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SSII2023 [OS2] 医療支援における画像処理研究の動向と展望

SSII2023 [OS2] 医療支援における画像処理研究の動向と展望

小田 昌宏 (名古屋大学)

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Transcript

  1. なぜコンピュータによる医療支援が必要か • 医師の責任のもと診断と治療を実施 • 現在の医療の課題 – 医療の質の医師個人依存性 • 医療の経済・地域格差を誘発 –

    医師の負担増加 • 高齢化による患者増加,業務の重労働化,訴訟リスク増加による医師不足[1] • 医用画像処理技術を活用した医療支援の導入による効果 – 医療の質の均てん化と医師の負担軽減を目指す 3 [1] 厚生労働省 必要医師数実態調査(2010年), https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/hitsuyouishisuu/index.html
  2. 医用画像処理を用いた医療支援 • 画像処理の発展と共に診断支援手法の性能向上 – 深層学習ベースの手法が増加 – 研究開発と商用化が短期間化 • 診断支援システムの例 大腸内視鏡検査の支援システム

    EndoBRAIN-EYE(オリンパス)[2] [2] Olympus, https://www.olympus.co.jp/news/2020/nr01577.html CT像 セグメンテーション結果 セグメン テーション 所見推定 :正常 :異常陰影 COVID-19 画像所見 推定結果 COVID-19診断支援システム
  3. 医用画像処理の難しさ • 深層学習を使ったデータドリブンな手法が主流に • 難しさ – 大量データ収集が困難 • データが多数の医療機関に散在 •

    公開データセットは数々あるが メジャーな疾患, メジャーな画像種(モダリティ), メジャーな術式のみ対象 – アノテーション付与に 専門知識や経験が必要 眼底画像[3] 血管領域の アノテーション[3] ? [3] STARE dataset, https://cecas.clemson.edu/~ahoover/stare/
  4. 国立情報学研究所(NII)医療ビッグデータ研究センター • 全国規模で収集される大量の医療画像データの受入・解析が可 能な 医療画像ビッグデータクラウド基盤 を整備するとともに 機械学習を用いた画像解析技術(=AI画像解析技術)を開発 7 ◼ ネットワーク,セキュリティ,クラウ

    ド,画像解析技術を融合した安全・高 性能クラウド基盤を整備 ◼ 医療画像に関連の深い学術団体と密接 に連携しながら、全国規模で収集され た医療画像データを受入・解析 ◼ 学術団体の医療画像解析に対する ニーズを調査 ◼ 収集されたデータを用いた学習により AIプロトタイプを開発 ◼ AIプロトタイプの学術団体における 利用可能性について検証 クラウド基盤の整備 AI画像解析技術開発
  5. NII医療ビッグデータ研究センターの研究体制 8 国立情報学研究所 ⚫ 医療ビッグデータ利活用を促進する クラウド基盤構築と整備 ⚫ AI画像解析戦略策定と技術検討 AI画像解析 日本病理学会

    ※ 日本医学放射線学会 医療画像提供等 東京大学 名古屋大学 九州大学 奈良先端科学技術大学院大学 クラウド基盤整備・AI画像解析 ⚫ クラウド基盤へ画像提供 ⚫ AI画像解析研究連携 ⚫ 自然言語処理解析 ⚫ 研究連携 中京大学 日本心療内科学会 日本消化器内視鏡学会 日本皮膚科学会 日本眼科学会 日本超音波医学会 静岡大学 理化学研究所 東京農工大学 ⚫ AI画像解析研究連携 ⚫ 自然言語処理解析 名古屋工業大学 名城大学 岡山大学 ※病理学会は2022年度からタスクごとに医学系の代表機関が 中心になって研究を推進している。 山梨大学 大分大学 名古屋大学 東京農工大学 名古屋工業大学 名城大学 日本医学放射線学会 COVID-19肺炎の 解析チーム 国立情報学研究所 ⚫ 医療ビッグデータ利活用を促進する クラウド基盤構築と整備 ⚫ AI画像解析戦略策定と技術検討 センター長 森 健策(名大) 副センター長 原田 達也(東大) 合田 憲人(NII) 佐藤 真一 (NII)
  6. NIIが構築した医療画像ビッグデータクラウド基盤 大量の医療画像データの収集・蓄積・解析 医療画像ビッグデータクラウド基盤 (NII MIDB) storage DB 画像 附帯 情報

    医療画像 データ (匿名化) 画像解析研究者 (情報/医療) GPU 分野(学会)毎・対象疾患毎のデータ形式やファイル構 成の違いを吸収 研究者が統一的なインタフェースで医療画像データへ アクセスすることを実現 安全かつ高速なデータ収集 高速なDeep Learning 結果確認 画像検索 前処理 機械学習 (深層学習) 画像検索 前処理 機械学習 (深層学習) これまでの画像提供機関 日本医学放射線学会 日本消化器内視鏡学会 日本病理学会 日本眼科学会 日本皮膚科学会 日本超音波医学会 日本心療内科学会 2017年にSINETを活用した画像収集クラウド基盤を構築
  7. COVID-19診断支援AI開発のタイムライン • 2017年11月 医療ビッグデータ研究センター設置 • 2019年11月頃 COVID-19発生 • 2020年4月 クラウド基盤でCOVID-19症例受信

