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市民が取得した魚類の情報を科学的に活用する試み
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オープンサイエンス・ミートアップ
January 28, 2019
Science
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市民が取得した魚類の情報を科学的に活用する試み
日時:2019年1月28日(月) 19:00-20:15
スピーカー:宮崎佑介さん(白梅学園短期大学)
場所:GROVING BASE
オープンサイエンス・ミートアップ
January 28, 2019
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Transcript
市民が取得した魚類の情報を 科学的に活用する試み 第27回KYOTOオープンサイエンス・ミートアップ 2019年1月28日 宮崎佑介
経歴・自己紹介 • 2003年~2016年:神奈川県立生命の星・地球博物館魚類ボランティア • 東京海洋大学海洋科学部海洋政策文化学科 • 水産生物研究会 • 水圏環境教育学研究室 •
2007年~WEB魚図鑑運営ボランティア • 東京大学大学院農学生命科学研究科生圏システム学専攻 • 保全生態学研究室(修士・博士) • 日本学術振興会特別研究員PD (受入機関:神奈川県立生命の星・地球博物館) • 白梅学園短期大学保育科 https://zukan.com/fish/ http://fishing-forum.org/zukan/
本日紹介するお話し • 情報媒体を通じた研究実例 • 標本の入手とその活用 • Web上の画像の活用 • その他 •
二次資料「魚拓」の活用の試み • 活動を通して感じている課題 https://kaken.nii.ac.jp/ja/
Citizen Science • 市民の科学プロセスへの参画 • Public Participation in Scientific Research
• 新興の学術領域/アプローチ • 2014年にCitizen Science Association設立 • その起源は科学の起源に等しい • ICTの急速な発展が背景 • 科学的な成果+普及教育の効果 http://www.birds.cornell.edu/citscitoolkit/news/copy_of_2012-citizen-science-meetings/
市民を巻き込んだ生物多様性情報取得 • 市民参加の可能性 • 大規模なデータ取得 • 自然環境教育効果 (e.g., Kobori et
al. 2014) • 不正確な情報の危険性 • 誤った理解による科学分野への影響 医学分野・生物多様性保全分野etc. (e.g., Callis et al. 2009; Heilman et al. 2011)
生物多様性情報 • 過去の情報は取得方法が限定 • 過去の資料/史料 • 標本 • 動画 •
写真 • スケッチ(本草学資料含) • 伝聞情報 ※いずれも時間制限の可能性あり 信頼性:低 信頼性:高
社会への還元 自然史博物館 資料収集・保管 調査研究 展示・教育 分類学・生物地理学・ 生態学・教育学 (生物多様性の解明・保全)
魚類写真資料データベース •神奈川県立生命の星・地球博物館 • 博物館資料としての魚類画像 • オリジナルな登録番号 • (半)永久保管 • WEB上にも公開
• 科学的に再検証可能なデータ • 科学研究に貢献 (分類学,生物地理学,認知科学) http://fishpix.kahaku.go.jp/fishimage-e/index.html
Future Prospects for Coastal Fish Monitoring 市民の貢献? • 遊漁者 •
スクーバダイバー 日本の主要な ダイビングショップ Miyazaki et al. (2014) 水圏環境教育研究誌, 7: 22–26
Future Prospects for Coastal Fish Monitoring 日本のレジャー人口 • 釣り (万人)
『レジャー白書』のデータをもとに作成 1996年:2040万人(ピーク) 2013年:770万人 • スクーバダイビング • 30万人以下を推移 • 共通点 • 生態系サービスに大きく依存 • 生物多様性保全に配慮した 持続可能な利用が必要 • 釣り人の自然観? • 外来種を対象にした釣り • 漁業法の増殖義務
日本のダイビングショップ • ほぼ全国の沿岸に分布 • 黒潮流域に集中 • 暖かい • 透明度がよい •
水深30 mまで • サンゴ礁や岩礁域 • 種の多様性が高い Miyazaki et al. (2014) 水圏環境教育研究誌, 7: 22–26
(参考)世界の主要ダイビングサイト Miyazaki et al. (2014) 水圏環境教育研究誌, 7: 22–26
魚類写真資料データベース • 1994年に運用開始 • 2003年からGBIFに情報統合 • 主要な貢献者: 研究者・スクーバダイバー • 2015年までに……
167,186枚の写真 406科5,807分類単位(種・亜種) Miyazaki et al. (2014) Biodiversity and Conservation, 23: 2383–2391
一次資料:標本 • 博物館の分類 • 登録博物館:神奈川県立生命の星・地球博物館、滋賀県立琵琶湖博物館etc. • 博物館相当施設:国立科学博物館、京都大学総合博物館etc. • 博物館類似施設:沼津港深海水族館、気仙沼リアスシャークミュージアムetc. •
登録博物館の標本 • 各自治体の資産 • (半)永久保管 • 実物そのもの • 同定の再検証可能性を担保 • 科学Scienceとしての重要条件 宮崎・福井(2018) 『はじめての魚類学』
