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出版ワークフローにおけるTeX組版
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Yuwsuke Kieda
March 17, 2018
Technology
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出版ワークフローにおけるTeX組版
『数学ソフトウェアとフリードキュメントXXVI』での講演スライド
http://www.mathlibre.org/msfd/26-ja.html
Yuwsuke Kieda
March 17, 2018
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Transcript
出版ワークフローにおける TEX 組版 木枝祐介 清閑堂 (seikando.tumblr.com) 数学ソフトウェアとフリードキュメント XXVI 東京大学数理科学研究科棟1階002教室 2018-03-17
自己紹介
木枝祐介(きえだゆうすけ) 清閑堂 (せいかんどう) 組版 (&編集・校正) 和文・英文・仏文・科学 コンサルティング
バックグラウンド: トポロジー 特に葉層構造論
TEX ユーザの集い実行委員会 代表 (2014〜2016) TEXConf 実行委員会 代表 (2017〜)
ワークフロー
組版屋 原稿を手に 何をしている?
1 よく修正する事項
1.1 不正なマークアップ よ く 修 正 す る 事項:不正 なマー
ク ア ッ プ
\it{italic}⇨ \textit{italic} よ く 修 正 す る 事項:不正 なマー
ク ア ッ プ
\emph{italic} よ く 修 正 す る 事項:不正 なマー ク
ア ッ プ
$x = y,$⇨ $x = y$, $iが2のとき5$⇨ $i$が$2$のとき$5$ よ く
修 正 す る 事項:不正 なマー ク ア ッ プ
$f^{'}$⇨ $f'$ $A_{_{1}}$⇨ $A_{1}$ よ く 修 正 す る
事項:不正 なマー ク ア ッ プ
$f : X \to Y$⇨ $f\colon X \to Y$ $x
= 1\ (y = 2)$⇨ $x = 1$ ($y = 2$) よ く 修 正 す る 事項:不正 なマー ク ア ッ プ
$(1)$ and $(4)$⇨ \textup{(1)} and \textup{(4)} Theorem $3$⇨ Theorem \textup{3}
よ く 修 正 す る 事項:不正 なマー ク ア ッ プ
\textup{(\ref{foo1})} and \textup{(\ref{foo4})} Theorem~\textup{ \ref{bar}} よ く 修 正 す
る 事項:不正 なマー ク ア ッ プ
\thmref{bar} よ く 修 正 す る 事項:不正 なマー ク
ア ッ プ
$(\mathrm{iii})$⇨ \textup{(iii)} $\cite{sga}$⇨ \textup{\cite{sga}} よ く 修 正 す る
事項:不正 なマー ク ア ッ プ
それは$12$ポイントの面に,␣ 1文字が$0.5$ポイント すなわち$0.175$ミリメートル の大きさで,␣聖書の主の祈り $66$語,␣$271$字を浮き彫り した活字である.␣ 今井直一『書物と活字』印刷学会出版部 (1949) より,一部改変 よ
く 修 正 す る 事項:不正 なマー ク ア ッ プ
それは$12$ポイントの面に, 1文字が$0.5$ポイント すなわち$0.175$ミリメートル の大きさで,聖書の主の祈り $66$語,$271$字を浮き彫り した活字である. 今井直一『書物と活字』印刷学会出版部 (1949) より,一部改変 よ
く 修 正 す る 事項:不正 なマー ク ア ッ プ
それは␣$12$␣ポイントの面 に,1␣文字が␣$0.5$␣ポイ ントすなわち␣$0.175$␣ミリ メートルの大きさで,聖書の主 の祈り␣$66$␣語,$271$␣ 字を浮き彫りした活字である. 今井直一『書物と活字』印刷学会出版部 (1949) より,一部改変 よ
く 修 正 す る 事項:不正 なマー ク ア ッ プ
それは$12$ポイントの面に, 1文字が$0.5$ポイント すなわち$0.175$ミリメートル の大きさで,聖書の主の祈り $66$語,$271$字を浮き彫り した活字である. 今井直一『書物と活字』印刷学会出版部 (1949) より,一部改変 よ
く 修 正 す る 事項:不正 なマー ク ア ッ プ
cf. 小田忠雄 『数学の常識・非常識—由緒正しいTEX入力法』 数学通信4,95–112,日本数学会 (1999) この文書は残念ながら TEX入力に関しては 今や推奨できない記述が多い ので注意 よ
く 修 正 す る 事項:不正 なマー ク ア ッ プ
よ く 修 正 す る 事項:不正 なマー ク ア
ッ プ
1.2 ラベリング よ く 修 正 す る 事項:ラベ リング
\begin{theorem} \label{Foobar} ⇨ \begin{theorem} \label{thm2.1:Foobar} よ く 修 正 す
る 事項:ラベ リング
\bibitem{Foobar83}⇨ \bibitem{bib1:Foobar83} よ く 修 正 す る 事項:ラベ リング
1.3 ハイフネーション よ く 修 正 す る 事項:ハイ フネー
シ ョ ン
例えば次の辞書に従う 『New Oxford Spelling Dictionary』 Oxford Univ. Press, 2014 よ
く 修 正 す る 事項:ハイ フネー シ ョ ン
Theo|rem⇨ The|orem monomor|phism⇨ mono|morph|ism Rie|man|nian⇨ Rie|mann|ian よ く 修 正
す る 事項:ハイ フネー シ ョ ン
