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GNN 入門から最前線まで

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GNN 入門から最前線まで

本資料は、グラフ構造データを扱う深層学習モデルであるGNNについて、ノードとエッジによる関係性データの表現、メッセージパッシング、GCNの基本構造と分類タスクでの有効性、GraphSAGEやGATやMPNNによるモデル発展、Graph TransformerおよびGNNとLLMの融合といった近年の研究動向、さらに創薬、推薦システム、交通予測、金融不正検知などの産業応用までを、基礎から実務での活用イメージまで段階的に整理した入門資料です。

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SALT2

May 18, 2026

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Transcript

  1. 2 2 © 2026 Boost Consulting, Inc. 概要 連載記事「GNN入門と最前線」全5回 回

    概要 トピック 第1回 グラフ基礎とGCN グラフとは / メッセージパッシング / GCN の仕組み 第2回 アーキテクチャ進化 GraphSAGE / GAT / MPNN 第3回 GCN 実装 PyTorch / PyG による GCN 実装 第4回 GNNの最前線 Graph Transformer / GNN × LLM 融合 第5回 産業応用 創薬 / 推薦 / 交通 / 金融 / 知識グラフ
  2. 3 3 © 2026 Boost Consulting, Inc. GNN基礎 GNN(Graph Neural

    Network)とは ノード(点)とエッジ(線)で表される関係性データを扱う深層学習モデル GNN グラフ(関係性データ) SNS、分子、引用ネットワーク… CNN 画像(格子データ) Transformer テキスト(系列データ) GNN への入力 ノード特徴量 各ノードが持つ属性 例:論文の単語ベクトル、ユーザーのプロフィール グラフ構造 ノード間の接続関係(隣接行列) 例:誰が誰をフォローしているか GNN で解きたいタスク ノード分類 各ノードのカテゴリを予測 例:論文の研究分野を分類 リンク予測 未知のエッジを予測 例:友達になりそうなユーザーを推薦 グラフ分類 グラフ全体の性質を判定 例:分子の毒性の有無を予測 ー DeepMind による AlphaFold2 のタンパク質構造予測(2024,ノーベル化学賞)にも活用 グラフ構造を活かしてノード特徴量をタスクに適した表現へ変換する写像を学習
  3. 4 4 © 2026 Boost Consulting, Inc. GNN基礎 グラフ=点(ノード)と線(エッジ)で関係を表現するデータ構造 SNS

    ユーザー間のフォロー関係 ノード: ユーザー エッジ: フォロー 分子 原子間の化学結合 ノード: 原子 エッジ: 結合 引用ネットワーク 論文間の引用関係 ノード: 論文 エッジ: 引用 現実世界におけるグラフ構造データの例
  4. 5 5 © 2026 Boost Consulting, Inc. GNN基礎 CNN や

    Transformer では扱えないグラフ特有の3つの性質 CNN Transformer GNN データ 画像(格子) 系列(1次元) グラフ サイズ 固定 可変 可変 順序 ピクセル位置 時系列 なし 近傍 3×3 固定 直前/直後 ノードごとに異なる イメージ グラフ特有の3性質——だから専用モデルが必要 ① 順序不定 ノードに「1番目, 2番目」がなく 並び順に依存できない ② 可変近傍 隣人が2人のノードと 10万人のノードが混在 ③ 方向なし 画像のような上下左右がなく 空間フィルタが定義できない
  5. 6 6 © 2026 Boost Consulting, Inc. GNN基礎 メッセージパッシング——GNNの核心 隣人から情報を集めて自分を更新——繰り返すほど遠くまで届く

    各ノードは、隣のノードから情報を集めて自分を更新する = メッセージパッシング(Message Passing) これを K 回繰り返すと… 1回目(1ホップ) 直接の隣人から情報を収集 2回目(2ホップ) 隣人の隣人まで情報が伝播 K回目(Kホップ) グラフ全体に情報が行き渡る 典型的な GNN は 2~3 層が主流——深すぎると全ノードの表現が均一化する問題がある(後述)
  6. 7 7 © 2026 Boost Consulting, Inc. GCNの仕組み GCN —

