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原子はどのように「発見」されたのか? ~不規則なブラウン運動が示した原子の実在性~

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December 08, 2025

原子はどのように「発見」されたのか? ~不規則なブラウン運動が示した原子の実在性~

【はじめに】
「原子は実在するのか?」—— 今では当たり前のように思える問いですが、19世紀末まで原子の存在は「仮説」に過ぎず、むしろ懐疑的な見方が主流でした。
このプレゼンテーションでは、ロバート・ブラウンが発見した微粒子の不規則な運動が、約80年の時を経てアインシュタインの理論とペランの精密実験によって「見えない原子」の実在を証明するに至った科学史上のドラマを追います。

【主な内容】
・ ブラウン運動の発見と80年にわたる謎
・ 19世紀末の科学論争:原子論 vs エネルギー論
・ アインシュタインの革新的発想:統計力学による定量的予測
・ アインシュタイン-ストークスの式と変位の二乗平均の法則
・ ペランの精密実験とアボガドロ数の決定
・ 「見えない原子」がいかにして「実在」と認められたか

【対象者】
・ 物理学の歴史に興味がある方
・ ブラウン運動や統計力学に触れてみたい方
・ 科学における「実在」とは何かを考えたい方

大学1-2回生程度の理工系基礎科目(微積分、統計力学)の知識を前提としています。

📚 参考文献
・ 江沢 洋『誰が原子をみたか』岩波書店 (1976)
・ 江沢 洋『ブラウン運動』朝倉書店 (2020)
・ 江沢 洋「ブラウン運動とアインシュタイン」大学の物理教育, 2006年 12巻 1号 p. 13-18 (2006)

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  1. 自己紹介 さめ(мег-сск) ⚛️ VRChat物理学集会の主 催 🧑‍🎓 社会人学生として通信制 大学在学中 得意分野: 📸

    コンピュータビジョン (画像認識/点群処理) 🌍 空間情報処理 (地理情 報/リモートセンシング) ☁️ クラウドインフラ設 計/IaC (AWS, GCP) GitHub YouTube Speaker Deck
  2. 1905 年:奇跡の年 アインシュタインは1905 年に5 つの論文を発表 光量子仮説(光電効果の説明) ブラウン運動の理論 ← 今日の話 特殊相対論

    質量とエネルギーの等価性: 博士論文(分子の大きさ) → 26 歳のアインシュタインは物理学を根本から変え る大発見を立て続けに構築した! E = mc2
  3. 沈降平衡の分布 ( :ボルツマン定数、 :温度、 :ポテンシ ャルエネルギー) ρ = ρ ​

    exp − ​ = 0 ( k ​ T B mgx ) ρ ​ exp − ​ 0 ( k ​ T B U(x) ) k ​ B T U(x)
  4. 沈降平衡と外力 外力 なので F = − ​ dx dU(x) ​

    = ∂x ∂ρ − ​ ​ = k ​ T B ρ dx dU(x) ​ k ​ T B ρF ⇒ ρF = k ​ T ​ B ∂x ∂ρ
  5. アインシュタイン- ストークス式 : マクロの世界の拡散 : ミクロの世界の粘性抵抗 : 熱エネルギー → 拡散(

    マクロ) と粘性( ミクロ) が熱によって結びつい た! D = ​ 6πηr k T B D η k ​ T B
  6. 拡散の変位の期待値 確率密度関数 がガウス分布の時、変位の期待 値 は0 となる ( ガウス積分で導出可能) ρ(x, t)

    ⟨Δx⟩ ρ(x, t) = ​ exp − ​ ​ 4πDt 1 ( 4Dt x2 ) ⇒ ⟨Δx⟩ = ​ xρ(x, t)dx = ∫ −∞ ∞ 0
  7. なぜこれが画期的だったのか 1. 定量的予測:具体的な数値を予言した 2. 検証可能:顕微鏡で実際に測定できる 3. 分子の実在を示唆: (ボルツマン定数)が現れ る (

    :気体定数、 :アボガド ロ数) 測定からアボガドロ数を決定できる! → 「見えない分子」の存在を「見える粒子」の運動 から証明できる k ​ B k ​ = B R/N ​ A R N ​ A
  8. 他の方法との一致 ペランが得たアボガドロ数は、様々な方法で決定さ れた値と一致した: プランクの黒体放射(1900 年): 原子核崩壊(1908 年): ミリカンの油滴実験(1911 年): X

    線回折(1913 年): 全く異なる現象から同じ値が得られた → これは偶然ではありえない! 6.18 × 1023 6.09 × 1023 6.06 × 1023 6.06 × 1023
  9. 主要参考文献 江沢 洋, 誰が原子をみたか, 岩波書店 (1976) 江沢 洋, ブラウン運動, 朝倉書店

    (2020) 江沢 洋, ブラウン運動とアインシュタイン, 大学の 物理教育, 2006 年 12 巻 1 号 p. 13-18 (2006)