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HCDコンピタンスを基盤としたデザイナー能力開発に関する実践報告

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August 27, 2025
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 HCDコンピタンスを基盤としたデザイナー能力開発に関する実践報告

2025年5月31日、2025年度春季HCD研究発表会にて、株式会社ゆめみ執行役員でありシニア・サービスデザイナーの本村章が「HCDコンピタンスを基盤としたデザイナー能力開発に関する実践報告」を発表した。本発表では、同社での職位ガイドライン、YUMEMI Design Service Canvas、給与自己決定制度といった独自の取り組みを紹介し、人間中心設計(HCD)の形式知を基盤とした能力開発の実践的枠組みを示した。さらに、インタビュー調査を通じて明らかになったデザイナーの成長プロセスや内省の仕組み、挑戦を後押しする文化などを整理し、他組織への展開可能性や制度設計の示唆について考察した。

On May 31, 2025, at the Spring HCD Research Presentation, Akira Motomura, Executive Officer and Senior Service Designer at YUMEMI Inc., delivered a talk titled “A Practical Report on Designer Competence Development Based on HCD Competencies.” The presentation introduced YUMEMI’s initiatives such as the Position Guideline, the YUMEMI Design Service Canvas, and the Self-Determined Salary System, highlighting a framework for competence development grounded in Human-Centered Design (HCD). Drawing on interview findings, Motomura discussed designers’ growth processes, mechanisms of self-reflection, and a culture that encourages challenges, offering insights into broader applicability and organizational design implications.

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August 27, 2025
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Transcript

  1. 自己紹介 Akira Motomura 2025.05.31 YUMEMI 本村 章(モトムラ アキラ) 株式会社ゆめみ 執行役員

    / シニア・サービスデザイナー HCD-Net認定人間中心設計専門家 立命館大学デザイン科学研究所客員研究員 アメリカでコミュニケーションデザインを学 び、サンフランシスコのデザインファームに て、主としてIoTサービス・ソフトウェアサー ビス等のデザインプロジェクトに従事。 帰国後、株式会社ゆめみにサービスデザイ ナーとして入社。現在は、クライアント企業 のデジタル戦略に関わるプロジェクト推進や デザイン人材育成、組織導入支援を行うとと もに、ゆめみのデザイン事業の責任者を担 当。
  2. HCDのニーズの高まり Akira Motomura 2025.05.31 YUMEMI 人間中心設計認定資格の応募者数の推移 ⼈間中⼼設計推進機構 : 「認定者数推移」「応募者数」「合格者数」「合格率」につ いて

    ;https://www.hcdnet.org/certified/apply/hcd-1918.html, 参照 2025-05-06. デジタルスキル標準における人材類型 情報処理推進機構 : デジタルスキル標準 ver.1.2 ;情報処理推進機構, (2024), https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/ps6vr700000083ki- att/000106872.pdf, 参照 2025-05-05.
  3. HCDコンピタンスと認定制度の成り立ち Akira Motomura 2025.05.31 YUMEMI HCD専門資格コンピタンスマップ ⼈間中⼼設計推進機構 : HCD 専⾨資格コンピタン

    スマップ (2024 年度) ; ⼈間中⼼設計推進機構, (2024),https://drive.google.com/ filed/1kaRejW_KJhkt8S3Dn5F6wh-sYohvQgCr/view, 参照 2025-05-06. ユーザビリティ専門家に必要とされる コンピタンスに関する研究 佐藤⼤輔: ユーザビリティ専⾨家に必要とされるコンピタンス に関する研究 ;総合研究⼤学院⼤学 (博⼠論⽂),(2006) 人間中心設計(HCD)専門家とは ⼈間中⼼設計推進機構 : ⼈間中⼼設計専⾨家とは ; ⼈間中⼼設計推進機構, (2024), https://www.hcdnet.org/ certified/about/, 参照 2025-05-06.
  4. HCD専門家認定制度の概要 Akira Motomura 2025.05.31 YUMEMI HCD専門資格コンピタンスマップ ⼈間中⼼設計推進機構 : HCD 専⾨資格コンピタンスマップ

    (2024 年度) ; ⼈間中⼼設 計推進機構,(2024),https://drive.google.com/file/d/1kaRejW_KJhkt8S3Dn5F6wh- sYohvQgCr/view, 参照2025-05-06. コンピタンス記述書(2025) ⼈間中⼼設計推進機構 : 2024年度 審査書類と補助参考資料一覧(ダウンロード) (2024),https://www.hcdnet.org/certified/apply/hcd-1767.html, 参照2025-05-30.
  5. HCD専門家認定制度における評価方法とその解釈 Akira Motomura 2025.05.31 YUMEMI ①設計者自信の概念認識 デザイナー自身が人間中心設計の存在や概念に ついて認識しているか? ③体系的学習・理解の認証 デザイナー自身が人間中心設計の概念やデザイ