    メッセージパッシングを数式で実現する GCN(Graph Convolutional Network): Kipf & Welling (ICLR 2017) が提案した、隣接ノードの特徴量 を集約・更新するグラフ畳み込みの基本モデル GCN の伝播式 H(l+1)= σ( D̃-1/2 Ã D̃-1/2 · H(l) · W(l) ) グラフ構造で隣人の特徴量を集約し、重み行列で変換して次の層へ渡す——これを各層で繰り返す 記号 意味 学習で変わるか H(l) l 層目のノード特徴量行列。各行が1ノードの特徴ベクトル 層ごとに更新される W(l) l 層目の重み行列。特徴量を変換するパラメータ 学習で更新される(唯一の学習対象) Ã = A + I 自己ループ付き隣接行列。グラフ構造を表す 固定 D̃⁻½ Ã D̃⁻½ 正規化された集約行列(まとめて Â と書く) 固定 σ 活性化関数(ReLU など) 固定
  7. 8 8 © 2026 Boost Consulting, Inc. GCNの仕組み 例題︓Cora 論文引用ネットワークでノード分類に挑む

    2,708本の機械学習論文を、引用関係とテキスト情報を使って7分野に自動分類——ラベルはわずか5% 入力①: 論文テキスト(X) 各論文の本文をBag-of-Wordsで数値化 → 1,433次元のベクトル(単語の有無) → 2,708本 × 1,433次元の行列 X + 入力②: 引用ネットワーク(A) 論文間の引用関係を隣接行列 A で表現 → 5,429本のエッジ(引用リンク) → 2,708 × 2,708 の隣接行列 A → GCN 2層 → 出力: 7分野に分類(Y) 各論文に対して7クラスの確率を出力 → 最も高い確率の分野に分類 → NL, GA, NN, PM, RL, RL, Theory 入力データの構成 ノード(論文) 2,708本のML論文 エッジ(引用) 5,429本の引用リンク 特徴量(テキスト) 1,433次元 BoW ベクトル ラベル(正解) 7分野 × 140件のみ付与 制約: ラベル付きは 140件 / 2,708件(わずか5%)——残り95%はラベルなし この少数のラベルと引用ネットワークの構造だけで、全論文を正しく分類できるか?
  8. 9 9 © 2026 Boost Consulting, Inc. GCNの仕組み 2層GCN——漏斗のように次元を絞り、7クラスの確率へ変換 学習されるのは各層の重み行列

    W のみ(合計約 23,000 パラメータ) X 1,433次元 Conv1 + ReLU + Dropout H⁽¹⁾ 16次元 Conv2 + Softmax Z 7クラス確率 1層目 H⁽¹⁾ = ReLU( Â · X · W⁽⁰⁾ ) 1,433次元 → 16次元 2層目 Z = Softmax( Â · H⁽¹⁾ · W⁽¹⁾ ) 16次元 → 7クラス確率 各 Conv 層の中で行われる3ステップ ① 線形変換 各ノードの特徴量に重み行列 W を掛ける 1層目: W ∈ R¹⁴³³ˣ¹⁶ 2層目: W ∈ R¹⁶ˣ⁷ ② 近傍集約 自分自身と引用先の論文の特徴量を次数で正 規化した加重平均で混ぜ合わせる = メッセージパッシングそのもの ③ 活性化 + Dropout ReLU で非線形性を入れ、Dropout で過学習 を抑える 最終層は Softmax で確率化
  9. 10 10 © 2026 Boost Consulting, Inc. GCNの仕組み 5%のラベルで81%の精度——グラフ構造が学習を大きく助ける テキストだけの手法に比べ

    +22pt——引用関係の情報がこれほど効く 手法比較 59% MLP テキストのみ(グラフ構造なし) 67% DeepWalk グラフ構造のみ(テキストなし) 81% GCN テキスト + グラフ構造(両方を活用) なぜグラフ構造がこれほど効くのか 損失計算はラベル付き140ノードのみで行う しかしメッセージパッシングはグラフ全体で動く → ラベルなし2,568ノードも表現学習に貢献 「同じ分野の論文は互いに引用し合う」という同類性がGCNの正則化として機能 GCN の本質的な強み: 少ない教師信号でも、関係性の情報(グラフ構造)があれば高い汎化性能が得られる
  10. 11 11 © 2026 Boost Consulting, Inc. 進化と最前線 GCN は強力な出発点だが、3つの限界が次の進化を生んだ

