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ミツモアにおける AI 推進の歴史とこれから 〜 AI 推進に立ちはだかる壁をどう乗り越えたか 〜

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February 26, 2026

ミツモアにおける AI 推進の歴史とこれから 〜 AI 推進に立ちはだかる壁をどう乗り越えたか 〜

AIエージェントを業務運用に乗せる全手順 非エンジニアでもできる戦略と実行の裏側、成功と失敗事例 の発表資料です。
https://meetsmore.connpass.com/event/381675/

株式会社ミツモアでは、AIエージェントを活用し、社内のワークフローを横断的に効率化・自動化を進めてきました。
各部署での要望をヒアリングし、さまざまな検証・実装を行ってきました。
実際に実装をし、現場のワークフローを改善するまでにどのようなステップで実施したのか、どのような苦難があったか、ケースを踏まえながらお話ができればと思います。
AIエージェントを組み込んだ社内でのワークフローの実装で悩みを抱えている方や、今後AIエージェントを取り入れた社内のワークフローの実装を検討している方は参考になると思います!

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February 26, 2026
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Transcript

  1. 白栁 広樹 / Hiroki Shirayanagi 株式会社ミツモア / MeetsMore Inc. プロダクト本部長

    (General Manager) - 2013 年 : ヤフー - SRE - 2018 年 : ミツモア - プロダクト本部長 兼 AI 推進担当 @yanaemon @yanaemon169 自己紹介 About me
  2. 1. ミツモアについて 2. ミツモアの AI 推進の歴史 3. AI 推進の立ち上げ 4.

    全社 AI 推進 5. プロワン AI 推進 6. 今後の展開 & まとめ 今日話すこと Table of Contents
  3. サービス産業の生産性を上げるためには すばらしいプロダクト・サービスの開発 が必須 日本のサービス産業の労働生産性はアメリカの半分にとどまっている 一方で、日本の中小企業の約8割がまだDXに取り組めていないと回答 しています。 人手不足の中小企業において、情シスやIT専任の担当者がいなくても 活用できるような「かんたん」で「使いやすい」プロダクト・サービ スが必要とされています。 大企業

    (n=6483) 18.2 39.5 28.6 7.3 6.4 全体 (n=20321) 17.8 59.3 15.1 3.8 3.9 中小企業 (n=13838) 17.6 68.6 8.9 2.1 2.8 2018年以前から実施している 実施していない、今後実施を検討 2019年から実施している 実施していない、今後も予定なし 2020年から実施している 中小企業の8割はDXに取り組めていない デジタル・トランスフォーメーションの取組状況(日本) 出典: 総務省 令和3年版 情報通信白書 
 ミッションの実現に向けて To Achieve Our Mission
  4. AI 推進の歴史と使用中ツール History & Tools LibreChat 2023年 • 2023/03 ChatGPT

    Slack Channel 作成 • 2023/04 Hackathon with Generative AI 2023 開催 • 2023/08 GitHub Copilot Business 2024年 • 2024/01 GitHub Copilot Chat • 2024/09 Dify を EC2 にセルフホスト構築 • 2024/11 LibreChat を社内 LLM チャットツールとして導入 2025年 • 2025/03 GitHub Copilot → Cursor 全面移行 • 2025/04 AI Promotion Task Force(Dev)発足 • 2025/04 AI 推進(非エンジニア)取り組み開始 • 2025/06 Notion AI 全社導入 • 2025/06 Claude Code 全面展開 • 2025/07 全社 AI 推進本格始動 • 2025/09 評価制度への導入 • 2025/10 業務棚卸し & ヒアリング • 2025/11 プロワン x AI Project 本格開始
  5. AI 推進の歴史 History 2023年 • 2023/03 ChatGPT Slack Channel 作成

    • 2023/04 Hackathon with Generative AI 2023 開催 • 2023/08 GitHub Copilot Business 2024年 • 2024/01 GitHub Copilot Chat • 2024/09 Dify を EC2 にセルフホスト構築 • 2024/11 LibreChat を社内 LLM チャットツールとして導入 2025年 • 2025/03 GitHub Copilot → Cursor 全面移行 • 2025/04 AI Promotion Task Force(Dev)発足 • 2025/04 AI 推進(非エンジニア)取り組み開始 • 2025/06 Notion AI 全社導入 • 2025/06 Claude Code 全面展開 • 2025/07 全社 AI 推進本格始動 • 2025/09 評価制度への導入 • 2025/10 業務棚卸し & ヒアリング • 2025/11 プロワン x AI Project 本格開始 この辺りを重点的に話します。 (開発チームの AI 推進は今日は対象外)
  6. スタートアップは限られたリソースの中で最大の成果を生み出す必要がある AI 推進も多大なリソースはかけられなかった。 その中でいかに推進をしたかお話できればと思います。 ※ 実施から時間が経っているものもありますがご容赦ください 󰢛 [兼務] 社内 AI