    ンプロセスを学習し、適切に理解していると認 証可能か? ②意思表明 デザイナー自身が「このサービスのデザインで は人間中心設計を取り入れる」と意思表明をし ているか? ④第三者によるプロセス適合 性評価 第三者目線では人間中心設計のプロセスを取り 入れていると判断できるか? 学習者説(①〜④すべてを満たす) 設計者主観説(①と②を満たす) 選択者客観説④を満たす HCD認定制度の評価方法 参考:⻄村,歩,新井⽥,統 : ⼈間中⼼設計を“取り⼊れている”の解釈に関する考察―系統的レビューの確⽴に向けて― ; ⼈間中⼼設計,Vol. 17, No. 1, pp. 30-35 (2021).
  6. HCD基礎知識体系の確立 Akira Motomura 2025.05.31 YUMEMI HCD基礎知識体系 ⼈間中⼼設計推進機構 : HCD(Human Centered

    Design)の 考え⽅と基礎知識体系 報告書 ; ⼈間中⼼設計推進機構, (2020). HCD基礎検定 ⼀般社団法⼈ ⼈間中⼼社会共創機構 : HCD 基礎検 定 ; https://hcs-cc.org/hcd/, 参照 2025-05-06.
  7. 2.1. 職位ガイドライン 株式会社ゆめみにおいて職能ごとに提供され るいわゆる等級制度のようなドキュメントを 指す。2025 年 4 ⽉ 28 ⽇現在、デザイナー

    向けには「デザイナー職位ガイドライン (Ver. 2.0) 」 が提供され、7 職位の中に、 13 の異なるランクが定義 https://yumemi.notion.site/ Ver-2-0-176be33ee8ef80ecb121d2c544dfa8c1 Akira Motomura 2025.05.31 YUMEMI
  8. 2.1. 職位ガイドライン: ランク要件 ランク要件は、 HCD コンピタンスにおける プロジェクトマネジメントコンピタンス(B 群)と組織導⼊コンピタンス(C) 群をベー スとして、

    ランクごとに達成すべき基準とし て考え⽅・マインドセット、関係性づくり、 プロジェクトマネジメント、 組織化・内製化 とより詳細に細分化した内容を定義 Akira Motomura 2025.05.31 YUMEMI
  9. 2.2. YUMEMI Design Service Canvas Akira Motomura 2025.05.31 YUMEMI 「YUMEMI

    Design Service Canvas」には、 ユーザーニーズ検証⽀援や UX/UI 具体化⽀援 など 10 種類以上のサービスが整理され、モ ジュール化されたサービス群を組み合わせる ことで、 HCD サイクルに対応することが可能 な構成 https://designservicecanvas.yumemi.co.jp/
  10. Akira Motomura 2025.05.31 YUMEMI https://designservicecanvas.yumemi.co.jp/ 2.2. YUMEMI Design Service Canvas:

    HCDサイクルとの対応 利用状況の理解及び明示 要求事項の分析 設計解の作成 設計の評価
  11. Akira Motomura 2025.05.31 YUMEMI 申請は任意のタイミングで、チャットツール (Slack)上で⾏われる。給与の申請を出すこ とは、他者に⾃分の給与を公開することを意 味する。職位ガイドラインをベースにした独 ⾃のフォーマットを利⽤し、プロジェクト 実績、キャリアプラン、職位ガイドラインの

    チェックリスト等を記述し、提出する。提出 後、プロジェクト関係者やチームメンバーな どの 3 名以上からフィードバックをもらうこ とで、最終的な給与の申請額を決定。 申請された内容は最終的に代表取締役によっ て⾏われるが、 代表によれば 93%以上は申 請内容のまま承認される。 2.3. 給与自己決定制度: 給与申請
  12. Akira Motomura 2025.05.31 YUMEMI 調査の概要 目的 形式知を基盤としたデザイナーの能力開発や 育成の実践事例を紹介し、別組織への転⽤可 能性も踏まえた知⾒を整理すること 手法

    データ収集方法: 半構造化インタビュー(オンライン、60分) データ分析方法: テーマティック分析 インタビュー対象者 筆者が提⽰したHCDコンピタンス等をはじめ とする形式知を応⽤したデザイナーの能⼒開 発の枠組みの影響を最も受けたかつ効果が あったと考えられる次の特徴を持つ株式会社 ゆめみに所属する3名のメンバーに限定して ⾏った: 2023 年の新卒⼊社 給与申請を 1 回以上⾏っている 2025年4⽉時点でHCD基礎検定を受講し て、 合格している 2025年4⽉時点でHCDスペシャリストを受 験して、合格している
  13. Akira Motomura 2025.05.31 YUMEMI 調査の結果 T1 形式知の言語化 HCDコンピタンスや職位ガイドラインな どの明⽂化された知識体系の認知から始 まり、実務経験を通じた解釈を経て、個

