EOF2019にて 2018年10月からの1年間のDMMにおける改革の話です。
© DMM.comCTO着任の1年DMM改革の振り返りDMM.com CTO 松本 勇気 2019/10/31
View Slide
© DMM.com自分とDMMについて2
© DMM.com 3
© DMM.com 4
© DMM.com• 松本 勇気 (@y_matsuwitter)• DMM.com CTO• 経歴• 東京大学在学中に3社のスタートアップの立ち上げ・支援• 2013年 Gunosy入社• Gunosyにて執行役員、CTO、新規事業担当を経てDMM.comへ• 高負荷環境のシステム設計や機械学習、VR、Blockchainなど新技術領域担当を歴任• 未来を感じる技術が好きです。5自己紹介
© DMM.comCTO就任時におけるDMMの課題日本の多くの組織が抱える技術活用の壁6
© DMM.comテックカンパニー化をミッションにCTOへ7
© DMM.com 8テックカンパニーとは事業の全てがソフトウェア・エンジニアリングで改善されるのがテックカンパニー。技術を交えた課題解決 ● 全ての事業や組織に関わる仕組みを、特にソフトウェア・エンジニアリングで繋げる。 コード・計測 ● DMMに関わる全てをコードで表現していく。 ● システム化の先に全てを計測し、データとして保存。 技術指向・ソフトウェア化計測と事業モデリング ● プロダクトだけでなく、組織に関わる全てを計測し、指標化し、連動する一つのモデルとして表現する。 個別最適化 ● 人では不可能なレベルの細やか、かつ自動的な最適化 ● 結果としての省力化と改善の双方を達成する。 データドリブンイテレーティブな改善 ● 日々細かい検証ループを回しながら数多くの施策を試す。 ● ABテストにより着実に改善を積み上げる。 失敗を許容する ● 不具合等発生しても復旧可能であるレジリエントなシステム。 Agility
© DMM.com入社時点でのDMMの課題9ビジネスモデルや営業力に比べ、事業年数の経過もあってか技術活用が今一歩不足していた。 20年続くシステム ● またシステムの多くが長期間運用されておりコード上の複雑度が上昇 事業と開発が長らく別会社運用 ● エンジニアリングによる事業改善の流れが不足していた。 ● 営業とビジネスモデルの強さで成長。 事業部間のコミュニケーション ● 各事業が各々独立して動いており、知見の共有、標準化が不足。 技術と事業、および事業間の分離 定性的事業判断データによる定量性的分析の活用不足 ● 現代の事業はデータがその中心にあるべき。 ● 現状の社内では定性的な意思決定がほとんどだった。(後述) 機械学習ベースの事業改善の不足 ● 情報配信 = 検索と機械学習の世界 ● 現状ではマニュアルに運用されている箇所がほとんど。
© DMM.com組織改革の勘所One Teamとして改善に向かうためのポイント10
© DMM.com 11組織変革において意識する4項目初手から現在に至るまで下記の4点を徹底している。ヒアリング パッケージ化透明化 小さな成功
© DMM.comヒアリング:仲間を信頼し課題を明らかに12コンテキストを共有し、仲間と共に歩むため徹底して現状を知る。• 組織構造をまず理解する。• マネジメント構造• コミュニティ構造• 満遍なく意見を抽出できるよう、各組織/コミュニティの各階層のメンバーの意見を傾聴する。• 特に最初の2~3週間は各位の意見を対面で聞き、その中身の整理につなげる。(後述)• 課題が見えてきたら、その課題についても関係する人々に満遍なくヒアリングする。• 課題解決への道を一緒に探し貢献する。同期入社サークル創業陣飲み友達コミュニティ構造マネジメント構造事業部A 事業部B 事業部C本部長部長 部長 部長
© DMM.com 13課題と状況・目的を理解する状況 目的課題の実像解釈された課題解釈された課題解釈された課題解釈された課題解釈された課題課題の実像課題の実体の抽出解釈の差分から状況と立場を理解各々の状況・目的のフィルタを通した課題への意見・解釈ヒアリング時には、各々の言葉の中から事実と各位の状況や目的を抽出する。様々な人・組織の解釈