    推進全体統括 + プロダクト開発チームの AI 推進 Lead [主務] プロダクト本部外の AI 推進 Lead(非エンジニア) + インターン生 3 名 [兼務] LLM 関連 + データ基盤 今日話すこと Table of Contents AI 推進チーム体制
  7. 全方位のアプローチ AI の変革のスピードは速い、推進もスピードが必要、地道な変化では遅すぎる AI 推進アプローチ Approach ⬇ トップダウン 経営 +

    本部長陣と連携 AI 活用を全社の重要戦略として推進 • AI 活用レベルの定義 → 全社の目標制度に含める • 業務棚卸しなどの対応依頼 ⬆ ボトムアップ 各本部から AI 推進担当者を選出してもらい横連携 • 全社セミナー開催、活用事例の展開 • ALL Hands などの全体ミーティングで毎回発信 • AI 基盤の整備
  8. AI 推進本格稼働前 • 課題ベースでの AI 活用 Project 実行 • アンケートによる課題特定

    • 問い合わせベースでの AI 推進サポート AI 活用レベル Maturity Model 全体展開には多くの壁 • チーム・個人間での改善に差が出ていた(AI を積極活用している人に限られていた) ◦ 解像度の高い課題に対しては成果を出せていた ◦ 各チームで表面化している課題に留まり成果に繋がっていなかった
  9. • 🤖 応用 : 実践 • 📢 共有 : 情報展開・事例共有の仕組み

    • ⭐ 評価 : AI 活用レベル、目標設定 • 🎓 教育 : セミナーなど • 🛠 基盤 : AI 活用のナレッジ・基盤の整備 社内 AI 推進全体像 Overview
  10. ⭐ 評価 : AI活用レベルを定義(Lv1〜5)半期で全体平均 Lv 4 の目標を掲げて推進 単純な活用に留まらず、いかに価値を生み出すかに重点 AI 活用レベル

    Maturity Model レベル 名称 特徴 具体的な成果および行動例 1 AI チャレンジャー • 仕事でAIを週に1〜2回、試しに使ったことがある • 日常業務に組み込めていない • AIの出力の評価や修正はあまり行なっていない • 定型メール作成や簡単な調査でAIを試してみた • 単発的な活用が中心で、習慣にはなっていない 2 AI デイリーユーザー • ほぼ毎日もしくは週単位でAIを利用している • AIの出力を自分でチェックし、修正したり、用途によってモデルを使い分けられる • 業務効率やアウトプットの質向上を実感している • 個人での活用に留まっている • 資料作成や情報整理、リサーチにAIを活用 • AIによる誤りやバイアスを自分で補正できる 3 AI リーダー • チーム内で使える半自動の仕組みを作成 • 「この作業、ボタン一つで自動化できないかな?」と考え、構築する力がある • 「ボタンを押す」「アプリを実行する」など人手介在が必要な仕組みが多い • 定常業務の一部を自動化し、作業時間を短縮させた • AIの使い方をチームメンバーに指導・共有している 4 AI アーキテクト • 完全自動化されたAIの業務プロセスを設計・安定運用 • チームの枠を超えて、インパクトを与えるAIツールを提供 • 社外AIツール・社外のAI活用事例を収集し、自社用にカスタマイズして導入できる • 経営指標への直接的なインパクトは限定的 • メール受信や会議終了などをトリガーに、人手を介さず作業 を開始して自動処理 • 最適なツール選定・連携、システム構築を実施 5 AI イノベーター • 組織全体のAI戦略/ルール作りに主体的に関与 • 経営指標にインパクトを与えている • AI活用は会社全体に広がり、売上向上やコスト削減に貢献 • このレベルはゴールではなく、常に新しい価値を創造し続ける存在 • 会社全体に影響を与えるAI導入を推進し、売上やKPIの大幅 な向上に寄与 • 業務だけでなく文化・組織・プロセス全体を変革
  11. 🎓 教育 : 全体の AI 活用レベルの底上げのために網羅的にセミナーを実施 • AI 活用セミナー(全体、レベル Lv

