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巨大不明生物対策からみる日本の行政制度 ~法治主義・災害対策〜

巨大不明生物対策からみる日本の行政制度 ~法治主義・災害対策〜

オープンサイエンス mini ワークショップ:京都クリスマスレク(チャー)
スピーカー:横田 明美さん(千葉大学大学院社会科学研究院)
日時:2017年12月19日(火)18:30〜
場所:MTRL KYOTO

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Transcript

  1. 現実 vs. 虚構 • 後半:未知の新生物(虚構) • 前半:実はかなりリアル(現実) – 「あの会議室行ったことある!」(官邸内) –

    レク(チャー) – 巨災対メンバーはちゃんと「官僚」をやっている 理由:東日本大震災・福島原発事故対応が 元ネタだから p.8
  2. 2016年の映画: シン・ゴジラ 君の名は。 この世界の片隅に • いずれも、緊急事態における人の営みを描く 「災害」映画 • 「この世界の片隅に」は戦争という人災だが・・・ •

    2011年の緊張感と変貌を後世に伝えるもの – 「君の名は。」:ある点を境に一変する世界 – 「この世界~」:日常の常識が侵食されていく世界 – 「シン・ゴジラ」:あったかもしれない世界、これから あるかもしれない未来 p.10
  3. 参考:のちにコラボ • 石動竜仁「中の人に聞く防災」 http://ji-sedai.jp/series/research/076.html – 後藤隆昭氏 内閣府政策統括官(防災担当)付 企画官(普及啓発・連携担当)へのロングインタ ビュー •

    「これまで土地行政、国土計画、防災行政に関わり、現 在は国土交通省から内閣府に出向中。著書に『虚構と 防災』(自費出版)。」 • 緊急参集チーム(なんかあったら30分で集まる人たち) のメンバーでもある p.13
  4. 石動竜仁ほか『シン・ゴジラ政府・自衛隊事態対処研究』 (ホビージャパン、2017年) p.18 • 石動竜仁(軍事ライター) • 横田明美(行政法研究者 千葉大学准教授) • 菊池雅之(軍事フォトジャーナリスト)

    • 関賢太郎(航空評論家) • 多田将(高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 准教授) • 飯柴智亮(軍事アナリスト、元アメリカ陸軍将校) • 小泉悠(軍事アナリスト、未来工学研究所 客員研究員) • 綾部剛之(*ホビージャパン編集部 兼 軍事ライター)
  5. 石動竜仁ほか『シン・ゴジラ政府・自衛隊事態対処研究』 (ホビージャパン、2017年) p.19 • ▪異変 • 01 登場人物紹介01 • 矢口蘭堂

    内閣官房副長官 石動竜仁 ――006 • 02 シン・ゴジラに描かれた日本の危機管理体制 石動竜仁 ――008 • 03 総理官邸 石動竜仁 ――012 • ▪巨大不明生物上陸 • 04 自衛隊、防衛出動 横田明美 ――016 • 05 初の災害緊急事態布告 横田明美 ――021 • 06 防衛出動は必要だったのか? 石動竜仁 ――022 • コラム 学識経験者と政策 横田明美 ――025 • 07 対ゴジラ品川駅迎撃戦 綾部剛之 ――026 • インタビュー B班監督助手 小串遼太郎 01「品川」 ――028
  6. 石動竜仁ほか『シン・ゴジラ政府・自衛隊事態対処研究』 (ホビージャパン、2017年) p.20 • ▪小康 • 08 登場人物紹介02 • 巨災対は“はぐれ者”の集まりなのか?

    石動竜仁/横田明美 ――034 • 09 「統合任務部隊」の役割と機能 綾部剛之 ――038 • 10 海上自衛隊によるゴジラ捜索 綾部剛之 ――042 • 11 想定:ゴジラvs海上自衛隊 綾部剛之 ――046 • ▪再上陸 • 12 B号計画 綾部剛之 ――050 • 13 タバ戦闘団 菊池雅之 ――054 • 14 タバ作戦――その戦力と火力 菊池雅之/綾部剛之 ――056 • 15 F-2戦闘機レーザーJDAM攻撃 関賢太郎 ――062 • インタビュー B班監督助手 小串遼太郎 02「タバ作戦」 ――065
  7. 石動竜仁ほか『シン・ゴジラ政府・自衛隊事態対処研究』 (ホビージャパン、2017年) p.21 • ▪首都蹂躙 • 16 地中貫徹型爆弾「MOP II」 関賢太郎

    ――070 • 17 特別輸送ヘリコプター隊 綾部剛之 ――074 • コラム ゴジラ、西海岸上陸! 飯柴智亮 ――076 • ▪活動停止 • 18 内閣府立川避難シミュレーション 石動竜仁 ――082 • 19 立川広域防災基地 石動竜仁 ――084 • 20 東京湾臨海部基幹的広域防災拠点 有明の丘地区 石動竜仁 ――091 • ▪ヤシオリ作戦 • 21 ゴジラへの熱核兵器使用 多田将 ――098 • 22 ヤシオリ作戦と2つの事件 菊池雅之 ――103 • インタビュー B班監督助手 小串遼太郎 03「ヤシオリ作戦」 ――106 • 23 被害総額135兆1,180億円!? 石動竜仁 ――110 • コラム ゴジラに関する物理学的考察 多田将 ――114 • コラム 『シン・ゴジラ』が描いた“日本” 小泉悠 ――117
  8. 本日のおしながき • 1-1 自衛隊の出動根拠論 – 法律による行政の原理 • 1-2 初の「災害緊急事態」布告 •

