日本記号学会第46回大会での研究発表。
本発表は、認知が自己の状態を通じてしか世界に関われない「認知的閉じ」を前提に、閉じた個体が集合的記号実践へ参与し、現実を共有する仕組みを問う。世界や他者から返される予期の破れ・抵抗・齟齬という「否定」を、主体の仮説や行為図式を修正するネガティブ・フィードバックとして捉え、これをパースの指標概念に結びつける。また共有現実の基盤を主体間の類似ではなく、位置・向き・役割・発話状況などのフレームを指標を介して相互に「較正」し続ける過程に求める。指標は対象を静的に指すものではなく、ズレの検出と適合の目印として働き、その反復が安定した社会的時空間を立ち上げ、集合的認知を記号論的に基礎づける、と結論づける。