T.A. Thayerによる論文では、Winston W. Royceの1970年の論文を参照し、 「開発活動のウォーターフォール(滝)」という表現を用いて、ソフトウェア 開発プロセスの段階的なアプローチを説明しています。この際、Royceの提案 を、各フェーズが順番に進む線形で非反復的なプロセスとして解釈しています。 ⚫ Royce自身は、元の論文で反復的なフィードバックと改善の必要性を強調して いましたが、この論文では、ソフトウェア要件の問題の重要性を強調し、要件 の不備が設計や実装段階での失敗につながると述べています。その結果、要件 の不備を防ぐために「トップダウン型で進む厳密なプロセス」が必要であると の主張が間接的にウォーターフォールの誤解に結びつきました。 ⚫ さらに、この概念が広く普及した背景には、Barry Boehm氏(COCOMOやスパ イラルモデルを提唱した人物)が1981年の著書「Software Engineering Economics」でRoyce氏のモデルをウォーターフォール型として紹介したこと も影響しています。これにより、ウォーターフォールモデルの誤解が強固なも のとなり、業界全体でそのイメージが固定化されました。 Bell, T. E., & Thayer, T. A. (1976). Software requirements: Are they really a problem? Proceedings of the 2nd International Conference on Software Engineering (ICSE '76), 61–68. https://doi.org/10.5555/800253.807650