    ⼈・チームのコミュニケーション基盤に 翻訳する過程 T2 成功体験を再現する鍛錬 モジュール化されたサービスを短期間サ イクルで経験することで、基本的な型を 再現可能な形で学習すること T3 俯瞰的視点の獲得 早期の多領域を跨ぐ案件への関与を通 じ,前後⼯程・ステークホルダー連鎖を ⾒渡すメタ認知的視座を形成する過程 T4 自己内省 給与申請・認定制度受験による経験の棚 卸しと第三者からのフィードバックの往 還により,⾃⾝の得意/不得意・興味関 ⼼を⾔語化し,学習課題を設定する内省 プロセス T5 挑戦が後押しされる文化 メンバーの⾃発的な⾏動を尊重し、シニ アやリードメンバーがそれを失敗する可 能性も許容して⽀援する関係性や姿勢 半構造化インタビュー逐語録(総 185 分)をBraun&Clarke(2006)の6段階⼿順で解析したところ, 38個の初期コードが⽣成され, レビューと統合を経て5つの主要テーマが抽出された
  14. Akira Motomura 2025.05.31 YUMEMI 4.1. 形式知の実践活用 T1 形式知の言語化 HCDコンピタンスや職位ガイドラインな どの明⽂化された知識体系の認知から始

    まり、実務経験を通じた解釈を経て、個 ⼈・チームのコミュニケーション基盤に 翻訳する過程 T2 成功体験を再現する鍛錬 モジュール化されたサービスを短期間サ イクルで経験することで、基本的な型を 再現可能な形で学習すること T3 俯瞰的視点の獲得 早期の多領域を跨ぐ案件への関与を通 じ,前後⼯程・ステークホルダー連鎖を ⾒渡すメタ認知的視座を形成する過程 2.1.職位ガイドライン 2.2. YUMEMI Design Service Canvas 入社後(6ヶ月〜1年程度) 入社前 ①設計者自身の概念認識 ②意思表明 ③体系的学習・理解の認証 「SECIモデル」における内面化
  15. Akira Motomura 2025.05.31 YUMEMI 4.2. 形式知以外の要素の影響 T4 自己内省 給与申請・認定制度受験による経験の棚 卸しと第三者からのフィードバックの往

    還により,⾃⾝の得意/不得意・興味関 ⼼を⾔語化し,学習課題を設定する内省 プロセス 2.3. 給与自己決定制度 形式知や仕組み以外の人間関係やコミュニケーションのあり 方、組織として文化や価値観 振り返りの仕組み 省察的実践 ④第三者によるプロセス適合性評価 心理的安全性 高いケア・信頼 T5 挑戦が後押しされる文化 メンバーの⾃発的な⾏動を尊重し、シニ アやリードメンバーがそれを失敗する可 能性も許容して⽀援する関係性や姿勢
  16. Akira Motomura 2025.05.31 YUMEMI 4.3. 他組織への展開可能性 T1 形式知の言語化 HCDコンピタンスや職位ガイドラインな どの明⽂化された知識体系の認知から始

    まり、実務経験を通じた解釈を経て、個 ⼈・チームのコミュニケーション基盤に 翻訳する過程 T2 成功体験を再現する鍛錬 モジュール化されたサービスを短期間サ イクルで経験することで、基本的な型を 再現可能な形で学習すること T3 俯瞰的視点の獲得 早期の多領域を跨ぐ案件への関与を通 じ,前後⼯程・ステークホルダー連鎖を ⾒渡すメタ認知的視座を形成する過程 T4 自己内省 給与申請・認定制度受験による経験の棚 卸しと第三者からのフィードバックの往 還により,⾃⾝の得意/不得意・興味関 ⼼を⾔語化し,学習課題を設定する内省 プロセス 外部の形式知(HCDコンピタンスなど) を組織に向けて再編集し、共通言語化 モジュール化された分かりやすく、反復しやすいパッケージ・サービスの提示 組み合わせによるデザイナーの俯瞰的な活動領域の提供 制度的な内省・客観評価の機会の提供 2.3. 給与自己決定制度 2.1.職位ガイドライン 2.2. YUMEMI Design Service Canvas エージェンシーモデルでの展開可能性
  17. Akira Motomura 2025.05.31 YUMEMI まとめ:本事例の仕組みとしての示唆 制度的な内省機会 公式な認定制度 HCDサイクル全体を包含・実践するプロジェクト プロジェクトに対応したスキル モジュール化されたプロジェクト

    HCDコンピタンス(=形式知) T1 形式知の言語化 T2 成功体験を再現する鍛錬 T3 俯瞰的視点の獲得 T4 自己内省 等級制度・スキルリスト(a) モジュール化されたサービス(B+C)
  18. Akira Motomura 2025.05.31 YUMEMI まとめ:本事例の仕組み外の示唆 制度的な内省機会 公式な認定制度 HCDサイクル全体を包含・実践するプロジェクト プロジェクトに対応したスキル モジュール化されたプロジェクト

    HCDコンピタンス(=形式知) T1 形式知の言語化 T2 成功体験を再現する鍛錬 T3 俯瞰的視点の獲得 T4 自己内省 T5 挑戦が後押しされる文化 等級制度・スキルリスト(a) モジュール化されたサービス(B+C)
  19. Thanks:) A k i r a M o t o

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