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バッチシステムをクラウドネイティブにするために考えたこと

teru0x1
November 21, 2022
8k

 バッチシステムをクラウドネイティブにするために考えたこと

Cloud Native Days Tokyo 2022
Session: https://event.cloudnativedays.jp/cndt2022/talks/1518

teru0x1

November 21, 2022
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Transcript

  1. © DMM 今日話すこと • クラウドネイティブ時代のバッチシステム設計時に重要な視点 • VMベースのバッチシステムをECS Fargate + Step

    Functions に移行させた事例 • 本セッションで扱う”バッチシステム” • 従来はLinuxのcronで動かしていたような比較的小規模なバッチジョブを 対象 • データサイエンス、機械学習、HPCといった領域の大規模なバッチジョブシス テムは対象外 8
  2. © DMM 12 視点1 個々のバッチジョブを 分離したインフラ リソースとして扱えるか • ジョブごとに隔離されたコンピューティング環 境で実行可能

    ◦ 単一マシン上のcronの場合、ジョブが互いに影響を 及ぼす • ジョブごとにリソース量の調整、有効・無効設定 が容易 • ジョブごとに実行状態、実行時間が観測可能 管理性 可観測性
  3. © DMM 13 視点2 自動・手動の リトライが容易か • 自動リトライすべき例: インフラの一時的なフォール トによる起動エラー発生時のリトライ

    ◦ 必ずバッチ処理の実行前に発生するため、 安全にリトライ可能 • 手動リトライの例: バグによる処理失敗時の 再試行 回復性 管理性
  4. © DMM 14 視点3 実行ロギング・ステータスの 通知が可能か • ジョブ実行履歴のログを残せる ◦ ジョブが終わった後何も残らない場合、

    デバッグが困難になる • アプリケーションのログを外部に送信できる ◦ 古いcronではログを/dev/nullに捨てがち... • ジョブ実行のステータスを外部に通知できる ◦ 成功率・実行時間を収集できる ◦ 通知をトリガーにして、リトライなどが実行できる 可観測性
  5. © DMM 15 視点4 バッチ実行基盤の 運用効率が良いか • バッチ実行基盤として何を使うか? ◦ マネージド・サーバーレスなクラウド

    サービスを組み合わせる ▪ ほぼ管理作業が発生しない ◦ ジョブ管理システムの導入 ▪ 例: jenkins, Rundeckなど ▪ バージョンアップ作業、ユーザ管理作業 などが発生する ▪ OSSのものはコードを調査できる、 議論に参加できる • 組織によって最も効率の良いものを選ぶ 管理性
  6. © DMM 背景 17 ELB ELB Aurora Aurora Amazon Web

    Services、“Powered by AWS”ロゴ、[およびかかる資料で使用されるその他のAWS商標] は、米国その他の諸国における、Amazon.com Inc.またはその関連会社の商標です。
  7. © DMM 背景 18 • 弊社のとあるWebサービスの インフラ • Webサーバ(複数台)+ バッチサーバ(1台)

    + DBサーバ • オンプレ上のVM→AWS EC2へそのまま載せ替え(lift & shift)が完了していた Aurora ELB
  8. © DMM 背景 19 • システム全体をクラウドネイティブに 刷新するプロジェクトが始動 • 先行してWebサーバのインフラが ECS

    Fargateに変更 • バッチに関してはEC2を脱却するこ とで以下の課題の解決を目指した • 耐障害性がない • エラー発生を検出できない • 全てのジョブプロセスが同居す るのでリソースを奪い合う • crontabファイルの編集によ るスケジュール設定変更が常態 化 Aurora Aurora
  9. © DMM 21 cron on ECS Service ✅ 既存のcronをそのまま利用できる ✅

    インフラの障害に対して回復性がある ❌ ジョブ同士が互いにリソースを奪い合っ てしまう ❌ 新バージョンリリース時にジョブが停止し てしまう ジョブが分離できないのが欠陥となる 視点1: 「ジョブがインフラリソースとして分離されているか」
  10. © DMM 22 ジョブ管理システム on ECS Service ✅ ジョブは互いに影響を及ぼさない(個別 のタスクとなる)