    これらの課題を解決する形で GraphSAGE・GAT・MPNN が登場し、GNN の表現力と汎用性を大きく広げた 課題① 新規ノード非対応 学習時にグラフ全体が必要 H(l+1) = σ( Â · H(l) · W(l) ) Â は全ノードの隣接行列 新ノード追加で Â が変わり再計算が必要 Transductive 学習の限界 SNS等で日々増えるノードに対応できない ↓ GraphSAGE が解決 課題② 隣人を平等扱い 全隣人に同じ重みで集約 重み = 1/√(dv · du ) 重要な引用も無関係な引用も同じ扱い 重要度を区別できない ノイズの多い隣人に引きずられ精度が下がる ↓ GAT が解決 課題③ 統一的視点の欠如 3つのモデルが別々に登場 GCN / GraphSAGE / GAT それぞれ独自の数式で定義 共通言語がない 手法間の比較や組合せが体系的にできない ↓ MPNN が統一
  11. 12 12 © 2026 Boost Consulting, Inc. 進化と最前線 GraphSAGE —

    近傍サンプリングで未知ノードに対応 Hamilton et al. (NeurIPS 2017): ノード固有の埋め込みではなく「近傍から作る関数」を学ぶ帰納的学習 GCN との違い——グラフ全体 vs 局所近傍 GCN: グラフ全体の Â に依存 H(l+1) = σ( Â · H(l) · W(l) ) Â はグラフ全体の隣接行列 → 新ノード追加で再計算が必要 GraphSAGE: 局所的な近傍のみに依存 hv (k) = σ( W(k) · [ hv (k-1) ǁ AGG(N(v)) ] ) Â が登場しない — 近傍 N(v) さえわかれば即座に対応 「埋め込みを覚える」vs「関数を学ぶ」 DeepWalk 方式(覚える) 各ノードに専用ベクトルを割り当て数値自体を学習 辞書の丸暗記 → 未知ノードは扱えない GraphSAGE 方式(関数を学ぶ) 「近傍から埋め込みを計算するルール(W)」を学習 パターンの見つけ方を学ぶ → 新ノードにも即適用 新規ノードへの即座の対応 ノード特徴量の活用 パラメータ効率の良さ 別グラフへの汎化可能性 → 大規模産業応用を実現 PinSage Pinterest — 30億ノード規模の推薦 GraphSAGEの利点
  12. 13 13 © 2026 Boost Consulting, Inc. 進化と最前線 GAT —

    Attention で隣人の重要度を学習 Veličković et al. (ICLR 2018): Transformer で成功した Attention 機構をグラフに適用——「どの隣人にどれ だけ注目するか」をデータから学習 GCN との違い——固定重み vs 学習される重み GCN: 次数による固定重み hv = σ( Σ 1/√(dv ·du ) · hu · W ) 重みはグラフ構造(次数)で固定 → どの隣人も同じ扱い GAT: Attention による学習重み hv = σ( Σ αvu · hu · W ) 重み αvu をデータから学習 → 重要な隣人に集中できる ノイズの多い隣人の影響を抑制 重要な関係に集中して精度向上 Multi-head で多角的に注目 → タンパク質間相互作用予測(PPI) F1: 0.61 → 0.97 Attention により大幅な精度改善 GAT の利点
  13. 14 14 © 2026 Boost Consulting, Inc. 進化と最前線 MPNN —

    GNN を3つの関数で統一記述する枠組み Gilmer et al. (ICML 2017): GCN・GraphSAGE・GAT はすべて同じ3ステップで記述できる MPNN の統一フレームワーク ① mvu = M( hv , hu , evu ) ② mv = Σ{u∈N(v)} mvu ③ hv' = U( hv , mv ) 隣人が送る情報を作る 受け取った情報をまとめる 自身の表現を更新する M・Σ・U の「差し替え」で各モデルになる モデル ① M(メッセージ) ② Σ(集約) ③ U(更新) GCN m_vu = h_u 特徴量をそのまま送信 Σ 1/√(d_v·d_u)·m_vu 次数で正規化した加重平均 σ( W · m_v ) 線形変換 + ReLU GraphSAGE m_vu = h_u サンプリングした近傍から MEAN / LSTM / MaxPool 集約関数を選択可能 σ( W · [h_v ‖ m_v] ) 自身と集約結果を結合 GAT m_vu = α_vu · h_u Attention 重みを乗せて送信 Σ m_vu 重み付き和 σ( W · m_v ) 線形変換 + ELU M・Σ・U を差し替えるだけで新しい GNN を設計できる → PyTorch Geometric 等の GNN ライブラリの設計思想の土台
  14. 15 15 © 2026 Boost Consulting, Inc. GNNの最前線へ メッセージパッシングを深くすると2つの壁にぶつかる GCN・GAT

