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AGI時代の組織変革と人材育成 〜データ主義社会におけるエンジニアの新たな役割〜

AGI時代の組織変革と人材育成 〜データ主義社会におけるエンジニアの新たな役割〜

【勉強会の概要】
AIが急速に進化する現代において、組織とエンジニアの在り方は大きな転換点を迎えています。もしAIが最も合理的な判断をする存在になったとき、私たち人間、特にエンジニアはどのような役割を担うべきでしょうか?

この勉強会では、「データ主義」と「序列主義」という対比を軸に、AIが意思決定者となりつつある時代における組織変革の方向性を探ります。特に「問いを立てる力」がこれからのエンジニアに求められる最重要スキルの一つとして注目し、具体的な行動指針と未来予測を提示します。

【こんな方におすすめ】
・AI時代のエンジニアとしてのキャリアに悩んでいる方
・組織の変革や意思決定プロセスの改善に関心がある方
・データドリブンな組織文化の構築に携わっている方
・若手エンジニアの育成や自己成長に興味がある方

【得られるもの】
・AI時代のエンジニアに求められる新たな役割の理解
・「問いを立てる力」を構成する3層構造の具体的スキル
・データと人間の意思決定の関係性についての新たな視点
・10年後の組織とエンジニアの姿に対する展望

AGI時代に備え、エンジニアとしての価値をどう高めていくか、組織はどう変革すべきか、共に考え、議論する機会にしたいと思います。

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naomine-egawa

May 25, 2025
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Transcript

  1. ? 2/10 問いの提示 「人間」の役割は、何になるのか? もし、組織内で最も合理的な判断をするのがAIだとしたら、 OpenAIの研究(2023) LLMは既に多くの知識労働で人間と同等、または上回 る評価を獲得 DeepMind/Anthropic AGI相当のタスク適応性を持つモデルの実験も進行中

    (Chen et al., 2024) 新たな関係性 これらはもはや「ツール」ではなく「同働者(コワー カー) 」 → この新しいプレゼンスでは: 「私が言った」より「なぜそう言えるか」が問われる 「名前」より「根拠」
  2. 3/10 データ主義とは何か? データドリブン = 情報による常識化 人の相談や体験による気づき 視覚化されたログ、分析、スコア 属人的な経験 ユーザー動向の計量化 「数字を持った群言」としてのデータ

    これは「人の相談を振り返り、議論をフォーマライズするメカニズム」 他人を統治するためではなく、「共通言語」としてのデータ そこで問われるのは: 統治ではなく、説明性 利益性ではなく、経読性
  3. 4/10 序列主義 vs. データ主義 序列主義 データ主義 意思決定基準 地位、年次、経験 根拠、ロジック、ビジュアルプルーフ 説得力

    当事者の人事スキルによる データソースと図解による 発起テーマ 情熱、理心、伝統 現場の不変、インサイト、数値化 影響力の源 経験値、ネットワーク 一貫性、内圧の解消、原因分析 VS データを肯定するとは = それをもとに決定してきた人間のルールを要再考すること
  4. 6/10 AIは意思決定者になり得るか?(最近の実例) NTTグループ 戦略的意思決定の支援にAIを活用した未来シ ナリオ分析を実験中 データ分析から未来予測まで エージェント型AI ゴールベースで自律的に行動し、柔軟に課題 を解決するAIが企業業務に導入されつつある 自律的な判断と行動

    生成AI×AIエージェント 営業提案・顧客対応・マーケティング判断に おいて意思決定支援を行う事例が登場 複合的な判断と提案 AIが実際に意思決定を担い始めている現実が、企業の意思決定構造を再設計する契機となっている 従来の階層型意思決定から、データとAIを活用した分散型・協働型の意思決定へ
  5. 7/10 なぜAIはデータドリブン経営に向いているのか? AIの構造的特性 AIには「年功」が存在しない AIには「立場」が存在しない AIには「感情的な忖度」が存在しない 構造的に根拠と一貫性に基づいた判断を下すのに向いている 「冷たい」のではなく 「公平で、説明可能な意思決定」を実現 階層に縛られないフラット性

    フラットな入力処理 すべての入力をフラットに扱える存在 階層構造 ノイズの最小化 データに基づく判断を妨げる"非合理なノイズ"を最小化 AIは、「序列に忖度しない」という特性ゆえに、 データドリブン経営の実行者として理にかなっている
  6. 8/10 若い世代のキャリアはどうなる? A 序列の中で"がんばる人"になる メリット:安定、守られたルート、上司の期待を満たしやすい デメリット:AIと競合しやすい、構造の外から変えられない 必要なスキル: 上司の期待を察する力 与えられた役割をこなす B

    AIとともに序列なき組織を創る メリット:再現性ある価値創出、異質な視点を活かせる デメリット:成功の定義が曖昧、前例がなくリスクも高い 必要なスキル: AIを協働者として扱う力 構造そのものを設計する力 💡キャリアの変化の本質 新 構造そのものを設計する 旧 与えられた役割をこなす AIは道具ではなく、共に意思決定する"協働者"になる あなたは「階層に入る」準備をするか? それとも「新しい秩序をつくる」構えを持つか?
  7. 9/10 行動のヒント(個人編) 根拠の問い直し 「私が言った」より「なぜそう言えるか」を意識する 自分の判断が「根拠に基づいているか」を問い直す習慣を持つ データ駆動の実験 身近なプロジェクトから少しずつ始める 小さな範囲で「データにもとづく意思決定」の実験をしてみる フラットな組織文化 ネットワーク型

