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GitHub Copilot 訴訟で学ぶ、コードと著作権の基礎

GitHub Copilot 訴訟で学ぶ、コードと著作権の基礎

本資料は、GitHub Copilot訴訟を手がかりに、AIコーディングツールの普及によって顕在化したコードと著作権の基本論点を整理するものである。プログラムが著作物として保護される範囲、AI生成コードに著作権が発生するために必要な人間の創作的寄与、日本の著作権法30条の4におけるAI学習目的の利用、OSSライセンス表示や権利管理情報の除去に関する問題を概観する。あわせて、コードを公開する側・AIでコードを書かせる側の双方が注意すべき実務上のポイントとして、ライセンス表示の明確化、AI生成コードのレビュー、ライセンスチェック、人間による実質的な加筆修正の重要性を示している。

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SALT2

May 18, 2026

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Transcript

  1. 01 はじめに AIコーディングツールの急速な普及が、コードと著作権の問題を顕在化させた 2021年6月にGitHub Copilotのプレビュー版が登場し、わずか1年後の2022年6月に有料化。 その後もClaude Code、Codex、Cursorなどが次々と登場し、AIコーディングツールはエンジニアの日常に不可欠なものとなった。 しかしその裏で、コードの著作権をめぐる法的な疑問が浮上している。 疑問 1:学習データの問題

    Copilotは公開リポジトリのコードを 学習データに使用している。 自分がGitHubに公開したコードもAI 学習に使われている可能性が高い。 これはライセンス違反にならないの か? 疑問 2:出力コードのリスク Copilotが提案するコードは学習デー タに含まれるOSSコードに類似して いる場合がある。 ライセンス表示なしでそのまま本番 に投入してよいのか? 疑問 3:著作権の帰属 AIが生成したコードの著作権は誰の ものか? 開発者か、AIサービス提供者か、そ れとも誰のものでもないのか? © 2026 Boost Consulting, Inc. 2
  2. 02 GitHub Copilot訴訟 有料化からわずか5ヶ月後に集団訴訟。OSSライセンス表示の無断除去が最大の争 点 2021年6月 Copilot プレビュー版公開 2022年6月 個人向け有料版リリース

    2022年11月 集団訴訟を提起 OSSライセンスの義務 ・MITやGPLなどのOSSライセンス では「著作者表示の保持」と「ライ センス文の保持」が利用条件として 義務付けられている ・これはオープンソースの根幹をな すルールであり、違反すればライセ ンス上の権利を失う Copilotの問題点 ・Copilotはこれらのライセンス表示 を一切付与せずにコードを出力。 ・学習データに含まれるOSSコード の著作者名・著作権表示・ライセン ス文がすべて除去された状態で提案 されていた 訴訟の当事者と現状 ・原告はGitHubでOSSを公開してい た開発者グループ ・被告はGitHub・Microsoft・OpenAI の3社 ・訴訟は現在も継続中であり、判決 はまだ出ていない ポイント:この訴訟は「AIがコードを学習すること」自体ではなく、「出力時にライセンス表示を除去したこと」が争点。 © 2026 Boost Consulting, Inc. 3
  3. 4 4 03 コードの著作権の基本 コードを書いた瞬間に著作権が自動発生。保護されるのは「創作的な表現」のみ 1 プログラムは著作物として保護される 著作権法上、プログラムは保護対象の著作物に含まれる。 2 登録不要で自動発生する権利

    コードを書いた瞬間に著作権が自動的に発生する。特許のような登録手続きは不要。 3 保護されるのは「表現」であって「アイデア」ではない 著作権が守るのは「創作的な表現」のみ。アルゴリズムや機能のアイデア自体は著作権の保護対象外。 著作権で保護される 著作権で保護されない 具体的なコードの記述・表現 アルゴリズムのアイデア・ロジック 独自の構造・設計上の表現 プログラミング言語の構文・規約 創作的なコメント・ドキュメント 一般的な処理パターン・定石 © 2026 Boost Consulting, Inc.
  4. 5 5 04 AI生成コードの著作権 著作権発生のカギは「人間の創作的寄与」 AIだけが書いたコードには著作権が発生しない 著作権法上の著作物には人間の創作的寄与が必要。 判断要素として、プロンプトの分量・内容、生成の試行回数、複数生成物からの選択、AI生成物への加筆・修正の有無や程度がある。 創作的寄与が乏しい例 「Pythonで素数判定の関数を書いて