    1 ~ 3 向け、レベル Lv 4 向け) • Notion AI セミナー • Gemini CLI セミナー • Dify 活用セミナー • 新入社員向け AI セッション • その他諸々... 🛠 基盤 : SRE チームなどと協力しながら AI 活用に必要なツール整備 • Dify • Libre Chat • Slack Chatbot • etc… AI 活用セミナー & 基盤 Promotion
  12. レベル定義やセミナーによる学習だけでは、実践レベルにしきれなかった → 結局、全体向けセミナーは一時停止することに AI 活用レベル Maturity Model 🚧 導入の壁 •

    どう個人の目標や施策にまで落とし込めばいいか分からない • 理想は AI 前提で今の業務を改善し成果を出すことだが、活用すること自体が目的になりがち • 一部ツールの利用は普及せず(特に Gemini CLI) • レベル判定が個人のアンケートに現状頼っていて主観的 • 実践セミナーでは、段々と参加者が固定化 → 効率改善できている人の多くは 元々 AI 積極活用していた人 🧱 展開の壁(組織の壁) 👍 Good • 複数回に渡って開催した Dify セミナーは利用拡大に大きく貢献
  13. 評価制度への組込 - バリュー ”テクシン” Evaluation ⭐ 評価 : AI 活用を「テクシン」の評価軸に

    全体最適のため部門全体で計画 → ブレイクダウン ※ テクシン = 会社のバリュー “テクノロジーでシンプルに” 👍 Good • 情報共有や業務フローの改善問い合わせが増加 🧱 展開の壁(組織の壁) • AI 前提で今の業務を考え直すこと自体、難易度が高い ◦ チームで分担した際の目標は?その対応しない人はどうしたらいいの? ◦ 個人目標になりがち。業務フロー全体を AI 前提で置き換える発想になりにくかった • 評価制度のアップデートと重なって、中途半端な状態になってしまった
  14. 🛠 基盤 : 議事録から 1 DB に統一 それまでは AI が探しにくい状態だった

    • ほぼ全ての情報が Notion に集約されてはいた • しかし、全社の明確なルールはなかった • 個人ページにそれぞれ自由に情報が配置 情報整理 Knowledge 👍 Good • 検索や議事録を起点にアクションを取りやすく 🧱 展開の壁(組織の壁) • 質問等は多かったもののスムーズに展開できた • 他の情報をどうするか → 将来の展望パートで
  15. 📢 共有 : 情報共有・事例展開などは繰り返し実施 全体共有 • 毎月開催の全社 ALL Hands での

    “今月のAI推進” セクション • 各本部の全体会で不定期共有 個別展開(各本部の AI 推進担当者との連携) • 定例 MTG (議事録などの全体展開、事例の詳細紹介、etc…) • 重要事項は本部長経由でも • 各本部用 Slack Channel を作成し詳細な議論 情報共有・展開 Sharing 🧱 展開の壁(組織の壁) • 1 回で伝わると思わず、要点を絞って何度でも • 対象者に合わせた情報粒度で、全体向けは特に要点を絞り切る
  16. 🤖 応用 : AI 前提で業務フローを考える以前に、まずは自分たちの業務解像度を上げ る 全社の業務を Notion DB に洗い出し、成果の大きそうな部署にヒアリング

    業務棚卸し Workflow Review 💰 成果の壁 • 自身の業務でも、言語化は意外と難しい • ヒアリングをしたら、他にも業務が多数発覚 • 事業部全体で根本から課題を 解消する必要性がありそうなことが発覚 👍 Good • 業務の全貌把握に大いに役立った • そのまま手順書として使えるものも
  17. プロワン事業本部にフォーカス AI 前提で全業務フローを俯瞰して見直す • 営業〜CSまでの全フローや関連資料などを可能な限り全て ◦ Notion AI を用いて Mermaid

    形式に • 全貌は事業本部メンバーが把握しやすいように Claude Code で Draw.io 形式で 業務解像度を上げる Workflow Resolution
  18. 目指すのは、「顧客価値」の最大化(AI 活用も1手段) • 顧客の “生の声” と、マーケ〜IS〜FS〜CS〜プロダクトにまたがる各種データを統合し → 全体の成果に寄与する打ち手を出しやすい状態に → そのデータを活用して