    • 2020年6月 COVID-19診断支援AIプロトタイプ完成 • 2020年9月 COVID-19診断支援AIプレスリリース • 2021年7月 COVID-19サーベイランスプロトタイプ実現・稼働開始 • 2022年11月 サーベイランスシステム プレスリリース NHK東海,2020年10月5日 日経新聞朝刊,2020年10月5日 中日新聞朝刊,2020年9月29日
  8. CT像からのCOVID-19診断支援AI • CT像からCOVID-19典型度に関する画像所見推定 • 新型疾患に対する医師の判断を支援 CT像 セグメンテーション結果 セグメンテーション FCN[cov1,cov2] 所見推定CNN

    [cov3-cov5] :正常 :異常陰影 COVID-19画像所見 推定結果 [cov1] M Oda, et al., Lung infection and normal region segmentation from CT volumes of COVID-19 cases, SPIE Medical Imaging, 2021 [cov2] M Oda, et al., COVID-19 Infection Segmentation from Chest CT Images Based on Scale Uncertainty, CLIP2021, LNCS 12969, pp.88-97, 2021 [cov3] M Oda, et al., Automated classification method of COVID-19 cases from chest CT volumes using 2D and 3D hybrid CNN for anisotropic volumes, SPIE Medical Imaging, 2022 [cov4] M Oda, et al., Classification of COVID-19 cases from chest CT volumes using hybrid model of 3D CNN and 3D MLP-mixer, SPIE Medical Imaging, 2023 [cov5] R Toda, et al., Improved method for COVID-19 classification of complex-architecture CNN from chest CT volumes using orthogonal ensemble networks, SPIE Medical Imaging, 2023 約85%の分類精度達成
  9. 医用画像処理の難しさに取り組むアプローチ – 大量データ収集が困難 – アノテーション付与に 専門知識や経験が必要 • 医療ビッグデータクラウド基盤 • データ不足による

    AI判断のばらつきを明確化する 不確実性解析の利用 • シミュレーションによる データ生成の利用 難しさ アプローチ
  10. 信頼されるAIの要素 • 医療応用では信頼性が重要 • 説明可能AI(Explainable AI) – AIの判断理由を人が理解可能とする – CAM,Grad-CAM,LIMEなど

    • 不確実性(Uncertainty)解析 – AIによる判断の確実/不確実さを明確化 • 学習不十分なパターン出現などによる AIの判断の揺らぎを示す – AIの「判断に自信がない」ケースが分かる X線画像分類モデルの判断に貢献する 領域のGrad-CAM可視化[5] [5] S Rajaraman, et al. Iteratively Pruned Deep Learning Ensembles for COVID-19 Detection in Chest X-rays. IEEE Access, 8, 115041-115050, 2020 臓器領域セグメンテーションでの 不確実性マップ 不確実性が高い領域
  11. 不確実性解析の利用 • 不確実性マップ – 特殊な形の臓器がありAIが迷った領域を ヒートマップの形で可視化 • AIが分からないとき医師に任せる などが可能 胃領域セグメンテーションでの結果[6]

    不確実性マップ 正解領域 セグメンテーション結果 不確実性高 → 十分学習していない 形状パターンが出現 セグメンテーション結果 ? [6] Z Zheng, et al., Taking full advantage of uncertainty estimation: an uncertainty-assisted two-stage pipeline for multi-organ segmentation, SPIE Medical Imaging, 2022
  12. Sim-to-Real:シミュレーションを利用したAI構築 • 基本的な考え方 – 実データ収集が高コストまたは時間を要するとき利用 – AI構築にシミュレータ生成データ+実データを使用 • 膨大な生成データでAI学習→少数の実データでAIをfine tuning

    • ロボット制御AI開発などで利用 • 生体に関するシミュレーションは 難しいが,近年新たな手法が登場 J. Tan, et al, Sim-to-Real: Learning Agile Locomotion For Quadruped Robots. RSS 2018.
  13. 医用画像処理におけるSim-to-Real • 眼底のOCT angiography画像からの血管セグメンテーション[7] – アノテーション付きデータは少数 – 生体内での血管発生を考慮した血管生成シミュレータ構築 – 生成データ+実データを用いて

    高精度セグメンテーションモデル構築 3D血管発生シミュレーション シミュレーションに基づくOCTA生成画像 [7] MJ Menten., et al. Physiology-based simulation of the retinal vasculature enables annotation-free segmentation of OCT angiographs. MICCAI, 13438, 330-340, 2022 セグメンテーション結果
  14. むすび • 医療支援における医用画像処理の活用 • 医用画像処理の難しさ – 大量データ収集,アノテーション付与 • 難しさを解決するアプローチ –

    医療ビッグデータクラウド基盤の構築 – 不確実性解析によりデータ不足によるAI判断ばらつきを明確化 – シミュレーションによるデータ生成の利用 • 限られたデータを活用して 信頼できる医療支援AIの構築を目指す