    2 巨災対の人々 • 3 科学技術と政策 • おわりに 虚構から着想を得る研究 p.22
  9. 法律による行政の原理 =組織法と作用法で縛られる行政 • 組織法 行政の組織編成や 職務の分担(所掌事務) を定める 例)道路の真ん中の制服 旗振りおじさんが ①交通の取締りを任務と

    する所轄都道府県警察の 警察官であり(警察法2条、 36条、55条) • 作用法 行政活動の根拠となる 要件と効果を定める 例)旗振りダンスが ②手信号による交通整理 (道路交通法6条1項)で あれば、運転者はそれに 従わなければならない (同法7条)。 24 石川敏行・藤原静雄・大貫裕之・大久保規子・下井康史『はじめての行政法 第3版補訂版(有斐閣ア ルマシリーズ)』(有斐閣、2015年)を参考に作成
  10. 1-1 自衛隊の出動根拠論 法律による行政の原理 自衛隊法における 武器使用が可能と なる場面ごとに応じ た根拠規定 防衛出動 (76条1項1号 →88条)

    治安出動 (78条1項 →警職法7条) 災害派遣 (83条1項・2項 →警職法は6条まで →災対法64条2項) どんな場面で あてはまるのか? (要件) 【 】は典型例 外部からの武力 攻撃 =【外国からの】 一般の警察力を もっては治安を維 持することができ ない=【暴動】 【天変地異その他の 災害】に際して、人命 または財産の保護の ため必要があると認 めるとき どこまで やっていいの? (効果) 国際法・慣例を遵 守しつつ必要な 範囲で 「犯人の逮捕若しく は逃走の防止・・・」 →「犯人」を想定 災害対策基本法にい う「応急措置」なら やってもいい 巨大不明生物駆除 に用いることが できるか 外国からの 侵略なの? 巨大不明生物って ヒトじゃないけ ど・・・ 戦車って「応急措置」 なのか? p.25
  11. 1-2 初の「災害緊急事態」布告 p.28 確かに初だが・・・ – 災害対策基本法105条1項 – 非常災害が発生し、かつ、当該災害が国の経済及び 公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激 甚なものである場合において、当該災害に係る災害

    応急対策を推進し、国の経済の秩序を維持し、その 他当該災害に係る重要な課題に対応するため特別 の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、閣議 にかけて、関係地域の全部又は一部について災害緊 急事態の布告を発することができる。
  12. 2 巨災対の人々 p.34 • 尾頭さん=自然系技官(通称:レンジャー) – 国立公園における自然保護官:単独あるいは少数で 各地の国立公園に配属となり、現地の地権者や NGO・NPO等と調整・協力しながら、国立公園の管理 や許認可にあたる

    • 彼らの仲間意識は強く、独自の思考回路 • 多様な利害関係を自らまとめ合意形成をはかる 調整役であることから、気さくで大らかな性格の 方が多く、「良く言えば、柔軟で自由闊達、悪く言 えば、無責任なところがある」とも評される(田中 (2016)
  13. 3 科学技術と政策 「御用学者」の誤用 • 研究者:学術的な成果を生み出すことに関心 – 学術的な主張をするための証拠が揃っていること を重視 – 学術的な正当性を担保したい

    • 政策立案者:常に時間的プレッシャー – シンプルな結論やわかりやすさを求める傾向 – 多様なステークホルダーとの調整に進みたい p.36
  14. 参考文献1 • 石動竜仁ほか『シン・ゴジラ政府・自衛隊事態対処研究』(ホビージャパン、 2017年) • 石川敏行・藤原静雄・大貫裕之・大久保規子・下井康史『はじめての行政 法 第3版補訂版(有斐閣アルマシリーズ)』(有斐閣、2015年) • 坂田亮太郎「石破氏「シン・ゴジラは全然、リアルじゃない」元防衛大臣が

    抱いた、自衛隊に防衛出動させた違和感」(前後編)日経ビジネス(編) 『「シン・ゴジラ」、私はこう読む』(日経BP社(電子書籍)、2016年) • 自衛隊法覚え書編集委員会(MDL)(編)『逐条概説自衛隊法(上)・ (下)』(自衛隊法覚え書編集委員会、2016年) • 後藤隆昭「「防災対虚構。」~ゴジラを迎え撃つ災害対策法制へ」『虚構と 防災 特別号』(世をしのぶ仮のねむけ(同人誌)、2016年) • 防災行政研究会(編)『逐条解説災害対策基本法[第三次改訂版]』(ぎょ うせい、2016年) • 佐々木晶二『最新防災・復興法制』(第一法規、2017年) p.48
  15. 参考文献2 • 小滝晃『東日本大震災 緊急災害対策本部の 90 日』(ぎょうせい、2013年) • 内閣官房 行政機構図(2016年7月) http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/satei_01_05.html

    • 同 付録「所掌事務一覧」 http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/files/satei_01_05_23.pdf • 真渕勝『行政学』(有斐閣、2009年) • 環境省『レンジャーになりたい 平成29年度入省予定環境省総合職自然系内定 者の声』 https://www.env.go.jp/guide/saiyo/cat_g3/H29-1.pdf • 朝日新聞「(今さら聞けない+)自然保護官 国立公園などで活躍」2016年12月 10日Be欄 • 田中俊徳「自然環境政策の最先端を探る/合意形成が政策実施に不可欠」月刊 グリーンパワー2016年10月号 • 有本建男・佐藤靖・松尾敬子(著)・吉川弘之(特別寄稿)『科学的助言 21世紀の 科学技術と政策形成』(東京大学出版会、2016年) • 森田朗『会議の政治学』(慈学社出版、2006年)、同『会議の政治学Ⅱ』(慈学社 出版、2014年)、同『会議の政治学Ⅲ』(慈学社出版、2016年) p.49