    AI 活用をする • データは更新され続け、精度が自動的に上がっていく状態 ◦ 情報整理をせずに業務効率化は可能だが効果は限定的 プロワン AI 推進 ProOne AI
  19. 対応の流れ 1. 情報整理 : 顧客情報を様々なチームで利活用しやすい状態にする a. データは更新され続け、最新の情報を常に利用できる状態 2. 業務アップデート :

    その上で、業務フローを AI により効率化 & 顧客最適化する どのようなことが実現できるのか? • 例. 営業における顧客への提案内容の検討 ◦ Before: 個人ごとに情報を検索しながら提案内容を作る ◦ After: 過去情報から刺さる提案を自動検討 & 情報も常に最新に • 例. 顧客の問い合わせ対応 ◦ Before: 顧客ごとのカスタマイズ情報を調べながら、     返答を人が整理し回答 ◦ After: 顧客ごとにカスタマイズされた回答がすぐに生成される • などなど、他にもたくさん プロワン AI 推進 ProOne AI
  20. プロワン AI 推進 ProOne AI 🧱 展開の壁(組織の壁) • コンテキスト整理にフォーカスしすぎて、”変革後の姿” や

    “実務レベルの具体的な改善” を伝えきれず。 ◦ 事業本部側の業務解像度が低く、抽象的な改善案になってしまっていた ◦ 「で、結局何がどれくらい具体的に変わるの?」 ✅ Action & Result • AI 活用ではコンテキストの扱いが重要な課題だが、巻き込み方は別 ◦ トップダウン: AI 活用後の姿を明確に見せられるかの方がまずは大事 ◦ ボトムアップ:成功体験をいかに早く作れるか • 事業部の人と何度もコミュニケーションを取り全チームの Before After を具体化 → プロワン事業本部全体を巻き込んだ一大 Project にまで発展
  21. AI 活用レベルの継続的なアップデート AI 活用レベル Maturity Model レベル 名称 特徴 具体的な成果および行動例

    1 AI チャレンジャー • 仕事でAIを週に1〜2回、試しに使ったことがある • 日常業務に組み込めていない • AIの出力の評価や修正はあまり行なっていない • 定型メール作成や簡単な調査でAIを試してみた • 単発的な活用が中心で、習慣にはなっていない 2 AI デイリーユーザー • ほぼ毎日もしくは週単位でAIを利用している • AIの出力を自分でチェックし、修正したり、用途によってモデルを使い分けられる • 業務効率やアウトプットの質向上を実感している • 個人での活用に留まっている • 資料作成や情報整理、リサーチにAIを活用 • AIによる誤りやバイアスを自分で補正できる 3 AI リーダー • チーム内で使える半自動の仕組みを作成 • 「この作業、ボタン一つで自動化できないかな?」と考え、構築する力がある • 「ボタンを押す」「アプリを実行する」など人手介在が必要な仕組みが多い • 定常業務の一部を自動化し、作業時間を短縮させた • AIの使い方をチームメンバーに指導・共有している 4 AI アーキテクト • 完全自動化されたAIの業務プロセスを設計・安定運用 • チームの枠を超えて、インパクトを与えるAIツールを提供 • 社外AIツール・社外のAI活用事例を収集し、自社用にカスタマイズして導入できる • 経営指標への直接的なインパクトは限定的 • メール受信や会議終了などをトリガーに、人手を介さず作業 を開始して自動処理 • 最適なツール選定・連携、システム構築を実施 5 AI イノベーター • 組織全体のAI戦略/ルール作りに主体的に関与 • 経営指標にインパクトを与えている • AI活用は会社全体に広がり、売上向上やコスト削減に貢献 • このレベルはゴールではなく、常に新しい価値を創造し続ける存在 • 会社全体に影響を与えるAI導入を推進し、売上やKPIの大幅 な向上に寄与 • 業務だけでなく文化・組織・プロセス全体を変革 観点が多数不足 • 🗃 データ理解・管理 • 🔒 セキュリティ • 💰 コスト • 󰞵 運用(モニタリングやエラー対応)
  22. まとめ Summary 全員が AI 推進をできる状態が理想 しかし、価値を生み出すレベルの仕組み化を全員ができるレベルに到達するのは難しい チームに入り込んだ上で、業務を深く理解し、 変革後の世界を想像できるようにするか が鍵 1.

    AI 推進は手段であって目的ではない 2. トップダウンとボトムアップの両軸のアプローチ ◦ トップダウン: AI 活用後の具体的な状態 ◦ ボトムアップ:成功体験を早期に作る