    等の MPNN 系モデルに共通する本質的な限界——層を深くしても性能が上がらない 過平滑化(Over-smoothing) 層を重ねるほど全ノードの表現が同じになり、区別がつかなくなる K層 → 各ノードが K-hop 先まで集約 → グラフ全体の情報が混ざり、ノード間 の差異が消失 実用上 GNN は 2〜3 層が限界(深層学習なのに「深く」できない矛盾) 過絞り込み(Over-squashing) 遠いノードの情報が固定サイズのベクトルに圧縮されすぎて届かない 指数的に増える近傍情報を 1本のベクトルに押し込む → 情報のボトルネック 遠距離の依存関係(分子の両端など)を捉えられない ↓ この2つの壁を突破する最前線 ↓ Graph Transformer 全ノード間 Attention で近傍の制約を撤廃(2021~) GNN × LLM 融合 LLM のテキスト理解力でグラフ情報を補完(2023~)
  15. 16 16 © 2026 Boost Consulting, Inc. GNNの最前線へ Graph Transformer

    — Transformer の Self-Attention をグラフに適用 Ying et al. (NeurIPS 2021, Graphormer): 近傍だけでなく全ノード間で直接 Attention を計算し、MPNN の 壁を突破 核心: Transformer の Self-Attention をグラフに持ち込む Transformer(NLP) 各トークンが全トークンとの関連度を計算 → 文中の遠い単語同士の関係も直接捉える → Graph Transformer 各ノードが全ノードとの関連度を計算 → グラフ上の遠いノードの情報も1層で直接取得 MPNN との数式比較 MPNN: 隣接ノードのみ集約 hv' = U( hv , Σ u∈N(v) M(hv , hu ) ) 遠いノードには K 層重ねる必要あり Graph Transformer: 全ノード間 Attention hv' = Σu∈V αvu · (hu · WV ) 1層で全ノードに直接アクセス 近傍の制約を撤廃 → 過平滑化(全ノード均質化)と過絞り込み(情報ボトルネック)を根本回避
  16. 17 17 © 2026 Boost Consulting, Inc. GNNの最前線へ Graphormer —

    グラフ構造を Attention に直接組み込む グラフにはトークンのような順序がない—Graphormer は3種類の構造エンコーディングでグラフの「位置」を表現 Graphormer の3つの構造エンコーディング ① Centrality Encoding ノードの次数を入力に加算 hv (0) = xv + zdeg(v) ハブノードと末端ノードを区別 ② Spatial Encoding 最短経路長を Attention バイアスに Avu += bφ(v,u) 近いノードほど高い Attention ③ Edge Encoding 経路上のエッジ特徴を反映 Avu += cvu 結合種別などの情報を注入 Graphormer の Attention スコア(統合) Avu = (hv ·WQ )(hu ·WK )T / √d + bφ(v,u) + cvu 通常の Self-Attention + 最短経路バイアス + エッジ特徴バイアス 遠距離ノード間の依存関係を直接捕捉 過平滑化・過絞り込みを構造的に回避 グラフ構造情報を Attention に直接反映 OGB Large-Scale Challenge (2021) 1位 分子特性予測(PCQM4M)で SOTA — 創薬・材料科 学への応用が進行中 Graph Transformer の利点
  17. 18 18 © 2026 Boost Consulting, Inc. GNNの最前線へ GNN ×

