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二宮金次郎の報徳仕法を活用した全員戦力化を目指す CCoE のあり方

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September 27, 2024
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二宮金次郎の報徳仕法を活用した全員戦力化を目指す CCoE のあり方

Google Cloud主催 CCoE Summit '23 基調講演資料

最近、二宮尊徳の本を読みました。二宮金次郎は貧しい農家の出ながら、 報徳仕法によって、多くの荒れた農村の再生に成功するという偉業を成し遂げています。 この成功は、疲労し、やる気をなくした農民たちが生き生きと働き全員が戦力化する仕組みを築いたことによります。
CCoE と言えば、クラウドの専門家の集団、組織のクラウドのリーダーというイメージですが、 有効なアセットやトレーニングの提供をしても、全員がついてこれるわけではなく、組織全体の底上げがうまくいってないケースもあります。登壇者は複数の組織でクラウドのコミュニティやチームを立ち上げてきましたが、一部は報徳仕法の仕組みを用いていることに気づきました。報徳仕法をさらに活用するとどのような発展があるのかを考えると楽しみです。
今回のセッションでは報徳仕法の考えと、 CCoE への適用について解説します。

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Masayuki Aoyagi

September 27, 2024
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Transcript

  1. 二宮金次郎の生涯 ・5歳の時、川の洪水で家 の田畑を流される。 ・14歳で父を、16歳で母を 亡くす。 ・幼い兄弟を親類に預け、 自らも親類の家で過酷な農 業に従事する。 過酷な幼少時代 生家の再興

    小田原藩家老服部家 の立て直しと五常講 荒廃した桜町の復興 と報徳仕法の拡がり ・20歳で生家の再興に着 手。開墾を続けながら町で 薪売り、草鞋売りを何年も 続け、弟を呼び戻し大地主 へ。 ・小田原藩家老服部家によ ばれ、家の立て直しを行っ た。それが評判を呼び、小 田原藩の立て直しも行った。 ・五常溝とは、藩士が積み 立てを行い、困った人はそ こからお金を借りて利子を つけて返す。積み立てた人 は配当を得る仕組み。 小田原藩と支藩の領地であ る桜町で荒廃した農村の建 て直しを行う。 ・この仕組みを本人や弟子 がその他の農村に広め、最 終的に600以上の農村の復 興に成功する。 ・この仕組みは報徳仕法と 呼ばれる。
  2. 報徳仕法 勤労 積小為大をもって、目標に 向かって小さいこともつつ ましく実行する。 推譲 リーダーが経験の浅い人に、 自らの経験を伝えるのも。 一種の推譲。知見を分かち 合う。

    至誠 何事もつつましく、まじめ に行うこと。 分度 収入に応じた支出を決める こと。節約ではない。 目標(分度)を超える収穫を得た場合は、地 域の共有リソースへの支出、貸付け等、再生 産のために使われた。これも推譲。 二宮金次郎の農村復興の手法や仕組みを弟子たちが後年、報徳仕法としてまとめたもの。次の4 つの原理から成り立っている。
  3. 報徳仕法:0から自分たちで始める。 中途採用者に期待しない。自分たちで0から試行 錯誤しながら1つの簡単なシステムをクラウドで 作り、アセットを整備し社内に共有する。このプ ロセスで得た経験を仕組み化し、社内の別組織に 仕組のみを展開する。 CCoEの立場は組織によって異なるが、全てのメ ンバーが自ら手を動かした経験があるのは理想。 知識が全くない ・有資格者がいない。

    ・クラウドを教えられる人がいない。 学習計画を立て 基礎知識が身に付く ・学習計画を立てる。 ・有資格者が増加 ・ハンズオンの経験社が増加 システム開発を行う ・社内システムなどでクラウド を扱ったシステム開発を経験す る。 アセットを整備する ・設計書やWBSなどをテンプレート化して 他の人が使えるようにしておく。 ・資格取得方法や学習方法を社内に展開す る。 仕組みとアセットを社内に展開 ・これがCCoEの出発点に。 積小為大 推譲 勤勉 アセットへのFeedbackが 組織から集まる ・ 分度 心田開発 至誠
  4. 「プロジェクトリーダーには技術力もな いし、育成も能力的に無理だしリスキリ ングも厳しい、だからカスタマーフェー シングや管理と調整だけやらせよう」と 方針では、CCoEは共有リソースであり、 サーバントSMEとなってしまう。 課題:CCoEがスキルのない多数のプロジェクトをサポート して疲弊 ・「スキルもやる気もあるCCoEメンバー」に「技術 を向上する気持ちもスキルもない人たち」のサポート

    をさせる。 ・CCoEのメンバーの地位が高くない場合、「日々努 力をして技術力をキープしている正直者が損をする」 モデルになるため、人材の流出につながる。 CCoE スキルの低い多数のプロジェ クトをハイパフォーマンスで サポートする。 少数のクラウド人材の価値を 組織内で高めないために、あ えてCoE化して組織内に彼ら のナレッジを伝搬させたり、 各プロジェクトをサポートを させる。 プロジェクトA プロジェクトB プロジェクトC 各プロジェクト CCoEが助けてくれるので、 メンバーはスキルを高める努 力をしない。
  5. CCoEは各プロジェクトのメンバーの代 わりに動かないし、課題に対する答えも 教えない。CCoEレベルのメンバーをど のように育成するか、各部署でどう CCoEを運営するか、という仕組みのみ を教えるである。 ・報徳仕法でも二宮金次郎の農村復興の方法を仕 組み化して、最終的に弟子たちも含めると600 村の復興を行った。 ・CCoEは助けないので、プロジェクト側は自分た

    ちで努力をしなければならない状況に追い込まれ るがそれが自走を生む。桜町で補助金を打ち切っ た方法と同じ。 報徳仕法:CCoEを仕組み化して、組織内に多数のCCoEを 作る CCoE 人材の育成方法や設計方法な どやり方を教えるのみで、プ ロジェクトメンバーの代わり はやらない。 プロジェクトA プロジェクトB プロジェクトC 各プロジェクト CCoEが直接助けてくれない ので、メンバーは自分たちで スキルを高める努力をしなけ ればならない。 新しく できた CCoE プロジェクトD CCoE CCoEの仕組みを 教える。 仕事や人材育成の 方法を教える。 仕事や人材育成の 方法を教える。 仕事や人材育成の 方法を教える。 仕事や人材育成の 方法を教える。 推譲 積小為大 勤勉 至誠
  6. • 報徳仕法の真髄は、仕組みを展開し、作業者にその仕組みを使わせて自立、自助努力を促すこ とである。 • CCoEは自らシステム開発を行い、知見を貯め、アセットを開発し、各プロジェクトが自立でき るよな仕組みを作るのが仕事。 • CCoEは各プロジェクトが抱える課題の解決を積極的に肩代わりしてはならない。CCoEが助け てくれるという甘えを絶つことで各プロジェクトの自立を促す。 •

    CCoEが各プロジェクトの肩代わりをしないゆえに浮いた時間は、各プロジェクトに先んじて新 しい技術でシステム開発をしたり、より高度な技術の習得のために利用する。それを組織内の 新しく立ち上がったCCoEやプロジェクトに展開する。 • 各プロジェクトはプロジェクトで得た知見をCCoEにフィードバックすること。CCoEはそれを 整理したうえで組織に展開すること。 まとめ