    ✅ 手動・自動リトライが可能 ✅ 実行のロギング・エラー通知が可能 ❌ ジョブ管理システム自体の運用コストがや や大きい ジョブ管理システムの構築と運用にかかる負担が大きいと判断 そこまで豊富な機能を必要としていなかった 視点4: 「バッチ実行基盤の運用効率が良いか」
  11. © DMM 23 ECS Scheduled Task + EventBridge + Kinesis

    Data Firehose ✅ ジョブは互いに影響を及ぼさない ✅ マネージドかつサーバレスな実行基盤 ✅ 構成がシンプル ✅ 実行ログをEventBridgeとFirehose 経由で保存できる(ECS単体では一定時間で 消滅してしまう) ❌ 単体での自動/手動リトライは不可能 シンプルな構成で、cron on EC2脱却の1歩目に適すると判断 自動リトライなどはこの時点では不要だと考えていた(後述) 視点3: 実行ロギング・ステータスの通知が可能か
  12. © DMM 改善実装 v1 • 個々のジョブを隔離された コンテナで実行 • ジョブごとの実行ログ取得 •

    Terraformによる実行スケジュール 管理 24 できるようになったこと しかし、新たな問題が発覚...
  13. © DMM バッチジョブが稀に実行されない • ECS Fargateのタスク起動時にプロビジョニングエラーが発生 • サポートに問い合わせた結果、どうしても低確率で発生するもの • 自動的なリトライが必要

    26 • Timeout waiting for network interface provisioning to complete • ResourceInitializationError: failed to configure ENI: failed to setup regular eni: context deadline exceeded • ResourceInitializationError: failed to configure ENI: failed to setup regular eni: netplugin failed with no error message ECSタスクのStoppedReasonとしてよく見るもの 視点2: 自動・手動のリトライが容易か
  14. © DMM 改善実装 v2 29 Amazon EventBridge Rule AWS Lambda

    AWS Step Functions • Step Functions(SFN)を 利用し、ECSタスクを起動 • 利用するSFNの機能 ◦ ワークフローによる 自動リトライ ◦ 冪等応答 ▪ 同じ実行名に対し て2回以上起動し ない
  15. © DMM Rule Amazon EventBridge AWS Lambda 改善実装 v2 30

    AWS Step Functions RunTask: ECSタスクを同期実行 成功時はそのまま終了
  16. © DMM Rule Amazon EventBridge AWS Lambda 改善実装 v2 31

    AWS Step Functions RunTask: ECSタスクを同期実行 失敗時はParseCauseへ ParseCause: タスクの終了原因をJSON へパース ErrorChoice: 終了原因が指定した理由 にマッチする場合はRunTaskへ遷移 "Choices": [ { "Next": "RunTask", "Or": [ { "StringMatches": "Timeout waiting for network interface provisioning to complete*", "Variable": "$.ParsedCause.StoppedReason" }, { "StringMatches": "ResourceInitializationError: failed to configure ENI: failed to setup regular eni: context deadline exceeded", "Variable": "$.ParsedCause.StoppedReason" }, { "StringMatches": "ResourceInitializationError: failed to configure ENI: failed to setup regular eni: netplugin failed with no error message", "Variable": "$.ParsedCause.StoppedReason" } ] } ], … ]
  17. © DMM Rule Amazon EventBridge AWS Lambda 改善実装 v2 32

    AWS Step Functions LambdaでEventBridge によるターゲット多重起動を阻止 { “name”: “jobA-2022-11-02”, “stateMachineArn”: “xxxxx” }
  18. © DMM Step Functionsに移行して • タスク実行失敗、重複起動リスクは回避 • AWSコンソールで実行履歴が見やすい、手動によるリトライが簡単 といった副次的メリットも生まれた 34

    • 余談 • AWS Batchは検討しなかったのか? • SFNのような冪等応答の機能がない • 重複起動の件はDynamoDBなどで排他制御することでも解決できそうか? • ジョブが1分以内で完了した場合、1個目のタスク終了後に2個目のタスクが起動することがある模様... • cf. https://qiita.com/aosho235/items/87cc5f6104392f5fcdc6
  19. © DMM まとめ • クラウドネイティブ時代のバッチシステム設計時に重要な視点 • 個々のバッチジョブを分離したインフラリソースとして扱えるか • 自動・手動のリトライが容易か •

    実行ロギング・ステータスの通知が可能か • バッチ実行基盤の運用効率が良いか • VMベースのバッチシステムをECS Fargate + Step Functions に移行させた事例を紹介 36