    LLM — 構造理解とテキスト理解を融合する Chen et al. (SIGKDD Explorations 2023): LLM × GNN の融合を Enhancer・Predictor・Aligner の3 類型で体系化 核心: LLM がテキストを理解し、GNN が構造を処理する分業 テキスト付き グラフ → LLM が テキストを処理 → 構造化された グラフ → GNN が 構造を処理 → 予測結果 3つの融合アプローチ ① LLM as Enhancer LLM でテキストを埋め込み → GNN の入力特 徴量として使用 LLM →特徴量→ GNN ② LLM as Predictor LLM で擬似ラベルを生成 → GNN が構造を通 じて全体に伝播 LLM →ラベル→ GNN ③ LLM as Aligner LLM と GNN の表現空間を対照学習で整合さ せる LLM ⇄整合⇄ GNN いずれもLLM のテキスト理解とGNN の構造処理を分業 → 単独では不可能な精度とスケーラビリティを実現
  18. 19 19 © 2026 Boost Consulting, Inc. GNNの最前線へ LLM-GNN —

    240万ノードを約$1で分類した具体的パイプライン Chen et al. (ICLR 2024): GPT-3.5 で少数ノードにラベル付け → GCN で全体に伝播する「LLM as Predictor 」の実例 対象データ: ogbn-products(Amazon商品グラフ)—— 2,449,029 ノード / 47 カテゴリ 3ステップのパイプライン Step 1: 能動的ノード選択 全240万ノードから代表的・多様なノードを選 定(C-Density で効率的に抽出) → Step 2: GPT-3.5 でラベル生成 商品説明を入力 → Top-3 カテゴリ + 信頼 度を出力 → Step 3: GCN で全体に伝播 擬似ラベルで GCN を学習(信頼度を損失の 重みに使用) 手法比較: ラベルなしで LLM 単独にどこまで迫れるか 手法 精度 コスト 特徴 BART 分類器 28.8% 低 テキストのみ・構造未使用 TAG-Z(Zero-shot) 47.08% 低 テキスト+グラフだがラベルなし LLM 単独(全ノード推論) 75.33% $1,572 高精度だがコストが非現実的 LLM-GNN(本手法) 74.91% $0.74 LLM同等精度を 2,124倍低コストで GNN のメッセージパッシングが LLM の API 呼び出しを代替 → 精度を維持したままコストを 1/2,124 に削減
  19. 20 20 © 2026 Boost Consulting, Inc. GNNの最前線へ GNN 手法の系譜——10年で「近傍集約」から「LLM融合」へ

    各手法が前の手法の課題を解決する形で発展——MP を基盤としつつ、その限界を補完・拡張 前史 メッセージパッシング時代 MP の壁を超える 2014 DeepWalk ランダムウォーク + Word2Vec 2016 GCN 隣接行列 Â による 近傍集約 + 層の積み重 ね 2017 GraphSAGE / MPNN 局所近傍サンプリング M・Σ・U 統一フレーム → 新規ノード非対応を解決 2018 GAT Transformer の Attention を近傍集約に適用 → 隣人の平等扱いを解決 2021 Graphormer 全ノード間 Self-Attention + 構造エンコーディング → 過平滑化・過絞り込みを回避 2023 GNN × LLM LLM のテキスト理解 + GNN の構造処理を分業 → テキスト理解の浅さを解決
  20. 21 21 © 2026 Boost Consulting, Inc. 産業応用例 ① 創薬・分子設計——分子はそのままグラフになる

    原子=ノード、化学結合=エッジ——GNN が分子の性質予測と新薬設計を革新 分子グラフの構成 要素 グラフ表現 特徴量の例 原子(C, N, O…) ノード 元素種、電荷、混成軌道 化学結合 エッジ 結合種(単結合、二重結合、芳香族) 主なタスクと手法 分子特性予測 タスク: 毒性・溶解度・結合親和性の予測 手法: MPNN (Gilmer+, 2017) / Graphormer MPNN は元々分子特性予測のために提案 構造予測 タスク: タンパク質の3D構造予測 手法: AlphaFold2(残基間距離をグラフ化) 2024 ノーベル化学賞 分子生成 タスク: 望む性質を持つ新分子の設計 手法: GCPN (You+, 2018, 強化学習 +GNN) 100% 化学的に妥当な分子のみ生成 実用化の最前線: Insilico Medicine — GNN 設計の新薬候補が臨床フェーズII に到達 発見→候補まで通常5年を 18ヶ月に短縮 画像引用元: Carlo Abate, Sergio Decherchi, Andrea Cavalli, 2023
  21. 22 22 © 2026 Boost Consulting, Inc. 産業応用例 ② 推薦システム——30億ノードの

