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正解のない対話をどう評価するか - AIコーチング1年弱のLLMOps

正解のない対話をどう評価するか - AIコーチング1年弱のLLMOps

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Ryosuke Fukazawa

September 29, 2026

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Transcript

  1. 自己紹介 mentoは、コーチングの知見をAIに載せた「マネジメントAI」を提供しています 深澤 Yahoo → atama plus → LayerX →

    mento(2025年9月〜) 「機械学習技術の社会実装」を一貫テーマに、情報検索・推薦・自然言語処理・機械学習に取り組んできた ソフトウェアエンジニア。キャリアの半分はエンジニアリングマネジメントにも従事。 現在は mento で、AIコーチングプロダクトのLLMシステム設計と品質評価基盤づくりを担う。 70,000 時間以上 10,000 件 プロコーチによる法人向けコーチングの知見 AIコーチングのセッション(累計) 上司ではなく、 AIコーチがメンバーの内省に伴走する ※累計コーチング時間/AIコーチングの累計セッション数(株式会社mento調べ) 02
  2. 今日の評価対象はこれです AIコーチは答えを出さず、問いを投げて本人が言葉にするのを待ちます この対話に「正解」はあるで AIコーチ 今日はどんなことを考えてみたいですか? しょうか メンバー|ここは我々が決められない チームの定例が報告だけで終わっていて、なんとかしたいです。 ユーザーが何を言うかは、我々が決められま せん。その発言次第で、以後の流れはすべて

    AIコーチ 変わります。 「なんとかしたい」と感じるのは、どんな瞬間ですか? 2ターン目以降は、コントローラブルではない 自分が話し終えたあと、誰も何も言わないときですね。 そのとき、ご自身はどんな気持ちになっていますか? この性質が、今日の話すべての前提です。 ……正直、反対されずに済んでほっとしているかもしれません。 ※実際の対話を匿名化・短縮して掲載 03
  3. 1. 問題設定 コーチングの品質は、毎回同じ形では成立しません 01 02 03 成果はその場で観測できない 良し悪しが文脈に左右される 「神回」は毎回起きるものではな 内省や行動変容は、数週間後に出る

    同じ問いが、ある人には効き、ある人には 響かない い プロコーチ談 ひとつの数字を追ってPDCAを回す発想が、そのままでは通用しない領域です 05
  4. 1. 問題設定 初期のプロダクトは、対話として成立していませんでした 初期シナリオ( KPTベース) 社内の声 Q1.Keep:続けたいことは? 「Google Formのアンケートみたい」 Q2.Problem:課題は?

    「対話として成立していない」 でも、何がダメかを誰も言語化できていなかった Q3.Try:次に試すことは? 今日の順序 品質を言語化する → 評価器に落とす → 運用に組み込む 06
  5. 1 問題設定 2 APIを呼ぶだけでも、 MLOps は消えない 2 APIを呼ぶだけでも、 MLOpsは消えない 3

    評価の作り分け 4 本番1年弱で起きたこと 5 まとめ:持ち帰ってほしいこと 07
  6. 2. APIを呼ぶだけでも、MLOpsは消えない モデルを自前で持たなくても、MLOpsで必要だったことはほぼ残ります 従来のMLOpsで必要だったこと LLM API利用では 残るか モデル側のアップデート、ユーザーの使い方の変化でも起きる 残る サービング時のシステムメトリクス

    レイテンシ・エラー率に、トークンコストが加わる 残る 再現可能なオフライン評価と、自信を持ったリ パラメータ・バイナリ・データ → プロンプト・モデル名・評価データセット・評価 リース判断 器のプロンプト 検証時と本番稼働後の振る舞いのズレ(ドリフト) 残る 今日の中心はここ 08
  7. 2. APIを呼ぶだけでも、MLOpsは消えない LLMOpsの活動を3つに分けると、今日の話は評価の層です Layer 3 Layer 3 Improvement プロンプト・コンテクスト管理/バージョン管理/デプロイ 今日は扱わない

    Layer 2 今日の中心。 有限なデータセッ Layer 2 Evaluation トに落としづらい対話を、どう評 LLM-as-a-Judge/人間評価/ルーブリック/タスク別評価パイプライン 価するか 評価の材料 Layer 1 Layer 1 Observability トレーシング/ロギング/メタデータ管理 Langfuseなどトレーシングの プラッ トフォーム導入で近道 ※発表者による整理 09
  8. 3. 評価の作り分け 神回を基準にせず、ベースラインを毎回守ることを「まず品質」と定義しました 層 エクセレンス 例 判定方式 本人が気づいていなかった前提を言語化できた 加点要素としての boolean判定

