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仮説形成における思考過程とその評価に関する基礎的研究
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Daiki Nakamura
October 25, 2015
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仮説形成における思考過程とその評価に関する基礎的研究
日本教科教育学会第41回全国大会 2015年10月25日
Daiki Nakamura
October 25, 2015
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Transcript
仮説形成における思考過程とその 評価に関する基礎的研究 広島大学大学院 ◦中村 大輝 広島大学大学院教育学研究科 松浦 拓也
研究概要 研究の目的 学習者が問題に対する説明仮説を形成する際の 思考過程を推論との関係性の中で捉え, 実態調査の枠組を導出する 2 問題 推論 (演繹/帰納) 仮説
より細かいステップが 存在するのではないか?
研究概要 研究の目的 学習者が問題に対する説明仮説を形成する際の 思考過程を推論との関係性の中で捉え, 実態調査の枠組を導出する 3 仮説形成過程の試案的モデル 説明仮説を形成する際の思考過程を 明らかにするための調査的面接の実施 調査の枠組み
⚫ 仮説を立てさせる調査問題 ➢ 4つの推論種と、 2つの問題表現形式、 計8種の調査問題を作成 ⚫ 発話思考法 + 半構造化面接 ⚫ 質問紙 仮説 推論 既有概念の想起 概念の再構成 問題の把握 情報の選択・収集 (変数への気付き)
発表の流れ|全35枚 4 背景 仮説形成場面の重要性 実態について 推論との関連 仮説形成 過程 の検討 理科における仮説形成過程
試案的モデルの作成 心理学の先行研究との比較 調査の 枠組み の検討 調査問題の枠組み 面接方法の検討 質問紙の作成
研究の背景|PISA2015の枠組み 5 データと証拠を科学的 に解釈する力 科学的な調査のデザイン と評価の力 現象を科学的に説明する力 科学的リテラシー S c
i e n t i f i c L i t e r a c y
研究の背景|PISA2015の枠組み 6 現象を科学的に説明する力 適切な科学的知識を 想起し適用する力 モデルと記号による説明を 使用したり生み出したりする力 科学的知識と社会の 潜在的結びつきを 説明する力
説明仮説を立てる力 適切な予想を立てて 正当化する力 1 2 3 4 5 Explanatory hypothesis
研究の背景|H20年版学習指導要領より 小学校 学習指導要領 ⚫ 理科の目標 「見通しをもって 観察,実験などを行い」 中学校 学習指導要領 ⚫
理科の目標 「目的意識をもって 観察,実験などを行い」 7 学習者自らが自然事象から見出した疑問に対して、 予想 や 仮説 を持った上で観察,実験に臨むことが 重要であるとされている。
研究の背景|森(2003)より 重要性 子どもに自然の探究活動を させる際に,最も重視され なければならないことが 『仮説(予想)』の設定 の段階である 特異性 仮説(予想)は,自己のも つあらゆる情報を網羅し,
さらに直感によって考え出 される見解であり,科学の 活動では創造性の最も必要 な過程である 8 仮説形成場面の重要性と特異性という2つの側面
研究の背景|先行研究における実態 予想の大切さを意識して いても,予想することに 困難を感じている生徒が 多い 「疑問に対する仮説を立 てる能力」が定着してい ると感じているのは 28% に過ぎない
9 理科の授業における仮説形成場面は 学習者と教師の双方で困難さを認識している (綱川, 2006) (今田・小林,2004) 予想や仮説についての 中学生の意識 中学校教員への アンケート調査
研究の背景|仮説形成と推論 10 Manktelow(2012) 「仮説の生成は帰納推論の一面である」 推論と仮説形成の関連性を示唆 推論とは、 「すでにある情報(前提)から 新しい情報(結論)を生み出す過程」 である。 (服部,2010)
