.(Jakobson, R. (1957). Shifters, verbal categories, and the Russian verb. Harvard University, Department of Slavic Languages and Literatures.) Silverstein, M.(1993)Metapragmatic discourse and metapragmatic function. In J. A. Lucy (Ed.), Reflexive language: Reported speech and metapragmatics (pp. 33–58). Cambridge University Press.