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スタートアップ1人目QAエンジニアが QAチームを立ち上げ、“個”からチーム、 そして“組織”...

miisan
February 13, 2025

スタートアップ1人目QAエンジニアが QAチームを立ち上げ、“個”からチーム、 そして“組織”に成長するまで / How to set up QA team at reiwatravel

2025/2/13に開催された「Developers Summit 2025」にセッション登壇した際の発表資料です。
https://event.shoeisha.jp/devsumi/20250213

▼セッションについて
https://event.shoeisha.jp/devsumi/20250213/session/5531

▼概要
昨今、多くのスタートアップ企業で1人目のQAエンジニアが増え、品質文化の重要性がさらに高まっていると感じます。
私は1人目QAエンジニアとして、プロダクトのコアローンチ前に開発組織に加わり、QAチームを立ち上げ、拡大してきました。初期フェーズにおいては、限られたリソースの中で、変化し続ける環境に適応しながら、プロダクトチームにQA文化を根付かせる必要がありました。
このセッションでは、私が経験したスタートアップでのQAチームの立ち上げから組織と呼べるようになるまでの実体験をもとに、個からチーム、そして組織へと成長するまでを振り返ります。
このセッションを通じて、QAエンジニアの方だけでなく、開発組織にQA文化を取り入れたり、新たにQAチームを立ち上げようと奮闘しているEMやVPoE/CTOの方など、組織として品質保証に取り組みたいと考えている方への気づきを提供できることを目指します。ぜひ一緒に、各社における品質活動や品質文化の浸透について考える機会になれば嬉しいです。

miisan

February 13, 2025
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Transcript

  1. © 2025 Reiwa Travel, Inc.
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 ⾃⼰紹介 Background 2022年より令和トラベルで1⼈⽬QA Engineerとして、

    QA組織の⽴ち上げや『NEWT』の品質⽂化を推進。 PjMやEM、技術広報など幅広く携わりながら、現在は QAグループマネージャーと兼務しながらEngineering Officeを新設し、プロダクト開発組織全体のマネジメン トや戦略‧組織‧⽂化作りを担当。 Other スタートアップ企業のQA⽀援や⼥性エンジニアの推進 活動に取り組む。(参考) 趣味は、旅⾏✈とダイビング🤿 令和トラベル miisan
  2. AGENDA
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 1. はじめに 2.

    “個”からはじまる 3. “チーム”になる 4. “組織”になる 5. 振り返り 6. 教訓‧メッセージ 7. おわりに
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 最近、相談‧質問されることが多いこと スタートアップですが、 QAエンジニアを採⽤したいです。 QAエンジニアってどこにいるの?

    QA業務を外注してきましたが、 内製化したいと考えています。 ただ、うまく移⾏できません。。 品質活動を進めていきたいが、 QAチームの⽴ち上げは どう進めていくといいですか? 社内にQAエンジニアはいないです が、QA業務を担当し始めました。 何からしていくといいでしょう。
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 スタートアップですが、 QAエンジニアを採⽤したいです。 QAエンジニアってどこにいるの? QA業務を外注してきましたが、

    内製化したいと考えています。 ただ、うまく移⾏できません。。 品質活動を進めていきたいが、 QAチームの⽴ち上げは どう進めていくといいですか? 社内にQAエンジニアはいないです が、QA業務を担当し始めました。 何からしていくといいでしょう。 最近、相談‧質問されることが多いこと みんな品質保証に対して関⼼が⾼い! めっちゃ嬉しい & いい話すぎる🥺
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 • 令和トラベルのQAエンジニアは1⼈から6⼈へ拡⼤ • プロダクト開発組織は10名から40名ほどに成⻑

    • 品質とスピードを妥協せず、プロダクトは事業成⻑に寄与 最初に結論:わたしたちの現在地
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 当時、⽐較的珍しかった(はず) プロダクトローンチ前の スタートアップでQAチームを⽴ち上げ、 事業グロースに向き合ってきた3年間を振り返ります💁

    ※約3年間をダイジェストで振り返るので、 詳細や個別事象の乗り越え⽅などが気になる⽅は 後ほどお話ししましょう!
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 初期フェーズ(2022/4 ~ 2022/9頃)のハイライト •

    令和トラベル = 旅⾏代理店 ◦ QAエンジニアと⼀緒に働いたことがある⼈は “ほぼ” いなかった ◦ エンジニアと働いたことがある⼈も少数 • プロダクト開発チーム ◦ プロダクト開発10名‧うちQA1名 ▪ QA⽂化ほぼなし󰢄(インターン⽣やPMがプロダクトをさわる) ◦ 「海外ツアー(アプリのみ)」と「基幹システム」の開発がメイン • 状況 ◦ miisan⼊社時、コアローンチまであと数⽇!(4/1⼊社、4/5ローンチ) ◦ 社内はお祭りモード ▪ ↔ 仕様書、リリースサイクル、QAプロセスなどはない😭😭😭
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 コアローンチ後、初めての新規機能リリースの実情 銀⾏振込機能🏦 • リードタイム