2 ワークフロー
2.1 大きな流れ ワ ー ク フ ロ ー:大 きな流 れ
[1] 執筆 [2] 編集 [3] 組版 [4] 印刷 ワ ー
ク フ ロ ー:大 きな流 れ
[1] 執筆 [2] 編集 [3] 組版✓ [4] 印刷 ワ ー
ク フ ロ ー:大 きな流 れ
2.2 組版の大きな流れ ワ ー ク フ ロ ー:組 版の大 きな流
れ
[1] 初校 [2] 再校 [3] 校了 ワ ー ク フ
ロ ー:組 版の大 きな流 れ
[1] 初校 [2] 再校 [3] 校了 ワ ー ク フ
ロ ー:組 版の大 きな流 れ
[1] 初校紙作成 [2] 再校紙作成 [3] 校了紙作成 ワ ー ク フ
ロ ー:組 版の大 きな流 れ
[1] 初校紙作成 [2] 再校紙作成 [3] 校了紙作成 ⇨ 校正紙作成 ワ ー
ク フ ロ ー:組 版の大 きな流 れ
校正 ワ ー ク フ ロ ー:組 版の大 きな流 れ
校正とは ある基準に 沿っているかを 確かめること ワ ー ク フ ロ ー:組
版の大 きな流 れ
基準 • 1つ前の校正紙 (最初は原稿) • 編集指定 ワ ー ク フ
ロ ー:組 版の大 きな流 れ
内容はチェックしない ワ ー ク フ ロ ー:組 版の大 きな流 れ
校正:組版の確認 ワ ー ク フ ロ ー:組 版の大 きな流 れ
内校 (内部校正) ワ ー ク フ ロ ー:組 版の大 きな流
れ
組版者が行う内校: 組版の作業に含む検品 • 文字 • レイアウト ワ ー ク フ
ロ ー:組 版の大 きな流 れ
組版作業の八割程度は内校 ワ ー ク フ ロ ー:組 版の大 きな流 れ
3 組版
3.1 職業的組版者 (社) の目的 組 版:職 業 的 組版 者
(社) の目的
経済的利益の追求 組 版:職 業 的 組版 者 (社) の目的
品質の安定 作業の効率化 組 版:職 業 的 組版 者 (社) の目的
3.2 TEX (L A TEX) による 組版作業の流れ 組 版:TEX (L
A TEX) によ る組版 作業の 流 れ
[1] バージョン管理システム に投入 [2] そのままコンパイル [3] 文字コードをデフォルト に変更 [4] コメント
(行) の除去 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の 流 れ
[5] 不要なスペースの除去 [6] 著者によるスペーシング の除去 [7] テンプレートへ移植 [8] 各フォーマットへ準拠 (著者作成マクロ除去)
組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の 流 れ
[9] こまかい組版 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の
流 れ
[1] バージョン管理システム に投入 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版
作業の 流 れ
Git,Subversion 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の 流
れ
目的 • 必要に応じて任意の時点 に立ち返る • 変更状況を確認 組 版:TEX (L A
TEX) によ る組版 作業の 流 れ
変更状況 • 必要な変更箇所 • 不必要な変更箇所 組 版:TEX (L A TEX)
によ る組版 作業の 流 れ
[2] そのままコンパイル 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の
流 れ
目的 • エラー確認 – L A TEX/TEXエラー – ファイル不足 •
警告確認 • 再現確認 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の 流 れ
再現確認 • PDFを画像比較して確認 – confrontapdf github.com/lbellonda/ConfrontaPDF – diffpdf www.qtrac.eu/diffpdf.html •
CUI版を主に使用 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の 流 れ
[3] 文字コードをデフォルト に変更 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版
作業の 流 れ
欧文の場合はUS-ASCII その他はUTF-8が基本 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の
流 れ
和文の場合は案件に応じて • ISO-2022-JP (JIS) • SJIS • EUC-JP 組 版:TEX
(L A TEX) によ る組版 作業の 流 れ
[4] コメント (行) の削除 組 版:TEX (L A TEX) によ
る組版 作業の 流 れ
組版作業に不要なコメント 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の 流
れ
メタ情報でないコメント 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の 流
れ
• ソースコードの装飾 • 変更箇所保存 • 私信 組 版:TEX (L A
TEX) によ る組版 作業の 流 れ
%% セクション3 %% \section{Foo Bar Baz} 組 版:TEX (L A
TEX) によ る組版 作業の 流 れ
%%% \begin{align*} ... \end{align*} %%% 組 版:TEX (L A TEX)
によ る組版 作業の 流 れ
%%% ↓ ここは削除 %... %... %... %%% 組 版:TEX (L
A TEX) によ る組版 作業の 流 れ
%%% この段落チェックよろしく ... ... ... 組 版:TEX (L A TEX)
によ る組版 作業の 流 れ