© DMM.comパッケージ化:文化が生まれる力場を作る14• 文化とは、一定の方向性へ進ませようとする暗黙的な行動指針・習慣• Agilityを高める重要なファクター• 文化は恣意的に作ることが難しい、一定の方向づけの中で自然に生まれる• 個々人が即応的な行動の中で方向づけされるには、Whyを理解できる仕組みが必要• パッケージ = 行動指針を理解するために仕立てられた、現場の行動までを説明可能な一気通貫した分かりやすいストーリー誰もが同じことを言えるよう、理路整然としたストーリーを用意する。MissionValueVision戦略作戦戦術兵站状況・環境・課題理解即応的かつ戦略に合致したアクションパッケージ
© DMM.comパッケージ事例:DMM Tech Vision15
© DMM.com 16
© DMM.com 17
© DMM.com 18
© DMM.com透明性:意義と現状を伝える19透明性は、情報公開・情報整理だけでなく信頼性を踏まえた情報の流路設計も重要。伝達時の減衰情報公開不足情報伝達アクション不足情報整理の課題ネットワーク構築発信の習慣化インナーとアウターの活用フォーマット化組織間の信頼度や情報伝達文化の不足により情報が減衰し末端まで伝わらない。そもそも情報を伝達しようというタイミングが不足し情報が欠乏している。情報の多くに対してアクセス出来ない環境になっている。(e.g. SlackのPrivate Channel)触れられる情報が整理されておらず複雑、一見して理解がしづらい、量が多い。透明性に向けた4つの取組み透明性の低下の要因
© DMM.com情報把握の心的コストを落とす整理された情報フォーマットを用意し全体へ公開する。 ● 週報の松本フォーマット — 要約と重要KPIを中心にしたテンプレを用意し、即座に状況が読めるものへ。 20透明性への取り組み情報の浸透度を向上させるべく具体的に下記の取り組みを実施。ネットワーク構築 インナー・アウターの活用ハブとなるメンバーの連携 ● 社内には多くのコミュニティ・組織がある。 ● 多くの社員に発信可能な人は誰か理解し連携しながら情報の流路を整理していく。 — 例:社内開発者コミュニティなど 経路・フォーマットの特性を理解し情報発信する。 ● インナー:自分の言葉で即時に、且つ深く伝える内容にて理解を図る。 ● アウター:第三者の解釈を踏まえて情報が流通することで客観性を付与する。 情報発信の習慣化タイミングをルール化して、発信側・受信側双方の行動をデザインする。 ● times_ctoと日報による自分自身の意思決定とその理由の開示 ● チーム週次レポートによる状況把握 情報フォーマットの整理Ll
© DMM.com小さな成功21優先度を整理し、重要なものの中から一つ成功事例を作り、全体に浸透させる。実際の事業課題改革パッケージ 具体的施策と実行支援小さな成功優先度整理状況・環境・課題個々人の自律的行動外部情報から行動を起こすための思考様式。メンタルモデル改革パッケージを基にした具体的な行動を起こすにはメンタルモデル構築の補助が必須。実際の事業課題実際の事業課題最優先課題パッケージの具体的理解事業優先度上インパクトがあり、実現コストがある程度小さいプロジェクトで成功例を見せていく。
© DMM.com 22まとめ:4つの要素の先にあるもの個々人の自律的・迅速な課題解決・意思決定が進み、全体として組織として最適なアクションである。パッケージ情報浸透 小さな成功ヒアリング共通したメンタルモデルAgility高い組織の確立組織の方向性の提示具体的行動としての理解パッケージや成功事例の組織全体への理解
© DMM.comまとめ23
© DMM.com 24まとめテックカンパニー化をめざして、この1年の取り組みのメタな部分をご紹介しました。ヒアリングによる組織内の課題可視化パッケージ化による改革ストーリーと将来像の提示透明性により、組織内の情報浸透度を向上させる。小さな成功を通じて、取り組みの具体的方法論を伝えていく。組織改革において意識した4要素