この青リンゴは酸っぱいのか? 研究の背景|仮説形成と推論 11 問題 推論 (演繹/帰納) 仮説 昨日食べた青リンゴは酸っぱかったから、 この青リンゴも酸っぱいだろう(帰納) 昨日食べた
リンゴの味 を思い出す 青リンゴの 特性ついての 知識を想起 同じ箱の青リン ゴであるという 情報を収集
研究の目的 12 1 理科の授業における仮説形成場面はその重 要性とともに、困難さが存在している 2 推論と仮説形成は関連している 実態を把握するための 調査問題の枠組を導出 学習者が問題に対する説明仮説を形成
する際の思考過程を,推論との関係性 の中でより細かい過程で捉える必要性 目的 3 仮説形成における推論には下位過程が存在する
発表の流れ|全35枚 13 背景 仮説形成場面の重要性 実態について 推論との関連 仮説形成 過程 の検討 理科における仮説形成過程
試案的モデルの作成 心理学の先行研究との比較 調査の 枠組み の検討 調査問題の枠組み 面接方法の検討 質問紙の作成
仮説形成の過程|仮説形成と推論 14 福岡(1989) 「問題を把握して,問題解決のために自然の 事象から情報を選択・収集し,推論して仮の 結論を導き出すような一連の行為」 仮説形成の過程を推論や既有概念の探索 との関係性の中で捉えることを提案している
仮説形成の過程|試案的モデルの作成 15 • 福岡(1989) 児童のプロセススキルの実態,文部省科学研究費補助金 研究成果報告書「理科実験における問題解決能力の評価 に関する日英の比較研究」(代表:福岡敏行,課題番 号:62580239):3-4. • 五島政一・小林辰至(2009)
「W型問題解決モデルに基づいた科学的リテラシー育成 のための理科教育に関する一考察 : 問題の把握から考察・ 活用までの過程に着目して」『理科教育学研究』第50巻, 第2号,39-50. • 金子健治・小林辰至(2010) 「The Four Question Strategy(4QS)を用いた仮説設定の指 導が素朴概念の転換に与える効果―質量の異なる台車の 斜面上の運動の実験を例として―」『理科教育学研究』 第50巻,第3号,67-76.
仮説形成の過程|試案的モデル 16 問題の把握 仮説 (説明仮説の導出) 推論 情報の選択・収集 (変数への気付き) 既有概念の想起 概念の再構成
仮説形成の過程|問題の把握 17 問題の把握 仮説 (説明仮説の導出) 推論 情報の選択・収集 (変数への気付き) 既有概念の想起 概念の再構成
提示された事象について、 ⚫ 何がわからないのか ⚫ 何がわかればその事象を説明できるのか を導き出す段階
仮説形成の過程|情報の選択・収集 18 問題の把握 仮説 (説明仮説の導出) 推論 情報の選択・収集 (変数への気付き) 既有概念の想起 概念の再構成
目の前の事象や問題設定から得られる情報を 整理し、その中から問題を説明するのに使え そうな情報を選択する。
仮説形成の過程|既有概念の想起 19 問題の把握 仮説 (説明仮説の導出) 推論 情報の選択・収集 (変数への気付き) 既有概念の想起 概念の再構成
問題に関連する 知識、経験、エピソード、イメージ を想起する
仮説形成の過程|概念の再構成 20 問題の把握 仮説 (説明仮説の導出) 推論 情報の選択・収集 (変数への気付き) 既有概念の想起 概念の再構成
想起された概念を推論で使用可能な状態 (規則的な状態)に再構成する
仮説形成の過程|推論 21 問題の把握 仮説 (説明仮説の導出) 推論 情報の選択・収集 (変数への気付き) 既有概念の想起 概念の再構成
問題事象から得た情報と再構成された概念を もとに推論を行い、仮説を導出する
仮説形成の過程|先行研究との比較 22 二重空間モデル(Klahr & Dunbar, 1988) 仮説形成と仮説検証の過程を、 仮説空間(長期記憶)と 実験空間(事象や実験結果から得られる情報)を 探索する過程として捉えることを試みている。
既有概念(仮説空間)や 事象からの情報(実験空間)を 探索する過程と一致 情報の選択・収集 (変数への気付き) 既有概念の想起 D u a l S p a c e S e a r c h
仮説形成の過程|先行研究との比較 システム1 並列処理を特徴とする 無意識的な思考システム。 連想的・直感的に作用する。 システム2 規則ベースで逐次処理を 行う意識的な思考システム。 論理的・制御的に作用する。 23