    ◦ 約20⽇ • 開発⽣産性 ◦ 1Epicのみ • 品質 ◦ 重⼤インシデント発⽣ ◦ 誤った銀⾏振込⼝座番号が表⽰されて、振り込めないと いうあまりに致命的な問題が発⽣...💣 ⻑ 低 悪
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 • リードタイム ◦ 約20⽇ •

    開発⽣産性 ◦ 1Epicのみ • 品質 ◦ 重⼤インシデント発⽣ ◦ 誤った銀⾏振込⼝座番号が表⽰されて、振り込めないと いうあまりに致命的な問題が発⽣...💣 21
 コアローンチ後、初めての新規機能リリースの実情 銀⾏振込機能🏦 私たちはここからはじまった‧‧‧ はじめから上⼿くいっていたわけでは全くない (まじ、頭抱えた...😨)
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 取り組んだこと • 定量的な⽬標設定と認識のすり合わせ ◦

    ⽬指す品質レベルや基準を定め、優先度を明確にした ◦ 変更失敗率や変更修復時間など • 状況や状態の可視化 ◦ プロジェクトやプロダクトの様⼦をモニタリングできるようにJIRAを導⼊ ◦ 運⽤ルールを作成して、スクラムを回す • 振り返り ◦ KPTなどで具体的なボトルネックを深掘り、改善を繰り返す ◦ インシデント発⽣時のフローやルール、マニュアルなどを設計 ◦ 本番インシデント発⽣時、ポストモーテムを実施。恒久的な仕組みで解決 • プロセスの整理 ◦ リリースサイクルを安定化させるためにリリーストレインを設計‧定着化 ◦ 型化できるものはルールに落とし込み、不要なコミュニケーションや ⾮効率的な作業をなるべく削減
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 結果 半年間で⽬標としてた障害発⽣率も安定化👏 • 障害対応に追われていた⽇々から、新規開発に向き合える状態へ変化

    • いつ何がリリースされるかわからない状況から、2週間に1度の安定リリー スのサイクルが定着 • プロジェクトやチームの健康状態が上がり、リリース件数も継続的に増加 数字から⾒えたもの 1ヶ月あたりのリリース件数 半年間の障害発生件数
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 “個”からはじめる際のポイント ⾃分の“感覚”や“体感”だけでは、⼈を巻き込むことはできない。 状況を明らかにして、優先度の⾼い問題から向き合える環境を作る! 💡

    “現実”を受け⽌めることから始める まなび 変化を作り、変化に寛容な組織を作るには、どうしても成果が必要。 新たな⽂化に⼈を巻き込むために、実⾏⼒を持って結果で⽰すしかない。 💡 クイックウィンを⽬指す 💡 Fail Fast, Learn Fast 1⼈だからこそ、たくさん挑戦できる。 はやくたくさん失敗し、たくさん学び、すぐに⾏動に反映する。
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 第⼆フェーズ(2022/10 ~ 2024/3頃)のハイライト •

    プロダクト開発チーム ◦ プロダクト開発20名‧うちQA2名 ◦ 「海外ツアー(アプリ/ウェブ)」「海外ホテル」「基幹システム」   「旅⾏ガイド」など開発スコープ拡⼤ ◦ OneTeamのような体制からプラットフォームごとの3チーム構成に編成
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 QAエンジニアの採⽤ 課題感 ⼀⼈ですべてを⾒守ることへの限界 •

    背景 ◦ 新規事業として海外ホテル事業がスタート ◦ ⾃⾝の役割として、QAに加え、PjM、EM、PR/広報など幅が広がる
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 QAエンジニアの採⽤ 課題感 既存事業(海外ツアー領域)を任せられるQAエンジニアを採⽤しました! •

    背中を任せられること‧あずけられること • プロダクトの成⻑に喜びを噛み締められるタイプであること • リグレッションに関して知⾒があり、様々なアプローチを持っていること ⼀⼈ですべてを⾒守ることへの限界 • 背景 ◦ 新規事業として海外ホテル事業がスタート ◦ ⾃⾝の役割として、QAに加え、PjM、EM、PR/広報など幅が広がる
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 開発組織のスケールアップ 課題感 パフォーマンスの再現性への懸念 •

    背景 ◦ チームごとの動きが加速し、ばらつきが起きるリスク ◦ メンバーが増えていく中で、オンボーディングが成⽴するか
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 開発組織のスケールアップ 課題感 属⼈化を脱却し、標準化の流れを作りました! •

    ドメインや知⾒の整理、ドキュメント⽂化を確⽴ • テストパターンのマトリクス表や設計書などを標準化 • 「初期品質」にこだわり、チームでアウトプットにコミットする パフォーマンスの再現性への懸念 • 背景 ◦ チームごとの動きが加速し、ばらつきが起きるリスク ◦ メンバーが増えていく中で、オンボーディングが成⽴するか
  18. © 2025 Reiwa Travel, Inc.
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 “チーム化”を⽬指す際のポイント ⼈の変化に左右されない確固たる強い基盤を設計すること。 ⼀定以上のアウトプットを出せる仕組みをフェーズに合わせ作り替える。 💡