    Pinterest を支える PinSage Ying et al. (KDD 2018): GraphSAGE ベースの産業規模 GNN で、ユーザー×アイテムの二部グラフから推薦を生 成 推薦グラフの構成 要素 グラフ表現 特徴量の例 ユーザー ノード(左側) 行動履歴、属性情報 アイテム ノード(右側) 画像埋め込み、テキスト、カテゴリ インタラクション エッジ Pin保存、クリック、購入 PinSage のパイプライン ① 近傍サンプリング ランダムウォークで重要な近傍を選定(全近傍 は計算不可能) → ② GraphSAGE で埋め込み 画像+テキスト特徴を近傍集約で埋め込みベ クトルに変換 → ③ 近傍検索で推薦 埋め込み空間で最近傍の Pin を「おすすめ」と して提示 30億 ノード × 180億 エッジ 同様の技術を活用する企業 Uber Eats: メニュー推薦 Alibaba: 商品推薦(10億+ノード) TikTok: 動画推 薦 画像引用元︓Ying et al. (KDD 2018)
  22. 23 23 © 2026 Boost Consulting, Inc. 産業応用例 ③ 交通予測——道路ネットワーク

    × 時系列を GNN で処理 Google Maps の到着時刻予測にも採用——交差点=ノード、道路=エッジの時空間グラフを GNN で学習 交通グラフの構成 要素 グラフ表現 特徴量の例 交差点 / センサー ノード 交通量、平均速度、信号情報 道路区間 エッジ 距離、車線数、道路種別 時間変化 時系列特徴 過去T時点の速度・流量の系列 手法: 時空間 GNN(Spatio-Temporal GNN) 空間方向: GNN 隣接する交差点の交通状況をメッセージパッシングで集約 上流の渋滞が下流に波及するパターンを学習 + 時間方向: RNN / TCN 過去の時系列データから時間的パターンを抽出 ラッシュアワーや曜日パターンを学習 → 出力 15~60分先の各道路区間の 速度・到着時刻を予測 DCRNN (Li+, ICLR 2018) 交通流を双方向拡散としてモデル化——60分先予測で MAE 18%改善 Google Maps (2020~本番運用) GNN ベースの ETA 予測が全世界でデプロイ——到着時刻の精度を大幅向 上
  23. 24 24 © 2026 Boost Consulting, Inc. 産業応用例 ④ 金融不正検知——1件ずつは正常、構造で見ると異常

    取引ネットワークの構造パターンを GNN で捉え、従来手法では見逃す不正を検出 取引グラフの構成 要素 グラフ表現 特徴量の例 口座 / ユーザー ノード 口座年齢、取引頻度、残高 送金 / 取引 エッジ 金額、時刻、取引種別 タスク ノード分類 正常 / 不正(0.1〜1%) なぜ GNN が有効か 従来手法(ルールベース / 単体ML) 各取引を個別に判定 → 金額・頻度は正常範囲 → リング構造や共謀パターンを見逃す GNN(GraphSAGE / GAT ベース) MP で近傍の取引パターンを集約 → 構造的異常を検出 → 不正検出率 ↑ かつ偽陽性率 ↓ を両立 PayPal 異質グラフ上の GNN で不正検知——偽陽性率 を大幅に削減し、ユーザー体験を維持 Ant Financial(アリペイ) 数十億ノードの取引グラフに GNN を適用——リ アルタイムで不正送金パターンを検出 課題 極端なクラス不均衡(不正は0.1%)と、時間変 化する動的グラフへの対応が今後の焦点
  24. 25 25 © 2026 Boost Consulting, Inc. まとめ 今日の5つのメッセージ ①

    GNN はグラフ構造データのための深層学習 CNN: 画像 / Transformer: 言語 / GNN: グラフ ② 核心アイデアは超シンプル 「隣人から情報を集めて自分を更新する」を反復 ③ GCN の中身もシンプル 入力 = 特徴量+グラフ、学習 = 重み行列W、出力 = クラス確率、2層で精度81% ④ 進化の系譜 GCN → GAT/SAGE → MPNN → Graph Transformer → GNN×LLM ⑤ 産業応用は既に大規模に動いている 創薬・推薦・地図・金融、いずれも数億ノード規模