%を用いないコメントアウト 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の 流
れ
\if0 ... \fi 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版
作業の 流 れ
\begin{comment} ... \end{comment} 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版
作業の 流 れ
[5] 不要なスペースの除去 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の
流 れ
• 2個以上連続するスペース • 和欧文間でのスペース • 全角幅のスペース • 1個以上のタブ • 2行以上連続する空行
組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の 流 れ
それは␣$12$␣ポイントの面 に,1␣文字が␣$0.5$␣ポイ ントすなわち␣$0.175$␣ミリ メートルの大きさで,聖書の主 の祈り␣$66$␣語,$271$␣ 字を浮き彫りした活字である. 今井直一『書物と活字』印刷学会出版部 (1949) より,一部改変 組
版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の 流 れ
和欧文間スペースは有害 和文と数式 ($) 間も有害 組 版:TEX (L A TEX) によ
る組版 作業の 流 れ
[6] 著者によるスペーシング の除去 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版
作業の 流 れ
hoge\hspace{20mm}fuga 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の 流
れ
I\hspace{-0.2mm}I 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の 流
れ
\hspace{15mm}$y=x+z$ \hspace{19mm}$=0$ 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の
流 れ
$y\!=\!2x+z\ \sin\phi$ 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の
流 れ
... \vspace{12pt} ... 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版
作業の 流 れ
... \smallskip ... 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版
作業の 流 れ
[7] テンプレートへ移植 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の
流 れ
前提となるクラスファイル用の テンプレートへソースコードを 移植 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版
作業の 流 れ
... \title{} \author{} \recieved{} \revised{} ... 組 版:TEX (L A
TEX) によ る組版 作業の 流 れ
[8] 各フォーマットへ準拠 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の
流 れ
• 著者作成マクロ除去 • 定理型環境の標準化 • 数式まわり 組 版:TEX (L A
TEX) によ る組版 作業の 流 れ
\def\R{\mathbb{R}} \newcommand{...}{...} \newenvironment{... 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版
作業の 流 れ
\begin{Definition} ... \end{Definition} 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版
作業の 流 れ
\begin{eqnarray} ... \end{eqnarray} 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版
作業の 流 れ
\begin{align} ... \end{align} 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版
作業の 流 れ
[9] こまかい組版 組 版:TEX (L A TEX) によ る組版 作業の
流 れ
• 朱字に従い文字を修正 • オーバーフロー/ アンダーフロへの対処 • 事前指定による 朱字の無い箇所の修正 組 版:TEX
(L A TEX) によ る組版 作業の 流 れ
4 道具
4.1 測る 道 具:測 る
三角定規 道 具:測 る
道 具:測 る
直線定規 道 具:測 る
道 具:測 る
ノギス 道 具:測 る
道 具:測 る
ディバイダ 道 具:測 る
道 具:測 る
級数表 道 具:測 る
道 具:測 る
4.2 かぞえる 道 具:か ぞ え る
ナンバリングマシーン 道 具:か ぞ え る
道 具:か ぞ え る
カウンター 道 具:か ぞ え る
道 具:か ぞ え る
今回の内容は 組版者が 高い自由度をもつ場合の話
実際の業務において なにをどこまでやるかは 打ち合わせ (契約) により決まる
• よく修正する事項 – 不正なマークアップ – ラベリング – ハイフネーション • ワークフロー
– 大きな流れ – 組版の大きな流れ • 組版 – 職業的組版者 (社) の目的 – TEX (L A TEX) による組版作業の流れ • 道具 – 測る – かぞえる