Case study 1: Twitterの投稿を起点
情報発信者との連携・協働 標本と写真の寄贈 ↓ 標本作製 ↓ 標本と写真の登録 ↓ 同定の根拠を提示
資料に基づく調査研究 論文公表 ↓ プレスリリース https://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-02/pp-ust022916.php
情報媒体を通じた標本入手 打診 標本&写真寄贈 標本・写真の登録 科学論文の公表 プレスリリース
二次資料:動画・写真・魚拓 • 生時・生鮮時の色彩情報 • むしろ、標本よりも重要な情報源となる場合も • 同定の再検証可能性を担保 • 同定形質が明瞭に写っている必要 ※標本に比べると情報量は劣る
• 情報量・質 • 動画≧写真>魚拓? 宮崎・福井(2018) 『はじめての魚類学』
Case study 2: さかなBBSへの同定依頼 http://fishing-forum.org/cgi-bin/zk_bbs/zcyclame.cgi
画像登録&それに基づく科学的な報告
『つり情報』の巻末カラー連載で紹介
Web 上の写真や動画を根拠とする事例
科学的な証拠としての写真資料 • “scientifically interesting”な事例は単独で公表可 (e.g., an unusual event, observation or
phenomenon) • 集積されたデータは出現情報としての統計解析が可能
テレビ番組の出演・監修 • 「東京湾大調査」シリーズ3作 →一部の動画(画像)と標本を博物館に寄贈 ※魚類相の簡単な報告論文を投稿中…… https://mainichi.jp/articles/20180813/dyo/00m/200/031000c 「東京湾大調査3~全800種!激レアから猛毒までお魚コンプリート~」©テレビ東京 「東京湾大調査!お魚ぜんぶ獲ってみた~深海500mカメラ仕掛けたら~」©テレビ東京
科学論文とするには新規性が弱い事例 • 釣り雑誌において、スクリーンショットを“引用”して紹介
理想とする概念モデル • WEB上の魚類画像をすべて登録 • 分布情報はGBIFに提供 • インターネット利用者による参照可能 ※同意書のない画像の閲覧は館内限定 著作権切れの画像(PD)から公開
理想とする概念モデル 散在する写真データ “潜在的自然史資料” WEB 魚類写真資料データベース 自然史博物館 1. 資料の収集 2. 調査研究
3. 教育 データ統合 データ活用 フィードバック
BIG DATA 自然史博物館 より正確なデータ: 特定の科学研究への 応用可能 より不正確なデータ: マクロスケールの 研究であれば活用可能
二次資料:魚拓の場合? • 時間&場所データ付随 • 同定の再検証可能性?
Case study 3: 東京湾のアオギス • 最後の記録 • 1976年千葉県稲毛浜 • 菅原兼男(
1977) 稲毛人工海岸 (いなげ浜)の造成について. 水産土木,13: 29–35. • 詳細な分布域は不明 • 個体群絶滅の判定も目前
東京湾のアオギス魚拓 • 浦安市郷土博物館の調査(尾上, 2001) • 現存は1枚のみ@船宿 吉野屋 船宿、吉野屋所有のアオギス魚拓。 浦安に唯一残る魚拓であるが、 今回の調査で東京湾内でほかに
アオギス魚拓は見つからなかった。
東京湾のアオギス魚拓 二枚目のアオギス魚拓!?
既知の魚拓 • 側線上方鱗数 →解読困難 • 側線下方鱗数 →解読不能 • 「青ギス」という表記 •
一尺三寸五分 =40.9 cm
None
アオギス魚拓とその記録の紹介
市民からの情報提供 • 1966年3月 • 千葉県大貫の堤防よりチョイ投げ
but, 「魚拓データベース」はイマイチの成果
WEB関連の課題 • Web上の情報の欠点 (既往の科学研究の在り方に問題?) • 同一URLにおける書き換えが容易 • 忽然と消えることもしばしば • 「引用」の方法も不定?
⇒DOI付与の試み、 デジタルアーカイブの試み • 利用統計の欲しい行政的な要望との相容れなさ • 著作権・所有権→「魚拓」は収集しづらい生物多様性情報 ※無主物、所有権と著作権保有者が同一のものがよい?
全体的な?課題 • 海外のような巨大プロジェクトに発展していかない…… • 個人・グループレベルでの試行錯誤に留まる →成果は上がるものの? →“選択と集中”の外 • Citizen Scientistの養成
→機会が不足? →その補助役も不足? 宮崎・福井(2018) 『はじめての魚類学』
自然学習における展開 くにたち自然クラブ
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授業における展開 神奈川県立生命の星・地球博物館 大西 亘さんとの協働
その他、感じている課題 • 人を対象とした研究:倫理審査が必要 • 著作権法の変化:PDに死後70年が適用、 一部で非親告罪化 • 日進月歩のICT技術:ブロックチェーンへの導入?etc. →SEとの連携がとても重要 •
資金の獲得/人材の確保(/自由な研究時間の確保) →プロジェクトの継続、規模の大型化 https://this.kiji.is/461467489212777569
関連する解説・意見等 • 宮崎 佑介・福井 歩 (2018) はじめての魚類学 “好き” から魚博士へ!. オーム社,
東京. • 宮崎 佑介 (2018) 情報媒体を通じて取得される市民 データの科学的活用. 種生物学会電子版和文誌, 2: ページ未定. • 宮崎 佑介 (2018) 日本型の市民科学が抱える課題: 乳幼児からの幅広い世代の市民と科学との関連性. 保全生態学研究, 23: 167–176. • 宮崎 佑介 (2016) 市民科学と生物多様性情報データ ベースの関わり. 日本生態学会誌, 66: 237–246.