    」と一文のプロンプトで生成したコ ード。 →著作物と認められない可能性が高 い。 著作物となる余地あり 詳細な仕様や設計思想を繰り返し指 示して生成したコード。 →AI利用者の著作物と評価される余 地がある。 最も確実な方法 AI生成コードを大幅に書き直した場 合。書き直した人の著作物となる。 →人間による実質的な加筆修正が最 も確実。 重要:プロンプトだけで著作物性を確保するのは現実には難しく、人間による実質的な加筆修正が最も確実な方法となる。 © 2026 Boost Consulting, Inc. 5
  5. 6 6 05 日本独自の規定 著作権法30条の4によりAI学習目的でのコード利用は原則として著作権侵害にならない 著作権法30条の4:著作物を「思想や感情を享受しない目的」で使う場合、必要な範囲で自由に使ってよい。 「享受」とは ・コードを読んで動作を理解すること。 ・一方で、「機械学習の素材としてデータ処理する」こ とは享受に該当しない。

    ・AI学習は30条の4の「情報解析」に当たると一般に解 されている。 ただし注意点 ・ライセンスに「AI学習禁止」と記載されている場合、 著作権法上は問題なくても、契約違反を理由とした損害 賠償請求の余地は残る。 ・法律と契約は別の話。 結論:日本ではライセンス条件にかかわらず、他人のコードをAI学習に使うこと自体は原則として著作権侵害にならない © 2026 Boost Consulting, Inc.
  6. 8 8 07 権利管理情報の除去 学習は30条の4で許されても、著作権表示やライセンス文の除去は別途みなし侵害 になりうる 著作権法113条8項2号により、著作者名・ライセンス情報などの「権利管理情報」を故意に除去・改変することは 著作権侵害とみなされる。 二段構えの構造 第1層:学習段階

    学習段階での複製は30条の4で原則許される。 第2層:権利管理情報 しかしその過程で著作権表示やライセンス文を除去すれば 、別途みなし侵害になりうる。 未決着の論点:AI学習のための除去が「やむを得ない除去」に含まれるかはまだ決着がついていない。 公開する側の自衛策:コードに著作者名・著作権表示・ライセンス文を徹底して埋め込んでおくことが現状ほぼ唯一の自衛策。 © 2026 Boost Consulting, Inc. 8
  7. 08 日本での想定シナリオ 日本では「コードを学習に使ったこと」ではなく「ライセンス表示をはがしたこと 」が争点になる 米国ではOSSライセンス違反を根拠に著作権侵害が主張されている。しかし日本では30条の4により学習段階の複製は原則合法となるため、同 じ訴訟を日本で起こしても争点の構造が大きく変わる。 米国での訴訟 OSSライセンス違反を主張 日本法に置き換え 30条の4で学習は合法

    争点がシフト 113条の情報除去のみ 30条の4:学習は原則合法 「思想や感情を享受しない目的」での利用 は自由。AI学習は「情報解析」に該当し、 ライセンス条件にかかわらず他人のコード をAI学習に使うこと自体は原則として著作 権侵害にならない。 113条:ライセンス表示除去が問題 権利管理情報(著作者名・著作権表示・ラ イセンス文)を故意に除去・改変する行為 は「みなし侵害」となる。Copilotがライセ ンス表示なしで出力していた点はこの規定 に抵触する可能性がある。 未決着:「やむを得ない除去」 113条には「やむを得ない除去」の例外が ある。AI学習過程での除去がこれに含まれ るかは未決着。平嶋教授は「簡単には認め られないのではないか」と慎重な見方を示 している。 結論:日本で同様の訴訟が起きた場合、著作権侵害としては問えず、争点は113条の「権利管理情報の除去」に一本化される。コードを学習に 使ったことではなく、ライセンス表示をはがしたことが中心的な争点になる。 © 2026 Boost Consulting, Inc. 9
  8. 10 10 09 エンジニアへのチェックリスト 「書く」「公開する」「AIに渡す」「AIから受け取る」「使う」 各場面で立ち止まる習慣が重要 コードを公開する側 AIでコードを書かせる側 AI学習に使われること自体は30条の4により原則として止められない AI生成コードをそのまま使うと、学習データに含まれていれば依拠性

    ありと推認されうる 著作者名・著作権表示・ライセンス文をコードに徹底して埋め込むこ とが自衛策 公開・本番投入前にレビューとライセンスチェッカーを通す 除去された場合、113条として争える余地がある 著作権を自分のものにしたいなら、人間による実質的な加筆修正が必 要 ライセンスに「AI学習禁止」と書くことは契約違反としての主張余地 は残る 具体的事案では必ず弁護士・弁理士などの専門家に相談 共通理解:コードを書いた瞬間から法的な意味がある。著作権は登録不要で自動発生する権利。各場面で立ち止まる習慣が、後々の大きなト ラブルを防ぐ。 © 2026 Boost Consulting, Inc. 10