    再現性を意識する まなび 名もなきタスクを拾い上げ、「仕事」としてバトンを渡す。 品質保証の価値を証明し続けることで、QA⽂化への投資はつづく。 💡 QAエンジニアの“居場所”を作ること 💡 遠回りすることを受け⼊れる 個⼈の⼒に依存せず、いかにチームで乗り越えていけるかどうかが鍵。 背中を任せ、失敗を許容しながら任せていくことで、チーム⼒が上がる。
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 第三フェーズ(2024/4 ~現在まで)のハイライト • プロダクト開発チーム

    ◦ プロダクト開発40名‧うちQA6名 ◦ 「海外ツアー(アプリ/ウェブ)」「海外/国内ホテル」「基幹システム」 「旅⾏ガイド」など開発スコープ拡⼤ ◦ プラットフォーム軸から少数規模のミッション別チーム構成に編成 ◦ プロダクト開発に集中するチームとそれを⽀援する横断的組織構成へ
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 ⼤胆な基盤変更 取り組んだこと トップラインを⾮連続に成⻑させるための変⾰ •

    リリースサイクルおよびリリース頻度の変更(できたものから即リリース) • 同時並⾏でのQA実現のためのテスト環境整備 • 問題検知できるアラート設計、データモニタリングの徹底 • コンフリクトリスクに備えたbranch管理 • 各チームの初期品質向上施策(DogFoodingの週次開催など) • リリース前、リリース後の品質管理‧モニタリングと傾向考察
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 専⾨性の分解 取り組んだこと ミッションを細分化し、プロダクト開発に集中できる環境へ •

    技術負債となりうる横断技術課題に向き合う ◦ 技術横断チームを作り、対応スケジュールを検討‧解消する • テスト⾃動化への投資 ◦ リグレッション領域拡⼤前にE2E基盤を設計し、安定的かつ定期的な  リリース⽀援できる状態を⽬指す(現在進⾏中) • エンジニアリングカルチャー醸成 ◦ ⽂化作りに向き合う組織を作り、組織拡⼤に負けない⽂化定着を⽬指す
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 結果 • 短期間で組織スケールするも、変更失敗率はほぼ横ばいで維持 •

    システム稼働率99.98%を実現 • リリース頻度は、週に1度からQA完了次第、即時リリース可能になった Backend Frontend 数字から⾒えたもの
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 “組織になる”とは まなび “個⼈”に依存するとそれが組織の限界になる。 ⾃分がいることで与えられる安⼼感と依存は別物。

    「QAがいるから⼤丈夫」という安⼼感と丸投げは違う。 みんなの当たり前基準が上がることで、組織⼒はさらに⾼まっていく。 💡 「私 (あなた)」がいなくても⼤丈夫 💡 1⼈ではできないことが叶っていく 1⼈ではできないことを描ける。1⼈だけでは辿り着けない場所にいける。 QAチームで実現できないことも、QA⽂化があればできることが広がる。 はやくいくなら1⼈で、遠くまでいくならみんなでいこう🤛
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 振り返り • 1⼈から“組織”へ ◦

    QAエンジニア1⼈から6⼈に拡⼤し、“QA組織”と呼べる状態に! ◦ 開発組織そのものに品質意識を浸透させることで、孤軍奮闘状態から 組織全体の価値観や⽂化へ昇華!
  25. © 2025 Reiwa Travel, Inc.
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 振り返り • 品質とスピードはトレード‧オンできる ◦

    リソースも時間もなくても、品質とスピードを諦めない⽅法はある ◦ 「良いものを作る」から、結果的に“はやい” リリース件数は毎⽉増加 スピード 障害発⽣率は減少‧維持 品質
  26. © 2025 Reiwa Travel, Inc.
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 QAエンジニアの解釈を広げよ 「QAエンジニア = テスト」

    「QAエンジニア = 最後の砦」 そんな理解“だけ”をされていませんか? あたり前⽔準を⾼めることで、続く⼈たちは⾃由に動ける。 そして1⼈⽬⼈材は、未来の礎を作る責任がある。 「QAエンジニア」を⾃由に解釈し、実⾏しよう。
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 最⾼の仲間は⾃ら集めよ すべては最⾼の仲間探しから始まる。 何をするにも、仲間がいないとできないことが多い。 ⽬の前の課題を解きながら、未来を描くための仲間を集めましょう。

    旅の始まりは⼀⼈でも、道をつなげ、広げていくには同志が必要です。 集まる⼈が習慣を作り出し、⽂化を⽣み出す。それが組織の「⾊」になる。
  28. © 2025 Reiwa Travel, Inc.
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 おわりに XからでもOK🙆 過去の登壇資料👀 Zennはこちら🙌

    「もっと失敗談を聞かせてほしい」「私の困り事を聞いて!」など待ってます👌 詳細を知りたい⽅は過去の登壇資料も参考にしてください🙏
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 Have an amazing journey.

    Thank you! by @mii________san from 󰐏