    序列を必要としないチーム運営・ドキュメント文化を試す 階層型 AIパートナーシップ AIと「対話」する AIを"使う"視点だけでなく、"対話する判断パートナー"として捉える AIを「使う」だけ キャリア構築の新たな方程式 能力 構造理解 AGI時代のキャリアには、組織や業界の構造を理解し、再設計できる力が求められます 自分から始める小さな行動が、組織全体の変革につながります。 日々の判断や対話の中で、「データと根拠」を重視する姿勢を示しましょう。
  8. 10/10 10年後の未来像(予想) 2034年 AIパートナーの常設化 企業内に"AIパートナー"が常設される意思決定支援チームが標準と なる 現在 2034 人間とAIの 協働意思決定

    人間のみの 意思決定 説明責任のAI代行 意思決定の根拠を AIが説明してくれる 客観的で詳細なデータ分析に基づく根拠の説明がAIによって自動生成される 人が説明できないと通らない 組織設計の変革 対話と分散判断 循環型意思決定 階層型組織 トップダウン決定 キャリアの優位性シフト どんな問いを立てられるか 正しい問いを設定する能力が、AIが解決策を見つける時代の最重要スキルに 何ができるか AGI時代のキャリアとは どんな問いを共にするか の選択へと変化します。未来の組織では、AIとの協働を前提にした 新しい問いの設定者が最も価値ある存在になるでしょう。 誰の下で働くか
  9. 11/14 なぜ"問い"がカギになるのか? AGI時代、「答え」はAIが出せる AIは膨大なデータから最適解を算出できる 「答え」のコモディティ化が進行中 VS 差が出るのは「何を問うか」 正しい問いを立てられるかどうかが、成果の質を左右 する 「何を問うか」=方向性の設定

    「どの視点で見るか」=価値の定義 だからこそ、「問いを立てられる人」が組織を動かす データをどう読むか? なぜその課題に取り組むのか? 次に、"良い問い"を立てるスキルについて考える
  10. 11/14 問いの質 = 価値観 × 文脈の解像度 問いの質 = 価値観 ×

    文脈の解像度 Question Quality Value System Contextual Resolution 「問い」の本質 質問の形式ではなく、その「問いの立て方」こそが 創造的思考と解決策 を導き出す鍵となります 「問い」とは、単なる疑問文ではない • 正しい問いとは、「何を問うべきかを定める視点」そのもの • 良い問いを生むには 何に価値を感じているか 価値観 何を前提に考えているか 文脈 価値観と文脈理解の掛け合わせが、 問いの質を決定づけます
  11. 12/14 AIには問いを立てる"価値観"がない AIにできること 既存のパターンをもとに問いを生成 学習データからの抽出や変換 設定された目標に沿った質問を作成 人間が定めた方向性に基づく 「なぜそれを問うのか?」の価値判断 根本的な目的や意義の独自決定 人間に残る本質的な役割

    価値観にもとづいて問いを立てる存在 倫理的判断 本質的価値 情緒的意義 人間に残る本質的な役割 AIが提案する解決策や生成する質問に対して、 「それはなぜ重要なのか?」「誰のため に、何のために問うべきか?」 という根本的な価値判断を行うことがますます重要になり ます。
  12. 13/15 問いを生むスキルの構造(3階層モデル) 3 価値観との接続 自分/チーム/社会にとって「何が 大事か」 どんな未来に向かうべきか、という ビジョン ※現状に違和感を持っていない人に違和感 を届ける能力も含む

    例 属人的で最適化されない運用に再構築の視点 を示す 2 構造理解 背景の仕組みや前提を見抜く 今問うべき理由を論理化する 例 慣習に埋もれた非効率の仕組みに気づく 1 観察力 違和感をキャッチする 他者との視点のズレに敏感になる 例 会議中、誰も問題視していない点に着目 観察力の重要性 気づきの入り口となる観察は、AI時代でも人間ならでは の「違和感」や「視点の多様性」がベースとなります。 会議中、誰も問題視していない点に着目できる 構造理解の必要性 事象の背後にある構造や前提を理解することで、本質的 な問いへと深めることができます。「なぜ」を問う力が AIと差別化されます。 慣習に埋もれた非効率の仕組みに気づく視点 価値観との接続 個人・組織・社会にとって「何が意味があるのか」とい う判断は、AIには困難な、人間固有の領域です。価値観 が問いの方向性を決定づけます。 属人的で最適化されない運用に再構築の視点を示す 3層構造の統合 この3層が揃って初めて、 「AI時代でも意味のある問い」を立てられる
  13. 15/15 まとめの問い 問いの起源を探る あなたの問いは、どんな価値観から生まれていますか? 個人的な成長? チームの発展? 社会的な変革? 経済的な成功? 何を大切にしているか? 問いの影響を考える

    その問いは、組織や社会に何をもたらそうとしていますか? どんな変化を創りたいか? 何を解決し、何を残すべきか? その先にある未来像は? 明日からのアクション 明日からの会議で、どんな問いを投げかけますか? 根本原因を問う 目的を明確にする 新たな選択肢を示す AGI時代のリーダーとは 「問いの質」を磨き、「問いで組織を導く」 存在である。