二重システム理論(Evans, 2008; Eysenck and Keane, 2010) 思考には2つのシステムが存在していることを指摘。 D u a l p r o c e s s t h e o r y
2つのシステムが持つ典型的特性 (Evans, 2009; Frankish & Evans, 2009) 24 システム1 システム2
暗黙的知識 明示的知識 信念ベースの実用的推論 論理的推論 連想的 規則ベース的 直感的 内省的 無意識的/前意識的 意識的 自動的 制御的 速く並列的 遅く逐次的 言語と関連付けられていない 言語と関連付けられている 文脈化 抽象的 高処理容量 低処理容量 作動記憶と独立 作動記憶に依存 知性と無相関 知性と相関
仮説形成の過程|概念の再構成 25 問題の把握 仮説 (説明仮説の導出) 推論 情報の選択・収集 (変数への気付き) 既有概念の想起 概念の再構成
想起された概念を 推論で使用可能な状態 (システム2) に再構成する
発表の流れ|全35枚 26 背景 仮説形成場面の重要性 実態について 推論との関連 仮説形成 過程 の検討 理科における仮説形成過程
試案的モデルの作成 心理学の先行研究との比較 調査の 枠組み の検討 調査問題の枠組み 面接方法の検討 質問紙の作成
仮説形成における推論種と思考過程 27 仮説形成過程では、推論の形態ごとに 異なった思考過程が存在する可能性 問題の把握 仮説 (説明仮説の導出) 推論 情報の選択・収集 (変数への気付き)
既有概念の想起 概念の再構成 演繹 帰納
調査問題の枠組み|推論の分類 28 • 戸田山(2005)による 推論の分類 推論の形態ごとに調査問題を作成 演繹 広い意味での帰納 枚挙的帰納法 アブダクション
アナロジー
調査問題の枠組み 図表の効果 ⚫ 図表が(限定的な状況においてではあるが)演繹的推論 のパフォーマンスを向上させる ⚫ 図表は、関連する情報の認識と発見を助けるだけでなく、 演繹的推論の過程に直接的に影響を与える 29 言葉のみ
/ 言葉+図表 の2種類の問題を作成 Bauer and Johnson-Laird(1993)
調査問題の枠組み 30 演繹 広い意味での帰納 枚挙的帰納法 アブダクショ ン アナロ ジー 言葉
のみ 1 2 3 4 言葉 + 図表 5 6 7 8
調査の枠組み|面接の方法 31 どのように仮説を立てたかを質問するだけでは、 「想起したが直接は使用しなかった概念」など、 細かな過程が見えてこない可能性 発話思考法(Ericsson & Simon, 1984) +
半構造化面接(たとえば,Marcia, 1966)
調査の枠組み|面接の方法 発話思考法 ⚫ 「課題を達成する間に 頭に浮かんだことをすべて、 声に出して語る」ことを 求める方法 半構造化面接 ⚫ あらかじめ質問項目は準備
しておくが、話の流れに応 じて柔軟に質問を変えたり 加えたりする面接方法 32 次に・・・ なぜ~ Aの方が~ 最初に・・・ 無意識的な 思考操作の 自覚化
調査の枠組み 33 仮説形成問題の提示 発話思考法を用いな がら、仮説を立てる ことを求める 得られるデータ • 発話思考法による プロトコル
• 経過時間、沈黙長 面接の流れ 半構造化面接の実施 • 問題から得た情報や長期 記憶から探索した知識 • 仮説を生成するまでの 思考操作 • 仮説を検証したかどうか • 導出した仮説に対する 自信度(5段階) • =質的データ • =量的データ
調査の枠組み|質問紙調査 34 日常生活における意識や態度と探究能力の 関連を指摘(吉山・小林,2010) 日常生活の中での意識や態度と仮説 形成能力を対応させて考える必要性 質問紙の作成 「原因・構造の追究」 「批判的思考」 「疑問を持つ習慣」
「知識の活用志向」
研究概要 研究の目的 学習者が問題に対する説明仮説を形成する際の 思考過程を推論との関係性の中で捉え, 実態調査の枠組を導出する 35 仮説形成過程の試案的モデル 説明仮説を形成する際の思考過程を 明らかにするための調査的面接の実施 調査の枠組み
⚫ 仮説を立てさせる調査問題 ➢ 4つの推論種と、 2つの問題表現形式、 計8種の調査問題を作成 ⚫ 発話思考法 + 半構造化面接 ⚫ 質問紙 仮説 推論 既有概念の想起 概念の再構成 問題の把握 情報の選択・収集 (変数への気付き)