    本人の言葉を待つ/要約して返す/次の行動に接続する ルーブリックによる段階評価 際立った価値が出る回 ベースライン 毎回一定水準を満たす セーフティライン 複数のboolean判定。1つでもNGな 評価者として振る舞う/決めつける/危うい発言を見逃す ら不合格 致命的なNGを踏まない 進めた順序 定義を言語化 → 専門家に叩き台を見せる → データで検証 → プロンプト調整 11
  9. 3. 評価の作り分け 対話は制御しきれませんが、有限なデータセットに落とせる場所は切り出せます 順に進むステップ 自己回帰ループ 判定器=有限なデータセットに落とせる コーチ発話の生成=有限なデータセットに落とせない 自己回帰ループ チェックイン 開始

    調子・今週の達成度 話題設定 出来事・テーマ・ ゴールのイメージ コーチ発話を生成 ユーザーが返答 会話全体を入力に 判定器 :別のLLMがユーザーの返答を分 類し、次の行き先を決める。入力は返答、 まとめに入る 判定器 出力は数個のラベル 判定器 どちらでもない クロージング 次の一歩・まとめ 今すぐ終了 今すぐ終了 終了 終了 12
  10. 3. 評価の作り分け|判定できる部分 判定できるタスクは、従来のオフライン評価をそのまま使います ゴールドデータの作り方 判定器の構成 入力 直近の対話 出力 判定器 シードとなる実セッション

    進む/進まない LLMで合成データを生成(境界条件を狙う) 境界条件を押さえられれば足りる。 件数は多くなくていい(制御 ロジックごとに数百件規模) LLMによる評価を複数回 人がゼロから全件ラベルを付けるのではなく、 LLMの評価が揺 れた場所に人の目を集中 させる 人 評価が揺れたものだけ再チェック 想定外の制御エラー → データセット拡充 → 再評価/新モデル 登場 → 精度とレイテンシを即比較 ゴールドデータ 13
  11. 3. 評価の作り分け|有限なデータセットに落としづらい部分 AIユーザーとのシミュレーションで、変更前後を相対比較します config.yaml LLM-as-a-Judge スコア ペルソナ 同じペルソナ群で前後比較 固定/属性から生成/レッドチーム シナリオ

    AIユーザー ⇄ AIコーチ 本番のセッション進行ロジック モックなし。本番のコードを通す 評価観点 対話ログ → ビューアで目検 数字に出ない違和感を拾う 3層のルーブリック 再現性 設定ハッシュで結果をキャッシュ。評価プロンプトだけ変えたときは対話を再利用 スコアは絶対評価ではなく、変更前後の相対比較に使う 15
  12. 4. 本番1年弱で起きたこと Judgeの下地採点を、そのままプロコーチとの週次レビューにつなげています STEP 1 STEP 2 STEP 3 STEP

    4 前週から約 10件を選ぶ キューに追加 コーチとレビュー 改善案を協議 Judgeのスコアを下地に。セーフ アノテーションキューへ プロコーチと対話を一緒に読む シナリオ・プロンプト側の打ち手 ティ不合格/低スコア/好例 仕分けは Judgeが済ませている 最初から一番価値のある問いに入れる プロコーチに、ゼロから良し悪しを探してもらう必要がない 「AIはこう返したけど、プロならどう返しますか」 大量のデータの中から伸び代を効率よく見つけ、ドメインエキスパートの知見を引き出す 18
  13. 4. 本番1年弱で起きたこと|見落としていたもの AI側だけを評価すると、ユーザーの体験を見誤ります 深い 最終的な価値判断が難しいから、コントロールしやすい「AIの振る舞い」に評価を寄 せてきた。 その結果、この象限を見落とした 良い体験 ユーザーの関 与

    対策1 ユーザー満足度そのものを LLMで推定 評価ボタンでは、全セッションのフィードバックは取れない AIは頑張っている ユーザーは浅い 対策2 入力文字数・継続時間・ターン数を並べる 浅い 「何がどこで起きているか」を客観的に、誰にでも伝えられる 悪い AIコーチの振る舞い 良い 19
  14. 4. 本番1年弱で起きたこと 基本品質のガードレールが自動化され、開発が速くなりました 最初の数周は自動で回る シミュレーション その後 → Judge → 前後比較

    ↻ 人が判断する 新シナリオを足すとき、「壊していないか」を気にせずに始められる セッション後のバッチ処理やセッション中の抽出処理も、独立した定義と評価を持たせて相互に影響しないようにしている 20
  15. まとめ 持ち帰ってほしいことは3つです 01 判定できる部分は切り出して、従来のオフライン評価で固める ゴールドデータを作れば、MLOpsの技術がそのまま効く 02 有限なデータセットを用意しづらい部分は、 シミュレーション × LLM-as-a-Judge

    × 人の目で見 る Judgeは仮説検証の道具。目的関数にはしない 03 AI側の評価だけでは、体験を見誤る ユーザー側の状態の推定と、素朴な統計値を最初に置く 22